魔法少女まどか☆マギカ 実績『朝焼けのエンドロール』獲得   作:くろしゅー

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(目の前をプラズマがぶち抜いたので)初投稿です。



DAY.?? Side RY  もう誰にも頼らない

 

 

 

 

 DAY.?? Side RY

 

 

 

「メル!!」

 

 私は咄嗟にメルの前に出て、魔女の触手を武器で防ごうとする。

 

 けど、少し遅かった。

 

 触手は私の内臓を貫き、メルの脇腹を抉る。

 

「ぐっ!」

「ああ!」

 

 二人ほぼ同時に地面へと転がる。

 

「メル! 凜!」

 

 前線をももこ先輩と代わる形で、やちよ先輩が私たちに駆け寄る。

 

(マズったなぁ……。今日は鶴乃先輩がいないから、私が頑張って前線張らないといけなかったのに……)

 

 

 今日、私たちはいくつもの縄張りを突破してきた魔女と戦っていた。

 

 今までいくつもの魔法少女の縄張りに侵入しながら、それら全てを掻い潜って、返り討ちにしてきたこの魔女。これ以上放置するわけにもいかず、西で一番の実力者であるやちよ先輩に話がきて、今の討伐にいたる。

 

 本当は鶴乃先輩も参加する予定だったけど、お家の万々歳が忙しくなってしまったらしい。

 だから、私は鶴乃先輩を安心させるために、メルと一緒に言った。

 

「鶴乃先輩、任せてください! 魔女は私たちで何とかします!」

「ボクも前よりずっと強くなったです。もう足手まといにはなりませんよ。それに今日はラッキーデイって、ボクの占いに出てましたから!」

 

 

 そう言って、戦いに臨んだ私たちだったけど、結界はこのザマだ。

 戦況は完全に劣勢。悔しいけど、この状況ならやちよ先輩は撤退を選択するだろう。

 

 

 私はすぐさま魔法でお腹の傷を塞ぐ。

 といっても完治は時間がかかるので、出血を止めるだけの応急処置。先に治すのはメルのほうだ。

 

「メル、傷見せて……! すぐ治すから……」

「何言ってるです! 凜のほうが重症じゃないですか! ボクより先に……」

「だからだよ。この傷じゃ、私はもう戦えないどころか、逃げるのだってままならない。だから、先にメルを治す。そうすれば動けないお荷物は私だけになる。でしょ、やちよ先輩」

 

 私はやちよ先輩に視線を向ける。

 

「言い回しに不満がないわけではないけど、言いたい内容は大体合ってるわ」

 

 やちよ先輩は立ち上がると、武器を構えなおす。

 

「凜! メルの怪我は任せたわ! ももことみふゆはメルと凜を守って!」

「待ってくれ、やちよさん! 魔女は!?」

「私が引きつけるわ!」

「無茶です! いくらやっちゃんでも危険すぎます!」

 

 みふゆ先輩の制止を振り切り、やちよ先輩は単身で魔女を引きつけ始める。

 

 私は全集中力を注ぎ、メルの傷を治していく。

 

 

 

「よし! これで……」

 

 ようやくメルの傷を治せたときだった。

 

 やちよ先輩が魔女の触手に囲まれてしまった。

 

 みふゆ先輩とももこ先輩は、退路にいる使い魔の相手で手一杯。

 

 

 

 動けるのは、私たちしかいなかった。

 

 

 

「凜! ありがとうです!」

 

 そう言って、メルは弾かれるように走り出す。

 

「メル待って!」

 

 私は咄嗟にメルの腕を掴もうとするけど、視界が狭まり、そのまま地面に倒れてしまう。

 

(傷、塞ぎきれてなかった……? こんな時に……!)

 

 貧血のような症状で倒れた私は、メルを見送ることしかできなかった。

 

 

「七海先輩!」

 

 

 やちよ先輩と魔女の間に、メルが無理やり割り込む。

 

 

 

 

 メルの実力じゃ、その攻撃を相殺しききれないことが分かっていたのに。

 

 私は、その手を掴めなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔女が逃げ、結界の外へ放り出された私たち。

 

 私は動かない体で必死に地面を這い、メルに近寄る。

 

「メル……! メル!!」

 

 私の声に、メルは顔だけこちらに向ける。

 

 申し訳なさそうにメルは笑い、小さく呟いた。

 

「はは、ごめん、です……」

 

 すると走ってきたやちよ先輩が、メルを抱きかかえる。

 

「メル!!」

 

 

 

 血が足りない影響で、段々とまぶたが重くなる。

 

 けど、ここで寝たらもう二度とメルには会えないような気がして、気合いで耐える。

 

「凜! メル!」

「そんな……!」

 

 ももこ先輩とみふゆ先輩もやって来る。

 ももこ先輩が私に駆け寄ってくれたけど、私はももこ先輩をどけるようにメルに手を伸ばす。

 

(今傷を治せば、きっと間に合うはず……)

 

 大丈夫……。いつも通りメルの傷を治すだけ……。最悪のことにはならない。

 

 だって……。

 

(だって、今日はメルの占いで……)

 

 やちよ先輩はメルを叱るように声を上げる。

 

「何がラッキーデイよ、最悪じゃない……!」

 

 

 その占いを私も隣で聞いていた。

 というより、メルの占いを楽しみにしていたのは私だ。止めることもせず、どんな結果かワクワクしていた。

 

 

 意識がボンヤリとしてきて、メルが何を言っているのか聞き取れない。

 

 

 そのため、メルの声を聞くために近寄ろうとしたときだった。

 

 

 

 

 

 メルのソウルジェムは濁りきり、中からグリーフシードが誕生した。

 

 

 

 グリーフシードが孵化する衝撃に吹き飛ばされ、私は地面を転がる。

 

 

 薄れゆく意識の中、私が最後に見たのは、魔女の姿だった。

 

 メルを象徴するようなタロットカードを持って、その魔女は産声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 DAY.?? Side RY

 

 

 

 そこからのことは、あっという間だった。

 

 キュゥべえに魔法少女の真実を聞かされ、魔女の正体を知った。

 

 あまりに残酷なその真実に、皆呆然とした。

 

 

 

 

 鶴乃先輩には、このことを隠すことになった。

 

 この真実は、あまりにも惨いものだったから。

 

 鶴乃先輩は納得しきれていないみたいだったけど、私は口を閉じるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

(私のせいだ……。私のせいで、メルは……!)

 

 あれ以来、私は自分を責め続けている。

 そうでもしていないと、みかづき荘の欠けたスペースに、私の胸にぽっかり空いた穴に、気が狂ってしまいそうだったから。

 

(私が油断しなければ……。私がちゃんとメルを庇えていたら……。私がメルを止められていたら……。せめて、私が犠牲になっていたら……)

 

 

 

 メルが魔女になって、数日後。

 やちよ先輩はメルだった魔女を倒すことを決めた。

 最初はやちよ先輩一人でやるつもりだったらしいけど、私も付いていくことにした。やちよ先輩とももこ先輩には無理しなくていいって言われたけど、私が嫌だった。

 

 魔女になってしまったとはいえ、あれは私の親友だ。

 ならせめて、罪を重ねる前に私の手で止めてあげたかった。

 

 結局、私とやちよ先輩、そしてももこ先輩の三人でメルだった魔女は討伐した。

 

 

 

 みふゆ先輩は来れなかった。

 まだ心の整理がついていないみたいで、不意に泣き出してしまうことが多かった。

 

 その涙を見る度に、お前のせいだと言われている気がした。

 

 それでも私はみふゆ先輩を放っておけなくて、極力みふゆ先輩の側にいるようにした。

 私の苦しみなんてどうでもいい。そんなことより、みふゆ先輩がまた笑顔になってくれることのほうが大事だったから。

 

 

 

 メルのご両親への報告も、やちよ先輩と一緒に行った。

 

 私が謝ったとき、メルのご両親はこう言ってくれた。

 

「あなたが謝る必要はないわ。メルといつも仲良くしてくれてありがとう。あの子、仲の良い友達ができたって、嬉しそうにあなたのことを話してたから。あなたみたいな子が友達になってくれて、あの子もきっと幸せだったわ」

 

(違います……。私は、そんな立派な人間じゃありません。いつも助けられてばかりで、何もメルに返せなかった……)

 

 そう言いたかったけど、私の口は閉じたままだった。

 

 この人たちにメルの死を糾弾されると思うと、怖くてできなかった。

 

 

 私は卑怯者だ。

 

 

 

 東の魔法少女の代表、和泉十七夜さんへの報告にも付いていった。

 

 十七夜さんにも、私が責められることはなかった。

 

「あまり自分を責めるな。夕凪くんは良くやった。安名も、キミのことはよく話していた。キミと友達になれたことが嬉しかったんだろうな。東の魔法少女を代表して、礼を言わせてくれ」

 

 

 

 誰も、私を責めてくれなかった。

 

 

 そんなこと許されていいわけないのに……。

 

 

 

 どこかで安堵している私がいた。

 

 

 

 

 

 

 そうしている内に、みふゆ先輩がみかづき荘に来なくなった。

 

 少しして、みふゆ先輩は行方不明になったと、彼女の実家から聞かされた。

 

 

 私はまた一人、失った。

 

 

 

 

 

 そして、私が心の奥で恐れていたことが、あの日起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 DAY.?? Side RY

 

 

 

「え……」

 

 私の口から呆けた声が漏れる。

 やちよ先輩が何を言ったか、理解できなかったから。

 

「それ、どういうことですか……?」

 

 私はやちよ先輩に聞き返した。

 徐々に理解の追いついてきた頭が、否定してほしいと願いを込めて。

 

「どうもこうも、言った通りよ。チームは解散。もう一緒に戦うつもりはないわ」

 

 でも、やちよ先輩の答えはその希望を打ち砕いた。

 

「ちょっと待てよ、やちよさん! そんないきなり……。せめて理由を説明してくれ!」

 

 ももこ先輩がやちよ先輩に尋ねる。

 

「嫌よ。もう仲間でもない人たちに話すことなんてないわ」

「なんだよ、それ! つい昨日まで一緒に戦ってたじゃないか!」

 

 けど、やちよ先輩は剣呑な雰囲気を隠すこともなく、突き放すように言う。

 

「飲み込みが悪いわね、ももこ。じゃあ言ってあげましょうか? あなたたちは足手まといなのよ。あの魔女だって一人で戦っていたら勝てていたわ。あなたたちを庇ったから、逃げられたのよ」

「……それ、本気で言ってんのか?」

「ええ」

「っ!!」

 

 その瞬間、ももこ先輩がやちよ先輩を殴った。平手じゃなく拳を握ったそれは、ももこ先輩の怒りを痛いほど表していた。

 

「もういい。あんたには失望した」

「も、ももこ!」

 

 鶴乃先輩が呼び止めようとするも、ももこ先輩は申し訳なさそうにみかづき荘を出ていった。

 

 

 

「あの……」

 

 私は口を開いた。

 どうしても確認したいことがあったから。

 

「私も、足手まとい、ですよね?」

「……ええ。そうね」

 

 やちよ先輩にそう言われた瞬間、何かのバランスが崩れた。

 

 

 手足は冷え、内蔵はグズグズに溶けてしまったように気持ち悪かった。

 その時の私は、もはや体も頭も心もバラバラになってしまったようで、なんで動けたのか今でも分からない。

 

「……っ。……分かりました。今まで迷惑かけてごめんなさい。荷物はすぐ片付けますから……」

 

 ただ一つ。

 笑顔でいることだけは忘れなかった気がする。

 

 この期に及んで私は、やちよ先輩に少しでも悪い印象を持たれたくないという、保身の行動に駆られていた。

 

「ごめんなさい」

 

 その一言を残し、私はみかづき荘をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 家へと戻り、自室の扉にもたれかかるように座り込む。

 

 私は叔母さんたちに聞こえないように、歯を食いしばりながら泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 DAY.?? Side RY

 

 

 それからの日々を、私は魂が抜けたように過ごした。

 いや、実際魂は私の体から抜かれている。このソウルジェムに姿を変えられて。

 

 そのソウルジェムは、ここのところずっとくすんだ色をしている。まるで私の心の内を映すかのように。

 

(いつか、私も魔女になっちゃうのかな……)

 

 不思議と辛さは感じなかった。

 自分が魔女になることが悲しいことだとは、どうしても思えなかった。

 

 

 いや、むしろ……。

 

(……ダメだ。何を考えているんだ、私。メルが生かしてくれた命。そんな自分勝手な理由で終わらすわけにはいかない。そんなこと、私には許されていない)

 

 私はとある決意を胸に、万々歳へと歩を進めていた。

 

(私が生き残ってしまった意味。メルを犠牲にした私が贖罪する方法はもう、これしか……)

 

 経緯はどうあれ、メルを犠牲に私は生き残ってしまった。

 それなら私がするべきことは、これ以上誰も死なせないようにすること。

 メルの大好きだった人たちを守り抜くこと。

 

 

 

(メル、会いたいよ……)

 

 

 やめろ。

 

 私にそんなことを考える資格はない。

 

 私はその言葉をねじ伏せる。

 

 

 

 そして、私は万々歳の扉を開けた。

 

 

 

 

「鶴乃先輩! お願いします! 私を……、私を、鶴乃先輩の弟子にしてください!」

 

 私は勢いよく頭を下げる。

 

 私の行動に、鶴乃先輩は困惑しているようだった。

 

 それはそうだろう。

 数日ぶりに会った後輩が、いきなり弟子にしてほしいなんて言ってきたら。

 

 けど、鶴乃先輩にはこれを認めてもらわないと。

 

「私、自分が許せないんです。メルを助けられなかった自分が。皆さんは私のせいじゃないって言ってくれました。私も、その言葉に甘えてそう思おうとしました。けど、やっぱりそれは間違いだと思いました」

 

 私はキツく拳を握りしめる。

 

「あの時、メルが攻撃されるって気づいたのに、私は庇いきれなかった。それどころか、負傷者になって皆さんの荷物になって……。私がもっと動けてたら……、もっとちゃんと出来てたら……」

「違うよ! それは……」

「何も違いません!!」

 

 鶴乃先輩は否定しようとしてくれるけど、私はそれを遮る。

 

「あの日から、ずっと自分は死ぬべきだって思いました。けど、それじゃ本当にメルの死が無駄になっちゃう。メルの死を無駄にしないために、私が出来ることはないかってずっと考えてました」

 

 そして、私はたどり着いた結論を鶴乃先輩に話す。

 

「思いついたんです。もっと強くなればいいんだって。どんなに後悔したって時間は戻りません。けど、未来なら変えることが出来る。もう誰もあんな思いしなくて済むように。もう二度とあんな失敗を私がしないように、強くなればいいんだって。そして、その力でメルが救うはずだった分まで、たくさんの人たちを助ければ、きっとメルの死も無駄にならない」

 

 分かってる。

 こんなの、自分勝手な贖罪だってこと。

 それに鶴乃先輩を巻き込んでるってこと。

 

「私なんて、メルが救えるはずだった人たちの何百分の一の人たちも救えないと思うけど、それでもやらないと……!」

 

 分かってる。

 私なんかがメルの代わりなんてなれないこと。

 

 私が生みだしたいくつもの悲しみを、こんなことで埋められるわけないこと。

 

 これは、いつものワガママ。

 これからも生きていかなくちゃいけない私の、心の支え。

 

「本当はもっと早くこうするべきだったんです……。そうすれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに……。お父さんの言うとおりでした。私は何の取り柄もない、生きてるだけじゃ誰かの邪魔にしかならない存在だったんです。何かを極めなきゃ、誰かに迷惑をかけずに生きてくことすらできない、落ちこぼれなんです。本来なら、メルが生き残ったほうがよかった。あそこで誰か犠牲にならなきゃいけないんだったら、それは私になるべきだった。……けど生き残っちゃったから。私はそれに報いないと……」

 

 私はもう一度頭を下げる。

 

「お願いします……! 迷惑なのは百も承知です! でも、こうでもしないと私は、誰も救えない……! きっと強くなりますから……! 鶴乃先輩だって助けられるくらい、強くなりますから……!」

 

 私は土下座の姿勢で、鶴乃先輩にお願いする。

 

「ちょっ、ちょっと」

「お願いします! 弟子になれるなら何でもします! 魔女を100体倒してこいというのなら倒してきます! 弟子になっても、絶対弱音は吐きません! 鶴乃先輩がしてほしいことは何でもします! だから、だから……!」

 

 

 

 数十秒の沈黙の後、鶴乃先輩が口を開いた。

 

「……凜、ちょっと立ってくれる?」

「はい……」

 

 言われた通り立ち上がると、鶴乃先輩に抱きしめられる。

 いつもの勢いのある全力ハグではなく、優しく包み込むようなハグだった。

 

 

「鶴乃、先輩……?」

「ごめん、ごめんねぇ……! ここまで傷ついてたことに気づいてあげられなくて……」

「なに、言ってるんですか? 私はだい……」

「大丈夫じゃないよ!!」

 

 私がしたみたいに、今度は私の言葉を遮られる。

 

「今の凜を、大丈夫とは言えないよ……! そんなに簡単に、何でもするなんて言わないで……! そんなに自分のことを、軽く見ないで……!」

 

 ああ……。

 

(鶴乃先輩は優しいなぁ……)

 

 私に対して、こんなこと言えちゃうんだ。

 

(鶴乃先輩、分かってますか? あなたが抱きしめてる人間は、あなたの大事な仲間で後輩を死なせたんですよ?)

 

 私は警告するように言う。

 

「そんなことないです。私に、メルと釣り合えるような価値なんてないです。きっとメルが生きてれば、私が死んでいれば、チームだって解散なんかしなかったはずです。私が犠牲になっていれば、皆さんだって辛い思いせずに……」

「そんなわけないでしょ!!!」

「っ!?

 

 鶴乃先輩が声を荒げた。

 

 鶴乃先輩がこんな風に怒っているところを見たことなくて、私は呆気に取られる。

 

 

「凜が死んで、悲しくならないわけないでしょ!! 本気で言ってるの!? 凜の価値なんて、誰が決めたの!? よく考えて! メルの代わりに凜が犠牲になってたら、あなたの感じているその悲しみを! 苦しみを! メルが感じていたんだよ!? 凜が死んでも、結果は一緒だよ……! チームにはどうしようもないほどの亀裂が入って、バラバラになってた。私たちは、それくらい凜のことを大切に思ってた。それは、凜にだって否定させない! やちよだって、きっと何か訳があるんだよ! 何かあるから、私たちを遠ざけているんだよ……」

 

 鶴乃先輩は泣いていた。

 怒りながら、涙をたくさん零していた。

 

 

 どうして、私は誰かを怒らせることしか出来ないのだろう。

 

 どうして、怒られているのに嬉しいんだろう。

 

 

「鶴乃、先輩……」

「だから、そんな悲しいこと言わないで……。凜は、大切な後輩で、仲間だよ? そんな後輩を犠牲にしたって、嬉しくもなんともないよ……!」

 

(やめてください、鶴乃先輩……。私なんかのために泣かないで……)

 

 その涙は、私には勿体なさすぎる。

 その悲しみを見せる相手に、私を選ばないでください。

 

 鶴乃先輩はゴシゴシと目元を拭いながら、私と向き合う。

 

「いいよ……。私の弟子になること、認めてあげる。けど、私の弟子になるなら、これだけは約束して」

「約束、ですか……?」

「うん。それは、絶対に自分を粗末に扱わないこと。辛かったら、苦しかったら、誰かを頼って。凜が望むなら、私もずっと側に寄り添うから。だから、自分はどうなってもいいなんて、考えないで。自分を犠牲にすることを前提にしないで。どう? 約束できる?」

 

 鶴乃先輩の言葉は、私の決意を揺らがせる。

 

 

「……いいんですか? そんなこと、望んでも……?」

 

(何を言ってるんだ、私。そんなの望んでいいわけ……)

 

「当たり前だよ。というか、誰か否定するなら、私がぶっ飛ばす」

 

 鶴乃先輩は笑った。

 

 それを見た瞬間、私は鶴乃先輩に縋り付いていた。

 

「……うぅ。約束、できます……! 私、私……! ううううぅぅぅ!!」

 

 

 頼ってごめんなさい、鶴乃先輩。

 

 

 やっぱり私、辛いです。

 

 

 

 

 

 

 

 DAY.?? Side RY

 

 

 

 

 そこからの鶴乃先輩との日々は、私の心を温かく、癒してくれた。

 

 

 

 心は傷だらけだけど、不思議と鶴乃先輩と一緒にいれば大丈夫な気がした。

 

 鶴乃先輩と特訓して。

 

 鶴乃先輩のお店を手伝って。

 

 鶴乃先輩と一緒に遊んで。

 

 

 

 

 

 私の視界はほとんど鶴乃先輩だけになった。

 

 私の手を引いてくれる鶴乃先輩が。

 

 私と一緒になって楽しんでくれる鶴乃先輩が。

 

 私に料理を教えてくれる鶴乃先輩が。

 

 私に勉強を教えてくれる鶴乃先輩が。

 

 

 その日々が、かけがえのないものだった。

 

 鶴乃先輩との過ごす時間が、私の拠り所だった。

 

 

 私には、鶴乃先輩しかいなかった。

 

 

 鶴乃先輩から離れるのが怖かったから、私は鶴乃先輩にべったりだった。

 少しでも目を離せば、また失ってしまいそうだったから。その不安で頭がおかしくなりそうで、可能な限り鶴乃先輩の隣にいた。

 

 多分、鶴乃先輩には上手く隠せていたと思う。

 こんな気持ち悪い心の内、見せたくないし。

 

 

 鶴乃先輩のことはよく観察した。

 少しでも機嫌を損ねないように。

 

 もちろん、鶴乃先輩がちょっとのことで怒るとは思わなかったし、怒ってもヒドいことをするような人でないことも分かってた。

 けど、体に染みついたクセは中々抜けないもので、自然と鶴乃先輩の機嫌を気にしている自分がいた。

 

 

 だからだろう。

 鶴乃先輩の、あの側面に気づいたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 DAY.?? Side RY

 

 

 あの日。

 

 私はいつものように、鶴乃先輩のお店の手伝いに万々歳を訪れていた。

 

 お店に鶴乃先輩の姿が見えなかったから、鶴乃先輩のお父さんに聞けば、2階の自分の部屋にいると教えてくれた。

 

 

 その時、私は静かに行って、鶴乃先輩を驚かそうと思った。

 

 子どもみたいな、くだらないドッキリ。

 それを仕掛けるために、鶴乃先輩の部屋前まで行ったときだった。

 

 僅かに開いた部屋の扉から、鶴乃先輩の声が聞こえた。

 

 

 

 

「なんか、疲れたなぁ……」

 

 

 

 

 鶴乃先輩の今まで聞いたことのない声色と言葉、そして顔だった。

 

 それを見た私は、心が芯から凍るような気分だった。

 

 

 見てはいけないものを見てしまった気がして、私は転がるようにその場から逃げ出した。

 

 

 

 鶴乃先輩のお父さんに今日は休むとだけ伝え、私はがむしゃらに走った。

 

 心の奥から溢れてくる、感情とも呼べないようなぐちゃぐちゃとした情動に突き動かされるまま、私は足を動かした。

 

 

 そうして、当てもなく走り続けた私は、いつの間にか河川敷にたどり着いていた。

 

 

 そこから見た空は、落ちる夕日に焼けた真っ赤な空だった。

 

 

 

(疲れた、か……。そっか、私……。私、鶴乃先輩の重荷だったんだ……)

 

 

 それは、今まで考えないようにしていたこと。

 

 私はどこかでずっと思っていた。

 押しかけて弟子になった私が、鶴乃先輩の精神的負担になってるんじゃないかって。

 

 鶴乃先輩はそんな様子全く感じさせなかったから、大丈夫だって私は目を背けた。見ないふりをしていた。

 

(ああ……。だからダメなんだ、私。誰かのためを理由にして、辛いことから目を背けて、そのせいで大事な人を傷つける。私が誰かに甘えるから、私は皆を傷つける……)

 

 

 そうか。

 

 そういうことだったんだ……。

 

 

 

 お父さんとお母さんが、あんなに荒んでしまったのも……。

 

 メルが死んだのも……。

 

 みふゆ先輩が失踪したのも……。

 

 やちよ先輩がチームを解散せざるを得なかったのも……。

 

 鶴乃先輩を追い込んだのも……。

 

 

 

(私が甘えたせいだったんだ……)

 

 

 

 私の甘えが、誰かに寄りかかろうなんて考えが、全ての原因だったんだ。

 

(私が、助けてほしいなんて言ったから……)

 

 それで私は、みんなを……。

 

 

 視界が歪んで、吐きそうになる。

 

(私が、みんなを不幸に……!)

 

 私が側にいるだけで、みんな不幸になっていく。

 

 

 

 

 もう、鶴乃先輩とは離れるべきだ。

 

 私はもう、魔法少女として一人でやっていける。その実力がある。

 

 だから、鶴乃先輩とはもう会っちゃいけない。頼っちゃいけない。

 

 きっと私が寄りかかり続けたら、鶴乃先輩は自分が潰れるまで私を支えようとしちゃうから。

 そうなる前に、私は鶴乃先輩から離れよう。

 

 

 

 

 

 そうしないと、いけない、のに……。

 

 

 

「そんなの、ムリだよ……。離れたく、ないよぉ……」

 

 私の口から出た言葉は、どこまでも独りよがりな、醜い願望だった。

 

 

 

 私は両腕を抱きしめるようにして、泣く。

 

 

 

(メル、メル、メル……。私、どうしたらいい……? 教えてよ……。またさ、占ってよ……。声が聞きたいよ……)

 

 

 

 もう、全て投げ出したかった。

 

 

 人を不幸にしかできない自分なんて、この世から消してしまいたかった。

 

 

 この絶望の沼に、身を沈めてしまいたかった。

 

 

 

 けど、それこそ私の『甘え』だ。

 

 それを選べば、私はまた誰かを傷つけるだろう。

 

(きっと鶴乃先輩は、私が死んだら泣いちゃうんだろうな……。こんな価値ない存在にすら、悲しんじゃう人だから)

 

 

 だから、私には死ぬことも、絶望することも許されない。

 

 

 例え、この命がどれだけ害悪な存在でも、メルが生かしてくれた命だから。

 

 悲しんでしまう人がいる命だから。

 

 

 

 それなら、私は生き続けるしかない。

 生きて、私の罪を贖い続けるしかない。

 

(それが私に許された、たった一つの生き方)

 

 

 

 もう、誰にも甘えてはいけない。誰かに助けられてはいけない。弱くあってはいけない。

 

 そんなこと、私には許されてはいない。

 

 私は、もう……。

 

 

 

 

(もう、誰にも頼らない……!)

 

 

 

 

 誰かに甘える私。

 そんな自分とはここで決別だ。

 

(誰かに頼る私じゃなくて、誰かに頼られる私でいつづけないと。そうしないと、私はまた大切な人を不幸にする)

 

 私は涙を拭う。

 

(鶴乃先輩も不安定なんだ。私が、支えてあげないと……。今、私が離れたら鶴乃先輩、一人になっちゃうし……。先輩の負担にならなければ大丈夫、だよね……?)

 

 

 

 それでも鶴乃先輩から離れられない私は、そんな言い訳で取り繕った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 DAY.?? Side RY

 

 

 

 それから私は、鶴乃先輩との接し方を少し変えた。

 

 

 具体的には、鶴乃先輩を頼ることを止めた。

 

 勉強を見てほしいとか、悩みを聞いてほしいとか、そんなくだらないことで鶴乃先輩に負担をかけたくなかった。

 

 鶴乃先輩の悩みを聞くこともした。

 鶴乃先輩がなんで疲れてしまったのか、それを知りたくて。それが分かれば、鶴乃先輩の悩みも解決してあげられる気がして。

 

 

 

 鶴乃先輩はもちろん話してくれなかった。

 でも、会話を重ねるうちになんとなく分かった。普段の会話とあの時のギャップから、鶴乃先輩の抱えているものに。

 

(そっか……。鶴乃先輩、普段の振る舞いは演技だったんですね……。私が暗い顔してたから、元気づけるために元気な振りをし続けてたんだ……)

 

 

 鶴乃先輩が笑顔の仮面を被っていることに気づいたのは、割と早かった。

 だって、それは私もやっていたことだから。

 

 もちろん、誰かのために笑顔でいつづける鶴乃先輩のほうが何倍も偉いんだけど。

 

 私の笑顔は、誰かに嫌われたくない、自己中心的なものだったから。

 

 

 

 鶴乃先輩は、皆を安心させるために『最強の魔法少女』であり続けた。

 私はそれに、のうのうと寄りかかってきた。

 

(何が、鶴乃先輩が心配、だ……。救われてたのは私じゃん……)

 

 鶴乃先輩が一人にならないようにって思って、今まで一緒にいた。

 

 

 けど、それが先輩の負担になっているのなら……。

 

(先輩……。その仮面は、その役は、私が引き継ぎます。)

 

 私が鶴乃先輩の代わりになろう。

 鶴乃先輩がもう自分の気持ちを偽らなくてもいいように。

 もう甘えたいという気持ちを抑えなくてもいいように。

 

(だって、鶴乃先輩はそれが許されている人なんだから)

 

 

 その役は、甘えることが許されていない私がするべきだ。

 

 

 

 

 

 それから、私は鶴乃先輩の言動を真似をするようになった。

 

 鶴乃先輩はこういうとき、こう言うだろう。この場合は、こんな行動するだろうな。そんなことを常に考えながら、私は生活するようになった。

 

 もちろん、私がどう足掻いたって鶴乃先輩の足下にも及ばないのは分かってる。

 

 そもそも、鶴乃先輩は文武両道を体現するような人だ。

 運動神経は説明するまでもないし、成績だって常に学年主席なのだ。

 

 私がお父さんに求められていたことを、先輩は当然のように成し遂げていた。

 だから、私は鶴乃先輩のようにならなくちゃいけない。

 

 

 

 

 ときどき思う。

 鶴乃先輩が私の両親の間に生まれていたらって。

 

(そうすれば、二人もあんなに思い詰めることはなかったのかな……)

 

 

 私が無能だったから、二人を凶行に走らせたんじゃないかって。

 

 鶴乃先輩は私の憧れで、私が目指すべき姿そのもので、私が成れなかった理想だった。

 

 

(だから、この役割も本来は私がやるべきことなんだ……)

 

 

 

 このことは、もちろん鶴乃先輩に言わなかった。

 

 だって、正直に伝えたら鶴乃先輩は絶対怒るし、そんなことしなくていいって、言ってくれるだろうから。

 

 

 けど、鶴乃先輩には違和感を持たれたんだろう。

 

 

 その辺りから、鶴乃先輩と心の距離が開いた気がする。

 

 いつも通り話しているのに、少し噛み合わない。

 いつも通り動いているのに、息が合わない。

 

 

(ああ、ダメだ。まだ鶴乃先輩みたいになれてない。鶴乃先輩ならもっと上手くやれる。もっと頑張らないと……)

 

 

 より鶴乃先輩っぽくなるために、街で困っている人を探しに行って、助けるようにした。

 

(少しでも経験を積んで、鶴乃先輩みたいにならないと……。私にはそれしか……)

 

 

 一般人、魔法少女に関わらず、私は人助けに没頭した。

 

 

 

「落とし物、拾ってくれてありがとうねぇ」

 

 

「いやあ、助かったよ。早く持って帰んないと、親方に怒られちゃうし」

 

 

「ありがとう、お姉さん! このお財布、姉ちゃが買ってくれたものだったから、見つかって良かった!」

 

 

「モデル、ありがとうなの! これでマンガが書けるの!」

 

 

 

 

 けど、上手くいったものばかりじゃなくて……。

 

 

「余計なお世話だ、あっち行け」

 

 

「ワシを年寄り扱いするな!」

 

 

「あん? 西の人間が何の用だよ? コイツの代わりに金でもくれんのか?」

 

 

「鬱陶しい。邪魔」

 

 

「勝手に助けに入って……! 私のグリーフシード奪う気!?」

 

 

「うっさいわね! レナのやり方に口出ししないで!」

 

 

 

「あっは! じゃあねー、お人好しヒーロー」

 

 

 

 

 

 

(ダメだ……。この程度じゃ、まだ全然……。もっともっと頑張らないと)

 

 私は足掻いた。

 鶴乃先輩の隣にいられるような自分でありたくて。

 

 メルを失った今、彼女だけが私の光だったから。

 

 

(メル、これでいいんだよね……? こうすれば、もう誰も失わないよね……?)

 

 

 自分の気持ちは殺すようにした。

 

 私自身の気持ちなんて、今の私には最もいらないものだったから。

 

(先輩を頼ろうよ)

 

 殺す。

 

(もう辛いよ)

 

 殺す。

 

(だれか、たすけて……)

 

 殺す。

 

 

 私は、自分のことを殺し続けていた。

 心が訴えるくだらないことを、弱い自分を、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して。

 

 

 それでも、嫌いな自分は湧いてきた。

 

 

 

 

 

 鶴乃先輩は相変わらず優しかった。

 私が距離を置いているのにも関わらず、心配してくれたし一緒にいてくれた。

 

「凜! 今度一緒に遊園地行かない?」

 

「凜、何か悩んでることとかない? 私でよければ聞くよ? ふんふん!」

 

「そっか……。ううん、無いならいいんだ。悩みがないのは良いことだしね! でも、何か困ったことがあったら鶴乃お姉さんにお任せあれ!」

 

 

 

 

 でも、いつからだろう。

 

 私は鶴乃先輩と一緒にいるのが辛く感じるようになっていた。

 

 

 鶴乃先輩の姿を見ると、自分が彼女に届いていないことを実感させられた。

 私が目指すのも烏滸がましいほど、先輩は太陽のような人だった。

 

 鶴乃先輩に優しさを向けられる度に、心が締め付けられるような、息苦しい感覚があった。

 

(やめてください、先輩……。私は、そんな優しくされるような人間じゃないんです。先輩を失いたくなくて魔女化のことも言えない、臆病で卑怯者です……)

 

 

 

 いつからだろう。

 

 あんなに楽しかった鶴乃先輩と過ごす日々は、徐々に苦痛なものへと変わっていった。

 

 

 

 

 

 

 そんなある日だ。

 

 叔母さんたちから、こんな話をされた。

 

「ねえ、凜ちゃん。今度ね、私たち仕事の都合で引っ越さなくちゃいけなくなったのよ。風見野市ってところ。それでね、凜ちゃんも一緒に来ない?って思って……。どうかな?」

「引っ越し……」

 

 つまり、神浜市から離れることになる。

 

 先輩たちと離れることになるのに、私はなぜだか、その提案にとても心を惹かれた。

 

「ああ。実は、私と妻は元々、風見野の隣にある見滝原に住んでてな。そこから仕事の都合で神浜市にいたんだ。だから、家はそこにあるんだが、どうかと思ってな」

 

 どうなんだろう。

 私は想像がつかなかった。

 

 今も叔母さんたちと三人で暮らしているけど、それが別の場所になるってだけのような気もするし。

 

 すると、叔母さんが私に提案をしてくる。

 

「一緒に住むのが嫌なら、凜ちゃんがその家を使ってほしいなって思ってるの」

「い、嫌だなんてそんな……」

「凜ちゃん、別に無理しなくていいわ。みかづき荘からこの家に戻ってきてから、凜ちゃんなんだか居心地が悪そうだったもの」

「そんなこと……」

 

 否定はできなかった。

 

 家に人がいると、身体が勝手に怯える。特に大人の人には。

 

 それで心がどこか休まらない感じがして。それが伝わってしまったのだろう。

 

 みかづき荘ではそんなことなかったことを考えると、私は未だにこの二人のことを受け入れられていないのだろう。

 

「凜ちゃんの好きにしてくれて構わないからね。私と妻は風見野のアパートでも借りようと思っている。凜ちゃんにも、一人の時間がほしいだろう」

「そうよ。お金のこととかも気にしなくていいわ。これでも、貯金はたくさんあるから」

 

 叔母さんは胸を張るように言った後、私の手を握ってこう言った。

 

「だから、私たちがすぐに駆けつけられる場所にいてくれないかしら? 風見野と神浜だと距離も遠いし、ね?」

 

 無理にとは言わないけど、と叔母さんは付け足す。

 

 

(ダメだ。まだ先輩たちに罪を償えていない。こんなところで逃げるなんて……)

 

 

 それで鶴乃先輩の負担になっているのに?

 

 

(でも……)

 

 

 もう嫌。私は先輩を苦しませることしかできないの。

 

 

(私は……)

 

 

 逃げよう?

 

 これ以上、先輩たちを苦しませる前に。前に決めたじゃない。

 

(もう誰にも頼らないって。そうだ、これが好機だ。いい加減、先輩から離れないと。私はいるだけで先輩を苦しませるんだから)

 

 

 

 

 

 

(最期はせめて、先輩たちの目の届かないところで……)

 

 

 

 

 

 私の心は決まった。

 

「叔母さん……」

「なあに?」

「お言葉に甘えていいですか……?」

 

 

 

 

 結局、誰かに頼りっぱなしの私に嫌気が差しながら、私はそう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 DAY.?? Side RY

 

 

 

「鶴乃先輩、今までお世話になりました。これでお別れですね」

 

 引っ越しの前日、私は鶴乃先輩へ最後の挨拶をしに行った。

 

 鶴乃先輩には事前に伝えていた。鶴乃先輩は寂しそうな顔をしていた。

 

「うん。向こうでも元気でね。そっちが落ち着いたら私、遊びに行くから!」

 

 寂しそうな顔をしても、決して引き止めることはしない鶴乃先輩の優しさに、私はまた甘える。

 

「はい、待ってますね」

 

 すると、鶴乃先輩が私に飛びついてくる。

 私は鶴乃先輩をしっかりと抱き止める。一緒に過ごす中で、鶴乃先輩の抱きつきもちゃんと受け止められるようになっていた。

 

「り゛ん゛~~~~!!! 新しい学校でも頑張っでね゛~~~!! わ゛だじ、応援してるから~~~!!」

「はい……! 鶴乃先輩も、お元気で……!」

 

 

 

 自分勝手な理由で逃げたくせに。

 

 こんな私との別れにも泣いてくれる先輩を見て、私は先輩の肩に顔を埋めて泣いた。

 

 

 

 

 

 そして、私は全てを投げ捨てて見滝原市へと逃げた。

 

 

 

 

 

 




見て、ユリちゃんがみかづき荘の皆に囲まれて笑ってるよ。
かわいいね。



メルが死んでみかづき荘が解散し鶴乃も疲弊したせいでユリちゃんは誰も頼れなくなってしまいました。
運命が生んだ負の連鎖のせいです。
あ~あ。

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