魔法少女まどか☆マギカ 実績『朝焼けのエンドロール』獲得   作:くろしゅー

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(ようやく最終決戦なので)初投稿です。



Record3 DAY.32 オペレーション・ビヨンドマギア

 

 

 DAY.32 Side SM

 

 

 

 雨が鉄製の体育館の屋根を叩く音を聞きながら、あたしは避難してきているであろう親友を探す。

 

 元々そんなに広くない体育館だ。

 少し探せば、目的の親友はすぐに見つかった。

 

「お、いたいた。まどかー」

「あ、さやかちゃん」

 

 あたしの呼びかけに気づいたまどかがこちらに振り向き、手を振る。

 

「あ、まどかのお母さんも。おはようございます」

「おっす、さやかちゃん。そっちは大丈夫だった?」

「まあ何とか。服がビショビショーって、お母さんは騒いでましたけど」

「それなら結構。ウチはタツヤがもう飽きてきちゃってね。さっきパパが抱っこしてったよ」

 

 まどかの弟君。たしかまだ、2~3歳くらいだったはず。

 それでは、この避難所でジッとしてるのも難しい年頃だろう。

 

(っと、そうだった。まどかに話したいことがあるんだった)

 

 あたしはまどかのほうを見て、アイコンタクトを取る。

 

 まどかも、あたしの顔を見て話があるのは分かったようで、まどかのお母さんに声をかける。

 

「……ねえ、ママ」

「どうした?」

「私もちょっと離れていい? さやかちゃんと話したいことがあるし、それに仁美ちゃんの様子も見に行きたいし」

「分かった。でも、あんま遠く行くなよ。あと、他の人たちの邪魔にならないように」

「分かってるよ」

「すみません、じゃあまどか借りていきます」

「はいよ」

 

 

 

 

 

 

 そうして、あたしたちは体育館の外の廊下に出る。

 

 窓には、先ほどより強く雨が叩きつけられていた。

 

「それでさやかちゃん。どうかしたの?」

 

 まどかの質問に、あたしは窓を見ながら答える。

 

「いやさ……。まどかは今でも魔法少女になりたいって思ってる?」

 

 私の質問にまどかは少し考えた後、何かに気づいたように焦った顔であたしに聞いてくる。

 

「もしかしてさやかちゃん、魔法少女になりたいの!? ダメだよ、魔法少女って……!」

「え? ストップストップ! あたしは大丈夫だから!」

 

 どうやら、あたしがまだ魔法少女になることを悩んで、さっきの質問はその話のきっかけだと勘違いされてしまったらしい。

 

「あたしはもう魔法少女への未練はないよ。そりゃあ、願いが何でも叶うってのは魅力的だけどさ。凜センパイの話聞いた後だと、なりたいとは思わないって。それに、その凜センパイとも約束したしね。魔法少女の契約はしないって」

「それじゃあ、どうして?」

「単純にまどかの気持ちが知りたかったんだよ。ほら、まどかって結構魔法少女になること躊躇わないっていうか。この前、凜センパイの先輩の人に助けてもらった時だって、あの人来てなかったら契約してたでしょ」

「あれは……、そうでもしないとさやかちゃんを守れないと思って……」

 

 あの時は本当にギリギリだった。助けが来なかったら、きっとまどかはあのまま魔法少女になっていただろう。

 

 あたしには魔法少女になるな、なんて言うクセに、まどか自身は誰かのために契約することに何の躊躇いもない。

 そして、きっとそれで魔法少女になったとしても、彼女は魔法少女になったことを後悔しないだろう、絶対に。

 

 まどかの親友として、そんな確信があった。こんな確信したくないけど。

 

「まどかってさ、誰かのためって契約することに何の躊躇もなさそうだからさ。今でも契約する意志があるんじゃないかって心配になったんだ。ほら、あたし凜センパイに頼まれてるからさ。まどかが魔法少女にならないよう、見張っててほしいって」

「見張るって……」

 

 苦笑いを浮かべるまどかだが、あたしとしては割と本気の言葉だ。

 

「それくらいしないと、まどかは本当に契約しちゃいそうなんだよ」

「さやかちゃんは、私に契約してほしくない?」

「当然でしょ。親友が命がけの戦いをしなくちゃいけないって知って、それを止めないヤツなんていないよ。それに……」

「それに?」

「まどかが契約したら、ほむらが悲しむじゃん。最初会ったときは、無愛想な転校生だなって思ったけどさ。凜センパイやまばゆセンパイと話してるアイツ見たら、案外中身はあたしたちと変わらないんだなって思えたし。そんなヤツがまどかのために何回も時間をやり直しているなら、悪いヤツには思えなくてさ」

 

 ほむらと最初に話した時は、なんだコイツって思った。とても凜センパイが言ってたようなヤツには思えなかった。

 

 けど、まどかのことを助けたことは何度もあるし、まどかのためにやり直してるってのは説得力があった。

 それに、まどかのために何でもするって言ってた割に、他の人を蔑ろにする選択をしなかった。

 

 そんな姿を見てたら、無愛想なんじゃなくて不器用なんだって思えた。不器用に真っ直ぐ生きてるだけ。

 

 その不器用さに、私は少し共感した。

 

「だからさ、ほむらにも報われてほしいなって。仲良くなれた、とはまだ言えないけどさ。1ヶ月近く同じクラスメイトだったんだから、できることはしてあげたいじゃん?」

「さやかちゃん……」

「それで? どうなのよ、まどか」

 

 あたしの質問に、まどかは微笑んで答える。

 

「正直に言うと、魔法少女の契約をするつもりはまだあるよ、私」

 

 迷いない答えに、きっと答えは最初から決まっていたのだろう。

 

「ワルプルギスの夜がここを襲って、たくさんの人が危ない目に遭うって分かったら、私はきっと契約する。私にはその力があるって、キュゥべえにも何度も言われたから」

 

 まどかの意志は、やっぱり誰かのための願いだ。

 どこまでも優しく、それでいて自分を犠牲にする。

 

 あたしは何とかまどかに考えを改めてほしくて頭をフル回転させる。

 

 そんな中まどかは、でもね、と続けた。

 

「それは最終手段。きっとワルプルギスの夜はほむらちゃんたちが倒してくれるから。ほむらちゃんならきっと、私が魔法少女にならなくてもいいような未来を掴んでくれるはず」

 

 まどかは曇天の空を見ながら言う。

 

「昨日ね、キュゥべえに言われたんだ。私が契約すれば、勝利は確実になるって。でも、私が魔法少女になるとほむらちゃんが悲しむから。だから私、ほむらちゃんの家に行ったんだ」

「ほむらの家に?」

「うん。それでほむらちゃんと直接話して、決めたの。私は、ほむらちゃんを信じるって。ほむらちゃんたちなら、この街もきっと守ってくれる。だから、私はここで待つよ。ほむらちゃんたちが帰ってくるのを」

「そっか……」

 

 

 それだけまどかに信頼されるほむらに嫉妬心がないわけではないが、向こうは命がけの戦いをするのだ。

 それくらいは、親友として譲ってもいいかもしれない。

 

 

(全く……。まどかの信頼裏切ったら承知しないからな、ほむら)

 

 

 

 あたしがそんなことを思っていると、階段下から声が聞こえてくる。

 

 

「おーーい! 誰か、支給品の物資運ぶの手伝ってくれー!」

 

 

 どうやら、毛布や段ボールなど、避難者へ配る支給品の搬入に人手が足りていないようだった。

 

 

「……んじゃあ、あたしたちはあたしたちにできることをしますか」

「だね」

 

 

 まどかと顔を見合わせ、笑顔で頷く。

 

 

「はいはーい! あたしたち、手伝いまーす!」

「私たちこの学校の生徒だから、場所とか分かりますよ」

「本当か? それなら頼むよ」

 

 

 

 誰かを救う、ヒーローのような魔法少女にはなれなかった。

 

 恭介の腕も、あたし1人じゃどうにもできなかった。

 

 

 

 けど、あたしたちにはまだ未来がある。

 ほむらたちが必死に守ろうとしてくれている未来が。

 

 

 

 それなら、あたしたちは今できることをしよう。誰かのために少しだけ優しくなろう。

 

 

 

 それがきっと、魔法少女(かのじょ)たちの救いにもなるはずだから。

 

 

 

 

「こっちー! 誰か手伝ってくれませんかー!」

「はーい! 今いきまーす!」

 

「えーん! ああああああん!」

「ボク、どうしたの?」

 

 

「ねえ、ちょっと教えてほしいんだケド……」

「はい、なんですか?」

 

 

「この備品ってどこにあるか知ってる?」

「ええと、それは……」

 

 

 

 

 

 まどか、あんた気づいてる?

 

 いっつも、私は何も出来ないって言ってるけどさ。

 

 

「ありがとうね。助かったわ」

「いえいえ、気にしないでください」

 

「ありがと、おねえちゃん!」

「はい、どういたしまして」

 

「サンキュー」

「お役に立てたみたいで良かったです」

 

「教えてくれてありがとうね」

「いえ、私にできることなんてこれくらいですから……」

 

 

 

 

 あんたの優しさは、今のままでも沢山の人を救ってるし、笑顔にしてるよ。

 

 

 

 

 ほむらだって、きっとその内の1人だよ。

 

 

 

 

 

 だからさ。

 

 

 

 

「自信持ちな。あんたは、立派に人の役に立ってるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 DAY.32 Side MA

 

 

 

 

「オペレーション・ビヨンドマギア! 開始!」

 

 

 私の声と共に、世界の時間が止まる。

 

 

 

 それと同時に暁美さんは、予め設置しておいた地対空ミサイル、対戦車誘導弾の発射装置を魔法で起動する。

 

 

 発射装置から放たれた幾本のミサイルは、宙へと飛び出した瞬間に停止する。

 

 

 全発発射されたこと、進行角度が問題ないことを確認した私は暁美さんへ合図を送る。

 

 

 

 すると、世界にかけられていた魔法は解け、雨粒が再び私の体をたたき出す。

 

 

 

 

 数瞬の後、閃光が辺りを照らし、衝撃と爆発音という開戦のゴングが鳴った。

 

 

 

 

 

 私はすぐに効果のほどを確認する。

 

「……全弾命中! ワルプルギスの夜は爆発により後退! けど、目視によるダメージは確認できません!」

『想定通りよ! 次!』

 

 暁美さんは臆することなく、そう返してきます。

 

「了解です! 皆さん、ワルプルギスの夜のポイントアルファまでの誘導、お願いします!」

 

 トランシーバーで呼びかけ、私も移動を開始します。

 

「じゃあすみません旭さん! 少しの間、一人でお願いします!」

「心配は無用であります。まばゆ殿こそ、ご武運を」

「はい!」

 

 

 旭さんに見送られ、私は事前に決めたポイントまで走ります。

 

 

 私が走り出したと同時。

 凄まじいマズルフラッシュと炸裂音が響き出します。どうやら、後衛チームが攻撃を始めたようです。

 

 

 巴さん、旭さん、土岐さんの三人による弾幕が、嵐をかき分け、ワルプルギスの夜に殺到します。

 

 

 その隙に、ワルプルギスの夜に近づく4つの影。

 

 

(前衛チームの皆さん、どうかお気を付けて!)

 

 

 

 七海さんの生みだした槍による足場で、ワルプルギスの夜のいる上空に到達した4人は交戦を開始。

 

 

 七海さんは後衛チームにも劣らないくらいの槍の弾幕による斉射を。

 

 鶴乃さんは彼女の性格を表したかのような、豪快で派手な炎の円舞を。

 

 時女さんは真っ直ぐで苛烈な炎の剣技を。

 

 フェリシアさんは彼女の猪突猛進を体現するようなハンマーの一撃を。

 

 

 ワルプルギスの夜はそれらの攻撃を受け、進路を変えます。

 

 その位置こそ、私たちの狙うポイント。

 

 

「暁美さん! 着きました!」

『こっちも着いた! いくわよ!』

 

 その言葉と同時に、再び世界の時間が止まる。

 

 時間停止を確認した私は、すぐさま目の前にある迫撃砲を発射します。

 

 1つを発射したら、すぐに隣のやつを。

 そうしていくつもの迫撃砲を撃ち出し、最後の1個を撃ったところで暁美さんにテレパシー。

 

『全弾撃ち終わりました!』

『私もこれで、最後! 解除するわよ!』

 

 時間が流れ出し、撃ち出された迫撃砲の弾は空へと昇っていきます。

 

『前衛チーム、下がってください! 空爆開始します!』

 

 

 トランシーバーの指示に、前衛チームは撤退を開始。

 遊撃チームが使い魔を倒してくれたおかげで全員が危険域をすぐさま離脱。

 

「弾着まで、6、5、4、3、……弾着、いま!」

 

 私と暁美さんで、ワルプルギスの夜を挟み込むように放った迫撃砲は、山なりの弾道を描いてワルプルギスの夜へと降り注ぎます。

 

 

 ボンッ、とほぼ同時に命中した迫撃砲に、ワルプルギスの夜は高度を下げます。

 

「よし!」

 

 私はガッツポーズを作りながら、トランシーバーで指示を出します。

 

「次はポイントベータです! お願いします!」

 

 私はトランシーバーを仕舞い、次の目標地点に走ります。

 

 

「ハア、ハア、くぅ~! いくら停止した時間を動けるのは私だけとはいえ、こんなに動くことになるなんて……! 凜さんが鍛えてくれなかったら、もうバテてましたよ、これ!」

 

 と言いつつ、既に息が上がってきた私。

 

 

 

 そんな私とは対照的に、前衛チームの皆さんは曲芸のような軌道で、ワルプルギスの夜を翻弄しています。

 

 そんな彼女たちに引きつけられ、ワルプルギスの夜は甲高い笑い声を上げながらフラフラと誘導されていきます。

 

 

 

(ここからは私発案の作戦……! 上手くいってくださいよ……!)

 

 

 

 

 

 

 DAY.29 Side MA

 

 

 

「うーん……。これまでのほむらの作戦見直してみたけど、やっぱり火力が足りてない気がするよねー……」

「我も同意見であります。とはいえ、これ以上となると持ってこられるのは対戦車誘導弾や地対空ミサイルくらい。戦車などは固定砲台にしかならないでありましょうからな……」

 

 それは皆さんと作戦を立てていたときのこと。

 ワルプルギスの夜にぶつける火力が足りないのでは?という話になったのです。

 

 だから、私はひっそりと頭の隅で考えていた作戦を提案することにしました。

 

「あの! そのことなんですけど……!」

「まばゆ? なんか良い案あるの?」

「その、これだけ人数いて、潜入に持ってこいの二葉さんがいるならちょっと試してみたい作戦があって……」

 

 私はちょうど借りてきた映画のDVDを取り出して、皆さんに見せました。

 

「まばゆ、それは?」

「作戦の指南書です」

「……映画のDVD?」

「ええ。こういうときは、化け物退治の先人たちの知恵をお借りしようと思いまして……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 DAY.32 Side MA

 

 

 

「どっかーーーん!!」

 

 

 フェリシアさんの雄叫びと共に、ハンマーがワルプルギスの夜に直撃。

 ワルプルギスの夜は、そのまま後ろのポイントベータに飛んでいき……。

 

「凜さん! 今です!」

『りょーかい!』

 

 

 

 ワルプルギスの夜は送電線へとぶつかりました。

 

 

 瞬間、ワルプルギスの夜の体の至る所で生じるスパーク。

 バチバチ、と激しい音と稲妻がいくつも走ります。

 

 

(ふっふっふ。怪物退治に高圧電流は定番! 今までは潜入の手間や操作の人手が足りなかったので出来ませんでしたが、今なら……!)

 

 変電所で待機していた凜さんが、電線に流れる電流を極限まで引き上げてくれましたから、凄まじい電流がワルプルギスの夜に流れてるはずです。

 

 

 

 とはいえ、ワルプルギスの夜もただやられるばかりではありません。

 

 口から火を吐き、送電線を焼き切っていきます。

 鉄塔も熱で溶け、グニャリと曲がってしまいます。

 

 

 

 

 

 が、これも想定内。

 

 もし鉄塔や電線を切られたら……。

 

 

 

 時が止まり、暁美さんが盾から取り出したRPGやバズーカ砲、対戦車誘導弾の余りを撃ちまくります。

 

 

 再び時が動き出せば、それら無数の弾頭がワルプルギスの夜に直撃。

 

 高圧電流の影響で痺れが残っているワルプルギスの夜にこれを回避する力は無く、砲弾の雨あられをモロに食らいます。

 

 

 いくつもの衝撃と爆発で、どんどん後ろへと下がっていくワルプルギスの夜。

 

 

(そして、その先がポイントガンマ! あとは……!)

 

 

 

「皆さん、今です! ワルプルギスの夜を地上に墜としてください! 佐倉さん、広江さん! 地面に落ちたワルプルギスの夜の拘束を!」

『合点承知!』

 

 広江さんの返事を皮切りに、皆さんの攻撃が始まる。

 

(私も早く目標地点に着かないと! ワルプルギスの夜が墜ちる前に!)

 

 

 

 

 

 風を起こし、ビルの瓦礫を砲弾のように飛ばすワルプルギスの夜。

 

「甘いわね!」

 

 それに対し、時女さんは真正面から突っ込んでいきます。

 

「時女一心流! 懐隠しの四肢落とし!」

 

 瓦礫を次々と斬り、それを足場に上空へと昇る時女さん。

 

「静香ちゃーん! アレ、やろう!」

「由比さん! ええ、承知よ!」

 

 同じく瓦礫を経由してきた鶴乃さんは、そのまま時女さんに飛び込んでいきます。

 

 そして、それを七支刀で受け止める時女さん。

 

「飛ばすわよ! 旋風鎌鼬!!」

 

 時女さんの振るった刀に乗り、鶴乃さんは勢いよく飛び出します。

 

「おりゃーー! 炎扇斬舞!!」

 

 

 そうして叩き込んだ一撃に、ワルプルギスの夜の姿勢が傾きました。

 

 

 

「あとちょい! おい、フェリシア! 手ェ貸せ!」

「赤いねーちゃん! おうよ!」

 

 佐倉さんとフェリシアさんはお互いの手を合わせます。

 

「「コネクト!!」」

 

 しかし、ワルプルギスの夜が2人のほうを向きます。

 

 行動させまいと炎を放とうとするワルプルギスの夜。

 

 

「させるもんですか! ティロ・フィナーレ!」

 

 

 その声と共に、嵐の中を貫き、砲弾が命中しました。

 

「マミのヤツ、余計なマネを……! けど、利用させてもらうよ! はあっ!」

 

 佐倉さんは鎖つきのハンマーを振り回し、ワルプルギスの夜の上部へと当てます。

 

 それを食らい、完全に姿勢が崩れて横向きになったワルプルギスの夜。

 

 

「いまだぁーーー!! かませええええ!!」

 

 

 佐倉さんの叫びと同時に、ワルプルギスの夜の真上に巨大な魔方陣が発生。そこから、大量の槍が生成されます。

 

 

「ええ、任されたわ!」

 

 

 その中心にいるのは、七海さん。

 

 

「これで……! いけ!!」

 

 もはや戦略兵器と疑うような、凄まじい量の槍がワルプルギスの夜へと向かっていきます。

 

 

 機関銃数門からの一斉射でも食らっているような音を立て、ワルプルギスの夜はポイントガンマ、見滝原駅近くの線路上へと落下しました。

 

 

 

 

 

 私のほうも、電車の扉をこじ開けてなんとか目標地点に到着。

 

『まばゆ! いける!?』

「な、なんとか!」

 

 トランシーバーから聞こえる暁美さんの声に、半ばヤケクソ気味に答えて機械を魔法で操作。

 

 私を乗せた電車が走りだす。

 

 

 

 

「さあ、神妙にお縄につけーーー!!」

 

 広江さんが飛ばした十手は、まるで意思を持っているかのようにワルプルギスの夜の周りを飛び回り、縄でワルプルギスの夜を捕縛します。

 そこへ重ねがけるように、佐倉さんが鎖の結界を作り、更にワルプルギスの夜を拘束します。

 

 

『暁美殿、まばゆ殿。ワルプルギスの夜の拘束を確認。今のうちであります』

『了解。他の人はすぐに離れて!』

 

 暁美さんがトランシーバーで指示を出したのを確認し、私は電車の速度を上げる。

 

 

『暁美殿。全員退避完了であります』

『よし。まばゆ、タイミング合わせて突っ込むわよ!』

「了解です!」

 

 私が開きっぱなしのドアから顔を出し、望遠の魔法で対面の線路を見れば……。

 

(見えた! 暁美さんの電車!)

 

 

 と、ここで時間停止。

 全てが止まる中、私たちを乗せた電車だけが線路を突き進んでいく。

 

 

 その先に待つ、線路の上で拘束されたワルプルギスの夜という駅目掛けて。

 

 

 反撃されないよう、十分近づいたところで時間停止を解除。

 

『今よ!』

「と、とりゃー!」

 

 そして、ワルプルギスの夜にぶつかる前に私たちは電車から飛び降りる。

 

 そして、事前に確認していた草むらへダイブ……。

 

 

 

 するつもりだったのですが……。

 

 

(と、届かない! ちょっとタイミング早すぎました!)

 

 

 草むら手前のコンクリートが眼前に迫ります。

 

「っ!」

 

 私は咄嗟に腕で顔を覆います。

 

 直後、柔らかい衝撃が横から私を襲い、ズザァッ!という音がしました。

 

 

「……っ? り、凜さん!」

「大丈夫? まばゆ」

 

 目を開ければ、目の前には凜さんの顔。

 

 自分の体を見てみれば、凜さんに抱きかかえられる形になっていました。

 

「間一髪。上手くいったね」

 

 凜さんが顔を向けたほうを見れば、ちょうど挟み込んだ二つの電車がワルプルギスの夜に衝突するところでした。

 

 

 爆薬を満載した、電車が。

 

 

 

 

 

 ドォォォン!!

 

 

 

 凄まじい音が響き渡り、辺りを熱風が駆け抜けます。

 

 爆発は後方車両の爆発を誘発し、ワルプルギスの夜に食らいつく鉄の塊は次々に爆炎でワルプルギスの夜を覆っていきました。

 

 

 

 

 

「よし! 全ヒット!」

 

 私は思わずガッツポーズをします。

 ここまでが自分の立てた作戦でしたが、無事に上手くいったようです。

 

 もちろんこれで倒せるとは思っていませんが、それでも自分立案の作戦が上手くいったことに喜びがこみ上げてきます。

 

(ロケットに乗せて宇宙に追放する、とかできたらより良かったですけどねー……。まあでも、これで今までよりダメージは稼げたはず!)

 

 私がそんなことを思っていると、私を抱きかかえたままの凜さんに声をかけられます。

 

「さすがだね、まばゆ」

「あ、凜さん。上に乗ったままですみません……。庇ってくれてありがとうございました」

「いいよ、気にしなくて。大したケガもしてないから」

 

 嘘です。

 あの状態の私を助けるにはスライディングするしかなかったはず。こんな瓦礫の散ったコンクリートの地面でスライディングすれば、足がどうなるかくらい私でも想像できます。

 

「ありがとうございます、凜さん」

 

 それでも凜さんは、足の傷を私に見せないように治しています。それなら、私もそれ以上は言及はしません。謝られるより感謝のほうが、凜さんは喜びますから。

 

 

(あとでちゃんとお礼しないと、ですね……)

 

 

 

 

 私がそう考えると、黒煙に包まれていたワルプルギスの夜が、風で自身を包んでいた煙を吹き飛ばします。

 

 

『オイ! ワルプルギスの夜、動き出したぞ!?』

 

 フェリシアさんから焦った声が聞こえてきますが、私は冷静に答えます。

 

「大丈夫です。恐らく暁美さんがもう……」

 

 私の台詞が終わるより早く、川の方で水しぶきが上がります。

 

 

 作戦通りなら、暁美さんは電車から脱出するときに川に飛び込んだはず。そして、この川には……。

 

 

「まだまだ!」

 

 

 暁美さんのその声とともに川から顔を出したのは、対艦ミサイルの発射装置たち。(旭さん曰く、88式地対艦誘導弾とトマホーク搭載の装甲ボックスランチャー?らしいです)

 

 ワルプルギスの夜は、未だ電車爆弾のダメージを引きずっているのか動きはゆったりとしており、当てるチャンスは今しかありません。

 

「暁美さん!」

「ええ!!」

 

 その声と共に、無数の対艦ミサイルが発射されます。

 

 それらは正確にワルプルギスの夜を捉え、ヤツを一気に後方へとぶっ飛ばしていきます。

 

 

(いけ……! いけ、いけ!)

 

 旭さんの助言を信じるなら、私たちが用意できた兵器の中で一番推進力を生み出せるのはこの兵器たち。

 

 爆発させるのではなく、暁美さんの魔法で時間を止め、その推進力でワルプルギスの夜を動かす。

 

 

 

 ここの角度から押していけば、ワルプルギスの夜が突っ込むのは最後のポイント、ポイントオメガ。

 

 

 そこにあるのは、ガスタンクのある工業地帯。

 さらには回収した地雷、C4、果ては空爆用の千ポンド爆弾などの爆薬の数々、そして二葉さんと暁美さんが夜なべして作った自作爆弾などなど……。

 

 とにかく爆発の威力を増すもの全てをそこに集結させました。

 

 

 

 そして、対艦ミサイルの推進力に為す術ないワルプルギスの夜は、そのままポイントオメガに突っ込み……。

 

 

「っ!」

 

 

 暁美さんは手に持ったリモコンのボタンを押しました。

 

 

 

 

 刹那、オレンジ色の閃光が辺りを照らしました。

 街も、空を覆う雲も、雨粒も、水溜まりも。

 

 美しいとさえ感じるほどの巨大な橙の光は一瞬にして消え去り、代わりに立ち上る黒煙。

 

 ワンテンポ遅れて、轟音が私たちを飲み込む。

 

 

 さすがに魔法少女の体でも鼓膜が破れそうで怖かったので、耳を塞ぎました。

 

 熱波を浴びながら爆心地に目を向ければ、ポイントオメガは消滅といった言葉が似合うほど、完全に吹き飛んでいました。

 

 

 

 

 

 

「皆さん、無事ですか? ケガしてる人はいますか?」

 

 火の粉が舞う中、私は立ち上がり、トランシーバーで全員に尋ねる。

 

『こちら後衛チーム。全員無事よ、愛生さん』

『こちら前衛チーム。こっちも皆無事』

『こちら遊撃チーム。私と杏子ちゃんは無事。凜ちゃんとほむらちゃんは?』

「私もほむらも無事。ってことは、全員無事だね」

 

 凜さんがそう言います。

 

 とりあえず、ここまでは全員が大したダメージを負わずに来れましたね。

 

 

 

 暁美さんの時間停止を駆使したフェーズ1はここまで。

 

 これで終わってくれればいいんですけど……。

 

 

 

『スッゲー爆発だったな! これ、もう勝っちまったんじゃねーか?』

『フェリシアちゃん、それはフラグだよぅ……』

 

 

 広江さんのツッコミが入った直後でした。

 

 

 黒煙から何か飛んできたと思った次の瞬間、暁美さんが後ろへ飛ばされました。

 

「くぅっ!?」

「暁美さん!」

「ほむら!」

 

 暁美さんを吹き飛ばした触手のようなものは、数体の使い魔へと姿を変え、私たちに襲いかかってきます。

 

「このっ……!」

「ええい! 邪魔です!」

 

 私はすぐさまハサミを構え、凜さんと一緒に使い魔たちを一掃します。

 

「凜さんは暁美さんを!」

「ごめん、任せる!」

 

 凜さんは急いで暁美さんに駆け寄ります。

 

 幸い、頭を掠めただけなようで、暁美さんはすぐに起き上がりました。

 額から血を一筋流しながら、暁美さんは呟きました。

 

「……まあ、さすがにそんな簡単じゃないわよね」

 

 

 

 暁美さんの目が映すのは、先ほどの大爆発の爆心地。

 

 

 

 

 

 そこには、未だ五体満足なワルプルギスの夜が、宙へと浮いていました。

 

 

 

 

 

 

「まばゆ。次に行くわよ」

「ですね……」

 

 

 私はトランシーバーで全員に呼びかけます。

 

 

「皆さん! オペレーション・ビヨンドマギア、フェーズ2に移行です!」

 

 

 

 ワルプルギスの夜の笑い声が響く中、私は手に持ったハサミを握り直した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




26日はまどドラの生放送ですね。
scene0についてみたいですし、まばゆちゃんも実装です。嬉しすぎて涙が、で、出ますよ……!

皆も生放送、見よう!(提案)
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