魔法少女まどか☆マギカ 実績『朝焼けのエンドロール』獲得 作:くろしゅー
(廻天の公開時期がようやく判明したので)初投稿です。
DAY.76~DAY.81 後書きはガラスの靴の音とともに
DAY.76 Side RY
「ん……。んぅ……?」
私が目を開けると、暖かい陽射しの光が飛び込んでくる。
ぼんやりとする頭で辺りを見回せば、学校の教室だった。
居眠りをしていたらしい。
「んー……!」
凝り固まった背筋をほぐすため、腕を伸ばす。
そうすれば、前に伸ばした腕に通された、制服の黒地の生地が目に入る。
(あー、そっか……)
その制服を見て、私はこれが夢だと理解する。
私が通う見滝原中学校は黒地の生地なんて使われていない。
このボレロのようなブレザーのデザインは、地元である神浜市の大東区にある学校、大東学院のものだ。メルが通っていた学校の制服だからよく覚えている。
そしてこの夢ということは……。
「凜ちゃん」
私の名前を呼ぶ声に、私はその声の主のほうへ首を向ける。
そこにいるのは、私の記憶にはいない一人の少女。
私と同じ大東学院の制服に身を包んだ彼女は、私を覗き込むように前傾姿勢でこちらを見ていた。
「あ、――ちゃん」
彼女を見れば、私はこれが夢だということを忘れ、友達のように彼女の名前を呼ぶ。
けれど、彼女の名前は分からない。きちんと発音できているハズなのに、頭の中に残らないのだ。
一方、私に呼ばれた少女は嬉しそうに笑い、私の制服の袖を引く。
「もうお昼休みになっちゃったよ? お昼ご飯、一緒に食べる約束だったでしょ?」
「え、もう? ごめんごめん、ちょっとうたた寝が気持ち良くて……」
「もう~。ほら、早く屋上いこうよ。お昼休み終わっちゃう」
「焦んなくても、まだ全然時間あるよ」
私も笑って、彼女につられて立ち上がる。
私と彼女は、屋上で並んでお昼を食べる。
「はい、これあげる」
私は自分のお弁当の具を、彼女へと渡す。
「いいの?」
「全然。むしろ、――ちゃんのために多く作ってきてる節あるから、食べてもらわないと残っちゃうよ」
「……ありがとう、凜ちゃん」
花が咲くように笑う彼女を見て、私も心が温かくなる。
このやり取りも、今日が初めてじゃない。
しばらく前、彼女のお弁当の量が明らかに少ないので、私のおかずを分けてあげたのだ。
それから私は、予め彼女の分のおかずも作るようになった。
(あのお弁当、親は何とも思ってないの? それとも、親はそれにすら興味ないのかな)
彼女の家庭事情を詮索しかけて、止める。
私が口を出すことではないかもしれないし、それに触れられることを彼女は嫌がりそうな気配があったから。
「いつも分けてもらってごめんね」
彼女は申し訳なさそうに言う。
「謝ることじゃないよ。ウチの保護者はお金だけはたくさんくれるから。それなら、お昼をいっぱい食べて嬉しそうなあなたの顔を見るのに使いたいの」
隣で彼女が笑ってくれるのなら、それは私も本望だ。
それに保護者の叔母さん夫婦は、私とは疎遠だから何にお金を使っててもバレないだろう。
(……? あれ、そうだっけ)
まあいいか。
そうだ、彼女に話したいことがあったんだ。
「そうだ。これ、見て見て」
「なに?」
「じゃーん!」
「あ、これ、この前雑誌でオススメされてたコスメ! 買ったの?」
「うん。どんなものか、二人で試してみたくてさ。ちょっと奮発して買っちゃった」
私はバッグから取り出したコスメに、彼女は目を輝かせる。
「――ちゃん、この前これを欲しそうに見てたからさ。私も興味あったから買ってみたんだ」
「ありがとう、凜ちゃん!」
彼女が抱きついてくる。
彼女の喜ぶ顔に、私も嬉しくなる。
「私が――ちゃんのメイクしてあげる。これでも、先輩に色々教わったんだから」
(……あれ? 先輩って、誰だっけ……)
引っかかった僅かな違和感。
けれど、私の疑問は会話の流れに消えていく。
「ホントに!? じゃあお願い!」
「うん。じゃあ、じっとしててね」
そうして私は、彼女に化粧をする。
「やっぱり……。チョー綺麗になったよ」
私は彼女の顔を見て言う。
「み――」
ピピッ、ピピッ、ピピッ。
「……ぅえ? あさ……?」
視界が場面を切り替えるように暗転して、私は目を覚ます。
私は目をこすりながら上半身を起こすと、モーニングコールを続ける目覚まし時計を止める。
「朝、だね……」
辺りを見渡し、自分の部屋であることを認識すると、自然とため息が漏れた。
「はぁぁぁ、変な夢……」
支度を済ませ、いつも通りの通学路を歩く。
同じ制服の生徒が道に増えていく中、私は見知った髪色を見つける。
私はそっと近づき、勢いよく彼女へと抱きついた。
「おっはよう! まばゆ!」
「うひゃああ! って、もう! 何するんですか凜さん!」
「うーん、いつも通りのいいリアクション、ありがとうまばゆ」
この毎度良い反応をしてくれるのが私の友達、愛生まばゆ。
道が途中から一緒なので、大体いつも通学は一緒だった。
「全く……。なんか、最初の凜さんのイメージからどんどんかけ離れていっている気がします……」
「いやー、照れるなー」
「いや、褒めてないんですけど」
「えっ……。それじゃ、まばゆは今の私、嫌い……?」
「そ、そうは言ってないですよ! えと、今のは……」
「うん知ってる。いやー、まばゆが私のこと好きすぎて困っちゃうなー」
「私の焦り、返してもらえます?」
「残念ながらクーリングオフは受け付けておりません」
いつも通りのバカみたいな会話。
でも、これはとても奇跡の上に成り立っている、かけがえのない日常なのだ。
1ヶ月と少し前。私たちは見滝原に襲来したワルプルギスの夜と戦った。
多くの人の力を借りて、ギリギリの勝利を掴んだ。
見滝原も決して小さくない被害を受けたが、幸いにして避難所となっていた学校方面のエリアは無事だったため、今もこうして学校に通えている。
あの厄災の爪跡は残っているものの、私たちには日常が戻り始めていた。
「そういえば今日でしたよね。放課後、ショッピングモールに遊びに行くの」
まばゆの確認に、私は頷く。
「うん。新作のコスメとかも見たくて。まばゆも付き合ってくれる?」
「いいですけど……。私、そういうのには疎くて。あんまり役に立たないかもですよ」
「大丈夫! 一緒にいてくれるだけで楽しいし。なんなら、まばゆに似合いそうなの選んであげよっか?」
「い、いいですよ! 私、化粧とかしても大して変わりませんって」
「そんなことないよ。まばゆ、元が可愛いからそれに合うようなのにすれば、チョー綺麗になるって」
――チョー綺麗になったよ、――ちゃん。
(……?)
「ど、どうしました?」
私が一瞬止まったから、まばゆは心配そうに顔を覗き込んでくる。
「あ、ううん! まばゆの化粧した姿想像しただけ! 綺麗だろうなーって」
「もう、からかわないでください!」
咄嗟に笑って誤魔化したけど、まばゆには気づかれなかったようだ。
私は最近、夢を見る。
知らない女の子と一緒に、大東学院に通っている夢。
夢の中で私はその女の子と仲が良い。
けれど肝心の夢の内容は、目が覚めるといつも忘れてしまう。辛うじて覚えているのは、その女の子と仲が良いことだけ。
特に名前は、どれだけ必死に思い出そうとしても思い出せない。
夢ではあれだけ自然と名前を言えるのに。まるで誰かに、彼女の名前だけ規制されているようだった。
しかし、夢を見ると全て思い出す。過去の夢の記憶も、全て。
夢を見ているときとそうでないときで、まるで別の世界線で暮らしているようだった。
記憶を維持できないから、私は夢についてほとんど分かっていなかった。
なぜ、そんな夢を見るのか。あの少女は誰なのか。
全てが分からない状況では、誰かに話す気はおきなかった。
皆に心配はかけたくなかったし、なんとなく、彼女のことは私だけの秘密にしておきたい、という気持ちもあった。
とにかく、彼女については何も分かっていない。
けれど、手がかりが全くないわけじゃない。
(彼女、私は知っているような気がする……)
なんでそう思うのかは分からない。
けれど、何かで知っている気がするのだ。
それに……。
(悪い子じゃ、ない気がするんだよね)
なんだか彼女とは仲良くなれそうな気がするのだ。
夢で仲が良いから、そのイメージに引っ張られてるだけかもしれないが。
そこから退屈な授業を終え、私たちはショッピングモールに遊びに来ていた。
「よーし! 遊ぶぞー!」
そんな宣言をした私に、一緒にいた巴さんは質問してくる。
「ねえ夕凪さん。その、私も来てよかったの? 今日はまばゆさんと遊ぶはずだったのに……」
「いーのいーの。遊ぶなら人が多いほうが楽しいし。それに二人だって同じクラスだから、気まずくもないでしょ」
「そ、そうですよ。正直、今回はマミさんがいてくれたほうが助かると言いますか、まあそんな感じなので。私も、大歓迎です」
「それなら、お言葉に甘えさせてもらおうかしら?」
それから、私たちはショッピングモールで遊んだ。
約束していたようにコスメを見て、まばゆにはこれが合いそうと巴さんと二人で色々試した。まばゆは少し面倒くさそうにしてたけど、せっかく可愛いんだから試さないのはもったいないと思う。
ゲーセンではクレーンゲームを皆でやった。
ももこ先輩のとこのレナちゃんみたいに上手くはできなかったけど、1500円の格闘の末にモカウサギのぬいぐるみ1つはゲットできた。
レンタルビデオショップでは、まばゆの語りが止まらなかった。
目についた映画や私の質問にスラスラと答えるまばゆの姿は、美術館で解説をする学芸員のようであった。
その日々は、私が願ってはいけないと諦めていた、青春の日々そのもので。
私は間違いなく幸せだった。
なのに、なんでだろう。
(なにか、忘れているような……?)
もしかしたら気のせいかもしれない。
この幸せを未だに受け入れがたい、私の心が生みだした妄想かもしれない。
けれど、何か忘れている気がした。
(私、まだ……。まだ何か、やらなきゃいけないことが、あった気が……)
DAY.78 Side RY
「――ちゃん! 魔女、そっちいった!」
「分かった!」
魔女結界内。
私が追い詰めていた魔女は、たまらず――ちゃんのほうへと逃げ出した。
私より――ちゃんのほうが、まだ勝機があると思ったのだろう。
しかし、それは甘い。
――ちゃんは向かってくる魔女に、持っている手鏡を向ける。
すると、手鏡の鏡面が輝き、一筋の光が魔女の身体を穿つ。
魔女はその反撃に怯み、足が止まった。
「隙アリ!」
そんな魔女を、私は後ろから一刀両断した。
「お疲れ、――ちゃん」
「うん。お疲れさま、凜ちゃん」
私は魔女の落としたグリーフシードを拾いながら、――ちゃんに声をかける。
――ちゃんも安心したように笑う。
特に苦戦することもなく魔女を倒せたのは僥倖だった。
魔力の消耗も少なくて済んだ。
私は――ちゃんのソウルジェムにグリーフシードを押し当て、彼女の穢れを吸い取る。
「え? 凜ちゃん、どうして私に? 魔女を倒したのは凜ちゃんだよ?」
「私はそんなに消耗してないから。これは――ちゃんが使って」
「……ありがとう、凜ちゃん」
ふわりと笑う――ちゃんを見て、私も嬉しくなる。
私だって、誰かを守れるんだ。
――ちゃんがいれば、私はそれでいい。
「お礼なんていいよ。その代わり……」
「ずっと、一緒にいてね」
ピピッ、ピピッ、ピピッ。
「……また、この夢」
「おい、凜! そっちいったぞ!」
「任せて!」
杏子ちゃんの声に、私は武器を構えなおす。
突っ込んでくる浮き輪のような魔女の突進を躱し、側面に一撃を入れる。
それにより魔女はバランスを崩し、転がりながら壁にぶつかる。
追撃を仕掛ける私に、魔女はゴムボールのようなものを射出して迎撃を図る。
しかし。
「やらせないわ」
ほむらが私の前に出て、そのボールを盾で弾き飛ばす。
さらに杏子ちゃんが、海面のような結界の地面に鎖の結界で橋を生成する。
「いけ!」
杏子ちゃんの声がする。
私はほむらとすれ違いざまにハイタッチをして、魔力を同調。
「「コネクト!」」
ほむらの魔力を合わせた一撃は確実に魔女を捉え、魔女と結界は消滅した。
「終わったわね」
「悪かったな。手伝ってもらって」
変身を解きながら、杏子ちゃんはそう言う。
「別にいいよ。この魔女、海辺のほうからやって来た魔女なんでしょ? それだけの距離移動してきたヤツなら警戒するのも仕方ないよ」
「意外にあっさり終わったけどね」
私の言葉に、ほむらはそう付け加える。
「それでも、だよ。こういう流れ者の魔女は警戒するに越したものじゃない。死人が出ることだってあるんだから」
メルのときもそうだった。
あの魔女の強さは私の想定を遙かに超えていた。
「だから、頼ってくれて嬉しかったよ」
「……ったく、調子狂うな」
杏子ちゃんはそう言いつつ、足下のグリーフシードを拾う。
そして、そのグリーフシードを私たちに差し出す。
「ほら、今回はアンタらに譲るよ。手伝ってもらっちまったしな」
「別にいいよ。私たち、そんなに消耗してないから。それにここ、杏子ちゃんの縄張りだし、杏子ちゃんが使っていいよ」
(あれ? こんな台詞、私どこかで言ってる……?)
口にした言葉にデジャブを感じる。
私はこんなやり取りをどこかでしている、気がする。
突然止まった私に、杏子ちゃんは怪訝そうな顔をする。
「……? おい、どうした」
「えっ……。あ、ああ、ごめん! なんでもない!」
私は咄嗟に笑って誤魔化す。
(私、いつあの言葉を……)
二人と別れてから、私は先ほど感じたデジャブを思い返す。
ただの気のせいにしては、あまりにリアルだった。
その時の感情が、私のどこかにある気がして。
(私、何か忘れてる……?)
忘れているといったら、私の記憶には1つしかない。
(あの、夢の中で……?)
思い出せないあの子の名前と顔が、脳裏をよぎった。
DAY.81 Side RY
「ねえ凜ちゃん。今日は何して遊ぼうか?」
「今日かー……。ゲーセンとか行く? この前、可愛いぬいぐるみ見つけたんだ。あれ、取ってみたいんだよねー」
「ぬいぐるみ! 行こう行こう!」
今日も今日とて、私は彼女の夢を見る。
私はいつも通り、この世界が夢だということを忘れて彼女と遊ぶ。
「そこそこそこ!」
「いけっ、いけっ! ……あー! またー!?」
「落ちちゃった……」
「くっ……! もう一回!」
「お願い、今度こそ!」
「あっ……」
「やったー! 取れたー!」
「すごーい! すごいよ、凜ちゃん!」
「へへっ。でしょー? はい、これ」
「え、いいの?」
「うん。こういうのは、――ちゃんのほうが似合うよ」
「凜ちゃんも可愛いのに」
「――ちゃんのほうが可愛いよ。なんだかお姫様みたいだし」
「……そっか。じゃあもらうね。ありがと」
彼女が笑う。
その顔を見て、私も笑う。
(ああ……。なんか、楽しいな)
でも、何か忘れてる気がする……。
いや、違う。
今、分かった。
私は思い出したくないんだ。
この夢から醒めたくなくて。
「……凜ちゃん? 凜ちゃーん」
「っ!? あ、ごめん……。なに?」
「なに、じゃないよ。もう電気消していい?って聞いたんだけど」
電気?
気づけば、いつの間にか私の部屋にいて、私と彼女はパジャマ姿になっていた。
「あー……。うん、いいよ。もう寝ようか」
私は部屋の明かりを消し、ベッドと布団の間に体を滑り込ませる。
暗くなった部屋に、カーテンの隙間から差す月明かりが差し込む。
彼女の淡い水色の髪はその光を反射し、まるで宝石のように輝いて見えた。
「ねえ、――ちゃん」
「どうしたの、凜ちゃん?」
なんでだろう。
なんで、彼女を見ていると不安になるんだろう。
その不安を紛らわしたくて、私は言葉を紡ごうとする。
「その、えっと……」
でも、言葉が出てこない。
言葉を間違えば、私はまた失ってしまいそうだったから。
けれどこのまま何も言わなければ、彼女は私の前から消えてしまう。
なぜか、そんな気がする。
それは、イヤだ。
私は彼女の側にいたいのに。
私は彼女に……。
「っ……」
すると、私を見ていた――ちゃんの顔が少し歪む。
どうして、彼女はそんな悲しそうな顔をするんだろう。
「ねえ、――ちゃん。――ちゃんは、私を置いてかないよね?」
私は心が転びそうになるのを堪えるように、彼女に手を置いて縋る。
「私、もうやだよ。失いたくない。私、――ちゃんを失ったら耐えられないよ。だって……」
その時、私の中にあったモヤが消えたような感覚がした。
それと同時に、私の口から形を成した彼女の名前が飛び出した。
「だって、私の側には
ピピッ、ピピッ、ピピッ。
「……」
朝日が目に入る。
「朝、か……」
目を開けると同時に、瞼から雫が一粒零れる。
なんて夢だ。
(なんで私、あんなこと……)
「おはよう、凜ちゃん」
「あ、うん……。おはよう、みことちゃん」
横から聞こえた声に返事しながら、私は上体を起こす。
……?
横から聞こえた声?
「っ!?」
「うわわっ、ビックリしたぁ~」
私はすぐさま横へと振り向くと同時、すぐに動けるような体勢をとる。
そして、声の主の姿を見て。
(……え?)
私は大きく目を見開いた。
「な、なんで……」
「うふふ、驚いた? ドッキリ大成功~、なんてね」
少女は水色の髪を揺らしながら、楽しそうに笑う。
だが、私にそれへと反応する余裕はない。
だって……。
(なんで……)
「みことちゃんが、いるの……?」
目の前の少女は、ずっと私の夢にしかいなかった友達、みことちゃんだったのだから。
DAY.81 Side NT
「皆さん、わざわざ集まっていただきありがとうございます」
「感謝なんていらないヨ。それよりななか。私たちを呼んだワケを聞かせるネ」
私の言葉に美雨さんはそう答える。
美雨さんに続くように、あきらさん、かこさんも頷く。
「うん。ボクたちに至急集まってほしいって、ななかが焦った理由をボクたちも知りたいんだ」
「私も……。なにかあったんですか?」
かこさんの瞳が揺れる。
それも仕方ないだろう。今回、皆さんには緊急の案件として、無理を言って集まってもらったのだ。
「そうですね……。皆さんを不安にさせていることでしょうし、さっそく本題に入りましょう」
まずは確認のために、私は3人へと問いかける。
「皆さん、突然ですが私の魔法は覚えていますか?」
「もちろんだよ。『敵を見極める力』だよね?」
あきらさんの答えに、私は頷く。
「ええ、その通りです。そして、つい先ほど、この魔法が発動しました」
その言葉に、3人全員が動揺する。
「それが発動したってことは、つまり……」
かこさんが言い淀んだのを見て、美雨さんは口を開きます。
「私たちの敵、つまり『飛蝗』関連、ということカ?」
私は美雨さんの言葉を肯定します。
「今回、浮かび上がった名前は2つです」
私は立てた2つの指のうち、1つを折って話を続ける。
「一人の名前は『瀬奈みこと』。かつて私たちと敵対した、更紗帆奈と一緒に行動を共にしていたとされる魔法少女です」
私の言葉に、あきらさんは待ったをかけます。
「待って待って。瀬奈みことは行方不明になったんじゃなかったっけ? 多分、更紗帆奈の反応からして恐らく……」
あきらさんはそこで言葉を区切る。
その先の言葉は、言われなくても全員に伝わった。
あきらさんに続くように、かこさんが質問してくる。
「と、とにかく、どうして今になってその名前が……」
「理由までは分かりません。しかし私の魔法が指し示したということは、恐らくなんらかの方法で生き延びていたのでしょう。そして、再び活動を始めた。これは間違いないと思います」
「となると、もう一つの名前は更紗帆奈カ? アイツも生きてて暗躍を始めた、ってことネ?」
美雨さんの言葉に、私は首を横に振ります。
「いいえ。もう一つの名前は、意外な人物でした。皆さんが覚えているかは分かりませんが、少なくとも面識はある方です」
全員が首を傾げる中、私は彼女の名前を告げた。
「魔法で判明したもう一つの名前。彼女の名前は『夕凪凜』さん。『混沌事件』の際、七海さんたちと共に更紗帆奈を追った一人です」
というわけで、かなりのご希望のお声をいただけたため、アナザーストーリーを書かせていただきます。
相変わらず本編と同じ(下手したらそれ以上に)亀更新ですが、見てくださると幸いです。
廻天の公開日までには終わらしたいですね……。