魔法少女まどか☆マギカ 実績『朝焼けのエンドロール』獲得   作:くろしゅー

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(タコピー見てたので)初投稿です。



DAY.81~DAY.82 交わした約束

 

 

 

 DAY.82 Side RY

 

 

 

 

「はあ……」

 

 電車に揺られながら、私はため息をつく。

 

 目の前には、フワフワと幽霊のように移動するみことちゃんがいた。

 

(夢、じゃないよね……)

 

 今朝目を覚ましたとき、昨日の出来事は夢だったんじゃないか、とも思った。

 けれど私の視界にいるみことちゃんが、あの出来事が現実で、今はその地続きだと証明しているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 DAY.81 Side RY

 

 

 

 昨日、私は現実世界に突然現れた少女を見て、軽くパニック状態になった。

 

「ど、どうしてみことちゃんが……。だって、あなたは……」

「空想、じゃないよ。私は私。ちゃんと自我もある」

 

 私の目の前にいる少女、みことちゃんは自分の意思を示すように、くるりと1回転する。

 魔法少女の服を纏った彼女のスカートが、ふわりと揺れる。

 

「まず凜ちゃんの誤解を1つ解かないとね。私は凜ちゃんの夢の登場人物じゃない。私が凜ちゃんの夢に干渉して、入り込めるようにしてたの。だから、私は凜ちゃんの意思とは独立した人格だよ。まあ、私自身は幽霊みたいなものだけど」

 

 みことちゃんは、笑いながらそう説明する。

 

 驚くこともあるが、みことちゃんの説明ならば合点がいくことはいくつかある。

 私が知らない子の夢を見たことも、その子を友達と思っていたことも、何度も彼女が夢に登場したことも。

 

 

 

 ……いや、1つだけ違うかな。

 私は彼女を知っている気がする。姿だって、今日初めてちゃんと認識したのに……。

 

「うん、知ってるよ。凜ちゃんは」

 

(え、どうして)

 私の思考を遮るように、というより思考の先を行くように、みことちゃんは私の口に出す前の疑問に答える。

 

「どうして考えが分かったか、でしょ? それはねー、私が凜ちゃんの思考と記憶を覗けるから。もちろん全部覗くのは難しいし疲れるから、ずっと見てるわけじゃないよ」

 

 驚いた。

 完全に私の思考が読まれてる。

 

 まあ、テレパシーのように会話できるのは楽かもしれないけど。

 

「驚いた。不快感とかないの? 赤の他人に心を覗かれてるのに」

「それは、まあ……。みことちゃんは友達だから。たとえ夢だけの関係だったとしても」

「……ふーん」

 

 みことちゃんは、ほんの一瞬だけ声が高くなった後、表情をいつもの笑顔に変える。

 

「ま、いいや。それでさっきの言葉の意味だけど、凜ちゃんは私の名前で思い出せない?」

「……えっと」

「あ、まだフルネーム言ってなかったね。じゃあ改めて自己紹介。私の名前は瀬奈みこと。あなたと同じ、魔法少女だよ」

 

 まるでお姫さまがやるようにスカートの裾を掴み、やや仰々しく自己紹介をする。

 

 

 

 私のほうはというと、彼女の名前を頼りに必死に記憶を辿る。

 

 私はどこで、なぜ彼女を知ったんだ。

 

 

 しばらくの間、みことちゃんは私が悩んでいるのを見ていたけど、私が思い出せずにいると……。

 

「ま、すぐに思い出せないなら出せないでいいよ。それなら、私からの宿題として、私のことを頑張って思い出してねー」

 

 と、笑いながら言った。

 

 

 

 

 

 そして切り替えるように、みことちゃんはキラキラした目で私を見る。

 

「私ね、凜ちゃんのこと、ずっと探してたんだよ?」

「私を?」

「うん。あなたと一緒にいれば、何か変わるかもしれないから」

「どうして? 私、あなたに何かしたっけ?」

 

 私は浮かんだ当然の疑問を口にする。

 みことちゃんとは、夢の中を除けば、今日初めて会ったはずだ。

 

 それなのに、みことちゃんからそのような期待と希望を向けられる理由が思いつかなかった。

 

 すると、みことちゃんはイタズラっぽい笑みを浮かべる。

 

「それ言っちゃうと、ほとんど答えになっちゃうかな~。私のこと思い出したら、教えてあげるよ」

 

 うふふ、とみことちゃんは口元に手を当て、からかうように笑う。

 

「だから改めて、しばらくの間よろしくね、凜ちゃん」

 

 そうして笑みを浮かべながら、みことちゃんは私に手を差し出す。

 

「うん、よろしく……」

 

 それに対し、私は何とも煮え切らない感情で返事をしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 DAY.82 Side RY

 

 

 

 

 私は昨日の会話を思い出す。

 

 昨日、現実世界の私の前に姿を現したみことちゃんは、私と一緒に行動すると言った。

 

 

(どうして私なんだろう……)

 

 

 私は彼女に何を求められているのか。それすら、私には分からなかった。

 

 

「凜さん? 大丈夫ですか?」

「え? あ、ああ、ごめん。ちょっとぼーっとしてただけ」

 

 隣から聞こえたまどかちゃんの声に、私は思考を中断する。

 

 今日は午前0時のフォークロアの皆と約束があり、こうして電車で移動している。

 フォークロアの皆は、ワルプルギスの夜との戦いから活動内容を改め、今は魔法少女を救うための方法を模索する活動をしている。魔法少女を魔女化という残酷な運命から解き放つために。

 

 そんな話を聞いて、私も活動を手伝わせてもらうことになった。

 今まで考える余裕もなかった、私のやりたいこと。それがこの活動な気がして、少し無理を言って手伝わさせてもらっている。

 

 そして、同じような子がもう一人。隣にいるまどかちゃんだ。

 彼女は私からフォークロアの話を聞いた瞬間、手伝いたいと言ってきたのだ。

 

 私としては、まどかちゃんには魔法少女に関わらずに生きてほしかったのだが、まどかちゃんは聞かなかった。

 まどかちゃんは、今の私が魔法少女の皆にできる唯一のことだから、と言って。

 

 最終的に、ほむらに凄まじい量の小言を言われながら、私はまどかちゃんの同行を許可したのだった。

 

 

 

 

「心ここにあらず、って感じだね」

 

 まどかちゃんとのやり取りを聞いていたみことちゃんが、可笑しそうに笑う。

 

『当たり前だよ。みことちゃんがいるんだもん。未だにこれが夢か現実か分からなくなりそうになる』

 

 隣にまどかちゃんがいるため、テレパシーでみことちゃんに話しかける。

 

「うふふ、ごめんごめん」

 

 みことちゃんはこれっぽっちも悪いと思っていなさそうな顔で謝ると、私に質問してきた。

 

「ところで凜ちゃん。今日ってどこに行くの?」

『二木市ってとこ。前に里見教授が取材で訪れたことがあるんだって。今彼女たちがどうしているか、改めて取材したいんだって』

 

 私はラビさんから聞いたことを簡単に説明する。

 

『二木の駅でラビさんたちと合流予定だから。二木は大きく分けて二つの街があって、まずは駅のある虎屋町から取材。その後、橋を渡った反対側の竜ヶ崎だって聞いてる』

 

 

 みことちゃんに説明している間に、電車のアナウンスが目的の駅に着いたことを知らせる。

 

「まどかちゃん、降りるよ」

「はい、凜さん」

 

 

 

 改札を抜け、駅の出口から外に出れば、そこには皆が揃っていた。

 

「あ、凜さん、まどかさん。おはようですの」

「おはようございます、夕凪さん、鹿目さん」

 

 最初に私たちに気づいたのは、里見教授の娘の那由多さんとラビさん。

 

 それに続くように、教授とうららちゃんが声をかけてくる。

 

「おはよう、夕凪くん、鹿目くん」

「凜さん、まどかちゃん、おはようなんよ!」

「おはよう、皆」

「おはようございます、皆さん」

 

 私とまどかちゃんも挨拶を返す。

 どうやら私たちが最後だったようだ。

 

 ちなみに旭さんとサーシャさんは、都合がつかなかったようで今回は不参加だ。

 みかげちゃんも、みたまさんがここまでの遠出を許可しなかったので、同じく不参加である。

 

(さすがにみかげちゃんには悪いことしたなー……)

 

 この活動を手伝っている内に、同じく那由多ちゃんを手伝っていたみかげちゃんとも当然仲良くなったのだが。

 

「絶対心配するから、姉ちゃには内緒にしておいて!」

 

 と言われたことがあった。

 訳を聞けば、みかげちゃんはみたまさんに黙って魔法少女の契約をしたらしい。

 

 それを今も隠しているし、みたまさんには心配をかけたくないらしい。

 契約内容は教えてくれなかったが、ここまで思いやりのある子だ。きっと私利私欲の願いではないのだろう。

 

 もちろん、お願いされたからにはバラすつもりなど毛頭なかったのだが……。

 

 

 

「ねえ、凜ちゃん。今の記憶、詳しく説明してもらえるかしら?」

「あっ」

 

 調整のときに記憶を見られるのをすっかり忘れており、思いっ切りみたまさんにバラしてしまったのだ。

 

 後日、駄菓子の詰め合わせ袋を持って土下座に行ったのだが、あれで許してもらえただろうか。

 

「大丈夫だと思うけどな~」

『みことちゃんもそう思う?』

「うん。凜ちゃんの記憶を見た限りだと、本気で怒ってる顔じゃないよ』

 

 すでにみことちゃんとの会話に慣れつつある自分に驚きつつ、私はみことちゃんの言葉を信じることにした。

 

 

 そんなことを考えながら移動していると、那由多ちゃんが里見教授に問いかける。

 

「ところでパパ。今日会う方ですが、どんな方ですの?」

「そうか、まだ言ってなかったね。以前訪れたときに出会った、紅晴結菜という少女だ。彼女は虎屋町の取りまとめ役であり、この二木市の魔法少女のリーダー的な存在でもある。まずは彼女に話を聞いて、今の二木市について状況を知りたいと思って」

 

 里見教授はそこまで話したところで言葉を区切り、私たちのほうを見て苦笑いをする。

 

「まあ、彼女の連絡先は知らないからアポ無しで探すことになるんだけどね」

 

 それを聞いた私たちは全員ずっこける。

 

「知らないんですの!? 私はてっきりどこかで約束をしているのかと……!」

「申し訳ない。取材のためとはいえ、さすがに女子高生に連絡先を聞き出すのは気が引けてね……。私の連絡先は渡したのだが……」

 

 とはいえ、と教授は続ける。

 

「全くアテがないわけじゃない。彼女の通う学校は聞いたからね。今日は休日とはいえ、近くにいけば会えるかもしれない」

 

 そんな教授の言葉を聞きながら、私たちは半信半疑で彼についていく。

 

 

「里見教授っていつもあんな感じなの?」

 

 私は隣の那由多ちゃんに小声で尋ねる。

 

「お恥ずかしながら……。研究者としては優秀なのですが、どこか抜けているというか、細かい気が利かないというか……。だからママにも……」

 

 と、うんざりした様子で語る彼女を見るに、普段からあの調子なのだろうな、と思った。

 

 すると、後ろで聞いていたラビさんが補足するように言う。

 

「取材など、口での駆け引きは上手なんですけどね。私生活のほうは……、まあ私をお手伝いとして雇っている時点で察していただけると」

 

 ラビさんの言葉でなんとなく察した私は、それ以上切り込むのは里見教授の尊厳のために止めておいた。

 

 

 

 そうして、私たちは紅晴さんの通うという学校に着いた。

 

「ここが彼女の通う学校だよ」

「へー。綺麗な学校なんよ」

「それでは、どこか近くのお店で待ちましょうか。目的の人でなくとも、情報は得られるはずです」

 

 ラビさんがそう言ったときだった。

 

 

「っ! ラビさん、気づいた?」

「うん。魔女の反応」

 

 どうやら近くに魔女がいるようだ。

 

 普通なら、ここは紅晴さんたちの縄張りだ。魔女狩りをするのはマナー違反になってしまう。

 だが、近くには人通りの多い通りもある。被害が出てからでは遅いだろう。

 

 ラビさんも同じ考えなのだろう。

 私のほうを見て頷くと、即座に指示をだす。

 

「魔女は私と夕凪さんが対処する。うららと那由多様は、教授と鹿目さんの護衛をお願いします。使い魔が別で行動している可能性もあるので」

「分かりましたの!」

「任せるんよ!」

 

 二人の返事を聞くと、ラビさんは私に声をかける。

 

「じゃあ行こう。よろしく」

「うん。背中は任せて」

 

 ラビさんの言葉に頷き、私たちは魔女の魔力を追って走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 幸いにも魔女の結界はすぐに見つかり、私たちはすぐさま突入した。

 

 結界の感じからして、やはりこの街の魔法少女はまだ来ていないのだろう。

 とりあえず進めるところまで行って、この街の魔法少女がやって来たらその時点で手を引く。

 

 それがラビさんと一緒に、結界に入る前に決めた約束だった。

 

 

「教授から聞いたけど、この街の魔法少女は荒っぽい子が多いらしい。あまり刺激しないほうがいいと思う」

 

 結界に入る前にラビさんに言われたことを思い出す。

 

 思えば、私は今まで魔法少女同士の争いとはほとんど無縁の人生だった。

 神浜は魔法少女複数人で協力するのが当たり前だったし、東西の確執だってそこまで表面化していなかった。見滝原にいたっては、そもそも争いになるほど魔法少女もいなかったし。

 だから、魔法少女に警戒するなんて、なんか少し妙な気分だ。

 

 

 私たちは囚われた人がいないかを探しながら、使い魔を蹴散らしていく。

 

 ラビさんが実力者なおかげで、私たちは特に苦戦することなく最深部へと辿り着いた。

 

「ここが結界の最深部ですね」

「うん。油断せずにいこう」

「はい」

 

 私たちはお互いに息を合わせ、最深部へと突入する。

 

 

 そこにいたのは、古代の戦争で用いられたチャリオットのような姿の魔女。

 まるで歩兵のように使い魔が周りを取り囲んだ状態で、最奥に鎮座している。

 

「使い魔が邪魔ですね……」

「たしかに。なら、私がブーメランで使い魔の壁に隙を作る。そこを夕凪さんはこじ開けてほしい」

「分かりまし……」

 

 私が返事をしようとした、その時だ。

 

 私たち以外の魔力を探知したと同時、ラビさんの後ろに影が現れる。

 

「っ!」

 

 私はすぐさまラビさんの手を引いて自分へと引き寄せ、反対の手に握られた双刃刀で影の攻撃を受け止める。

 

「っ!?」

「くっ……!」

 

 攻撃を止めたことで、私は影の姿を視認する。

 

 仕掛けてきたのは、バトルアックスを持った青髪の魔法少女だった。少女は攻撃を止められたことに驚愕の表情を浮かべるが、すぐさま険しい顔になり、後ろへと飛び退く。

 

「ラビさん、ケガは?」

「あ、ありがとう。私は大丈夫」

 

 相手の魔法少女から目を離さず、私はラビさんに確認をする。ラビさんもケガはなかったようで、私から離れて武器を構えなおす。

 

「……それで? あなた、この街の魔法少女? それなら……」

 

 私の言葉に答えることなく、青髪の魔法少女は再びこちらへと突っ込んでくる。

 

 今度は先ほどとは逆に、ラビさんが彼女の攻撃を防ぐ。

 

「いきなり攻撃とは感心しない。別に私たちに敵対する意思は……」

「うるさい!!」

 

 青髪の魔法少女が叫ぶ。

 ラビさんの後ろから見た彼女の顔は怒っているような、何かに怯えているような、そんな顔だった。

 

「そんな言葉、信じられると思うわけ!? どうせあなたたちも私たちから搾取する気でしょ! そんな言葉になんか、騙されない!」

 

 青髪の魔法少女は一歩後ろへと飛び退くと、自分を落ち着けるように一呼吸し。

 

「イージーモード、イージーゲーム……!」

 

 そう呟いた直後、再び私たちに向かってくる。

 彼女は手に持ったバトルアックスを大きく振りかぶり、ラビさんへと突っ込む。

 ラビさんはその攻撃を弾こうと、彼女の攻撃に合わせブーメランを振るい……。

 

「なっ!?」

「ざんねん、ディレイだよ!」

 

 バトルアックスの射程に入る半歩手前で彼女が急停止したことで、相手の動きに合わせたはずのラビさんの攻撃は虚しく宙を切る。

 

 そうしてワンテンポ遅らされたバトルアックスが、ラビさんへと振り下ろされる。

 

「させない!」

 

 私は咄嗟にラビさんを突き飛ばし、代わりにバトルアックスを受ける。

 

「うっ……!」

 

 左腕を骨が見えるくらいに切り裂かれるが、すぐに痛覚を遮断し、右手で双刃刀を振るう。

 しかし体勢が悪かったせいか、速度の出なかった刃は簡単に避けられてしまう。続けて、彼女の反撃が飛んでくる。

 

 そこで私は、あえて回避するのを一瞬遅らせる。

 すると、彼女が振り上げたバトルアックスは振り下ろされることなく、止まったままだ。

 彼女は驚きの表情で私を見る。

 

「やっぱり……」

 

 直後、私は横に飛んでバトルアックスの振り下ろしを回避する。

 

「そういう初見殺しは連続でやんないほうがいいよ。すぐにネタが割れるから」

「っ! えらそうに……! きゃっ!」

 

 次の瞬間、飛んできたブーメランが彼女のバトルアックスを引っかけ、彼女の手から弾き飛ばす。

 

 丸腰になった彼女へ私はタックルし、彼女に馬乗りになる。

 両膝で彼女の両腕を押さえ、私はなんとか彼女を制圧した。

 

 

「ふぅ……」

「夕凪さん……! ごめんなさい、私のせいで腕を……」

「大丈夫ですよ、これくらい。私の魔法は回復系ですから、すぐに治ります」

 

 それより、と私は魔女に目を向けた。

 

「今の戦闘で魔女に気づかれました。私はこの子を押さえないとなんで……」

「分かった。元より、腕を怪我したあなたに戦わせる気はない。魔女は私が引き受けるから」

「ありがとうございます」

「夕凪さんも一人になるから気をつけて」

 

 そう言うと、ラビさんは魔女へと向かっていった。

 

「くそっ……! 離せ……! はなしてよ……!」

「ダメ。離したら襲ってくるでしょ。申し訳ないけど、ラビさんを危険に晒すからあなたは解放してあげられない」

 

 青髪の魔法少女は少しの間、私の拘束から逃れようともがいていたけど、やがてその力も抜けていき、抵抗が弱まっていく。

 

 

 代わりに彼女の目からは涙が溢れはじめる。

 

「ぅ、ぐすっ、ぅぅぅ……! ごめん、ごめん、ひかるぅ……!」

「え……、あなた、泣いて……」

「見んなぁ……! 見ないでよぉ……! ひっく、ああああ……!」

 

 予想外の反応に、私は思わず面食らう。

 あの必死さからして何か事情はあるとは思っていたけど、何かを抱えていた目の前の少女は、私の予想よりずっと限界だったのだろう。

 

 

 そう思い、私の注意力が少し散逸したタイミングだった。

 

 目の端に動くものを捉えたと思った次の瞬間には、私の肩口は切り裂かれ、鮮血が宙に舞う。

 

「ああっ!」

 

 そのまま誰かに勢いよく突き飛ばされ、私は地面を転がる。

 

 

 地面を五回転がったところで、なんとか手でブレーキをかけ、即座に立ち上がる。

 肩に魔法を使って即席の止血を行いながら、私は押さえていた魔法少女に目を向ける。

 

 するとそこには、先ほどまでの魔法少女とは別に、短剣を握ったボブカットの魔法少女が立っていた。

 赤いパーカーのような服を着たその少女は、私への警戒を緩めずに青髪の魔法少女の側に寄る。

 

「アオ! 大丈夫? 立てる?」

「さくや、さん……」

 

 アオと呼ばれた青髪の魔法少女は、ゆっくりと立ち上がる。

 さくやと呼ばれた魔法少女のほうは、アオちゃんが立ち上がったのを確認しつつ、私に鋭い目を向ける。

 

「あなたたち、ここで何してるの? ここ、私たちの縄張りだよ? それにアオにまで手を出して……。引くなら今のうちだよ」

「ま、待ってください! 私たちに争う気は……」

「私の後輩泣かせた相手の言葉だと、信じられないね」

 

(ダメだ……、完全に私たちの立場が悪い。そもそも撤退する気ではあったけど、この調子じゃ逃がしてもらえるかどうか……)

 

 本当はこの人たちにも取材したかったけど、これは無理そうだ。

 紅晴さんに会えていればまた違ったのかもだけど、所詮たらればだ。

 

『ラビさん、撤退しましょう。襲ってきた子の仲間の人が来ました。これ以上は殺し合いになります』

『そっか……。タイミングの悪い……』

『え?』

『戦ってて気づいた。奥に攫われた人がいる』

 

 たしかに最悪だ。

 ももこ先輩からバッドタイミングを引き継いじゃったかも。

 

 ダメ元で私は二人に呼びかける。

 

「二人が警戒するのは分かります。けど、今は一時休戦しませんか? 攫われた人がいるんです。私たちは魔法少女、魔女は共通の敵のはず。だから……」

「あなたさ……」

 

 さくやさんの後ろにいたアオちゃんが口を開く。

 

「どんな街から来たら、そんなお気楽なこと言えるの? 魔女は私たちの生命線。それを邪魔するなら、魔女だろうと魔法少女だろうと敵ってだけ!!」

「ちょっとアオ! ああ、もう!」

 

 さくやさんが制止するように手を伸ばすが、アオちゃんはそれを無視して向かってくる。

 

(くっ! やるしかない!)

 

 魔力を集中して右腕を治し、武器を構える。

 

 バトルアックスを回避し、反撃に移ろうとしたところで、目の前にさくやさんが突然現れる。

 

「っ!?」

「マジ!?」

 

 身体を逸らし、短剣の一撃をなんとか躱す。

 さくやさんは攻撃を避けられると思わなかったのか、驚きの言葉を口にする。しかし、すぐさま切り替えて、再び私の視界から消える。

 

(移動速度が速すぎる……! この速度、多分さくやさんの魔法だ!)

 

 僅かな音と魔力反応を頼りに、次の一撃もギリギリで避ける。

 だが、刃にかすった髪が辺りに散る。

 

(こんなの、何回もは避けられない……!)

 

 私たちが争う必要なんてないはず。

 それなのにどうして。

 

 

 

 アオちゃんのディレイを混ぜた攻撃と、さくやさんの高速移動による一撃離脱の攻撃。

 私自身の気持ちも合わさり、私は攻めに転じられなかった。

 

 

 このままじゃジリ貧になる。

 私がそう思ったときだった。

 

 さくやさんの一撃を、ブーメランが阻んだ。

 

「っ!」

 

 その直後、結界の景色が空気へと溶けていき、元の景色へと戻る。

 

「魔女は私が倒した。囚われてた人も無事。そして……」

 

 私の後ろからやって来たラビさんは、そう言いながら二人に何かを投げる。

 

「魔女が落としたグリーフシードはあなたたちにあげる。これで私たちが争う理由もなくなった。違う?」

「それで見逃すとでも……!」

「落ち着いてアオ。二人がかりでもあの子を制圧出来なかった時点で、結果は見えてるよ。それに、敵意がないのは本当みたいだし」

 

 さくやさんは武器を下げる。

 それを見て、アオちゃんも渋々武器を下げた。

 

「ありがとう、二人とも」

 

 ラビさんの言葉に、さくやさんは警戒を解かずに返す。

 

「別に信用したわけじゃないよ。グリーフシードは嬉しいけど、魔女目的じゃないなら何しにこの街に来たの?」

「紅晴結菜、という魔法少女を探しにきた。里見太助、という名前を聞いたことない?」

「里見って……。あの、虎屋町と竜ヶ崎の争い止めたっていう、あの?」

 

 どうやらさくやさんは里見教授を知っているみたいで、納得したような顔をする。

 

「もしかして、里見さんの助手さんかなにか?」

「うん、まあそんなところ」

 

 ラビさんがそれを肯定すると、さくやさんは手を合わせて頭を下げる。

 

「ごめん! そうとは知らずに突っ走ちゃって!」

「だ、大丈夫ですよ。私もラビさんも、大したケガはしてないので」

「……」

 

 ラビさんは私に何か言いたげだったけど、それを言葉にすることなく話を進める。

 

「教授を知っているなら話は早い。またこの街の魔法少女を取材したいのだけど、紅晴結菜に会える?」

 

 ラビさんの言葉に、さくやさんとアオちゃんはあからさまに顔を曇らせる。

 

「……? どうしたの?」

 

 ラビさんの問いかけに、さくやさんは気まずそうに答える。

 

「うーんと……。里見さんはこの街に来てる?」

「もちろん」

「それなら、里見さんに会ったら話すよ。この街、今ちょっと状況が複雑でね……」

 

 さくやさんの言葉に、私とラビさんは顔を見合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死んだ……?」

 

 私は思わず聞き返した。

 でも、聞き返さないと理解できそうになかった。さくやさんの言った言葉を。

 

 私の確認に、さくやさんはゆっくりと頷く。

 

「うん。ちょうど一週間前だったよ。竜ヶ崎のリーダー、大庭樹里との決闘で」

「け、決闘? 同じ街の魔法少女なのですよね? それなのにどうして……」

 

 那由多ちゃんは理解できないと言わんばかりに問いかける。

 

「元々結菜と樹里は仲が悪かったんだ。特にリーダーとしての方針は完全に真逆。それでも樹里が結菜に従ってたのは、以前結菜に決闘を申し込んで負けたから。だから樹里は渋々だけど、結菜のやり方に従ってたんだ」

 

 けど、とさくやさんの声が少し低くなる。

 

「数週間前くらいかな。状況が変わった。この街の魔女が少なくなったんだ」

 

 ああそうだ、とさくやさんは私たちに尋ねる。

 

「一応聞くけど、魔法少女の仕組みとかって知らない人、いる?」

「それは大丈夫。ここにいる皆、その事実は受け止めてる」

 

 ラビさんの答えに、ならよかったと、さくやさんは話の続きを語った。

 

「そもそも、この街にはキュゥべえが寄りつかないんだ。魔法少女の真実を知った結菜たちがキュゥべえの撲滅を行ってね。個体数を減らされるんじゃたまったもんじゃないって、キュゥべえはこの街から出ていった。おかげで、この街で魔法少女になるような子は出なくなったんだけど……」

 

 さくやさんはため息をつく。

 

「それは魔女が生まれなくなることとイコールだった。それでも私たちは協力してグリーフシードの確保と分配を行ってたんだけど……」

「……なるほど。その状況で魔女の数が減れば、奪い合いになるのは当然」

 

 ラビさんは悲しそうな、諦念に満ちた瞳でそう呟いた。

 

「その通りだよ。結菜はなんとか皆を生かす方針だったんだけど、樹里はこの機に魔法少女を間引くって言いだしてね。虎屋町と竜ヶ崎は抗争になった」

 

 さくやさんの話を横で聞いていたアオちゃんの肩が僅かに跳ねる。

 顔に影が差したように見えたのは、きっと気のせいじゃない。

 

(なるほど……。多分、アオちゃんの仲間は……)

 

 私の考えを肯定するように、さくやさんはこう続ける。

 

「結局、双方に何人も犠牲者が出てね。これ以上犠牲を出さないために、結菜は樹里との決闘をすることにしたんだ。結果、結菜は敗れ、樹里に殺された」

「そ、それじゃあ、今はその大庭樹里って人がこの街を仕切ってるのん?」

 

 うららちゃんの質問に、さくやさんは、いや、と首を振る。

 

「結菜は自分が負けたときのために、自分の腹心である煌里ひかるって子に、あるお願いをしてたんだ。樹里の暴走を止めてほしいって」

「そ、それじゃあ……」

 

 まどかちゃんが口を押さえる。きっと、その先の結果が想像できてしまったのだろう。

 

「結菜に勝った樹里を、ひかるは殺した。けど、ひかるにとって結菜は恩人であり、人生の全てだったから。結菜の命令を達成してしまった時点で、彼女に生きる目的は無くなっちゃった。だから、樹里を殺した後、ひかるは魔女になった。さっき、氷室さんと夕凪さんが倒してくれたのが、その魔女だよ」

 

 そうだったんだ。

 それなら、悪いことしちゃったな。

 

「……ごめんなさい」

「夕凪さんが謝ることないよ。ひかるがこれ以上、誰かを殺す前に終わらしてくれたんだ。むしろ感謝してる。私もアオも、ひかるとは仲が良かったから。あの子に罪を重ねる前に止められて本当に良かった」

 

 私に優しく笑いかけるさくやさん。

 本当は自分たちで決着をつけたかっただろう。アオちゃんが焦っていた理由も、きっとそうだ。

 

 私が後悔に沈む中、ラビさんが口を開く。

 

「でもこれで、ある程度の事情は分かった。縄張りのリーダーが全員いなくなれば、その縄張りを奪おうとする魔法少女が現れるのは必然。私たちへの警戒も納得がいった」

 

 ラビさんは納得したように頷く。

 

「本当にごめん。それと、里見さん。取材には応えられそうにないかな。皆、まだ傷が癒えてないんだ。体も、心も」

「いや、気にしないでくれ。私たちこそ、そんな時期に来てしまって申し訳なかった」

 

 里見教授は深々と頭を下げる。

 

「いやいや! 頭を上げてくださいって! 魔法少女を救うって運動、素敵だと思います。私たちは力になれないけど、応援してますね」

 

 さくやさんは笑顔でそう言う。

 

「ああ、君たちのことも、必ず記すよ」

 

 里見教授は力強く、そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(キュゥべえを追いだしても、結局魔法少女は救われない……)

 

 

 

 二木市からの帰りの電車。

 私は外の夕焼けを見ながら、何の役にも立たない思索に耽る。

 

(私が、もっと早く動いてたら、助けられたのかな……)

 

 

 

 アオちゃんの顔が忘れられない。

 

 私たちと別れる寸前、彼女はボソッと呟いたのだ。

 

 

 

「……魔女さえいれば。こんな、こんな状況、望んでなかった……」

 

「助けたいっていうなら、私たちにグリーフシードちょうだいよ。あなたたちが魔女になってさ」

 

 

 

 

(私が魔女になれば、あの子たちは救えたのかな……)

 

 そんなのしたところで状況が変わらないのは分かってる。

 けど、なにかできたんじゃないかって、どうしても考えてしまう。

 

 

(私はいつも間に合わないな……。私の手は、いつも空振る……)

 

 

 いつも……。

 

 

 

 

 

 ――あっは! じゃあねー、お人好しヒーロー。

 

 

 

 

(ああ、そうだった……。あの時も、私は……)

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕凪さん」

 

 電車の乗り換えで、ラビさんたちと別れるとなったとき、私はラビさんに呼び止められた。

 

「なんですか?」

「あまり、思い詰めないほうがいい」

 

 まいったな。バレないように振る舞ってたんだけど。

 

「でも、どうしても考えちゃうんです。なにかできたんじゃないかって」

 

 すると、ラビさんは諭すように私に語りかけた。

 

「いい? 夕凪さん。私たちは決して神様じゃない。魔法少女全員を救う事なんて、絶対できない。だからこそ、少しでも多く救えるように足掻くの。手の届く範囲だけでも、私たちの大好きな世界が壊れないように」

 

 ラビさんは私の手を握る。

 

「大丈夫。あなたの手は、ちゃんと誰かを救える手だから」

 

 その言葉を置いて、ラビさんは去っていった。

 

 

 

 

「救える手、か……」

 

 ラビさんに握られた手を、私は二度、三度と揉んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凜ちゃん、大丈夫?」

 

 ベッドの上で呆ける私を、みことちゃんは心配そうに覗き込む。

 

 まあ無理もないか。帰ってきてから、電気も付けずにベッドの上でずっとこうしていたのだ。みことちゃんから見たら、きっと不気味だっただろう。

 

「ごめん、怖がらせちゃったよね……」

「別に怖くはなかったけど……」

 

 私はみことちゃんを見て、そういえば、と思い出す。

 

「みことちゃん。昨日の問題の答え、やっと思い出したよ」

 

 私はみことちゃんを真っ直ぐ見る。

 

「以前、神浜で昏倒事件を起こした、『混沌』更紗帆奈さん。その彼女とかつて一緒に活動していた魔法少女。それがみことちゃんだよね?」

 

 

 私の問いかけにみことちゃんは答えない。

 

 けれど、妖しさを含んだ彼女の笑顔が、私の言葉の正誤を物語っていた。

 

 

 私は思い出した。

 

 

 みことちゃんを知ったきっかけを。

 

 

 

 そして……。

 

 

 

(更紗さん……)

 

 

 

 

 私の運命を変えた、彼女との出会いも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 DAY.82 Side YN

 

 

 

 

「遅くなったわ」

 

 私が調整屋のドアを開くと、そこには既に全員集まっていた。

 

 みたまに鶴乃、そして……。

 

「あなたたちが『爆発』に遭遇したっていう魔法少女ね。早速で悪いけど、話を聞かせてもらえるかしら」

「は、はい」

 

 私はソファに座る二人の魔法少女に声をかける。

 確か左のツインテールの子が綾野梨花さん、右の片目を髪で隠した子が五十鈴れんさん、だったかしら。

 

 二人とも西の魔法少女なので何回かは会ったことがあるが、普段は話をしたりしない。

 その二人に集まってもらい、話を聞く場を設けたのには、もちろん理由がある。

 

 

 昨日、神浜の中央区で発生した爆発事故についてだ。

 表向きはガスが漏れたのでは、と言われているが、その時現場にいた彼女たちが事情を知っていると聞いたので、こうして話を聞きにきたのだ。

 

「あの日、私とれんちゃんは一緒に遊んでたんです。そしたら、魔女の反応を見つけて……」

 

 綾野さんはその時を思い出すように、慎重に言葉を紡いでいく。

 

「二人で魔女の結界に入ったら、その結界、鏡の魔女のものだったんです」

「鏡の魔女? でも鏡の魔女って、大東の鏡屋敷にいるんじゃなかった?」

「恐らく、使い魔から成長した株分け個体ね。たまに見かけることはあったけど、まさか神浜のそんな中心にいるなんて」

 

 鶴乃の問いに答えながら、私は頭を回す。

 鏡の魔女は臆病な性格だ。だから、株分けの魔女のそんな大胆な動きをすること自体珍しい。

 

 それに、基本株分けの魔女の神浜市外に現れることのほうが多い。

 神浜は本体の縄張りとなっている。だからこそ、魔女は勢力圏を広めるために市外へと出ていくことのほうが多いのだが。

 

 とにかく、私は綾野さんを促して先の話を聞くことにした。

 

「それで、その後は?」

「もちろん倒そうとしました。近くにお店とかあったんで、そこを襲われるわけにはいかないですから」

 

 どうやら綾野さんたちは、株分け個体を倒そうとしたらしい。

 幸いにも、成長してすぐの個体だったからか、魔女にはすぐにたどり着けたようだった。

 

「んで、あたしとれんちゃんでいつも通り戦ってたんです。それで、ようやく追いつめたーって思ったら、魔女が結界内にあった一枚の鏡を持ったんですよ」

 

 五十鈴さんが綾野さんの袖を掴む力を強める。

 それを綾野さんは、彼女を撫でて落ち着かせるようにしながら続ける。

 

「そしたら、鏡からピンクみたいな光が溢れてきて。それで、その光が結界内にどんどん亀裂を入れてったんですよ! 魔女を倒してないのに結界が崩れ始めちゃって。それであたしとれんちゃんはすぐに逃げたんです。それで、結界から出たとほぼ同時に爆発が……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、あらかた話を聞いたところで綾野さんたちには帰ってもらった。

 

 

「みたま。今回の件、あなたはどう思う?」

 

 私の問いに、みたまは人差し指を顎につけて答える。

 

「そうねぇ。たしかに引っかかる点が多いわね。今まで株分けの魔女が、神浜市内でここまで活動することなんてなかったし。なにより……」

「鏡の魔女が起こした爆発、ね?」

 

 みたまは頷く。

 

「鏡の魔女が悪あがきでやった自爆とも考えられるけど……」

「う~ん、その可能性は低いんじゃないかな?」

 

 みたまの予想に反論したのは鶴乃だ。

 

「だって、その爆発って鏡から出てきた光が引き起こしたものでしょ? 普通自爆って、自分自身の魔力とか使わない?」

「それはそうね。もちろん、あの鏡からエネルギーを引き出して自爆をしたとも考えられるけど……。でも、そうなると新たな疑問が出てくるのよ」

 

 私の言葉に鶴乃も頷く。

 

「そのエネルギーの出所はどこかって話だよね。あの爆発の規模は並大抵のものじゃなかった。たしか、爆心地の駐車場が完全に吹き飛んじゃったんでしょ?」

 

 鶴乃がスマホの画面を見ながら言う。

 画面に映し出されているのは、爆発事故のニュース記事。

 

 爆発現場は、まるで強力な破壊兵器でも撃ち込まれたように大きく抉れており、駐車場の面影は影も形もなかった。

 成長したばかりの魔女が起こせる爆発とは、とても思えなかった。

 

「ねえみたま。鏡の魔女の鏡って、たしか色々な場所に繋がっているんだよね?」

「ええ、そう考えられているわ。少なくとも株分け個体同士と本体の結界は繋がっていることが確認されてる。そこから、鏡を通って別の離れた地に移動できることも」

「ということは、それだけのエネルギーを放出できる部分にも鏡が繋がっていることだよね」

 

 鶴乃の推理は当を得ている。

 そして、できるならば外れていてほしい推理だ。

 

「もし鶴乃の推理通りなら、マズい状況ね。鏡の魔女があんな爆発自在に引き起こせるようになったら、尋常じゃない被害が出るわ。予測不可能の大型爆弾を日本各地にばらまかれるのと同義よ」

 

 しかし、私の言葉に冷静に答えたのも鶴乃だ。

 

「やちよの心配は尤もだけど、焦り過ぎるのも良くないと思うよ。多分、鏡の魔女もあの爆発は自在には扱えてない」

「そうね。任意に起こせるものなら、株分けの魔女が自爆する必要もないでしょうし」

 

 鶴乃の言葉に、みたまも賛同する。

 

「とはいえ、やちよさんの懸念も正しいわ。今は不可能でも、いずれ自在に扱えるようになる可能性はゼロじゃない」

「今のうちに手を打つ必要がありそうね」

 

 そうして、私たちがこれからについて話そうとしたときだった。

 

 私たちの会話を遮るように、調整屋の入り口のドアがノックされる。

 

「八雲、邪魔するぞ。……む、七海に由比君じゃないか」

「十七夜……!」

 

 ドアから顔を覗かせたのは、東で魔法少女の取りまとめ役をやっている、和泉十七夜だった。

 

「どうした、皆して真剣な顔をして。何かあったのか?」

 

 不思議そうにする十七夜に、私たちは今までのことを説明した。

 この問題は西だけで済まない可能性は大いにある。十七夜の力も借りることにはなるだろう。どのみち、このあと連絡しようと思っていたのでちょうど良い。連絡の手間が省けた。

 

 

 

 私たちの話を聞いた十七夜は少し考える素振りをした後、口を開いた。

 

「……そうか。それなら、自分がここに来た理由もあながち無関係とは言い切れんかもな」

「どういうこと?」

「ここ最近、鏡の魔女の使い魔を見かけたと、東の魔法少女から聞くことが多くなってな。八雲に相談しに来たんだ」

 

 私の問いに、十七夜はそう答える。

 

「使い魔、株分けの魔女の活動活発化。そして、魔女の起こした謎の爆発。こうも連続して起きているのは、偶然ではあるまい」

 

 十七夜は静かに言う。

 

 その言葉に、全員の顔がより一層険しくなる。

 

「……それなら話は早いわ。みたま、十七夜」

「やちよさん……?」

「なんだ、七海?」

「すぐにでも果てなしのミラーズの調査をするわよ。あの結界内で何が起きているのか、すぐに確かめたいの。協力してくれるかしら?」

 

 私のお願いに対し、二人はすぐに頷く。

 

「当然だ。七海が言わなければ、自分が提案するところだった」

「私も賛成よ。今の鏡の魔女は何かが変だわ」

「私も行くー! 調査するなら、最強の私がいないとね! そうと決まれば、さっそく鏡屋敷に出発だー!」

「ちょっと鶴乃!」

 

 猪突猛進を体現したように飛び出していく鶴乃を追いかける。

 

 

(嫌な予感がする……。この問題は早めにケリをつけないと、取り返しのつかないことになるかも……)

 

 心に浮かんだ不安を押し殺し、私たちは鏡屋敷へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 




書き出したはいいものの、話の展開に四苦八苦してます。助けてください(物書きのカス)

みことちゃん、設定もエミュも物語で動かすのも難しすぎる。
本家ライターさんには頭が上がりません。

タ○ピー、筆が速くなる道具、出して?
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