魔法少女まどか☆マギカ 実績『朝焼けのエンドロール』獲得 作:くろしゅー
(今日のまどドラ生放送が楽しみなので)初投稿です。
世界滅亡系彼女を攻略する実況、はーじまーるよー。
前回はみことちゃんの願いを叶えるために、フォークロア、そして藍家ひめなちゃんに協力を取り付けたところまでした。
今回はその続きから。
この後のイベントのための下準備を進めます。
DAY.89
さて、前回で神浜でやっておくことは済ましたので、残りのやることは後少しです。
ま、それが一番難しいんですけどね。初見さん。
まず、残り1週間でやることは、ユリちゃんが言っていたように、みことちゃんに幸せを感じさせること、つまり『幸福度』を上げていきます。
彼女とお喋りしたり、デートしたり、一緒に眠ったり etc……。
とにかく彼女と行動して、彼女の『幸福度』を一定ラインまで上げることです。
注意が必要なのは、ここでいう幸福度は好感度とイコールではない、ということです。
彼女からの好感度を上げれば、それに比例して幸福度も上がるかと言われれば、そうではありません。
この二つは微妙に評価ポイントが違うので、ただ単に好感度を上げても目的達成できてなかった、なんてよくあるパターンです。(5敗)
みことちゃんのハッピーエンドルートは、この幸福度の数値がルート分岐の鍵となります。
帆奈ちゃんとの再会までに、幸福度が一定ラインに届かないと、そのまま神浜市滅亡計画イベントが発生して世界滅亡です。
今回はサルベーション・ブルームもあるので、世界どころか宇宙滅亡ですけどね。ハハハ。(ハイライトオフ)
なので、これからはみことちゃんに……。
ん? 誰かから連絡きましたね。
えーと……。え、まばゆちゃん? なんで?
とりあえずメッセージ確認しますか。
『すみません。今から会えませんか?』
どうやら呼び出しのメッセージですね。
これ自体はメイン・サブ関わらず、色んなイベントの導入であるんですが……。
そんなフラグ立てたっけ? ユリちゃん何か知ってる?
……この顔は知らなそうですね。
一体なんだってばよ。(NRT並感)
こうなった以上は、こっちのイベント終わらせるのが先ですね。
指定された場所は……、ああ、あの噴水公園ですね。原作だと、ほむらちゃんがキュゥべえを蜂の巣にして、まどかに振られたあの公園です。
じゃ、イクゾー!(デッデッデデデ!)
DAY.89 Side RY
まばゆに呼び出された公園に向かうと、既にまばゆはベンチに座って私を待っていた。
「お待たせ、まばゆ」
「ああ、凜さん。来てくれてありがとうございます……」
「全然いいよ。それで、どうしたの? 何か相談事?」
私が尋ねると、まばゆは下を向いたまま私に問いかけてきた。
「凜さん。最近、何か変わったこと、とか、ありませんでしたか?」
「私自身にってこと? うーん、特にないけどなぁ」
みことちゃんのことは隠して答える。
もしかしたら、私の挙動がおかしいと思われたのだろうか。上手く隠していたつもりだったんだけど。
「……そうですか。それなら、質問を変えます。最近、新しいお友達でも出来ましたか?」
(これは、勘づかれたかな……? でも、みことちゃんのことは……)
「なんのことだろう? まあ、里見教授に付き合って色んなところは行ってるけど、それだけだよ」
私はシラを切ることにした。
例えまばゆでも、今回の件だけには関わらせるわけにはいかない。
「……そう、ですか」
「……? どうしたの、まばゆ? なんかさっきから様子が変だよ。本当に何かあった?」
みことちゃんのことを勘づかれたかも気になるが、それよりまばゆの様子が気になる。
ずっと暗い顔で、隠しきれない悲しみのオーラが滲んでいる。
私は心配で、まばゆに尋ねる。
「何か困ってることがあるなら力になるよ? 私じゃ頼りないかもだけど、私はまばゆに笑ってほしいし……」
「なら!! 教えてくださいよ! 凜さんが背負っているもの!」
突如放たれた、まばゆの滅多に聞かない大声に、私は思わず固まる。
「凜さん、今なにしようとしてるんですか? どうして私たちに何も言ってくれないんですか?」
まばゆは畳みかけるように言い、最後に私に問いかけてきた。
「瀬奈みことさんと、何をするつもりですか?」
「……そっか」
私はポツリと呟く。
まばゆは気づいたようだ。私が瀬奈みことと一緒にいることを。
そして、多分鏡の魔女のしようとしてることも。
「未来視使ったね、まばゆ」
「……ええ。ちょっとしたズルをしちゃいましたが、今はそれより質問に答えてください」
どう答えようか考えていると、まばゆは更に聞いてくる。
「凜さんは、鏡の魔女を放っておけばどうなるか知っているんですか? あの魔女は、この宇宙すら崩壊させるんですよ?」
私はその言葉にギョッとする。
「……それも、未来視で?」
「いいえ。これはキュゥべえに確認しました。彼らの計測したデータから起こりうる事態を聞き出したんです。見滝原で鏡の魔女が使ったあのエネルギーを大量に使われれば、この宇宙が形を保てなくなるものだと。そのような質の悪い法則のエネルギーだと」
私はとりあえず安心して、息を吐く。
まばゆが未来視で見た事態なら、確定した未来であるということだから。宇宙滅亡は確定ではないことに、私は一安心する。
とはいえ、それは起こらないと確定したわけでもない。
私の行為は一歩間違えば、宇宙崩壊に繋がるのだと思うと、手足の先端が冷えていくような感覚に襲われる。
そして、キュゥべえが鏡の魔女とサルベーション・ブルームの危険性を認知したということは。
「……なるほど。キュゥべえに私を消せって言われたね、まばゆ」
「……」
沈黙は肯定、ということだろう。
まばゆはゆっくりと口を開く。
「もちろん、凜さんを殺したいなんて思ってません。けど、凜さんが瀬奈みことさんと、鏡の魔女を使ってあのエネルギーで何かしようとしてるなら、私は凜さんを止めます」
まばゆの言葉に、私はようやくまばゆの考えていることを把握した。
(なるほどね……。多分、まばゆは私の行動の動機までは知らないんだ。だから、私がどう動く気か知りたいんだ)
となれば、誤解を解けば、まばゆとの衝突は避けられるだろうか。
(でも、そうすると……)
一つの懸念が頭を過ぎるも、まずは誤解を解くのが先だと、その考えを振り切る。
「分かった……。まず、私は鏡の魔女を使って何かしようとしてはいないよ。もちろん、みことちゃんも」
正確に言うと、みことちゃんにはその意思がまだあるのだが、どのみち止めるつもりだ。ここは嘘で通させてもらおう。
「私とみことちゃんが一緒に動いているのは、彼女に会いたい人がいるから。彼女は魔女化によって肉体を失って、精神を他人に移植させる魔法でなんとか生きてる状態なの。だから、私が協力しないとみことちゃんの願いは叶わない。だから、みことちゃんのために動いているの」
私の言葉に、まばゆは目を丸くする。
「そ、そうだったんですね……。ああ、いやいや、凜さんがそのつもりでも、瀬奈さんが本当にそのつもりかは……」
納得しかけたまばゆだったが、頭を振って再度疑念を抱く。
相手の言葉を信じすぎないことに成長を感じつつも、ここはこれで納得してほしかった。
そう思いつつ、私は再度口を開く。
「本当だよ」
「こ、根拠は……?」
「友だちのことだから」
「ええ……」
根拠としてかなり弱いのは自覚している。
けど、本当に確たる証拠はないのだから仕方ない。私にどれだけの信頼があるかは微妙なところだが、まばゆの私を信じる気持ちに賭けるしかない。
「みことちゃんはそんなことする子じゃない。会いたい人に会いたいだけ」
「で、では、なんで凜さんは力を貸しているんですか? 別に凜さんじゃなくても……」
「一つはみことちゃんにもう魔力が残ってないから。これ以上魔法を使ったら、みことちゃんが消えちゃう。それともう一つの理由は、私も彼女の会いたい人と関係があるから。神浜で知り合った人で、約束をした人だから」
「約束、ですか?」
「うん。みことちゃんに希望を見せてほしいって、約束を。だから、私はその約束を、みことちゃんの願いを叶えたい。本当に、ただそれだけ」
私の言葉を聞いたまばゆは、考え込むように俯く。
そうしてどれくらい経った頃だろう。
まばゆは顔を上げ、私に言いました。
「……分かりました。凜さんを信じます。それなら、私も手伝いを……」
「それはダメ」
私は即座に拒絶する。
優しいまばゆならきっと言ってくると分かっていたからこその、答えの速さだった。
そして、まばゆも私の答えが分かっていたかのように、動揺する素振りもなく質問してくる。
「なんでですか?」
まばゆは確かめるように、目を瞑って続ける。
「私も凜さんのこと、ちょっとは理解したつもりです。大体、凜さんが親しい人を遠ざけるときは、その人が自分と一緒にいて危険に晒される可能性を潰すため。裏を返せば、凜さんがそれだけ危険なことに関わってるとも言えます」
そこでまばゆは目を開け、再度私に問いかけてくる。
「凜さん、あなたは何をしようとしているんですか? 凜さんの言った通りなら、危険なんて無さそうなのに。どうして私たちを遠ざけるんですか?」
まばゆの真っ直ぐな目に、私は少しの間、何も言えなくなる。
(まばゆ……)
私はこの子を、少し甘く見ていた。
この子は本当に、人のことをよく見ている。思えば、以前にまばゆに励まされたときも、こんな風に私の心の奥を正確に捉えていた。
前に話してくれた、彼女のお母さんとの約束。それをちゃんと叶えようとしているんだと、こんなところで思い知らされる。
(でも、だからこそ、巻き込むわけにはいかないんだよ、まばゆ)
例えなんと言われようと、私の答えは決まっている。
「危ないから、だよ」
「……っ」
だから、隠すことなく、本音をぶつけることにした。
「私が話したことに嘘はない。みことちゃんの会いたい人に会わせたいっていうのは、ホントのホント。でもね、みことちゃんには敵が多いの」
「敵……?」
「うん。正確には、彼女の会いたがってる人、更紗帆奈さんなんだけどね。彼女たちは1年前、神浜で悪いことをしたの。魔女を操って、魔法少女の仲をズタズタにしようとしたんだ」
「そんなことが……。え、じゃあなんで凜さん、彼女に力を貸して……」
「二人が、虐待を受けてたから」
まばゆが息を呑むのが見て取れた。
「私は彼女たちに共感した。同情した。だから、助けたいと思った。彼女たちのいる場所は、私が辿るかもしれなかった可能性の一つ。だから、助けたかった。たくさんの罪は犯しちゃったけど、まだ遅くないって。やり直せる希望はあるって伝えたかった」
その先を言うのに心臓の鼓動が速くなって、私は自分を落ち着かせるように腕をギュッと握る。
「けど、私は更紗さんの手を掴めなかった。私は置いていかれて、追いついた時には全てが終わってた。彼女の死という結果で。だから、みことちゃんだけは絶対に手放さないって決めたの。何があっても、絶対力になるって」
この誓いだけは、絶対に破りたくない。
もう、誰かを助けられないのはご免だ。それに更紗さんとの約束もある。
「でもね。さっきも言ったように、二人は色々悪さしちゃったから。彼女たちに恨みを持ってる魔法少女は多い。復讐を誓ってるグループだっている。それに……」
「鏡の魔女はみことちゃんが魔女化した姿。その鏡の魔女が活動を活発化させたのなら、魔女と深い繋がりを持つみことちゃんを排除しようとするのは道理だ。正直、神浜の魔法少女のほうが社会的正義もある」
そう。きっと正義は常磐さんたちのほうにある。
私の行動は、ただの一個人の私的な感情に過ぎない。
でも、と私は続ける。
「私はみことちゃんを殺すことなんて、嫌。たとえみことちゃんを殺すことで鏡の魔女を弱体化できたとしても、私はそれを選ぶつもりはない」
彼女の手は死んでも放してあげるものか。
もし手放すときは、彼女に私がいらなくなったときだけだ。
でも同時に、この選択は……。
「この選択は、神浜の魔法少女の多くを敵に回す。当然だよね。自分たちの住む街を危険に晒す選択をするようなヤツを、放置なんてしておけない」
だから、と私は息を吸って、まばゆに伝えた。
「みことちゃんの願いを叶えようとすれば、必ず神浜の魔法少女との抗争になる。私のワガママが引き起こした戦いに、まばゆたちを巻き込みたくない。これが、理由だよ」
私は言い切る。
まばゆをこれからの戦いに巻き込みたくない。私がこれからやるのは、なんの正当性もない、ただのワガママだ。
場は気まずい沈黙に包まれる。
しかし、まばゆは私の話を聞いてなお、私に希望を持った目を向けてくる。
「……それなら、私が引き下がる理由はありませんね。凜さん、私も協力します」
「だからダメだって」
私はまばゆの手を払いのける。
「どうして……! その話聞かされて、私が怖じ気づくと思いましたか? そんな訳ないです! 凜さんはもう一人じゃないんです!」
「一人にさせてよ!」
まばゆの言葉に、私は思わずベンチから立ち上がる。そして、まばゆと向き合うと、彼女を強く睨む。
「今度の件は危険ってだけじゃない! 魔法少女同士の抗争なの! まばゆは想像できてない! せっかく辿り着いた日常を、そんな簡単に手放そうとしないで!」
「それは凜さんにも言えることですよ! ワルプルギスの夜を越えて、私たち、仲良く過ごせてたじゃないですか! 私たちとの日々は、そんなに嫌でしたか……?」
その言葉に、私はより語気を強める。
「嫌だったわけない!! けど……! けど、その幸せは私には温かすぎたんだよ……。私はもう十分幸せになれたから……。もう、思い残すことはないよ」
目の奥が熱くなるのを必死に堪えて、私はまばゆに言い放つ。
「第一、まばゆが力になったことで、何の役に立つの? はっきり言って、まばゆの強さじゃ殺されるだけだよ」
私は恐らく敵に回るだろう人たちを思い浮かべる。
どの人も、神浜では指折りの実力者ばかりだ。まばゆが彼女たちとぶつかったところで、負けるのは目に見えてる。そうなれば、私の仲間だということでどういう扱いを受けるか、嫌でも分かる。
「戦いで一番厄介のは、強い敵より無能な味方。まばゆが私に与したところで、あなたは私の弱点にしかならないんだよ」
私は努めてキツく言い放つ。
でも、本音でもある。まばゆを人質に取られたら、きっと私は動けなくなってしまうから。
大切な人を、天秤にかけられないから。
「それ、は……。で、でも……!」
自身が弱いことはまばゆも自覚しているのだろう。
声を詰まらせ、視線一瞬が泳ぐ。
私はその隙を逃さず、言葉をかける。
「まばゆ。もういいんだよ。あなたは幸せに生きて。それを望む人はたくさんいるし、その権利を手放すほどの価値は、私にはない」
「そんなこと……!」
「あるって言ってよ!!」
私はまた怒鳴ってしまう。
さっきから、なんだか感情の抑制が上手く効かない。
「そうやって、優しさを見せないでよ……! そんなことされたら、期待しちゃうじゃん! 縛りたくなっちゃうじゃん!」
私の言葉を、まばゆは理解できていないのか、ポカンと口を開けた。
「え……?」
「私、まばゆが思っているほど良い子じゃないの! 必死に演じてただけ! 求めたら、鶴乃先輩みたいに潰しちゃうと思ったから……。失ったとき、次は耐えられないと思ったから……!」
言ってから、私は心の底の感情を理解する。
私の奥底に仕舞った感情は、いつの間にかこんなにも肥大化していたことに。
「知ってた……? まばゆを助けたときも、ほむらを助けたときも。私、下心で救ったんだよ? 私の胸に空いた穴を埋めてくれる存在にならないかなって。あなたたちを救えば、私はあなたたちの一番になれないかなって……」
言いだしたら、もう止められそうにない。
私の醜い部分は、光を当てられたことに歓喜するが如く、私を突き動かす。
「でも、ほむらの目にはまどかちゃんしか映っていなかったし、まばゆの目に映っていたのはほむらだった……。二人とも、私と友達になって助けてくれたけど、私を一番にしてくれなかった……! 私の方が我慢できなくなってきたの!」
少ない理性が私を止めようと、手で髪をグシャリと掴む。
それでも、言葉は止まらない。
「私はずっとそう……。鶴乃先輩にも、みたまさんにも。こうやって試すようなことばかりして、勝手に期待して。変だよね、気持ち悪いよね……」
最初の語気はどこに消えたのか。私から出る言葉は、弱い、情けないものだった。
(ああ、これだから。私は……)
「私はこんな自分が、大嫌い……。だからお願い。私にもう構わないで……。これ以上優しくされると、私、きっとおかしくなる。もう関わらないで……。私の愛が、あなたたちを壊す前に」
そう言って私はきびすを返し、逃げるように駆け出す。
「ま、待って!」
まばゆは咄嗟にといった感じで、私の手首を掴む。
それを、私は身を捻ってまばゆの腕を掴むと、そのまま背負い投げで投げ飛ばす。
「ぁうっ……!」
突然投げ飛ばされたまばゆは、ロクな受け身も取れず地面に叩きつけられ、呻き声を上げる。
「……ほら。こんな簡単に投げ飛ばされてたら、常磐さんたちには勝てないよ、絶対」
仰向けに倒れるまばゆの横を通り過ぎながら、私は言った。
「り、りんさ……」
それでも私に手を伸ばすまばゆに目もくれず、私は公園の出口を目指す。
「まばゆ。これ以上、私に近寄らないで。まばゆは、ほむらたちと幸せに過ごして。それが私の、あなたたちへの唯一の望みだから」
私はそう言うと、全てを振り切るように階段を全速力で駆け上がった。
DAY.89 Side MA
「凜さん……」
私は宙に浮いたままの手を下ろし、ゆっくりと起き上がりました。
凜さんの走っていったほうを見ても、そこに既に彼女の姿はなく。
それはつまり……。
「説得は、失敗のようね……」
木の陰から、ほむらさんが姿を現します。
「ほむらさん……」
「これで分かったでしょう。もう彼女に、私たちの声は届かない。取れる選択肢は排除だけよ。昨日、決めたようにね」
DAY.88 Side MA
私は夢での悪魔さんとのやり取りの後、ほむらさんに連絡を取りました。
「それで? 用って何かしら?」
そう尋ねるほむらさんの瞳を覗き込み、私は未来視を使いました。
見ようとした未来は、悪魔さんが言っていたことが本当なのか確かめるため。凜さんが、本当に瀬奈みことさんと一緒にいるのか。
そうして、ほむらさんの瞳を通して見えた未来は、悪魔さんの言っていた通り、説得の中で、凜さんが瀬奈みことさんと一緒にいることを肯定する未来。
私が顔を青ざめる中、ほむらさんは少し不快感を示しながら、私に質問してきました。
「ちょっと。あなた、勝手に未来を見たでしょう。いきなり何なのよ?」
そこで私は話しました。
今朝、不思議な夢を見たこと。その夢で、世界を滅ぼす存在が凜さんと一緒にいること。放置すれば、この宇宙が崩壊に向かうこと。悪魔さんの見た目がほむらさんそっくりなことを除いて、私は全てをほむらさんに伝えました。
「……なるほど。たしかに信じられない話ね。夢に出てきた悪魔の予言なんて。でも、あなたはそう思わなかったから、未来視を使った。そういうことね」
「はい……」
「それで、どうだったの? 未来視の結果は?」
「悪魔さんの言うとおりでした……。少なくとも、凜さんが瀬奈みことさんと一緒にいるのは、間違いないみたいです」
その答えに、ほむらさんは「そう……」と呟くと、少し考えてからこう言いました。
「じゃあ宇宙崩壊のほうは? 見たの?」
「いえ、それは……。ちょっと、見るのが怖すぎて……」
「あなたねぇ……。と、言いたいところだけど、その判断は悪くないわ。これで滅びが見えたら、確定した未来になってしまうもの。それなら……」
と、ほむらさんは辺りを見回しながら、声を上げる。
「そういことに詳しそうなヤツに聞いてみましょう。インキュベーター、いるんでしょ。出てきなさい」
ほむらさんがそう言えば、影からヌッと白い獣が姿を現します。
「やれやれ。ボクはキミの召使いじゃないんだけどな」
「御託はいいわ。質問に答えなさい。今、鏡の魔女が引き起こしている謎の爆発。あれについて、あなたたちが把握していること、全て教えなさい」
すると、キュゥべえはため息をつきながらも、説明を始める。
「そうだね。アレに関しては、ボクもキミたちの力を借りようとは思っていたからね。情報提供は喜んでさせてもらうさ」
そうしてキュゥべえは、鏡の魔女が放出したエネルギーについて、彼らの観測した情報について私たちに伝えました。
曰く、この宇宙のエネルギーではない、別の宇宙からなだれ込んだエネルギーだということ。その宇宙にある法則がこの宇宙と反発するものであるため、爆発という物理現象に変換されていること。このままいけば、この宇宙は今の形を保てなくなること。
キュゥべえの口から語られる情報は、悪魔さんから聞いた話を裏付けるようで、私はお腹の奥が重たくなっていくのを感じました。
「キミたちも知っての通り、鏡の魔女は瀬奈みことが魔女化した姿だ。魔女になった者の精神が生前のまま残ることは極めて珍しい。人格移植の魔法でで生き残るとは、ボクも驚きだ。とはいえ、前例が無いわけでもない。魔女化しながらも、生前のように振る舞っていた子たちもいたことはある。彼女たちのサンプルケースから推理すると……」
キュゥべえはそう言つつ、真紅の瞳で私たちを見ました。
「夕凪凜の中にいる瀬奈みことを殺すのが、一番確実だろうね。魔女と元となった少女の精神に、魔女とある種の繋がりがあるのは分かっている。瀬奈みことの人格を消滅させられれば、ワルプルギスの夜に迫るほど強くなった鏡の魔女でも、混乱させ、勝機も生まれるハズだ」
そして、キュゥべえは残酷なまでに温度の無い声で、告げました。
「だからボクとしては、キミたちに夕凪凜を殺して、事態の解決を図ってほしいんだ」
キュゥべえが去った後、しばらく私たちの間に会話はありませんでした。
今までの話を信じたくなくて。でも、信じないと前に進めないから。
すると、ほむらさんがポツリと呟きました。
「……未来は」
「え……」
「さっきあなたの見た未来。それはどうだったの、まばゆ?」
「それ、は……」
私は先ほど見た未来の光景を思い浮かべながら、ほむらさんに語ります。
「私が凜さんを説得する光景で……。凜さんは瀬奈みことさんと一緒にいることを認めて、いました……。凜さんは、全て、知ってるようでした……」
「そう……。その説得の結果は?」
「いえ、そこまでは……」
嘘です。
説得の結果も、私には見えていました。
けど、言いたくなかった、認めたくなかったんです。
そんな私に、ほむらさんは言います。
「今までの話が本当なら、宇宙崩壊を防ぐには鏡の魔女を倒すしかない。そして、ワルプルギスの夜に匹敵するほど強くなったその魔女を打倒するには、瀬奈みことの人格を殺し、隙を作るしかない。そのためには……」
ほむらさんはグッと歯を食いしばった後、重々しく言いました。
「凜ごと、殺すしかない……」
「……」
ほむらさんの瞳は、とても暗い色をしていました。
「まばゆ。いざとなったら、私は凜を殺すわよ」
「えっ……」
「私の最優先はまどかよ。彼女が生きる未来を害する存在は、誰であろうと排除するだけよ。例え、友達であっても……」
「ほむらさん……」
すると、ほむらさんは私を見て言います。
「だから、まばゆに託すわ」
「それって、どういう……」
「あなた、凜を説得する気なんでしょう。凜が引き返せなくなるところに行く前に」
未来視で見た未来は必ず起きること。それが私の魔法です。事実、私は凜さんの説得に行く気でした。
ほむらさんの言葉は、それを理解した上でのものでした。
「だから、あなたが止めなさい。それでも凜が止まらなかったら、私が彼女を……」
ほむらさんが最後まで言う前に、私は答えました。
「任せてください。絶対、止めてみせます」
私はできる限りの笑顔で言いました。
(そうですよ……! 私の未来だって、こうして変わったんですから。凜さんの未来もきっと、変えてみせます……!)
例え未来視で見た未来が、凜さんに手を払いのけられて、立ち去っていく光景だったとしても。
未来は変えられるはずだと、私は思いました。
だって、私たちはワルプルギスの夜をも乗り越えてたんですから。
(だから、今回もきっと大丈夫)
そう、思っていました。
DAY.89 Side MA
けれど、結果は未来視の結果通り。
私の手は振り払われ、凜さんは去っていってしまいました。
「これで決まりね。私は彼女を……」
「待って……、待ってください!」
私は必死にほむらさんを呼び止めます。
「もう一度、もう一度説得してみます! 今回はダメでしたけど、次は……!」
「そうやって、何度も先延ばしにして。間に合わなくなったらどうするの?」
ほむらさんの鋭い視線が私を射貫きます。
「理想は、強くなきゃ貫き通せないのよ。貫き通せないのなら、手の届く範囲で選択するしかない」
その言葉は、私たちが経験してきたことそのもので。
凜さんがいなければ、私たちはこんなにも無力なのだと、改めて思い知らされました。
けれど。
「いや、です……」
「えっ……」
「凜さんが死ぬのも……! ほむらさんが凜さんを殺さなくちゃいけないのも! 全部、全部嫌です!」
「まばゆ。けど……」
私は指を3本立てた状態で、ほむらさんにビシッと突きつけます。
「3日! 3日だけください! 今度こそ凜さんの手、掴んでみせます!」
ほむらさんは少しの間黙っていましたが、やがて諦めたように言いました。
「……分かったわ。3日だけ待つ。それで凜の考えが変わらないようなら、今度こそ彼女を消すわ」
「……っ! ありがとうございます!」
ほむらさんの言葉に、私は感謝します。
そっぽを向くほむらさんも、どこか安堵したような顔をしている気がして。私は少し胸が温かくなりました。
大丈夫。
今までだって乗り越えられたんです。
例えどれだけ希望が見えなくても、私はもう止まりません。
DAY.90
ユリちゃんさぁ~……。(ため息)
なんで助けを拒む必要があるんですか?(正論)
ただでさえ少ない味方を更に減らすのやめちくり~。
あ、説明忘れていましたが、みことちゃんルートに入ると、ほむらちゃんも割と高確率で敵対します。まどかちゃんを害する存在になるかもしれないからね、しょうがないね。
……ふざけんな!!(一行矛盾)
だから、さっきの説得場面にもいなかったんですね。
まあでも、今回はほむらちゃんの好感度もまばゆちゃんの好感度も均等に稼いだから、ワンチャンあるか……?
ってチャンスを、先ほどの場面でユリちゃんがていねていね丁寧にすり潰したので、ダメみたいですね……。(諦念)
悔やんでいても仕方ありません。
私は私にできることをしましょう。
今日からの動きですが、冒頭で伝えたように、みことちゃんの幸福度をひたすら上げていきます。
一緒に学校行ったり、デートしたり、家でイチャイチャしたり……、などなど。
色々なイベントをこなしてみことちゃんを幸せにしましょう。
それでは、早速学校に……。
え、なに? ユリちゃん、学校行きたくないの?
……なになに? まばゆちゃんたちに顔を合わせたくない?
はぁー……、つっかえ。
というわけで、ユリちゃんが登校拒否してしまったので、学校はお休みです。
仕方ないので、午前中から遊びに出かけましょう。
みことちゃんにこれを咎めてくれる道徳があれば良かったのですが……。生憎、彼女も学校にはあまり良い思い出がない子なので、「行きたくないなら無理に行く必要ないじゃない」と全く止めてくれません。
てなわけで、学校サボってみことちゃんとのデートに予定変更です。
こうなると、いくつか候補が挙がるので、その中から選びましょう。
んー、今回はショッピングモールですかね。
ちょっとユリちゃんのメンタルがヤバそうなので、二人でワイワイ楽しめる場所に決めました。みことちゃんとの夢の舞台に選ばれていましたし……。ちょうどいいでしょう。
なんでユリちゃんはこの場所が一押しなんでしょうねぇ?
そら、(一番好感度高い子との出会いの場所だから)そうよ。
というわけで、やって来ましたショッピングモール。
原作でも時々出番のあったこのショッピングモールですが、みことちゃんと二人きりは初めてですね。
じゃ、いっぱい遊んでいきましょー。
あ、動画尺がエグいことになるので、遊んでる場面はカットします。視聴者ニキたちには見せません。
見たかったら、自分でプレイしてどうぞ。
というわけで、私も失礼して……。
ユリちゃ~ん、みことちゃ~ん。百合?ってよく分かんないけど、二人とも何だか楽しそうだっピ! ボクも混ぜてほしいっピよ~!
???<お前を○す……。(デデン!)
ん? なんだお前。放せコラ、(みこ凜を)流行らせコラ!
ホギャアアアアアァァァ……!!!??
DAY.90 Side MS
愛って、なんだろう。
私はその答えが分からない。
私の愛は、帆奈ちゃんだけのもの?
きっと、そうだと思う。帆奈ちゃんさえいてくれれば、他には何もいらなかった。
じゃあ、凜ちゃんといるときに感じる気持ちは、愛じゃない?
私には、分からない。
この日、私たちは一日中、遊び回った。
ゲームセンターで遊んで、ショッピングモールで買い物して。凜ちゃんが近くにあるって言うから、熱帯魚の水槽がたくさんあるお店に行った。
どれも、私がほとんど経験できなかったことで、凜ちゃんは私が見たいもの、欲しいものを手に取って、買ってくれた。
お魚を見たときは、本物の水族館には敵わないけど、なんて凜ちゃんは言ってたけど、私にはあれで十分だった。
楽しかった。
今日一日を形容する言葉は、この一言だろう。
こんなに楽しかったのは、帆奈ちゃんと一緒に過ごしてた頃以来だった。
けど、それと同時に、少しの違和感も感じていた。
魚の骨が喉に刺さったみたいな、変なモヤモヤ。それを胸の奥で感じていた。
凜ちゃんは学校を休んだ。
学校に行きたくないって、みことちゃんのほうが今は大事だからって。
私は、「それなら行かないで良いんじゃない? 無理して行くもんじゃないよ、学校なんて」って言った。
まばゆちゃんたちとの生活より私を選んでくれたことに優越感を覚え、私は密かにほくそ笑んだ。
「学校休んじゃうなんて。凜ちゃん、ワルだね、ワル」
「ワルって。でも、そうだねー。これで私も立派な不良学生だ」
そう言って笑う凜ちゃん。どこか清々しく感じる笑顔は、私を懐かしい気持ちにさせてくれた。
けれど、時間が経てば経つほど胸のモヤモヤはハッキリとしてくる。
(どうして?)
そう自分に問いかけるも、答えは出なかった。
いや、考えたくなかったと言ったほうがいいかもしれない。
ふと、私は凜ちゃんのソウルジェムが目に入った。
凜ちゃんが手を開いたときに見えた、指輪の内側。
そこに嵌め込まれた宝石は、どこかくすんだ色をしていた。
「凜ちゃん、それ……」
私はつい、口に出していた。
私の言葉と視線で、凜ちゃんもソウルジェムを見る。
「あれ?」
凜ちゃんがソウルジェムを指輪から宝石に戻せば、私の見間違いなどではなく、確かに濁っていた。
「おかしいな。昨日、浄化したはずだったんだけど……」
凜ちゃんは首を捻りつつも、ソウルジェムを指輪に戻す。
「後で浄化しないとね。ありがとう、教えてくれて」
凜ちゃんは笑顔で私に言った。
その後、私たちの間に会話は無かった。
紅い夕日が、凜ちゃんを暗く照らしていた。
家に帰ってからも、凜ちゃんはどこか心在らずといった感じだった。
ボーッとしていたと思ったら、急にウロウロしだしたり。
私でも読み取れないくらい、思考がグチャグチャで、感情が渦を巻いていた。
ふと、何かを思い立ったのか、凜ちゃんは縋り付くように棚の一つを開ける。
そこに仕舞われていたのは、アルバム。それと、カードケースのようなもの。
凜ちゃんはその両方を取り出すと、机の上に置く。
凜ちゃんはアルバムを開く。
そこにあった写真は、凜ちゃんのこれまでの歩み。みかづき荘の皆の写真。鶴乃さんとの写真。まばゆちゃん、ほむらちゃんとのスリーショット。
たくさんの写真の中、特別に装飾された写真のページを凜ちゃんは開く。
そこに写っていたのは、凜ちゃんとメルちゃん。
凜ちゃんは写真のメルちゃんを指で優しく撫でると、ポツリと呟いた。
「メル。ちょっと使わせてもらうね、あなたの占い」
そう言って、凜ちゃんはカードケースを開ける。
そこに入っていたのは、タロットカードだった。
「凜ちゃん、占い出来たの?」
私が尋ねれば、凜ちゃんは恥ずかしそうに頬を掻く。
「見よう見まねのだけどね。前にメルが教えてくれたんだ」
――占いが気になる、ですか? ふっふーん、凜も仕方ないですね~。
――いいでしょう。凜にはボク秘伝のやり方を、特別に教えてあげましょう! 門外不出のオリジナルですから、感謝してくださいね?
――……もしこの先、凜が人生に迷って、その場にボクが駆けつけられないとき。そのときに、やってみてください。そうすれば、ボクも少しは凜の助けになれますから。
凜ちゃんの記憶から流れてきたのは、そんなビジョン。
凜ちゃんは懐かしむような顔で、タロットカードを動かしていく。
「今から占うのは、私の道。私の人生」
宣言するように、凜ちゃんは言う。
慣れた手つきでタロットカードを操るその手さばきは、きっと何度も練習したんだと、理解に時間はかからなかった。
やがて、カードは3つに分けられ、凜ちゃんはそこから一枚ずつカードを引く。
「この3つが私の人生を指し示すカード。過去、現在、そして未来を」
凜ちゃんは私に説明するように、カードをそれぞれ指さす。
「じゃあ、カードオープン」
そうして、凜ちゃんはカードを裏返す。
一番左、過去を指し示すカードにあったのは、逆さまに吊された男の絵柄のカードだった。
「過去は……、『吊された男』の正位置。ははっ、私らしいや」
「このカードって、どんな意味なの?」
私が問いかければ、凜ちゃんはカードを手に取って説明を始める。
「これはそのまま『吊された男』ってカードで、正位置の意味は自己犠牲、忍耐、試練といった感じかな。自らの頭で考え、奉仕に準ずるってカードだから」
(ああ、だから……)
凜ちゃんの、私らしい、といった意味が分かった。
これが凜ちゃんの過去を表わすカードなら、この占いの精度は本当に高いのかもしれない。
次に凜ちゃんがめくったのは中央、現在を示すカード。
その絵は太陽が描かれた絵のカードだった。
「『太陽』の逆位置……。なんだか幸先悪いなぁ」
凜ちゃんのぼやきに、私は先ほどと同じように尋ねる。
「このカードは?」
「これも見たまま、『太陽』のカード。単語が示す通り、成功とか幸福とか、基本的にすごい良い意味のカードなんだよ。ただ、逆位置だと……」
「だと……?」
「挫折、成長の失敗とか、悪い結果に繋がるってことなんだ。太陽のカードが努力や成長に関するものだから、逆位置だとそれが上手くいかないってことになるんだって。そういえばメルも、これが転じて、計画や積み重ねが頓挫するとか言ってた」
「ええ……」
もしそれが本当なら、縁起が悪すぎる。
これが現在を指し示しているのだから、私は早くも不安になってきた。
そんな私とは対照的に、凜ちゃんはさして気にした様子もなく、一番右、未来を示すカードをひっくり返す。
「それで、未来はっと……」
そこに描かれていたのは……。
「……『死神』、正位置」
凜ちゃんはどこか、寂しそうにそう呟いた。
「ねえ、これって……」
私は震える声で尋ねる。
なんとなく、私でも想像できる。
けど、私の間違いであってほしかった。
「多分、みことちゃんの想像の通りだよ」
対して凜ちゃんは、どこか他人事のように解説をする。
「『死神』のカードの意味は、章の区切りや物語の終わりみたいに、何かに終止符が打たれることを示すんだって。だから、正位置が示すのは、終わりや崩壊、そして、死」
「っ……」
「これが未来ってことは、私、近いうちに死んじゃうかもね」
あははっ、と笑う凜ちゃんは痛々しい。
「ふふふっ。今の私には相応しいかもね、この結果」
凜ちゃんはどこか満足したような顔で言う。
「……どうして?」
「え?」
「凜ちゃん、どうして満足げな顔なの? 死んじゃうかもしれないんだよ!?」
「うん」
「なら、どうして!?」
「メルの占いだから」
凜ちゃんはハッキリと言い切った。
「例えどんな結果でも、メルの占いが示したのなら、私は受け入れられる。メルが私に未来をこう示したってことは、それがきっと私の進む道。メルが切り開いてくれた道だから」
「でも……」
「いいの。これが私の運命だったってだけ。それなら、この定められた運命の中で、必死に抗う。私で救える人たちを救う。メルみたいにできるか分からないけど、やってみる。そうじゃなきゃ、メルに顔向けできない」
凜ちゃんの脳裏に過ぎったのは、メルちゃんと過ごした最期の日。
占いの結果を見てもなお、戦うことを、救うことを選んだメルちゃん。
凜ちゃんは今、メルちゃんみたいに在ろうとしている。
死ぬのだとしても、ただ死ぬのと、抗って死ぬのなら、抗いたい、と。
そう、凜ちゃんは考えているのだ。
「大丈夫。そう簡単には死なないよ」
笑顔で言う凜ちゃんの顔を、私は直視できなかった。
私には分からない。
凜ちゃんに対する気持ちも。
私自身の感情さえも。
帆奈ちゃんに会いたい気持ちも、神浜を恨む気持ちも、凜ちゃんに生きてほしい気持ちも。
全部全部、私の中に確かにある。
凜ちゃんが肯定してくれた私の怒りと呪いは、凜ちゃんが受け止める気だろう。私がこれ以上、誰も傷つけないように。
でも……。
(違うの、凜ちゃん……。凜ちゃんを傷つけたいわけじゃないの……)
傷つけたくないのに、私は恨みを捨てられない。
私には分からない。
もう誰が恨めしかったのか。
この恨みが、誰のものなのかも。
DAY.90 Side HA
「そんな辛気臭い顔して、どうしたほむら?」
下校途中、私はそう声をかけられる。
振り返れば、そこにいたのは、まどかと美樹さやか。
「……あなたたちには関係ないわ」
「いやいや、私たちに関係ないとか、それこそ関係ないって」
「そうだよ。ほむらちゃんが何か悩んでるなら、私たち力になりたくて……」
私をいたわるように、まどかが優しく言う。
とはいえ、まどかに魔法少女の問題に巻き込ませたくはない。
そのため、黙ってこの場を去ろうとしたときだった。
「ほむらが悩んでいるのは、夕凪凜のことじゃないかな」
聞こえてきた声に、私は足を止める。
「キュゥべえ……!」
まどかの視線の先。
そこには、憎き白い獣がいた。
「げっ。あんたはお呼びじゃないんだけど」
美樹さやかはあからさまに嫌な顔をして言う。
しかし、キュゥべえは気にする様子もなく、こちらに近づいてくる。
咄嗟に拳銃を取り出したくなるものの、ここが通学路であることを思い出す。
時間停止も使えないのでは、間違いなく注目を集めてしまう。
私は唇を噛んで、ヤツへの殺意をグッと堪える。
ヤツはそれを知ってか知らずか、優雅に私の横を通り過ぎていく。
「ヒドい言い草だね、さやか」
「当然でしょ。あんたを警戒しないほうが難しいわ」
まどかを庇うように立つ美樹さやかに、キュゥべえは構わず続ける。
「そう警戒しないでくれ。今回は、キミたちにも状況の共有と協力をお願いしに来たんだ」
「黙りなさい」
協力。
キュゥべえからその言葉を聞いた瞬間、私はヤツの言葉を遮るように言葉を発していた。
コイツのことだ。間違いなく、鏡の魔女の件に彼女らを関わらせる気だろう。あわよくば、そのまま契約まで。
「二人とも、コイツの言うことに耳を貸さないで。行くわよ」
「それでいいのかい? このままじゃ、夕凪凜を殺すことになるんだろう?」
「「えっ……!?」」
チッ、と舌打ちをする。
まばゆとの約束は聞かれていたようだ。
完全にやられた。キュゥべえがこう言えば、必然的に……。
「ほ、ほむらちゃん、どういうことなの……?」
「ちょっとほむら! なんであんた、凜センパイ殺そうとしてんの!?」
まどかは混乱したように問いかけてきて、美樹さやかは私に詰め寄ってくる。
「そ、それは……」
関係ない、と突っぱねたかったが、さすがにここまで知られてしまえば、隠すのは逆に怪しく思われてしまう。それで契約なんてされようものなら、それこそ最悪だ。
私は観念して話すことにした。
「……凜は今、とある少女に取り憑かれているのよ。人格の移植の魔法でね」
「人格の移植?」
「私も詳しく知らないわ。確かなのは、凜の中にもう一人、別の人物がいるということよ」
私は頭を押さえながら、説明を続ける。
「厄介なのは、凜の中にいる少女は、既に魔女化した人物であること。そして、魔女化した自分を操って、神浜を滅ぼそうとしていることよ」
「神浜を……!?」
「滅ぼすぅ!?」
美樹さやかが大声を上げたことで、下校途中の学生たちから奇異の目線が向けられる。
美樹さやかはゴホン、と咳払いをすると、声のトーンを落として確認してくる。
「そ、それ、マジなの?」
「本当さ。それどころか、鏡の魔女と瀬奈みことが計画を実行すれば、被害は神浜だけに留まらない。破壊は連鎖的に広がっていき、この宇宙すら滅ぼすだろうね」
キュゥべえの説明に、美樹さやかは唖然とする。
「う、宇宙って……。スケールデカくなりすぎて、ちょっと実感沸かないわ……」
とにかく、と美樹さやかは私を見る。
「その魔女をほっとくとヤバいってことなのね。凜センパイはこのこと、知ってんの?」
「ええ」
「マジか……。じゃあ、なんで止めないのさ。体の主導権、奪われてるとか?」
「いえ。凜はその少女、瀬奈みことを守る気よ」
「なんで!? ソイツ、世界を滅ぼそうとする悪いヤツなんでしょ!? 凜センパイ、そんなヤツを庇うとは思えないんだけど……」
さやかが理解できないという感じで言うと、まどかはポツリと呟く。
「本当に、悪い子なのかな……」
まどかの呟きに、美樹さやかは手を振る。
「いやいや、まどか。世界滅ぼす気のヤツが悪いヤツじゃなきゃ、何なのさ」
「私も上手くは言えないけど……。でも、凜さんがその人を守ろうとしてるんだよね? 何か訳があると思うんだけど……」
「まあ、まどかは凜センパイと一緒に取材とか行ってたから、信じたい気持ちは分かるけど……。でも、どんな訳があったとしても、滅びを選ぶヤツは許しちゃダメでしょ……」
美樹さやかがそう言ったことで、まどかはハッとする。
「……もしかして、それが理由なんじゃない?」
「え、なに? どういうこと?」
「凜さんは、瀬奈みことさんを許す立場にいたいんじゃないないかなって。小さい頃、悪いことをしたらお母さんとかに怒られるよね。でも、最後は許してもらえたの。さやかちゃんもそうじゃない?」
「それは、そうだけど……」
「それと同じだよ。凜さんは、瀬奈みことさんの味方でいるのは、きっと彼女がした悪いことを許すためじゃないかな……」
まどかの言葉で、私はハッとする。
私は今まで、凜の行動をいつもの人助けの延長線上としか捉えておらず、彼女を突き動かす明確な理由まで考えていなかった。
でも、この仮説が正しければ、凜の動機の根本は恐らく……。
(彼女の過去……。あなたも、許されたいのね……)
「けど、悪い事って何なのさ。神浜を滅ぼすこと?」
「いえ、それはないわね」
美樹さやかの問いを、私は否定する。
「凜は、鏡の魔女とその計画は止める気よ。たった一人で。だから、凜が許したい瀬奈みことの罪はきっと別。恐らく、一年前の……」
私がそこまで言ったところで、口を挟んできたのはキュゥべえだ。
「凜の行動理由はともかく。ボクが協力をお願いしたのは、その凜の行動指針さ。凜は鏡の魔女を倒す気だ。しかもたった一人で。恐らく、誰かに迷惑をかけたくないんだろう。けれど、ボクから言わせれば想定が甘すぎる。鏡の魔女は近頃更に力をつけ、今やワルプルギスの夜に近い強さに成長している。到底、魔法少女一人で勝てる相手じゃない」
けどね、とキュゥべえはまどかを見る。
「まどか。キミなら運命を変えられる。キミのその背負った因果なら、鏡の魔女だって倒せるだろう。凜を、世界を、そして宇宙を救えるのはキミしかいないんだ。ボクたちとしても、宇宙が滅ぶのはとても困ることなんだ。だから、まどか」
キュゥべえは真っ直ぐにまどかを見て、言う。
「ボクと契約して、魔法少女になってよ」
少しの沈黙の後、まどかはゆっくりと口を開く。
「キュゥべえの言うこと、分かったよ。あなたは、嘘はつかないもんね。私が契約すれば、皆を助けられるんだよね」
「まどか……? まさか……!」
焦る私に、まどかは笑う。
「大丈夫だよ、ほむらちゃん」
そうして、再度キュゥべえを見て、まどかは大きく息を吸い込むと、覚悟を決めた顔で言い放った。
「キュゥべえ、ごめん。私は契約しない」
「何故だい? キミが望めば、キミの友だちも、この世界も、全て守れるんだ。その力がキミにはある。キミも言っていたじゃないか。こんな私でも誰かの役に立てるならって」
「うん。その想いは今も変わらない」
「なら……」
「でも、私が契約したら、ほむらちゃんを悲しませちゃうから。凜さんのことは心配だし、この世界に滅んでもほしくない。けどね、キュゥべえ。私、凜さんに教わったの。こんな私でも、できることはあるって」
まどかはそう言うと、通学鞄から一冊のノートを取り出す。
「これ、凜さんや里見先生、那由多さんたちと取材に行ったときにいつも使ってるノートなの。まだまだ空白は多いけど、たくさんの魔法少女の話を聞いたよ。そして、この話を伝えるには魔法少女じゃない人の存在が必要なんだって。公平性とかもあるし、なにより魔法少女のことを魔法少女じゃない人が広めることに意味があるんだって」
まどかはノートを見ながら、愛おしそうに言う。
「私、魔法少女と関わって、たくさんの友達ができた。それって、きっとこのためだったんじゃないかって、今なら思うの。だから、私は魔法少女にはならない」
まどかは私を見て、微笑んだ。
「だって、まだ未来は決まってないんだもん。きっと、ほむらちゃんたちなら何とかしてくれる。ほむらちゃんたちが私を信じてくれたように、私もほむらちゃんたちを信じる」
まどかの宣言に、キュゥべえは首を横に振る。
「やれやれ。ワケが分からないよ。確実性より、何の根拠もない信頼で、リスクのある選択をするなんて」
「理由ならあるよ」
「それは、なんだい?」
「だってほむらちゃんは、友だちだもん」
まどかは一切の躊躇いなく、そう言い切った。
その瞬間、私の中にあったモヤは徐々に晴れていく感じがして。
「ほむらちゃん、魔法少女にはなれないけど……。凜さんのこと、私たちも手伝っていいかな?」
まどかに差し出された手を、私は自然と取っていた。
「……ええ、お願い。私の大切な、友達だから」
思ったより凜がメルちゃんのこと好きすぎて、作者が一番驚いています。
タロット占いについては聞きかじりの知識なので、ちょっと変かもしれませんが、ご容赦を。少なくとも、凜はあんな解釈をしてると思っていただけると……。
あと、思ったより話が長くなってきて困惑してます。
おかしいな……。6話くらいで完結させるはずだったのに……。