魔法少女まどか☆マギカ 実績『朝焼けのエンドロール』獲得 作:くろしゅー
(まどドラに悪魔さまが降臨されたので)初投稿です。
DAY.95 Side MS
「瀬奈」
「帆奈、ちゃん……?」
「そ。……まあ、その、久しぶりじゃん? 元気だった?」
そう言って笑いかける彼女に、私は駆け出していた。
0.1秒でも早く触れたくて、私は勢いを殺すことなく彼女へと飛び込む。
「帆奈ちゃんっ!!!」
「おっとと……」
そんな私を、帆奈ちゃんはしっかり受け止めてくれて。
それが、帆奈ちゃんがちゃんといるって実感させてくれる。
「帆奈ちゃん、帆奈ちゃんっ……!」
「ちょ、瀬奈……! 気持ちは分かるけど、苦しいって。一旦離れて……」
「やだ!!」
「やだって……」
「絶対離れない! やっと会えたんだもん! もう絶対離さないから! 苦しいのも我慢して! 私一人残していっちゃったんだから!」
私は帆奈ちゃんを抱きしめる腕に力を込める。
「ずっと、ずっと、寂しかったんだから……!」
ふと、私の頭に優しい感触が触れる。
「……ごめん、瀬奈。あたしが悪かったよ。それと、会いに来てくれてありがとう。あたしも、寂しかった」
帆奈ちゃんは片手で私の頭を撫でながら、もう片方の腕で抱きしめ返してくれる。
「――ッ!」
私はそこで我慢の限界を超えて、大声で泣いた。
今日だけでたくさん涙は流した気がするけど、この涙は枯れることを知らないみたいに止めどなく溢れる。
私たちは離れていた時間を埋めるように、お互いを抱きしめ合った。
「――でね、私があっち見に行こうって言ったら凜ちゃんが……」
抱きしめ合って、しばらくしてから。
ようやく涙が落ち着いた私は、帆奈ちゃんに色々なことを話した。
帆奈ちゃんがいなくなってから、どう過ごしていたか。
たくさんの出来事を目にして、たくさんの人の中で過ごしてきたか。
そして、凜ちゃんと会って、これまでに過ごしてきた日々を。
凜ちゃんと、夢の中で過ごした日々。
現実で関わるようになってからの日々。
凜ちゃんと色々なとこに遊びにいったこと。
凜ちゃんを通じて、色々な魔法少女を見てきたこと。
凜ちゃんが、ここまで連れてきてくれたこと。
私の話を、帆奈ちゃんは楽しそうに聞いていた。
まるで喫茶店で話していた、あの頃に戻ったみたいに。
帆奈ちゃんがあまりに笑顔だから、私は話の途中で尋ねてみた。
「ねえ、帆奈ちゃん。なんでそんなに笑顔なの?」
すると帆奈ちゃんは、その笑みのまま答える。
「ええ~? だって瀬奈が、そんなに楽しそうに日常のこと話してくれるからさ。瀬奈もそういう日々、送れてたんだって思ったら嬉しくてさ」
その言葉に、私は苦笑いする。
「そんなことないよ。さっきも言ったけど、ほとんど寂しくて、怖くて、辛かったんだから」
でも、と私は付け加える。
「そうだね。最後のほうは楽しかったかな」
「……それは、やっぱり凜のおかげ?」
「うん。凜ちゃんが、思い出作ろうって見滝原の色んなところ連れてってくれたから」
凜ちゃんと遊んだあの時間は、私の人生でも間違いなく楽しかった時間の一つだ。
けど。
(それだけじゃない)
「凜ちゃんと過ごした全部の時間が、大切だよ。私のお願いを聞いてくれて、一緒に帆奈ちゃんに会う方法を模索して、色んな作戦考えて、邪魔するヤツぶっ飛ばして。危ないことも、怖い思いをしたこともあったけど。それでも、楽しかったよ」
「そっか」
私の言葉に、帆奈ちゃんは満足げに頷く。
「瀬奈は、ちゃんと復讐を捨てて生きてくれたんだ」
それに私は首を横に振る。
「ううん。私だけじゃダメだった。凜ちゃんが私の呪いも全部受け止めて、背負ってくれたからだよ。凜ちゃんが、私の幸せのためにずっと奔走してくれたから。凜ちゃんから、たくさんの優しさと愛をもらったから。凜ちゃんが幸せになる未来を、私も望めたんだ。私一人じゃ、きっと……」
「それでいいんじゃん」
私の語りを遮るように、帆奈ちゃんは言う。
「別に一人で変わる必要なんてない。人が変わるのは、いつだって出会いなんだから。瀬奈があたしを変えてくれたみたいにさ」
「……それなら、私だって。帆奈ちゃんのおかげで、今までの日常が変わったもん」
張り合うように言った私に、帆奈ちゃんは面白そうに笑う。
「そうそう。だから、瀬奈を託したのが凜で良かった。さっすがあたし。見る目ある~。アッハ!」
あんたもそう思うでしょ、と、帆奈ちゃんは顔を横に向ける。
私もつられて横を向けば、少し遠くに人影があった。
まるで気配を殺すように縮こまるその人影は、私の友だちの影だった。
「凜ちゃん! どうしてここに……って、そうか。ここ、凜ちゃんの心の中だもんね」
一瞬忘れていたが、そもそも凜ちゃんの心の中を借りて行った作戦なのだ。
凜ちゃんの意識がここにいても、なんら不思議ではない。
「ごめん。盗み聞きするつもりは、なかったんだけど……」
申し訳なさそうに俯く凜ちゃんに、帆奈ちゃんは呆れたように言う。
「なーに言ってんのさ。ここはあんたの心の中でしょ? むしろ、あたしらが勝手に邪魔してる立場だし」
「そうだよ、凜ちゃん。それに凜ちゃんなら、別に聞かれても嫌じゃないし。凜ちゃんも、これくらいで私たちのこと、嫌いにならないよね?」
私が首を傾げながら確認すれば、凜ちゃんは、うん、と頷く。
そこで帆奈ちゃんは、優しい顔で言う。
「それと……。言うのが遅くなったね。久しぶり、凜」
帆奈ちゃんの言葉に、凜ちゃんも私たちに近寄ってくる。
「うん、久しぶり。更紗さん」
静かに笑う凜ちゃんとは対照的に、帆奈ちゃんは少しつまらなそうにする。
「なんか随分と冷めてんじゃん。あたしを引き止めようとしてくれた、あん時の熱量はどこいっちゃったのさ」
「それは……」
「……なんて、ウソウソ。あんたたちのことは見てたから知ってるよ。瀬奈のため、あんだけ頑張ってくれてありがとね。それと、あたしとの約束も忘れないでいてくれて」
帆奈ちゃんは笑って言うが、今度は凜ちゃんが暗い顔になって俯いてしまう。
「お礼なんて……。私は更紗さんを助けられなかった。みことちゃんだって、私が上手くやれてれば、もっと長い間生きてられたかもしれないのに。いやそもそも、私がもっと賢ければ、みことちゃんに身体を用意してあげることだって……」
まただ、と思った。
凜ちゃんの悪いクセ。もっと上手くやれたのに、と自分を追い詰めてしまう。
「そんなこと、ないよ」
だから、私は伝えることにした。
「私、凜ちゃんに感謝してる。私のために、色んな人に声かけて、走り回って、傷ついて。私のためにここまでしてくれたの、帆奈ちゃん以外には凜ちゃんしかいないよ」
凜ちゃんはもっと自信を持っていい。もっと自慢していい。
優しすぎるその心で、私に寄り添ってくれたあなたには、世界で一番幸せになってほしいから。
「~してれば、なんて『もしも』、考える必要ないよ。私は今、すごく幸せだもん。帆奈ちゃんに会えたことと、凜ちゃんが約束を守ってくれたこと。大げさじゃなくて、本当にこれで十分」
だからね、と私は凜ちゃんに触れる。
ようやく触れられた凜ちゃんの手は温かくて、彼女の優しさを表しているようだった。
手が温かい人は心が冷たい、なんて聞いたことあるけど、そんなのウソだ。
だって、凜ちゃんはこんな私のために、泣いてくれるんだから。
「ありがとう、凜ちゃん」
「……っ」
私の隣に帆奈ちゃんが立つ。
「私も、お礼言わせて。あんただって辛かっただろうに、瀬奈のこと守ってくれて、ありがとう。あたしの代わりを任せちゃったのは、本当にごめん」
凜ちゃんは嗚咽を漏らしながら、首を横に振る。
「ホント、あんたは優しすぎて心配になる。もっと、自分のこと考えなよ?」
「帆奈ちゃんがそれ言う?」
「うっ……! それを言われると……」
「でも、帆奈ちゃんのメッセージは嬉しかったよ。本当に心が温かくなった。そして、凜ちゃんが帆奈ちゃんのその希望を実現してくれた」
それを聞いた帆奈ちゃんはフッと微笑む。
「瀬奈もこう言ってるし。あんたは良くやったよ。これ以上ないくらい、立派だったよ」
帆奈ちゃんが、私とは反対側の凜ちゃんの手を握る。
「ありがとね。あたしたちの声に気づいて、手を伸ばしてくれて。知ってた? あん時、あたしは十分すぎるぐらい救われてたんだよ?」
DAY.95 Side HS
初めて凜に会ったとき、あたしの感想は、なんだこいつ、だった。
あたしたちを追ってきたから、常磐ななかたちの仲間かと思ったのに、その割にはやけにあたしたちの肩を持つ。
全く敵意を感じない。
それにあたしは困惑するしかなかった。
けれど、会話をするうちに、凜のことが徐々に分かってきた。
(ああ、こいつ……。あたしの『もしも』、だ)
クソみたいな親の元に生まれて、クソみたいな暴力を受けて。
それでも、こいつは道を踏み外さなかった。
あたしと凜の違いは、出会いか、人としての心の強さか、運命か。
理由は分からないけど、凜はあたしの『もしも』の姿なのかもしれないと思った。
「私はね、更紗さんの味方になりに来たんだよ」
「更紗さん一人に責任は負わせない。私も一緒に罪を被るし、罰も受ける。更紗さんが辛かったら、ずっと支える。寂しかったら抱きしめる。全て捨てても、私は更紗さんの側に居続ける」
だって、こんな悪党のあたしにすら、手を伸ばして助けようとしてるんだから。
例え誰であっても、見て見ぬ振りなんてせず、損得なんか関係なしに手を伸ばす。
凜は、あたしが夢見た、なりたかったヒーローそのものだった。
あたしに差し出される手は、とても眩しく感じた。
けど。
凜の放つ光は、彼女の絶望と後悔、悲嘆を燃料にしているものだって、あたしはすぐに知ることになった。
「生きてるだけでこんな罪を重ねるくらいなら、こんな命いらない!」
「けど、この罪のおかげで私は今生きている。なら、誰かのために使わないと。そうじゃないと、私は私を許せない」
「だから、更紗さんに使うの。あなたのためなら、私は全部を捧げられる。あなたを救えれば、きっと私が生まれた意味になる。ここまで烏滸がましく生きてきた価値は見いだせる」
私が問いかけた、「あたしの味方になったら、あんたの命と人生は?」という問いに、凜はこう答えた。
これを聞いて、あたしは凜を受け入れられた。
キレイなだけのやつじゃなかった。清廉潔白な存在じゃなかった。
「もう私のせいで死なないで……」
それでも、誰かのために動こうとする凜のその言葉に、あたしの心は動かされた。
結果的に言えば、私は凜の手を取らなかった。
本音を言えば、あの手を取りたくないわけじゃなかった。
もっと違う出会いかたをしていれば、あたしは凜の手を取っていただろう。
でも、あたしにはもう時間がない。
残された時間の中でやりたいことがあるから。
「瀬奈」
凜を暗示で振り切った後、あたしは瀬奈に声をかける。
「なに、帆奈ちゃん?」
「きっと、凜があたしたちの探していた希望だ」
あたしは確信した。
凜こそ、あたしたちがこの世界で足掻いて、足掻いて、足掻いた先に見つけようとしていた、この世界の希望だ。
このクソッタレな世界で小さく光る、灯台のような光。
あたしたちにすら……。いや、あたしたちだからこそ、あの光は優しく包み込む。
「あいつなら、きっと絶望と憎しみにも負けない世界の光を見せてくれる」
だからあたしは。
(あんたの光は、あたしで陰っていいものじゃない)
今のあいつは、あたしが望めば、きっとあたしと一緒にどこまでも堕ちようとする。
でもそれは、凜の光を未来のない袋小路へと進ませる道で。
そんな選択肢、あたしは許せなかった。
だからあたしは、最後までヴィランでいることを選ぶ。
「あたしの希望は、凜に託す」
「帆奈ちゃん? なに、言ってるの……?」
(瀬奈。今は分かんないかもしれないけど、きっと大丈夫)
あいつなら、あんたの心も照らしてくれるから。
だから。
(後は、頼むよ……。凜)
この土壇場で、こんな出会いをするなんて。あたしにも、最後の最後で運が向いたのかもしれない。
「アッハ……。案外、悪くなかったじゃん。あたしの人生も……」
ソウルジェムを砕いたとき、最期に呟いたのは、そんな言葉だった。
せめて瀬奈と、あたしたちに命を捧げようとするお人好しに、幸せな未来があることを願って。
それで、あたしの人生は終わったと思ってたんだけど。
幽霊を呼び出す魔法で、あたしは再び瀬奈と凜の2人に再会した。
そこで、あたしは知った。
凜があたしを、あたしたちを救いたかった理由は、ただ同情しただけでも、凜の中にあたしの見出した希望があったからだけじゃなかったってこと。
凜は、ただ友だちになりたかったんだ。
つまり、あたしに最初に言ってきた、「友だちになりにきた」は比喩でも、交渉の方便でもなかったんだ。
「悪いね、あんたにも寂しい思いをさせて」
俯く凜に、そう声をかける。
「あの時のあんた、本当に危なっかしかったんだ。だから、少しでも自分を大切にしてほしかった。あんたが生きていることが誰かの希望を叶えてるってこと、知ってほしかったんだ」
だから、凜の手を取らなかった。
「でも……、そうだね。寂しい思いは、苦しいもんね」
瀬奈も凜も、どれだけ苦しかっただろう。
「けど、それでも生きててくれて、ありがとう。こうして会ってくれて、ありがとう」
思えば、あたしは凜を最初から信じてたのかもしれない。
だって凜は。
あの日、あたしたちが教室の黒板に書き殴った言葉を……。
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あの日、私たちが教室の黒板に書き殴った言葉を。
幽霊みたいな私たちの存在証明を、凜ちゃんは見つけてくれた。
きっと、それだけで良かった。
「「私(あたし)たちを見つけてくれて、ありがとう」」
帆奈ちゃんと声が重なる。
後悔も、不満も、いっぱいあるけれど。
今なら、この汚い世界だって許せる気がした。
その時だった。
「うっ……!」
「凜ちゃん?」
凜ちゃんが胸を押さえて、前屈みになる。
どうしたの、と聞こうとして、その前に凜ちゃんが座り込んでしまう。
「凜ちゃん!」
「凜!」
凜ちゃんは苦しそうに、浅い呼吸をしている。
「ど、どうしたの!? 凜ちゃん、しっかり!」
私は凜ちゃんに声をかけ、なんとか凜ちゃんを楽にできないかと考える。
その横で、帆奈ちゃんは何かに気づいたように、ポツリと呟いた。
「……もしかして、もう時間が来ちゃった?」
帆奈ちゃんのその言葉に、凜ちゃんの瞳が大きく揺れる。
「帆奈ちゃん? 時間って……」
「決まってんじゃん。あたしがここに留まれる時間」
「あっ……」
そうだ。
この魔法は、他の魂を凜ちゃんの魂に一時的に融合するようなもの。凜ちゃんへの精神的負担は計り知れないって話だった。
帆奈ちゃんに会えた嬉しさで忘れていた。いや、忘れようとしていた。
凜ちゃんは浅い呼吸のまま、首を横に振る。
「だ、大丈夫……! まだ、問題ない、から……!」
「いや、それを信じるほど、あたしだって節穴じゃないって」
「本当に大丈夫なの……! 大丈夫、大丈夫……。二人の時間は、私が作るから、大丈夫……!」
凜ちゃんは帆奈ちゃんの言葉を必死に否定する。
それが却って、帆奈ちゃんの言葉が正解だと証明するのには十分だった。
「せっかく会えたんだもん……。私のことは気にしないで。大丈夫、私は大丈夫……」
うわ言のように呟く凜ちゃんは、私たちというより自分に言い聞かせているようだった。
手のひらに爪を食い込ませ、汗を垂らしながらも、凜ちゃんは呟いた。
「みことちゃんがずっと願ってた時間だもん……! こんなところで終わらせない……! 私が耐えれば、もっと……」
凜ちゃんの言葉を、抱きしめて遮る。
「ううん、いいの。もう、十分だよ。これ以上は、凜ちゃんが危ないもん」
「私なんて……!」
「ダメだよ」
私は凜ちゃんに優しく言う。
私が変われたように。凜ちゃんにも、変わってほしい。
いつまでも自分を蔑ろにしないでほしい。
「だって、私が復讐を捨てられたのは、凜ちゃんがいるからだもん。凜ちゃんにもしもがあったら、多分私、また復讐の道に戻っちゃう」
凜ちゃんを犠牲には選びたくない。
あなたは、私がこの世界で唯一、生きていくことを祝福できる子なんだから。
すると、帆奈ちゃんも口を開く。
「瀬奈の言う通りだよ、凜。あんたに何かあったら、あたしが後味悪くなる。せっかく瀬奈にできた友だちを、あたしのせいで壊しちゃったらさ。あたし、自分が許せなくなる」
「でも……! みことちゃんは良いの!?」
「もちろん、帆奈ちゃんとはもっと話していたいよ」
「だったら……!」
「でも、それは凜ちゃんが無事なことが前提。凜ちゃんを犠牲になんて、私はしたくない」
大丈夫。もう私は前へ歩いていける。受け入れて、進んでいける。
だから、最後に少しだけワガママを言わせて。
「じゃあ、凜ちゃん。一つだけお願い。私、最後に帆奈ちゃんと話したいことがあるの。だから、あとちょっとだけ、我慢してくれる?」
私の問いかけに、凜ちゃんは悔しそうにしながらも、コクリと頷いてくれた。
「ありがとう」
そう言って、私は帆奈ちゃんに向き直る。
「帆奈ちゃん。ずっと伝えられなかったことがあるの」
「なに?」
「私のこと、守ってくれてありがとう」
常磐ななかたちと戦う帆奈ちゃん、とっても格好よかったよ。
「私が生きていくことを祝福してくれてありがとう」
HAPPY BIRTHDAYのメッセージ、すごく嬉しかった。
「私と一緒にいてくれてありがとう」
あなたが一緒だったから、私はお姫さまのような、特別な女の子でいられた。
「私と、出会ってくれてありがとう」
あなたに会えたから、私は幸せの形を知ることができた。
「大好き、帆奈ちゃん」
私の言葉に、帆奈ちゃんは少し照れくさそうにして、フッと微笑む。
「こっちこそ、あたしと出会ってくれてありがとう、瀬奈」
「あたしも大好きだよ、瀬奈」
帆奈ちゃんの真っ直ぐな想いに、私の胸はいっぱいになる。
けれど、もう少し高望みしてみたくて、私は口を開く。
「名前で、呼んでほしいな」
「え?」
「帆奈と瀬奈。響きが似てるって言ったのは私だけど……。やっぱり、私も名前で呼んでほしい。お願い、帆奈ちゃん」
望みすぎかな?と不安になる。
でも、凜ちゃんが何度も言ってくれたもん。幸せになっていいって。幸せを願っていって。
(だから、大丈夫だよね……?)
すると、帆奈ちゃんは顔を赤くして。
「……大好きだよ、みこと」
「っ……!」
私の不安なんて溶かしてしまうくらい、優しくて温かい響き。
ああ、本当に幸せだ。
幸せを望んで、それがこうして叶えられるんだから。
私は今きっと、世界で一番幸せな存在だ。
熱を冷まそうと流れる涙を拭って、私は笑う。
私の幸せを帆奈ちゃんに伝えるように。
そうすれば、帆奈ちゃんも笑ってくれて。
お互いの熱も混ざり合うようだった。
「ありがとう、凜ちゃん。もう、大丈夫だよ」
私は凜ちゃんに声をかける。
本当に、全ての望みが叶った気分だ。
後は、凜ちゃんが無事でいることだけ。
「本当に、いいの……?」
凜ちゃんの問いに、私はゆっくり頷く。
「うん。多分、帆奈ちゃんとのお別れはちょっとだけだから」
もう、私の人格を維持するための魔力は残り少ない。
きっと、あと数時間。いや、数十分くらいしか残されていないと思う。
でも、不思議と恐怖と不安もない。
「きっとすぐ、向こうでまた帆奈ちゃんと会えるから。ね?」
帆奈ちゃんに視線を向ければ、帆奈ちゃんも頷いてくれる。
「うん。せ……、みことのこと、待ってるから。絶対、迎えにいく」
「ありがとう。すごく、嬉しい……」
だから、と凜ちゃんに伝える。
「私の幸せを考えるなら、凜ちゃんも無事でいて?」
すると、凜ちゃんは覚束ない足取りで帆奈ちゃんのほうへと歩いていく。
そして、帆奈ちゃんの足元で蹲って、唸るように呟いた。
「更紗さん、ごめんなさい……。助けられなくて、ごめんなさい……。こんなことしかできなくて、ごめんなさい……。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
それは凜ちゃんの懺悔だった。
帆奈ちゃんの命を救えなかったことをずっと後悔して。同じ虐待をされていた立場だったからこそ救いたかった彼女を、救えなかった現実に打ちひしがれて。取り憑かれたように、自分を犠牲にし続けた凜ちゃんの、ずっと言いたかった言葉。
そんな凜ちゃんに、帆奈ちゃんはしゃがむと、優しく凜ちゃんの頭を撫でる。
「もう謝んなくていいよ。気にするなってのは無理だろうけどさ。あれはあたしの選択だったんだ。凜が気に病む必要はない」
帆奈ちゃんは幼い子どもに語りかけるような声色で、凜ちゃんに言葉をかける。
「それに、あたしとみことの希望を託して、凜を縛ったのはあたしだ。お互いさまだよ。ここまで凜を苦しめるつもりはなかった。ごめん」
帆奈ちゃんの謝罪の言葉に、凜ちゃんは「そんなこと、ない……!」と小さく返す。
「やっぱあんたは優しいね。でもさ、そんなにあたしたちのこと考えてくれるなら、今度は凜が幸せになってよ。これは、あの時から変わんない、あたしの気持ちなんだ。世界の希望とか関係ない。ただあんた自身のために、幸せを望んでよ。それが、あたしたち、最後の望み」
それを伝えると、帆奈ちゃんは凜ちゃんから手を離す。
「じゃあ、そろそろ行くわ」
そう言って、帆奈ちゃんは草原の向こうへと歩いていく。
「帆奈ちゃん!!」
私は大声で帆奈ちゃんを呼ぶ。
「絶対、絶対待っててね!!」
それに帆奈ちゃんは一度だけ振り返り。
「もちろんだって! アッハ!」
その声が消える頃には、帆奈ちゃんの姿も消えていた。
DAY.95 Side RY
意識が急速に浮上し、現実の視界が目に飛び込んでくる。
「っ! ……ハァ、ハァ、ハァ」
私は咄嗟にソウルジェムに触れる。
そこには、先ほどまであった優しい異物感はなく、感じられるのは私の魔力だけ。
更紗さんの魂は、もうどこにもなかった。
「ゆーりん!」
「凜殿!」
ひめなちゃんと旭さんが駆け寄ってくる。
「大丈夫でありますか!? ここがどこだか、自分が誰か、分かるでありますか!?」
旭さんは私の顔を覗き込んで、必死な形相で確認する。
「……うん、大丈夫。ここは神浜、大東団地。私は夕凪凜。覚えてる」
それを聞くと、旭さんは心底ホッとしたようにその場に座り込む。
「……よかったであります。無事、上手くいったようでありますな」
上手く、いったのだろうか。
私が稼げた時間は僅かなものだ。
あれだけの時間で、みことちゃんは本当に満足したのだろうか。
抱きついてくるひめなちゃんに返事しながら、私は横にいるみことちゃんを見る。
みことちゃんは、とても満足そうな顔で空を見上げていた。
私の視線に気づいたのか、彼女も私のほうを見て。
「ありがとう、凜ちゃん」
そう、微笑んだ。
「わぁ~……。ここからの景色、全然変わってないね」
大東団地の屋上で、みことちゃんは感慨深そうに呟く。
みことちゃんの願いを叶えた私たち。
それに対し、みことちゃんはお礼を伝えた後、一つ、追加のお願いをしてきた。
「多分私、あと数十分で消えちゃうと思うの。だから、最期の時間、凜ちゃんと二人きりにしてくれないかな。この団地の屋上で」
断る理由もなかったので、私はみことちゃんの言葉を伝えて、二人だけで団地の屋上へと登ったのだった。
「ここね。私の思い出の場所なんだ。誕生日にお母さんが私を探して見つけてくれた場所。帆奈ちゃんと一緒に夕日を眺めた場所。私が、魔女になった場所」
まるで踊るかのように、クルクルと回りながら、みことちゃんは語る。
「ここからの夕日、凜ちゃんにも見てほしかったんだ」
雨はいつの間にか止んでいて、雲の切れ間から覗いた綺麗な西日が、屋上を橙色に染めていた。
「色々なところから夕日を見てきたけど、やっぱりここから見るのが一番キレイ」
みことちゃんは宝石を眺めるように、夕日に目を向ける。
「私に、この景色を見せたかったの?」
私が尋ねれば、みことちゃんは頷く。
「うん。私のとっておきの景色。最期に見るのは、この景色が良かったから。凜ちゃんと一緒に」
「いいの? 思い出の場所なのに……」
「思い出の場所だから、だよ。凜ちゃんとの思い出の場所にもしたかったの」
「私は、そんな価値……」
そこまで言ったところで、みことちゃんの指が私の唇を押さえる。
「……?」
「だからダメだよ、凜ちゃん。そんなこと言わないで。私にとって凜ちゃんは大切で、自慢の友だちなんだから」
イタズラっぽく笑うみことちゃん。
私は触れた指の感覚を確かめるように、自分の唇に指を当て……。
「っ!?」
そこで気づいた。
「ちょ、ちょっと待って! みことちゃん、なんで私に触れるの!?」
「アハハ! 気づくの遅ーい!」
慌てる私を面白がって、みことちゃんは大声で笑う。
ひとしきり笑った後、みことちゃんは種明かしをする。
「『暗示』の魔法だよ」
「暗示……?」
「そう。凜ちゃんに暗示をかけたの。私に触れたと認識したら、実際に触れた感覚がする暗示。脳を騙しているだけなんだけど、本当にいるみたいでしょ?」
みことちゃんはイタズラが成功した子どもみたく、楽しそうに語る。
「私自身にもこの暗示を使ったから……」
そう言って、みことちゃんは私の手を取る。
「やっと、
みことちゃんは私の手を包むように、ギュッと握る。
彼女の手を通じて伝わってくる熱は温かくて、とても安心した。
そうして、彼女は私の手を引く。
「ほら、凜ちゃんもこっちで夕日を見よう? それで、ずっとお話しよう? ずっとずっと、私が眠れるまで、ずっと」
みことちゃんに手を引かれ、私たちは団地の屋上、その縁に腰掛ける。
「キレイだねー……」
「うん、そうだね。本当に、キレイ」
夕日が建物の隙間から僅かに見える水平線に沈んでいく。
それを見ていて、私はふと思い出す。
「あ……、『私の時間』だ」
「私の時間?」
みことちゃんは私の言葉に首をかしげる。
「うん。私の名字の夕凪って、海沿いの地域で風向きが変わる時間帯を指すんだって。昼間の陸風から夜の海風へ切り替わる、僅かな時間。風がなくなって海が凪ぐことを『夕凪』って言うんだよ。その夕凪の時間が、ちょうど今の時間くらい」
「そっか……。だから、凜ちゃんの時間」
「そう。海沿いの街に住む子に教えてもらったの。「だから、この時間はあなたの時間ですね」って」
へぇ~、とみことちゃんは何度も頷く。
「なんだかロマンチックだね」
「そうかな?」
「そうだよ。……そっか。それなら、この時間は凜ちゃんにとっても特別な時間なんだね」
みことちゃんはそう言うと、私の肩に頭を預けてくる。
「なんか、嬉しいな。友だちと、特別が一緒なの」
「……うん。私も」
私の返事を最後に、会話が少し途切れる。
二人で夕日を何気なしに眺めていると、みことちゃんが唐突に口を開く。
「ねえ。凜ちゃんって、好きな人いる?」
その問いに、私はギョッとする。
「随分唐突だね……」
「私と帆奈ちゃんのやり取り見られたんだし、それくらい聞いてもいいでしょ?」
ニヤニヤしながら、みことちゃんは言う。
「……いないよ」
「ウソ。これでも数週間、凜ちゃんと一緒にいたんだよ? ウソが通じると思わないでね」
「なら、聞かなくても……」
「直接聞きたいの。こういう恋バナ?みたいのしてみたかったんだもん」
子どもみたいに頬を膨らませるみことちゃんに、私は思わず笑ってしまう。
「もー! 笑わないでよー!」
「ごめんごめん……」
「で? どうなの? 誰々?」
みことちゃんの追求が止みそうになかったので、私は素直に答えることにした。
「……まばゆ」
「知ってた」
当然とばかりに、みことちゃんは言う。
「やっぱり知ってたんじゃん」
「それで? どこが好きなの? 好きになったのはいつ?」
私の返しを無視して、みことちゃんは矢継ぎ早に聞いてくる。
私は少しの逡巡の後、周りを確認してから一つずつ答える。
「一緒にいて安心するところ。なんていうか、一緒にいると心がほぐれる感じがするんだ。それと、言動が小動物みたいで可愛いところ」
「へぇ~」
抑えきれないと言わんばかりに、みことちゃんは口角を上げて相づちを打つ。
「いつからは……。多分、最初に会ったときから、かな」
「一目惚れ!?」
みことちゃんは声色を上げる。
間違いなく、テンションが上がってる。
「そう、なのかな? ショッピングモールのレンタルショップで会ったときから嫌な感じはしてなかったのは本当。けど、やっぱり一番大きいのは……」
「大きいのは?」
「私の介抱をしてくれたときかな」
錯乱したマミちゃんに襲われて重傷を負った私。一晩中、どころか丸一日介抱してくれたのがまばゆだった。
私には大部分の記憶はないけど、後からほむらと本人から聞いた。
「あの時、本当にメンタルがヤバくてさ。正直、自暴自棄になってた。でも、まばゆはそんな私も見捨てずに寄り添ってくれて。本当に、嬉しかった。思えば、あれから私、まばゆには頼りっぱなしだ」
今回の件も、まばゆが受け止めてくれたからここまで来れた。
本当にあの子には、助けられてばかりだ。
「怖くなるくらい。あの子と一緒にいると、幸せに囲まれてる気がする」
だからこそ。
「だから、この想いは絶対伝えない。生涯、この胸の内に留めておくつもり」
私の言葉に、みことちゃんは驚いたように私の顔を見る。
「な、なんで!?」
「まばゆの幸せに、私はいらないよ。私の想いは、きっとあの子を不幸にする。まばゆには、私なんていない幸せを掴んでほしい」
まばゆのことは信頼してる。
彼女のことも、少しは理解しているつもりだ。
だからこそ、この想いは伝えたくない。
まばゆも、私に悪い感情を持っていないことくらいは分かってる。もしかしたら、私の想いに応えてくれるかもしれない。
けど、まばゆは困っている人、弱っている人を放っておけない優しいところがある。彼女のお母さんとの話を聞いても、彼女はそういう人の支えになろうとする性格だ。
となれば、私が彼女を振り向かせたとして、それはまばゆが私と同じ想いで振り向いたとは言えないんじゃないか。
まばゆからしたら、この想いに応えなかったら私が傷つくと感じたから。それだけになるかもしれない。
押しに弱いところもあるし、その可能性をどうしても捨てきれない。
(それって、無理やりまばゆの感情を私に向けたのと変わらないじゃん)
まばゆの未来を、私は縛りたくない。
だから。
「そんなの、ダメだよ凜ちゃん!」
私の思考を遮ったのは、みことちゃんのその言葉だった。
「想いは、伝えないとダメだよ……」
「でも……」
「帆奈ちゃんも言ってたじゃん。凜ちゃんは、凜ちゃんの幸せを優先していいんだよ」
そんな権利、私にあるのだろうか。
「私は……」
「凜ちゃんは、もう十分頑張ったよ。だから、もういいじゃない。私に幸せになれって言うなら、凜ちゃんだって幸せになるべきだよ」
みことちゃんは私の瞳を覗き込み、真剣な顔で言う。
「想いは、伝えられなくなってからじゃ遅いんだよ」
それは、最愛の人と引き離された彼女の、実体験を伴った言葉だった。
「縛るから何? いいじゃん、それで。私は好きな人には、私だけを見てほしいよ。私を一番に優先してほしいよ。それは別に、恥じることでも、忌むべき感情でもない。凜ちゃんの大切な、大切な、気持ちだよ」
ねえ凜ちゃん、とみことちゃんが私の胸に顔を埋める。
「あなた自身の、愛してほしいって気持ちを否定しないで。私を幸せにしてくれた分、凜ちゃんにも幸せになってほしいもの」
みことちゃんが私の小指に、彼女の小指を絡めてくる。
「約束。凜ちゃんも、ちゃんと幸せになること。凜ちゃん自身の気持ちを偽らず、幸せを掴みにいって。それが、私のこの世界に見出した希望だから」
顔を上げたみことちゃんはふわりと笑う。
「約束、できる?」
「……うん」
みことちゃんの小指を、小指で優しく握り返す。
「よくできました」
みことちゃんはそう言うと、私の身体に背中を預けてくる。
「そろそろかな……。なんだか眠くなってきちゃった」
うつらうつらとするみことちゃんを見て、もう時間は無いのだと悟る。
「ねえ、凜ちゃん……」
「なに、みことちゃん?」
私が優しく聞き返すと、みことちゃんは私の腕を弱々しく掴む。
「抱きしめてて。凜ちゃんの側にいるって、体温だけでも分かるように……」
「……いいよ」
私は後ろから抱きしめるように、みことちゃんに腕を回す。
「もう、夕日も沈んじゃうね……」
「そうだね……」
先ほどまで雲を茜色に染めていた太陽は、既に7割くらい水平線に沈んでしまっていた。
黄昏時も、もうすぐ終わる。
「ねえ、凜ちゃん」
「なに?」
「子守唄、歌ってほしいな」
みことちゃんからでてきたのは、幼い子どものような提案だった。
「子守唄?」
「うん。私が眠るまで。いいかな……?」
「歌、そんなに上手くないよ?」
「そんなの気にしないよ。凜ちゃんの歌が聞きたいの」
「……分かったよ」
私はパッと思いついた子守唄を、静かに口ずさむ。
「ゆりかごのうたを~、カナリヤがうたうよ」
リズムに合わせ、ゆっくりと身体を揺する。
「ねんねこ、ねんねこ、ねんねこよ」
みことちゃんは私の腕をそっと掴み、優しい笑みで目を閉じる。
「ゆりかごのゆめに~、黄色い月がかかるよ」
夕日は沈み、後はその残照を残すのみだ。
「ねんねこ、ねんねこ、ねんねこよ」
雨に濡れた街が、まるで鏡の欠片のように、キラキラと街を彩っていた。
「ねえ、凜ちゃん……」
「私、幸せだった。あなたに会えて、生まれてきてよかったって、思えたよ。だから……」
凜ちゃんも、そう思えますように。
輝き始めた月を、再び立ちこめてきた雲が隠していく。
「凜さん……」
その声に振り返れば、いつの間にか、まばゆが立っていた。
「まばゆ……」
「みことさん、は……」
その問いに、私は平坦になってしまった声で答える。
「更紗さんのとこ、行った……」
「そう、ですか……」
戻らないと、と思い、屋上の縁を離れ、フラフラと階段へと向かう。
その途中で、まばゆに抱きしめられる。
「ここなら、まだ人は来ません……」
まばゆの手が背中に回り、私を優しく撫で始める。
「我慢、する必要なんか、ありませんよ……」
「っ……」
私は両手でまばゆの服を掴み、彼女の身体に顔を押しつける。
「うっ、ううっ……! ああああああっ……!」
「みことちゃんっ……! ごめんっ……! ごめんねぇ……!」
「あれしかできなくて、ごめん……!」
「それでも、友だちって呼んでくれて、ありがとうっ……! 私の側にいてくれて、ありがとう……!」
「ああああああっ、ああ、うあああああああっ……!」
まばゆの服を汚しちゃうとか、そんなこと考えられないくらい、私は泣いた。
悲しくて、涙が止まらなかった。
誰かがいなくなったとき、いつも堪えてきた涙は、こんなにも流れるものなんだと、初めて知った。
まばゆの手が温かくて、余計泣いた。
泣いてても、誰かが側にいてくれることがこんなにも安心できることなんだって、やっと分かった。
色々あったけど、それでも。
「私も、みことちゃんに会えてよかった。一生の宝物だよ……」
私の呟きに、鈴のような声が応えた気がした。
というわけで、『残照モンタージュ編』完結です。
ちなみに、凜が子守唄としてあの曲を選んだ理由は、誰かが常に側にいる歌詞であることと、歌詞に母や親という単語がないから、だそうです。
次回からは完結編、『暁天のポストクレジット編』スタートです。