魔法少女まどか☆マギカ 実績『朝焼けのエンドロール』獲得 作:くろしゅー
(廻天が8月になったので)初投稿です。
DAY.95 Side AG
今日、神浜は混沌に陥っていた。
突如街に溢れ出した魔女とミラーズのコピーたち。
断続的な地震と、それらによって引き起こされた火災や事故。
この街に住む魔法少女たちの反応は様々だった。
とにかく、街に蔓延る魔女を倒す者。
人々の避難を優先する者。
不安を和らげようと、仲間と寄り集まって縮こまる者。
その中でも一番多かったのが、この事態の元凶とされる存在、瀬奈みことを討伐しようとする者たちだった。そして、彼女に力を貸している夕凪凜もまた、その対象だった。
数日前から神浜では、以前神浜を混沌に陥れようとした存在がまだ生きており、夕凪凜と手を組んでいるという噂が蔓延していた。
その情報の発信源は……。
「やあ、アリナ。また見物かい?」
「話しかけないでくれる? 見ての通り、アリナは今、スケッチで忙しいんですケド」
こちらの事情など知ったことかと言わんばかりに話しかけてきた害獣、キュゥべえ。
凜の悪評をまき散らしたのも、瀬奈みことに恨みのあるヤツらを唆したのも、全部コイツである。
「キミはどちらの味方にもつかないのかい?」
「オフコース。アリナはこの破滅へと向かう神浜を描くので忙しいカラ」
「この神浜がどうなってもいいのかい?」
どうやらコイツは、アリナにもどちらかに加勢して場をかき乱してほしいようだ。
コイツがやたらとせっついてくるときは、間違いなく裏の目的がある。
「アリナは神浜の未来なんて知ったこっちゃないワケ。別に誰が生き残ろうが、神浜が滅びようが、アリナは興味ないんだヨネ」
絵の具を手に取ろうとして、今は鉛筆しかないことを思い出し、舌打ちをする。
こんなにも綺麗な夕日と炎の赤を今すぐ描けないのが、もどかしい。
「意外だね。キミは夕凪凜に手を貸すと思っていたけれど……」
「ハァ? どうしてそうなるワケ?」
アリナのイラついた声に、キュゥべえは動じることなく答える。
「だって、キミは夕凪凜のことを気に入っているんだろう?」
キュゥべえの言葉に、呆れて思わずため息がでる。
「ハァ~……。アナタは何にも分かってないヨネ」
キューブを1つ生みだして、キュゥべえの眉間を撃ち抜く。
「アリナが凜を気に入っているのは、アイツが藻掻く様がとってもビューティフルだから」
「幸せになりたい気持ちで、死地に赴くその矛盾。誰かのために傷つくことも厭わない精神と、誰かに助けてほしい気持ちが混ざる混沌。あれだけグチャグチャで、それでも生きようと藻掻く、その姿をアリナは美しいと思ったワケ」
だから、とアリナは続ける。
「今、この瞬間。アイツが見せる閃光のような輝きを、アリナは自分のアートとして切り取りたいんだヨネ」
そのためにも、と、手のひらにキューブをもう1つ生み出す。
「やれやれ。やっぱりキミの思考は理解しがたいね」
「それはお互い様なワケ。アリナもアナタの考えは全然理解できないカラ。でも、1つだけ言えるのは……」
アリナはそのキューブを上空へと投げる。
「凜が命を燃やす舞台に、これ以上手を加える必要はないワケ。アリナの手も、そしてアナタたちの手も」
「それは、どういう……」
言い終える前に、キュゥべえの目からは光が消える。
まるで糸の切れた操り人形のように、キュゥべえはその場に崩れ落ち、そのまま動かなくなった。
「これ以上、アナタたちの邪魔でアートがブレイクされるのは許せないんだヨネ。だから、アナタたちを拒む干渉遮断フィールドを神浜に張らせてもらったカラ」
ようやく静かになったことに一息つくと、アリナはある一点に目を向ける。
「さて……。無粋なヤツは消えたし、見せてもらうカラ。アナタのその命で、どこまで足掻けるか」
崩れた街を走る凜たちを見て、自然と口角が上がった。
ああ。きっと今回も、素敵なアートになる。
そんな確信が、アリナの中にはあった。
DAY.95
時空を超えた共闘を始める実況、はーじまーるよー。
前回は鏡の魔女の計画を暴き、その阻止に向けて動きだしたところまででした。
まさかのピーヒョロ姉妹の奇襲を受け、さっそくユリちゃんが全滅寸前になってしまいましたが……。
「アマリュリス、と申します。以後、お見知りおきを」
アイエエエエエエ!? アマリュリス!? アマリュリスナンデ!!?
わけがわからないよ!(キュゥべえ並感)
誰だよ(食い気味)、という人のために解説しておくと、彼女はマギアレコードのイベント『ピュエラ・ヒストリア』に登場する魔法少女の1人です。
このピュエラ・ヒストリア、イベント形式ではありますがメインストーリーの後日談なので、実質メインストーリーです。(暴論)
肝心のピュエラ・ヒストリアのあらすじですが、歴史に散らばってしまったいろはちゃんの概念を回収するため、魔法少女たちが鏡を通して各時代を巡る、という、初見の人が聞いたら?マーク連続のストーリーとなっております。おのれディケ○ド……?
そして目の前にいる彼女、アマリュリスですが、彼女は魔法少女たちが巡った歴史の1つ、西暦79年のローマ、ポンペイに暮らす魔法少女です。
西暦79年!? うせやろ?とお思いの視聴者ニキ。安心してください、私も同じ気持ちです。
なんでキミ、この時代にいるんだよ。
解説に戻りますと、世界史に詳しい視聴者ニキならお気づきかもしれませんが、西暦79年のポンペイはウェスウィウス(ヴェスヴィオ)火山の噴火により町全体が火と灰に沈んでしまいます。
アマリュリスは、その災害によりポンペイ市民のほとんどが死んでしまう歴史を経験します。ポンペイ貴族の娘の侍女として働いていた彼女は、大好きな町の人も、愛する人も、大切な家族も全てを失い、そこでキュゥべえと出会いました。
彼女はキュゥべえに祈りを捧げ、3年の年月を遡ることになります。
そして彼女は、その最悪の歴史を覆すため、自身が仕えている貴族の娘、ユニアの双子の姉であるコルネリアと共に奔走し、遂には正史で語られるような人口1割の犠牲で噴火を乗り切ることに成功します。
守りたかった大切な家族、そして愛する人を全て守りきった彼女はその後、その身をウェスタの煌乙女、つまり魔法少女としてローマに捧げることを決めました。己の幸せと恋情を振り切って……。
これ以上は重大なネタバレになるのでここでは語りませんが、彼女のストーリーは本当に美しく、私個人的にはマギレコ最高の完成度を誇るエピソードだと思っています。
あ、あと、ほむらちゃんとさやかちゃんは彼女の爪の垢を煎じて飲んで、どうぞ。
ほむらちゃんには、3年の時間があったとはいえ、たった1回のやり直しで何人もの守りたい人を守りきった彼女の手腕を参考にしてほしいですし。さやかちゃんには、恋心を犠牲にしてでも他者に尽くすなら、彼女のような覚悟を身につけてから魔法少女になってほしいですね。彼女13歳(やり直し時点では10~11歳)だから、君らより年下なんだよ?
毎度の如く、チャートを組む上で1番のトラブルメーカーになるの、†悔い改めて†。
そんなRTA走者もビックリな歴史改変に成功した彼女ですが、当然2000年も昔の人のため、現代の神浜にいるはずないんですよね。
普通に考えればミラーズのコピーなのでしょうが、彼女の固有魔法『メタモルフォセス』を使っていたことを考えると、どうも本物っぽいんですよね……。
ダリナンダアンタイッタイ。
「味方? どうして私たちの? そもそも『とある方』って?」
警戒心むき出しのユリちゃん。そら、(知らん人がいきなり味方面してきたら)そうよ。
ほむらちゃんも銃の引き金に指かけて、いつでも撃てる状態に。チョー警戒されてんよ~。
「う~ん……。そこを説明しようとすると中々難しいのですが……。まばゆさん、いいですか?」
「ん? ふぇっ!? わ、私!?」
「はい。私『たち』は、あなたがかつて視た未来。あなたが正しい結末だと思い、その記憶を切り取ることとなった未来から来ました。これで伝わるでしょうか?」
「……!」
ファッ!?
え、それって、つまり……。
「あの、鹿目さんの作り出した、未来から……?」
「ええ、そうです。申し訳ありませんが、これで信じてもらえないでしょうか? なにぶん今の私たちに、これ以上の身分を証明する手段がないもので……」
やっぱり、円環の使者だああああああああ!!!!
失礼、少々取り乱しました。
えー、解説させてもらうと、『円環の使者』とは、このゲームに登場する隠しキャラのような魔法少女です。
彼女たちは名前の通り、円環の理から派遣される使者であり、叛逆の物語でいうところのさやかちゃん、なぎさちゃんがこのポジションに当たります。
さやかちゃんの発言から鞄持ちとも称される彼女たちですが、通常攻略で出会うことはほとんどありません。精々、マギレコシナリオを攻略するときに会える、なぎさちゃん程度でしょうか。
その他の魔法少女はほとんどのシナリオで登場しませんが、ごく稀にフラグを重ねるとなぎさちゃん以外も登場することがあります。
ただ、それがどのようなフラグかは、攻略班を以てしても未だに解明できていません。
なので、どうして登場したのか、私も全く分かっておりません。一説には、高すぎる難易度調整のお助けキャラとも言われてますが……。そんな難易度にするなら、最初から難易度下げて、どうぞ。
「……分かりました。あの未来を知っているのは、この世界に私だけ。それを知っているということは、きっとあなたの言葉は真実なんでしょう」
「ありがとうございます。私たちは、あの方の力がこの世界に致命的な害を為す前に止めに来たのです。きっとそれは、あの方の心を悲しませるでしょうから」
「……そうですね。彼女はそういう人です」
「そこで、この災禍を止めようとするあなたたちを知りました。なので、私たちとあなたたちの目的は同じです。ですから、まばゆさん。協力しませんか? 私たちもこの世界が滅びるのを見たくはないのです」
「……いいですよ」
「っ! 本当ですか!?」
「ちょ、まばゆ!?」
「あなた正気? 頭を打ってもそうはならないでしょう」
「ほむらさん、ヒドくないです? ……とにかく信じて大丈夫だと思います。私を、信じてください」
「……分かった。まばゆがそう言うなら、信じる」
「凜……」
よーし! ユリちゃんが素直に信じてくれた! 勝ったな。
どうしてここまで喜ぶかというと、円環の使者の魔法少女は軒並みステータスがカンストしているからです。
円環の理に導かれたことで、彼女たちは全ての並行世界の彼女たちが統合されます。そのため円環の使者のステータスは、そのキャラが強化できる極限まで強化されたステータスになるんですね。
叛逆の物語でも、本編がウソみたいに活躍していたさやかちゃんを思い出してもらえれば、想像しやすいでしょう。
そんな彼女たちが味方になってくれるなら、これほど心強いことはありません。
「ありがとうございます、皆さん。さて、それでは早速ですが、私について来てもらってもいいですか?」
「ついてくって……、どこに?」
「私の仲間のもとに、です」
DAY.95 Side TY
「はあっ!!」
「くぅぅっ……!」
やちよの強烈な一撃に、私は大きく後ろへと飛ばされる。
(くそぅ……! やっぱり勝てないか……!)
既にフェリシアとさなは立つのも辛そうだ。
残る私も、全力で挑んでなお、食らいつくのが精一杯。とても、やちよを倒せるイメージが湧かない。
(けど、これだけ時間は稼いだ! これなら、もう……!)
「やちよ! もういい加減、諦めなよ!! きっと凜は瀬奈みことの願いを叶えた! あの子たちとこれ以上、敵対する理由なんてない!」
「根拠は!? それとも、ただのあなたの願望!?」
やちよの攻撃を間一髪で躱す。
「違うって! もう私たちが戦う理由がないってこと!!」
「それなら、あなたがどきなさい!」
「ムリ! 今のやちよを行かせたら、絶対凜を殺すでしょ!」
「そうよ! あの子がこれ以上、罪を重ねる前に!」
「罪って……! 凜は何もしてない!」
「してないってことはないでしょう!? この神浜の惨状を見なさい!!」
やちよに吹き飛ばされ、私は上空を舞う。
そこから見えた神浜は、地震と火災でいくつもの建物が崩れた、ヒドい惨状だった。
「あの子にとっては善意でやったことかもしれない! けれど私たちには、この惨状を引き起こした鏡の魔女と凜たちが繋がっていないことを確かめる術も、時間もない!」
追撃を食らい、私は地面へと落下する。
「もう既に! この神浜に住む何十万の人が危険に晒されているのよ! その上で、凜は鏡の魔女より瀬奈みことを優先した! あの子がそちらを優先した時間で傷ついた人たちが、間に合わなかった人たちが何人いるか、想像した!?」
落ちた地面で息を整える間もなく、私は地面を蹴る。
直後、やちよの投げた槍が私のいたところに突き刺さる。
「あの子は選択した! 私たちと袂を分かつ道を! もう、引き返せないところまで来たのよ、あの子と私たちは!」
しまった、と思ったときには、もう遅かった。
私の回避すら読んだやちよの次の一撃が、私に迫っていた。
(ああ……。 やっぱ強いなー、ししょーは)
それでも、凜が自由に動ける時間は稼げた。
後は、あの子ならきっとなんとかする。
だって、あの子は私の一番弟子だもん。
「――それでも、誰か1人のために戦うことが悪いこととは思いません」
上から降ってきた、その声に、私たちはハッとする。
直後、私とやちよの間に誰かが割り込み、やちよの攻撃を逸らした。
「神浜を守るための決断も。世界を敵にしてでも友達を守りたい想いも。どちらが間違っているなんて、そんなのないんです」
私たちの間に割り込んだ影は、そう続ける。
「けれど。1つだけ止めなければいけないものがあるとすれば。それは、憎しみ合うことの連鎖じゃないでしょうか?」
そう語った緑髪の魔法少女は、左胸につけた花のような十字のソウルジェムから光を放つ。
その光に触れると、心が安らぐような気がした。
それは私だけではなかったようで、やちよもいつの間にか、構えていた槍を下ろしていた。
「落ち着きましたか? 不安や悲しみ、憎しみに囚われると視野と思考が狭まってしまいます。物事を正確に捉えるには、まずは冷静になることです」
女の子は私たちを見て、ニッコリと笑う。
すると、女の子がつけていた腕時計のような腕輪から音が鳴る。
それに気づいた女の子が腕輪に触れれば、まるでアンテナのように、灯台のホログラムが浮かび上がり、そこから声が聞こえてくる。
『ヘルカさん? こちら、アマリュリスです。聞こえていますか?』
「アマリュリス。こちらヘルカ。聞こえてますよ」
『よかった。予定通り、凜さんたちと合流できました』
「本当ですか? さすがですね」
『ありがとうございます。私たちはこのまま、ヘルカさんの作戦通り合流地点まで向かいます』
「分かりました。お願いします」
『それと、先ほどからクビウス様の姿をお見かけしないのですが……』
「そうなんですか? まあ、彼らがいないのは動きやすくてありがたいですが……。罠ではないことを祈りましょう。アマリュリスも、どうか気をつけて」
『はい。そちらも、どうかご無事で』
「ええ」
通信が終わったであろうタイミングで、私は自分をヘルカと言った女の子に声をかける。
「ねえ、ヘルカ?ちゃん。凜のこと、知ってるの? というか、あなたたち、誰?」
私の問いに、ヘルカちゃんは少し唸った後、こう答えた。
「夕凪凜さんの手伝いに来た、しがない魔法少女、ですかね?」
DAY.95 Side MA
私たちはアマリュリスさんの言う、合流地点へと向かいながら、彼女に今の状況を説明していました。
「なるほど……。つまり、鏡の魔女の株分け個体が新西区、北養区、参京区、中央区、工匠区、大東区の6地点に点在し、それぞれが爆発を起こすための準備をしていると」
「ええ。今、大東区、工匠区、中央区には私たちの仲間が向かっているのですが……」
私の言葉に、アマリュリスさんは笑う。
「分かりました。それなら、残り3ヶ所の魔女は私たちで引き受けましょう」
「良いのかしら? 強いわよ」
ほむらさんの言葉にも、アマリュリスさんは余裕を崩しません。
「それは承知の上です。ですが、私たちだって負けていませんよ」
しばらく走ると、少し開けた場所に出ます。
「ここ?」
凜さんが尋ねると、アマリュリスさんは頷きます。
「ええ。時間的にも、そろそろ来ると思うのですが……」
そう言いながら、アマリュリスさんは空を見上げ、キョロキョロと何かを探していました。
「あの、なにを……」
探しているんですか?と私が問う前に、アマリュリスさんが「あっ!」と声を上げました。
「来ました!」
そう言って、アマリュリスさんが空の一点を指さします。
私たちもその指の先を目で追うと、そこには……。
「え……」
「ふ、ふ、船ええええええええ!?」
巨大な木造船がこちらに向かってきていました。宙を浮かびながら。
「よかった。無事にたどり着けたようですね」
アマリュリスさんは当然といった感じで、表情を綻ばせます。
「え、いやいやいや! 船、船飛んでますよ!!」
たまらず私は突っ込んでしまいますが、アマリュリスさん苦笑いします。
「驚く気持ちは分かります。最初に見たときの衝撃は凄いですからね。あれ、ガンヒルトさんの魔法なんです」
どうやら、アマリュリスさんのお仲間の魔法のようらしいですが。
アマリュリスさんは船に合図するように、魔法で生みだした光球を空へと打ち上げます。
すると、その光に導かれるように、船は私たちの近くまでやって来ていました。
そして、船から何人かの人影が飛び降りて来ます。
一番初めに飛び降りた人影は、私たちの前へと着地します。
「よっと。ふー、着地成功なのです」
降り立った人物を見て、私とほむらさんは目を見開きました。
だってその子は、かつて私たちと少しだけ時を共にし、もう会えないと思っていた子でしたから。
「なぎさちゃん。上手くこっちに来られたんですね」
「アマリュリス! お前も無事で良かったのです! にしても、よくこの広い神浜で凜たちを見つけ出したのです。しかも、この短時間で」
「簡単な推理ですよ。彼女たちが大東区のほうにいたという情報は得ていましたから。後は、そこから人目に付きにくく、かつ最短距離で鏡屋敷に向かえる道を割り出して追っただけですよ」
「相変わらず頭の回転の速さが恐ろしいヤツなのです。ヘルカと並んで、敵には回したくないのです」
アマリュリスさんと親しげに話すなぎさちゃんを見て、私たちは少しの間、動けずにいました。
それでも、私は何とか口を動かし、僅かな声を絞りだします。
「な、なぎさ、ちゃん……?」
私の声に反応したなぎさちゃんが、私たちのほうを向きます。
「あ、まばゆ! 久しぶりなのです」
私の名前を呼ぶ声は、あの時と変わらなくて。
来ている服の色や瞳の色はあの時と違うけど、間違いなく私の知っているなぎさちゃんなんだって、彼女の笑う顔を見て確信しました。
私は堪えきれなくなって、なぎさちゃんを抱きしめます。
「わわっ!? どうしたのです、まばゆ!」
「ごめん、ごめんなさい……!」
こんな小さい子に醜態を晒すなんて、と思われるかもしれませんが、止めようがありませんでした。
「助けられなくて、ごめんなさい……! 何度も殺して、殺したことすら忘れかけて……。ごめんなさい……! ごめんなさい、なぎさちゃん……!」
涙声で謝り続ける私の頭に、なぎさちゃんの手が触れる。
「謝る必要ないのです。まばゆはまばゆのやれることをした。それだけなのです」
それに、となぎさちゃんは続ける。
「まばゆたちが元なぎさを倒してくれたから、なぎさは今、この世界にいられるのです」
「え……?」
「簡単な話なのです。同じ世界に同一存在は共存できない。一部例外もあるのですが、私たち円環の使者は特にその傾向が強いのです」
だから、となぎさちゃんは私を見て笑う。
「なぎさが今、まばゆたちを助けられるのも。まばゆたちの頑張りのおかげなのです」
さあ、となぎさちゃんは私から離れる。
「受けたチータラの恩は返すのです。例えここが、あの悪魔が作った世界だとしても!」
その言葉に、今まで遠巻きに見ていた人たちも集まってくる。
「なぎさちゃん、もうお話はいいのぉ……?」
「心配は無用なのです、結菜! まばゆはそんなに弱くはないのです!」
「信頼が厚いわねぇ……」
なぎさちゃんに話しかけた、結菜と呼ばれた黄色い着物の女の子は、口元に手を当て、静かに笑います。
「ま、樹里サマとしては、暴れられりゃ何でもいーけどな。二ヒッ」
「こーら樹里。勝手に暴れられると迷惑すんのはアタシらなんだけど?」
「らんかさんの言う通りっす。樹里さんは大人しく、結菜さんの手足となって馬車馬のようには働くっす! ……って、なに馬のポジション横取りしようとしてるんすか!!」
「オメーが言ったんだろ!?」
「結菜さんの馬はひかるだけで十分っす! 樹里さんには渡さないっす!」
「いらねーよ、んなポジション!!」
結菜さんの後ろの子たちが騒ぎ始めると、結菜さんは眉を下げる。
「うるさくてごめんなさい。あれでも、戦いでは役に立つのよぉ」
「い、いえ……。え、ていうか、つまりあなたたちも……?」
「えぇ。私たちも戦わせてもらうわぁ……。よろしくねぇ」
クスリと笑う結菜さん。
アマリュリスさんもはにかむ。
「ふふっ、頼もしいです」
「後は……」
結菜さんがそこまで言って、上を見上げたタイミングで、更に2人の人影が降りてくる。
「アマリュリスー!! ユナー!!」
ブロンドヘアにキレイな青い瞳。そして、緑の鎧を身に纏った少女が大声をあげながら降りてくる。それに続くように、長い黒髪と身の丈すら超える大きな斧を2つ持った少女も降りてくる。
「オルガさん! ガンヒルトさん!」
アマリュリスさんが2人を呼ぶ。
「アマリュリスー! 会えて良かったよー! それで、そっちの子たちが?」
金髪の魔法少女、オルガさんはアマリュリスさんに尋ねると、アマリュリスさんは私たちに手を向ける。
「はい。件の夕凪凜さんとそのご友人の方々です」
「そうなんだ! あたし、オルガ! こっちの子が妹のガンヒルト! よろしくね!」
オルガさんは快活な笑顔でそう名乗ります。
どうやら奥の黒髪の方は妹さんのようでした。
すると、なぎさちゃんがパンパンと手を叩く。
「はいはい、自己紹介は今はいいのです。なぎさたちも時間がないのです。とにかく、ここからどう動くかを先に考えるのです」
「あ、それなら」と、アマリュリスさんが手を挙げる。
「詳細な情報は、ここに来る道中で凜さんに共有していただきました。それで、少し作戦を考えたのですが……」
「それなら聞かせてちょうだぃ……。ヘルカたちにも今繋げるわぁ……」
「お願いします」
結菜さんは、先ほどアマリュリスさんが使っていた腕輪を使って、先ほどのアマリュリスさんの話し相手であったヘルカさんに繋げたようでした。
『結菜? どうしました? アマリュリスと合流できましたか?」
「ええ。それで、この後の動きについてアマリュリスから提案があるらしいのよぉ……」
『アマリュリスから?』
「ええ。ヘルカさん、今の神浜の詳細を凜さんたちから聞いたんです」
アマリュリスさんは、私たちから聞いた話をまとめ、ヘルカさんに伝えていました。
「それで、この後の動きについてなのですが。残り3ヶ所の株分けは私たちで対処しませんか? 本体を倒す作戦が凜さんたちにはあるようですし、ここは彼女たちに任せ、私たちは株分けから円環の力が流入するのを防ぐことに注力するのはどうでしょう?」
それに対し、ヘルカさんは答えます。
『良い案ですが、それでも人手は厳しいのではないでしょうか。株分けだって弱くはありません。本体の強さを考えれば、オルガとガンヒルトは凜さんに同行させたいんです。そうなると、結菜たちと私たちで二手に分かれても、あと一ヶ所が……』
『それなら! 私たちが戦うよ!!』
ヘルカさんより少し遠くから叫んだと思える声が、通信機越しに聞こえてきました。
その声に真っ先に反応したのは、凜さん。
「鶴乃先輩……?」
そう。さっきの声は鶴乃さんに聞こえました。
私の聞き間違いではないことを確認したところで、再び鶴乃さんの声が聞こえてきます。
DAY.95 Side TY
「戦力が足りないんだよね!? なら、私たちが株分けの相手をする!」
通信機と思われる、ヘルカちゃんの腕輪に向けて叫ぶ。
恐らく、その先にいるであろう凜にまで、声が届くように。
すると、ヘルカさんが心配したような顔で私に言う。
「由比鶴乃さん。お気持ちは嬉しいのですが、あなたは先ほどまで戦闘していて、怪我も疲労も癒えては……」
「そんなの関係ない!」
毅然と言い返す。
だって、私にはまだできることがあるんだから。
「凜が困ってるんでしょ? なら、助けたい! 怪我とか疲労とか、関係ないよ! まだ足掻けるなら、最後まで足掻くよ!」
でも、現実が見えてないわけじゃない。
「もちろん、1人じゃ無理だってことは、分かってる」
神浜のあちこちで感じる、この強大な魔力。
到底、1人で戦って勝てる相手じゃない。
フェリシアとさなの助力を加味しても、だ。
でも、この圧倒的戦力差を埋めてくれる人を、私は知ってる。
ずっと背中を追って、彼女のような師匠になりたくて頑張ってきた、私の目標が目の前にいる。
だから……。
「だから、やちよ。私たちに力を貸して。私たちと一緒に、凜と一緒に、鏡の魔女を倒そう」
私は、やちよに手を差し出す。
「正気……?」
「もちろん!」
信じられないといった顔のやちよに、私は自信満々で返す。
「さっきまで戦っていたのよ?」
「昨日の敵は今日の友って言うじゃん?」
「私は凜を殺すつもりなのよ?」
「それはその時。全部終わって、それでもやちよの気持ちが変わらないなら、私がまた相手になる」
「凜が騙してる可能性もある」
「ないね。私の愛弟子だもん。こんな時、あの子は絶対に逃げも投げ出しもしない。まして、滅びを肯定したりなんてしない。それなら、瀬奈みことを救おうなんてしないよ」
「でも、私は……」
「ああもう! メンドクセーな!!」
やちよの声を遮ったのは、フェリシアだった。
「なに迷ってんだよ! やちよだって、ホントは凜のこと、殺したくねーんだろ!? なら、やんなきゃいいだろ!」
フェリシアはさなに肩を貸しながら、ゆっくりと立ち上がる。
「そんな簡単な話じゃないのよ……! 私は神浜の西を預かるリーダーとして……!」
「んなの、どうでもいーじゃねーか!! オレたちは魔法少女だぞ! 戦う相手は魔女だろ!! 凜じゃねえよ!」
その言葉に、やちよの瞳が揺れる。
きっと、やちよの心も揺れている。
やちよが仲間を率先して手にかけることを望んでいるなんて、それこそあり得ないことだ。
だったら、畳みかけるのは今しかない。
「やちよ。もし、西のリーダーって肩書きがやちよを縛っているなら……」
私は息を吸って、彼女に告げた。
「リーダーは、私がやる。西のリーダーは、私が引き継ぐ」
「は……? あなた、何言って……」
「簡単な話だよ。やちよが西のリーダーじゃなくなれば、やちよがその責任感で凜に刃を向ける理由もなくなる。そして、私は西のリーダーとしての判断で、全力で凜を援護する」
西のリーダーとしての責任は、私が背負う。
昔だったら、私にはできない決断だった。
ずっと頑張り続けて、人に頼るのが苦手だったから。
でも、凜がいたから。
あの子を通じて、私も変われた。あの子がいてくれたから、ここまで潰れずに来られた。
きっと、今なら大丈夫。
「やちよ。凜を信じてみよう? 一緒にまた、凜と戦おう?」
「私は……」
「やちよ!」
「わ、たしは……」
「やちよさん……!」
流れる沈黙の時間。
1分ほどの時間の後、やちよが口を開いた。
「……まったく。あなたたちに諭されるとわね」
やちよが顔をあげる。
その顔は、泣き笑いのような儚い顔だった。
「分かったわ。鶴乃、今からあなたを臨時の西のリーダーに任命する」
「やちよ……!」
「そして、ここからは七海やちよ個人の……。みかづき荘リーダーとしての決断よ」
「私たちはこれより凜の作戦の援護に移るわ! 株分けの魔女の討伐に向かうわよ!」
ついてきて、くれるわね?
やちよの問いかけに、私たち3人は同時に答えた。
「「「うん(おう)(はい)!!!」」」
バラバラで、でも息ピッタリの返事は、私たちがまた1つになれたような気がした。
DAY.95
やったーーー!!
やちよさんが仲間になってくれたぞー!!
皆が協力し合ってくれて、涙が、で、出ますよ……。
あれ? これもう、ワシいらなくね?
ママエアロ。そも、百合の間に挟まるヤツは重罪って、それ昔から言われてるから。
閑話休題。
とにかく、これで味方も一気に増えましたね。
これで討伐チームも増やすことが出来ます。
チーム分けですが、さっきアマリュリスちゃんたちが話していた通りでいきましょう。
チームD
・七海やちよ
・由比鶴乃
・深月フェリシア
・二葉さな
チームE
・紅晴結菜
・大庭樹里
・煌里ひかる
・智珠らんか
チームF
・ヘルカ
・アマリュリス
・エボニー
・トヨ
チームDは見ての通り、チームみかづき荘ですね。
チームEはこの実況初登場のプロミストブラッド、二木市出身の魔法少女たちですね。
以前にユリちゃんたちが訪れたときには、既にアオちゃんとさくやさんしかいませんでしたが、彼女たちが本来二木市をまとめていた魔法少女です。
マギレコルート、もしくは二木市ルートでは攻略もできるのですが、残念ながらこの時間軸では救えなかった子たちですね。それでも、こうして会えて私は嬉しいよ……。(涙目)
あ、詳しい解説は時間がかかりすぎるのでカットです。詳しく知りたい人は、マギレコの『Crimson Resolve〜深紅の決断〜』を読んでください。グループイメージソングの『Bulimia』もオススメです。格好よすぎて、アー(耳が)イキソ……。
チームFは先ほどちょろっと説明したピュエラ・ヒストリア組です。
アマリュリス以外に関して補足しますと……。ヘルカちゃんは、13世紀辺りのチベット出身の魔法少女。モンゴル帝国の侵略からチベットと友達を守り、ラクシャーシーとしてのおとぎ話が残りました。エボニーちゃんは、紀元前30年くらい、クレオパトラが統治する時代のエジプト出身。というか、そのクレオパトラに仕えていた、地味にスゴい魔法少女です。最後のトヨちゃんは、西暦約3世紀の日本、邪馬台国でヒミコが治めていた時代の魔法少女です。ちなみに彼女、ヒミコの跡取りとして(!?)、魔法少女まどか☆マギカ世界の歴史の教科書に名前が載ってるらしいです。はぇー、すっごい……。
と、このように、キュゥべえの言うような、歴史に影響を与えた因果律の高い魔法少女たちの集まりです。ちな、めちゃくちゃ強いです。当たり前だよなぁ?
あ、後の子たちですが。
●本体組
・夕凪凜
・愛生まばゆ
・暁美ほむら
・藍家ひめな
・巴マミ
・オルガ new!
・ガンヒルト new!
オルガちゃんとガンヒルトちゃんは、本体組に入ってくれるみたいです。
この2人は、中世ヨーロッパ(11世紀くらい?)、ヴァイキングの戦士団として活躍していた姉妹です。このゲームだと、戦士団設定もあってかピュエラ・ヒストリア組の中で一番強い魔法少女ツートップです。
あとは……。
『アマリュリス! ヘルカ! 聞こえるか!』
「この声……。千鶴さん!」
やっぱりいた!
今聞こえてきた声は千鶴ちゃんですね。戦国時代、かつて相磨の国と呼ばれていた神浜市。そこの、今でいう大東区辺りを拠点としていた国盗賊『泰党』の頭領の一人娘であり、魔法少女です。
『鏡の魔女を倒すの、アタシにもやらせてくれ!』
『千鶴……』
『アタシだって、伊達に盗賊やってたわけじゃねえ。戦力にはなる! 頼むヘルカ! アイツの相手は……!』
『……まあ、そう言うだろうな、とは思っていましたよ』
『へ……?』
「そうですね。千鶴さんが神浜に行くと言い出したときから、薄々分かっていました」
『アマリュリス……』
『分かりました。千鶴も、夕凪さんたちと共に鏡の魔女本体を目指してください』
『……! ありがとう! 絶対に後悔はさせねえ!』
というわけで、どうやら千鶴ちゃんも本体組に合流してくれるみたいです。
まあ、鏡の魔女の成り立ちを考えれば、そうなるでしょうね。後、さっきのなぎさちゃんの発言を鑑みると、恐らく露ちゃんはいないのでしょうね。
え、どゆこと?ってなってる兄貴は、鏡の魔女戦の時に、まとめて解説しますので、もう少々お待ちを。
「というわけで皆さん。千鶴ちゃんのことも、いいですか?」
「うん。その子も、アマリュリスちゃんの仲間なんだよね?」
「凜さんの言う通りです。安心してください、彼女もとても強いですから」
よし、これで残るは1人。
「……なぎさちゃん。言いたいことがあるなら、言ったほうがいいわぁ」
「結菜……」
「後悔してからじゃ遅いわぁ……。カバーは私たちでやるから」
「……分かったのです、結菜」
なぎさちゃんが選べなかったのですが、その真意は……。
「ヘルカ。ちょっといいのですか?」
『なぎさ?』
「なぎさは……。なぎさは、少しだけ別行動をさせてほしいのです。もちろん、敵前逃亡とかそんなのじゃないのです。けど、まばゆの他にもう一人、気がかりなヤツがいるのです。ソイツが大丈夫そうなら、すぐに皆と合流するのです。だから……」
『いいですよ』
「……! 本当なのですか!?」
『はい。そもそも、なぎさが私たちを起こしてくれなかったら、円環の理で眠っていた私たちは、このことを把握できなかったわけですから。だから、なぎさの好きなように動いてください』
「っ! ありがとうなのです、ヘルカ!」
チームB
・神楽燦
・遊狩ミユリ
・黒江
・くろ
・百江なぎさ new!
お、追加された。
はあー、なるほど。なぎさちゃんはチームBの援護に行ってくれるみたいです。
まあ、あそこだけ戦力層薄かったですからね。これはありがたい。
よし、これで勝ったな。風呂行ってくる。
「ねえ、ヘルカちゃん」
ん? ユリちゃんがなにか聞きたそうですね。
『凜さん? どうかしましたか?』
「どうしてここまで協力してくれるの? それがあなたたちの使命だから? それとも、あなたたちを使わした人の意向?」
ユリちゃん今更?と言いたいところですが、彼女たち視点からしたらそうですよね。
いくらまばゆちゃんが大丈夫と言っても、理由は聞きたくなります。
私としても、なんでこのタイミングで円環の少女たちが介入してきたのは知りたいところでもありますし。
さてさて、ヘルカちゃんの返答は……?
『そうですね……。色々と理由はありますが、一番は……」
「一番は?」
『あなたのことが放っておけなかったんです』
「私のことを? どこかで会って、はないよね……?」
『ええ。それでも、です。あなたの、自分を呪いの終着点にしようとするやり方を放っておけなかったんです。私がかつてそうしたように、神浜と瀬奈みことの呪いを自分に向け、その手で終わらせようするやり方は、きっとあなた自身を壊してしまう。そんな結末を見たくなかった。ただ、それだけの個人的な理由ですよ』
……あー。
まあ、ヘルカちゃんの経歴を考えれば、そうなるのか。『チベットのラクシャーシー編』のネタバレになるので詳しくは語りませんが、ヘルカちゃんも、土地の憎悪と呪いに翻弄された子ですからね。
『私だけじゃありません。みんな、それぞれが戦う理由を胸にこの土地に降り立った子たちばかりです。もし、共通している点があるとすれば……』
『これ以上の悲劇は起きてほしくない、って点でしょうか』
「……そっか。うん、分かった。ありがとう、ヘルカちゃん。それに、皆も」
「話はまとまったのですか?」
ファッ!?
急に出てくるなぁ、なぎさちゃん。しんみりした空気が一瞬で消し飛んだゾ。
「それじゃあ、ヘルカと凜の案を合体させたこの作戦で動くのです! 鏡の魔女め、円環の理の力で宇宙を破壊できると思ったら大間違いなのです。向こう側と鏡を繋げたことで、なぎさたちに介入できるスキを与えたこと、後悔させてやるのです!」
「作戦開始! なのです!」
うおおおおおおおおお!!(大声)
というわけで、円環の魔法少女たちを仲間に加え、鏡の魔女討伐戦、再スタートです。
私たちユリちゃんチームは、このままガンヒルトちゃんの船に乗って鏡屋敷まで向かうみたいです。
助かる~! このまま徒歩で鏡屋敷まで行くなんて、チョーだるいので。こんな有能ファストトラベル、誇らしくないの?
「まばゆー! ほむらー! 凜ー! 絶対無茶だけは止めるのです! お前らの無茶は、ただの自己犠牲なのですー!!」
「ア、アハハ……。いやー、イッタイナンノコトカナー」
「隠すの下手すぎるわよ、まばゆ。それと、凜も下手な口笛で誤魔化せると思わないことね」
「な、なにをー! ほむらも言われてるくせにー!」
全員にぶっ刺さってて草。
お前ら全員、自己犠牲の塊すぎるんじゃい! もうちょい、もうちょい……!(←あれ、この子たちの周り自己犠牲精神強い子しかいないな、の顔)
とにかく、全員生きるんだよぉ!
「準備はいいか? 船を出すぞ」
はい、ここでガンヒルトちゃんに話しかけ、「はい」を選択すると最終決戦の始まりです。注意書きの『この先は最後までセーブできません。本当によろしいですか?』が出たのが、その証拠です。
これ以降はセーブなしの一発勝負。ユリちゃんが死んだら、その時点でこのお話は終わりです。
頑張ってハッピーエンドを目指しましょう。(皆幸せな未来が)いいよ、来いよ!
「よし、なら行くぞ」
「出航ーー!!」
イクゾー!(デッデッデデデデ!)
DAY.95 Side LH
「もう少しであります! この先に!」
「コピーの数も増えてます……! 守りを固めているということは……」
「当たりっぽいんよ!」
私たちは襲いかかってくるコピーたちを蹴散らしながら、前へと進む。
中央区にたどり着いた私たち。私たちの担当は、この中央区にいる株分けの魔女の排除。
旭の索敵と、神浜を取り囲むという相手の目的から目星をつけてやって来たが、どうやらここで正解だったようだ。
私は先ほどあった夕凪さんからの連絡を皆に伝える。
「皆、夕凪さんから連絡があった。どうやら、私たちに加勢してくれる人たちが来てくれたみたい」
「加勢、でありますか?」
「うん。信用できる相手かは愛生さんが保証するって」
「まばゆ殿が……。それなら、きっと信用できる相手なのでしょうな」
旭の言葉に、私はクスリと頬が緩む。
「ラビ? なぜ笑っているのでありますか?」
「ううん。ただ、旭も私たち以外に信用できる相手が見つかったんだなって」
「それを言うなら、ラビも同じでありましょう?」
「そうだね」
そんな会話をしていると、開けた公園のような場所に出る。
「あ、あそこ!」
サーシャの指さした先には、株分けの魔女の結界があった。
「間違いない。工匠区のと同じ魔力反応。コイツだ」
私がブーメランを構えると、他の皆も各々の武器を構える。
「株分け1体にここまでの守備戦力を回すなんて、夕凪さんたち、大丈夫なのん?」
うららが不安そうに口にする。
彼女の不安も最もだが、私はそれを否定した。
「大丈夫。夕凪さんはいつも、逆境をはねのけてきた強さがある。ましてや、今は仲間に囲まれているのだから。きっと何とかする」
「そうでありますな。それに、我らの秘策も動き始めている頃であります」
「秘策?」
「ああ、ラビたちには言ってなかったでありますな。実は巴殿と……」
旭がそこまで言った時に、結界から膨大な魔力が溢れ出す。
「っと、喋っている余裕は無さそうでありますな」
「うん。皆、突入するよ」
旭の話も聞きたかったが、今は株分けを止めるほうが先決だ。
「今度こそ、私たちも運命を変えてみせる」
私は決意を口にし、結界へと飛び込んだ。
DAY.95 Side YK
「さあ、私たちも移動するわよぉ……」
私の声に、ひかる達も動き出す。
「っしゃ! 久々の戦いだ。燃えるねぇ」
口角をつり上げて笑う樹里に、やれやれといった感じのらんか。
「結菜さんの進む血路を開くのは、ひかるに任せるっす!」
ふんす、と胸を張るひかる。
「そうねぇ。残してしまったアオとさくやのために、私たちにできるのはこれくらいだわぁ」
そして、そんな彼女たちのために心を痛めてくれた夕凪さんのためにも。
すると、樹里が呟く。
「にしても、アイツらで大丈夫か? オルガたちはともかく、他のヤツらで鏡の魔女に勝てんのか? やっぱり樹里サマが行ったほうが……」
「アンタは戦いたいだけでしょ。ヘルカの作戦、忘れたの?」
「分かってるって!」
「心配は無用なのです」
そこで声をあげたのは、なぎさちゃんだった。
「まばゆも、ほむらも、凜も。アイツらは強いのです。今のアイツらなら、負けないのです」
「随分買ってるんだな。特に凜は、悪魔のヤツの差し金だろ? お前、悪魔のことボロクソ言ってなかったか?」
樹里の言葉に、なぎさちゃんは頷く。
「それはそうなのです! アイツはなぎさ本体の記憶と力を奪ったのです! そのせいで、なぎさの本体は今もあの世界で呑気に小学生やってるのです!」
ダンダンと、言葉に合わせて地団駄を踏むなぎさちゃん。
「おかげで、こうして自動浄化システムのある世界にいて無事だった、このなぎさの断片で動くしかないのです。今のなぎさはチーズどころか、脱脂粉乳レベルのみそっかすなのです!」
頬を膨らませるなぎさちゃんは私たちを見る。
「それに、それは結菜たちだって例外じゃないのです。今の結菜たちは、機能不全に陥った円環の理からなぎさが無理やり叩き起こした、いわば不完全体。普通の魔法少女よりは強いのですが、力を十分に振るえない可能性だってあるのです」
「そうねぇ……。その点は理解しているつもりだわぁ」
それでも、と続ける。
「円環の理の力を、1つの宇宙の破壊になんて使わせない。そう思ったから、皆なぎさちゃんについてきたのよぉ。例えこの宇宙が、悪魔による介入を受けたものでも。ここで起きた奇跡を、女神様はきっと祝福するはずよぉ」
「……そうなのです。きっとまどかは、まばゆが皆とお別れをしなくて済むこの世界を知ったら、残そうと思うのです。それが悪魔の願いだと知ったら、なおさら」
「ふふっ……。優しいのねぇ」
「勘違いするな、なのですー! なぎさはただ恩を返したいだけなのです!」
顔を赤くして怒るなぎさちゃんに、私は頬が緩む。
「見事なツンデレっぷりっすね」
ひかるの独り言に、なぎさちゃんは更に声を大きくする。
「ひかる! その言葉は撤回するのです!」
「嫌っすね。ひかるは結菜さんの命令しか聞きたくないっす」
うがーっと怒るなぎさちゃんと、逃げるひかる。
楽しそうな2人を遊ばせてあげたい気持ちはあるが……。
「ったく、遊ぶなら後にしろって。今は鏡の魔女ぶちのめすのが先だろ」
樹里が2人の首根っこを掴んで止める。
「そうねぇ。そろそろ始めましょうか」
私の言葉に、ひかるとなぎさちゃんの目も真剣になる。
「それじゃあ、なぎさちゃんも気をつけてねぇ……」
「はいなのです! 結菜たちも、くれぐれも気をつけるのです!」
そう言って駆け出すなぎさちゃん。
少し走ったところで、彼女は思い出したように立ち止まり、私たちに振り返る。
「凜なら大丈夫なのです! アイツは、因果の特異点になれるだけの力を渡されているのです。きっと、最悪の未来も覆してみせるのです! まばゆが選んだ友達なら、それくらいやってくれるはずなのです!」
そう言い残すと、なぎさちゃんは工匠区で戦う魔法少女たちの救援に走っていった。
「愛生さんも、愛されているのねぇ……」
なぎさちゃんがあそこまで信用しているのだから、私たちも信じないほうが失礼だろう。
「さて。ひかる、樹里、らんか。行けるわねぇ」
「当然っす!」
「やっとか。燃えさせてくれよ。二ヒッ」
「アタシも。いつでもオッケー」
「それじゃあ、行きましょうか。私たち二木の力、見せてあげるわぁ」
DAY.95 Side MA
「うおー! はやいはやい!」
私は空を駆ける船に乗りながら、ついはしゃいだ声をあげます。
「チョーヤバ! 神浜の上空を遊覧飛行とか、メッチャ映えるじゃん!」
私の横では、藍家さんもテンションマックスではしゃいでいた。
「でしょでしょ! ウチのガンヒルトはすごいんだよ~。船の操縦だって、あたしよりずっと上手くてさ~」
で、更に便乗しているのがオルガさん。さっきからずっと妹の自慢をしています。
「あなたたち、少しは静かにできないのかしら?」
ほむらさんが呆れたように言いますが、それは無理というもの。
こんな宇宙戦艦に乗るような体験ができるとは、人生で一度も考えたことなかったのですから。
「まったく……」
ため息をつくほむらさんの横で、凜さんは静かに笑っていました。
凜さんに声をかけようとしたところで、船首にいるガンヒルトさんから声がかかります。
「もう着くぞ。準備して」
はやっ、と思ったのもつかの間。船は降下を始め、あっという間に地上に着陸しました。
「これが、鏡屋敷……」
私たちの眼前にあるのは、まるでホラー映画の導入に出てきそうな、古びた屋敷。
これが、鏡の魔女が根城にしている建物だそうです。
「敵が、いない……?」
凜さんの呟きに、私は改めて周りを見渡します。
「あれ? 本当ですね。護衛のコピーくらい居てもよさそうなのに……」
「それなら、吾が全部片付けておいたのだ!」
聞き慣れない声に、私たちは全員、声のしたほうを見ます。
「あっ、トヨ!」
「オルガ! 来てくれてよかったのだ! 待ちくたびれたのだ!」
そこにいたのは、私たちよりも年が下と思われる魔法少女でした。
まるで日本神話の神様のような光輪の装飾を背中に背負い、勾玉の意匠が入った魔法少女服を身に纏う少女。オルガさんにトヨ、と呼ばれた彼女は私たちを出迎える。
「そなたらが夕凪凜と、その仲間たちだな? ちゃんと吾の魔法が発動したようで良かったのだ」
「あなたの魔法?」
凜さんの質問に、トヨちゃんは待ってましたと言わんばかりに得意げになる。
「そうなのだ! 吾の魔法は『吾の求める人がやって来る』魔法なのだ。だから吾は、この地に降り立ったときから、エボニーと一緒にこの場所を真っ先に占拠して、魔法を使っていたのだ。全て、ヘルカの作戦通りなのだ!」
はえー、と私が感心していると、後ろから声が聞こえる。
「凜さん、まばゆさん! それに皆も!」
「あ、マミさん」
「よかった、マミちゃんも無事着いたんだね」
私たちの元へ、合流予定だったマミさんがやって来る。
「……と、こんな感じなのだ」
「「「おお」」」
私と凜さん、ほむらさんの感嘆の声が揃います。話を聞いていなかったマミさんだけ、首を傾げていましたが。
と、そんな時でした。
轟音が1つ鳴り、続いて誰かがこちらまで飛ばされてきました。
「っ!」
マミさんが咄嗟にリボンで受け止めます。
「えっ……」
「佐倉さん!?」
受け止めたマミさんが驚きの声をあげます。
「ッテテ……。マミか? ヤベえ、もうここまで押し込まれてたのか……!」
「それってどういう……」
ほむらさんが言うが早いか、佐倉さんの飛ばされてきた方から何体もの魔女が押し寄せてきます。
「うわああああ! と、トヨちゃん! なんか魔女まで集まってきてますけど!?」
「し、知らないのだ! 吾は呼んでないのだ!」
「落ち着いて! 多分、杏子ちゃんに足止め頼んでた魔女の隊列、その先頭だよ!」
「って、結局激ヤバじゃん! どーすんの!?」
大分急いできたつもりでしたが、既にここまで侵攻されていたとは。
この隊列が鏡の魔女の結界にたどり着いてしまったら、その時点でジ・エンド。私たちの負けになってしまいます。
「くそっ。あとちょっとってとこで! 皆、先にこっち迎撃するよ!」
凜さんがそう叫んだ瞬間でした。
「時女一心流……奥義!」
「旋風、鎌鼬!!!」
刹那の一瞬。魔女達の間を何かが通り過ぎると、次の瞬間には魔女達は上半身と下半身が炎の太刀筋によって分かたれ、次々と崩れ落ちていきます。
スタッと私たちの前に着地したのは……。
「時女さん!!」
時女一族の長、時女静香さんでした。
「待たせたわね。皆、無事かしら」
時女さんは私たちを見て言います。
「え? え!? な、なんで!? なんで時女さんが!?」
驚く私に、時女さんは笑顔で答えます。
「当然でしょ。友達が危機には、どこにいても駆けつけるわ」
「そうではなくてですね……。いや、それも嬉しいんですけど……!」
すると、時女さんは頷く。
「分かってるわ。なんで神浜にいるのかよね。簡単な話よ。巴さんに相談を受けていたの。夕凪さんの力になってくれないかって」
「え、そうだったんですか?」
「ええ、実はそうなの。本当はもっと早く言いたかったんだけど、言うタイミングを失っちゃって。ごめんなさい」
(あー、そういえばマミさん、何か言いかけてたときが何回かあったような……)
きっとそれが、このことだったんでしょう。
「驚いたわ。ほぼ同じタイミングで旭からも同じ相談を受けていたからね」
それで、と時女さんは言う。
「夕凪さんに協力することにしたのよ。時女一族が進む道を決めるきっかけになったのは、あなたとの出会いだったから。それに、日の本を脅かす強大な魔女なら、どのみち放っておけないわ。それで皆を連れてきたのよ」
「皆?」
私が首を傾げると、時女さんが来た方角から声が聞こえます。
「静香ーー!」
「待ってよ静香ちゃーん! 早いよぅ!」
やって来たのは、ワルプルギスの夜で共闘した土岐すなおさんと広江ちはるさん。
それに、私たちの知らない二人も加わっていました。
「や、やっと追いつきました……」
「お、アンタらが大将の言ってた見滝原の魔法少女か」
「紹介するわ。時女一族に新たに加わった青葉ちかと、南津涼子よ」
斧を手に持ち、花が飾られた衣装の方が青葉ちかさん。お坊さんが着るような赤い袈裟のような服に、これまたお寺でお坊さんが座禅するときに肩を叩く棒(警策って言うんでしたっけ?)を持った方のほうが南津涼子さん、らしいです。
「ちかと涼子には助けられたわ。私たち、神浜の地理はさっぱりだったから」
「気にすんなって。あたしの地元でもあるんだ。力貸してくれるってんだったら、これくらいお安い御用さ」
「動物さんたちも力を貸してくれたので、現状の把握もすぐに出来たんです」
ありがとう、と彼女たちに伝えた時女さんは、私たちに向き直ります。
「というわけで、改めて。私たち時女一族、総勢30名が加勢するわ! よろしくね」
「ありがとう、静香ちゃん!」
「はい、ありがとうございます!」
私と凜さんは同時にお礼を言って。
「「ん?」」
時女さんの言葉に引っかかりを覚え、止まります。
「30名……?」
凜さんが反芻した言葉に、時女さんは笑顔で頷きます。
「ええ! ワルプルギスの夜のときと違って、分家の皆も多く集まったからね。全員、連れてきたわよ!」
「「「「「ええええええええええええ!!?」」」」」
時女一族以外、全員の声が重なりました。多分、今日一番心が重なった瞬間となったでしょう。
Side Team C
「な、なんだ!? キミたち、誰!?」
「ももこの知り合いじゃないの?」
「違うって!」
「レナも違うわよ!」
「ふゆぅ、私でもないよ!?」
「自分でもないな」
「夕凪さんの協力者の方々ですね! 私たちは時女一族!」
「コピーや他の魔女の相手は私たちが請け負います!」
Side Team B
「街の魔女も、我らが一掃します!」
「ですから、あなた方は鏡の魔女に集中してください!」
「えっ、えっ、え?」
「ど、どうなってるんでしょう、黒江さん……?」
「私も分からない。けど、きっと夕凪さんのおかげだよ……!」
「そうね。それなら、雑魚は任せるわ! ミユ!」
「はい! 燦様!」
「今のうちに一気に切り込むわよ! 黒江たちも遅れず付いてきなさい!!」
「わ、分かりました!」
「よ、よーし!」
Side Team A
「旭さん! ここは私たちが!」
「皆! 間に合ったのでありますね!」
「ど、どういうことなのん?」
「旭ちゃんのお知り合いですか?」
「ええ。時女一族として知り合った子たちであります」
「じゃあ、旭の言ってた秘策って……」
「時女一族の援軍のことでありますよ」
「旭さん! コピーも魔女も私たちが通しません!」
「ですから、鏡の魔女のほうは頼みました!」
「了解であります! 背中は任せたであります!」
Side Team D
「ここは私たちが!」
「道を切り開きます!」
「ほ? いいの? ありがとう!」
「時女さんたちも来てたのね……。それじゃあ、他は任せるわ! この幸運、逃す手はない! 私たちは株分けを叩くわよ!」
「はい……!」
「おっしゃー! ガンガンいくぜー!」
Side Team E
「なんすかなんすか!? どうなってんすか!?」
「これは……。嬉しい誤算ねぇ」
「時女の連中だろ? なんでアタシらに手ぇ貸してくれんだよ?」
「これも……、夕凪さんの繋いだ縁、かしらねぇ」
Side Team F
「ふふっ。いいですね。こんな状況ですが、楽しくなってきました」
「ヘルカさんもですか? 実は私もです。盤上戦略は、想定外があったほうが面白いですからね」
「全く……。余裕ね」
「あ、エボニー。早いですね」
「あっちは終わらせたからね。私の幻覚魔法で魔女の列を乱していたのだけど、もう必要なさそうね」
「そうですね。あとはトヨさんと合流したら……」
「ええ。私たちも始めましょうか。鏡の魔女攻略戦を」
Side MA
「はあ……。嬉しいのに、なぜだか頭が痛いわ」
ほむらさんは頭を抑えながら呟きます。
私も叫びすぎて、少し喉が痛いです。
時女さんたちの行動力にツッコミたいところがないわけでもないですが……。
でも、今は彼女たちに感謝するべきでしょう。
と、そこへ、もう一人合流してきます。
「あっ! 千鶴! 遅いのだ! そなたが最後なのだ!」
「悪いな。アタシの知ってる土地と違ってて、案外迷っちまった」
「じゃあ、もしかして……」
「あ、アンタが夕凪凜だな? ヘルカから聞いてると思うが、アタシが千鶴だ。足手まといにはならないから、少しの間、よろしくな」
すると、トヨさんは満足したように頷くと。
「よし、これでようやく全員揃ったのだ! 吾はこれからヘルカたちと合流してくるから、後は任せたのだ!」
「任せて!」
オルガさんが腕を曲げ、ガッツポーズをします。
そうして、トヨさんが走っていった直後でした。
時女さんによって一掃された魔女たちの後ろから、次の魔女たちがやって来ました。護衛のコピーたちも一緒です。
「うわわっ、また来た!」
すると、佐倉さんが槍を杖代わりにして立ち上がります。
「行け! ここはアタシが食い止める!」
「佐倉さん! 無茶よ!」
「誰かが残んなきゃ、それこそ全滅だ! ほら早く!」
マミさんにそう返す佐倉さん。佐倉さんに引く気はないようでした。
そんな中、佐倉さんの隣に立った子が一人いました。
「安心してマミちゃん! 杏子ちゃんを一人にはしないよ!」
広江さんが十手を構えます。
「は? ちはるアンタ何言って……!」
「ちゃるの言う通りですね。静香、ここは私たちが抑えます。静香は夕凪さんたちと共に」
「行ってこい、大将」
「し、静香さん!」
広江さんに続くように、土岐さん、青葉さん、南津さんも、私たちの壁になるように魔女たちに立ち塞がります。
「……ええ! 任されたわ!」
彼女らの声を受け、時女さんは力強く頷きました。
「……ったく。アタシに連携は期待すんなよ!」
佐倉さんはそう言いながら、佐倉さんたちと私たちを隔てるような、鎖の結界を張ります。
「行け、凜! 全部終わらせてこい!!」
「……うん! みんなも、気をつけて!」
迷いを振り切るように、凜さんはそう言って鏡屋敷に駆け出します。
オルガさんたちも凜さんに続きます。
「杏子!」
そんな中、ほむらさんが佐倉さんを呼びました。
「生きて、また会いましょう」
「ハッ! それはこっちのセリフだっつーの」
佐倉さんはこっちを振り向くことなく答えます。けど、その背中と声だけで、佐倉さんが不敵に笑っているのが伝わってくるようでした。
「まばゆ、行くわよ」
「……はい!」
そうして、私たちも駆け出します。
鏡屋敷の中、結界の入り口となる巨大な鏡に、私たちは意を決して飛び込みました。
Tips
・カドゥケウスの腕輪
円環の理の魔法少女たちが身に付けている腕輪。魔法少女のテレパシーを増幅し、より遠くの魔法少女まで安定してテレパシーを届けることが可能。腕輪同士で、通信機のように使うこともできる。使用の際に浮かび上がるホログラムの灯台は、アンテナの代わりである。
投稿遅くなってしまってすみませんでした!
ここのところ、仕事のほうが忙しくなってしまい、全然手をつけられていませんでした。しばらくはいつも以上にスローペースになってしまうと思います。申し訳ありません。
ま、まあ、廻天も延期したから、多少はね?(震え声)
それと、作中に出てきたカドゥケウスの腕輪は、本作のオリジナル要素です。円環の理の使者なら便利アイテムの1つくらい持ってそうなイメージだったので、大局を大きく変えない程度の便利アイテムを出させていただきました。
後、細かいところですが、ラビちゃん視点のイニシャルを「RH」から「LH」に変更しました。ラビちゃんのイニシャルがLHなの、今更マギアアーカイブで気づきました(池沼)
どうでもいい方が多数だと思いますが、一応ご報告を。
次回もよろしければ読んでいってください。