魔法少女まどか☆マギカ 実績『朝焼けのエンドロール』獲得   作:くろしゅー

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(まどドラ一周年なので)初投稿です。



DAY.95ー7 光と影

 

 

 

 

 DAY.95 Side LM

 

 

「先生。こちらの調整、終わりました」

「分かった。次、こっちの子頼むわ」

「はい」

「月出里。そこの子、こっち連れてきて」

「ふむ!」

 

 次から次へと運ばれてくる神浜の魔法少女の手当てで、私らはてんてこ舞いだった。

 

「こら、ちょっとした野戦病院やな。あの子たちも好き勝手言ってくれるわ」

 

 このケアトレーラーが野戦病院のようになっている理由は、凜ちゃんたちのお願いだった。

 

 きっと傷ついている神浜の魔法少女がたくさんいるから、助けてほしいと。私のせいで犠牲になる人は少しでも減らしたいからと、そう頼まれてしまった。

 

 まあ、調整屋は魔法少女全員の味方。敵が魔女である以上、怪我人を受け入れるつもりではあったが……。

 

「例え自分を殺そうとした相手でも、死なすことは許せへんのやな」

 

 ケアトレーラーの近くに作った簡易ベッドに寝ているのは、凜ちゃんたちを襲撃し、返り討ちにあった魔法少女たち。

 

 全員生きているのは、凜ちゃんが全員に伝えていたそうだ。殺しちゃダメ、と。

 

 神浜を危険に晒しても……。いや、危険に晒すからこそ、彼女はこぼれ落ちる命を出したくないのかもしれない。

 私らに彼女たちの拘束場所を教え、治療をお願いしてきたのだから。

 

(でも……。そんな無茶、いつまでも続かへんで)

 

 正直言って、凜ちゃんを戦いには出したくなかった。

 みたまが施した調整によって可能とした自身の強化。その反動で、凜ちゃんは既にボロボロだった。その上、戦闘による怪我、別の魂をソウルジェムに合成させる無茶。よくもまあ、ソウルジェムが砕けなかったものだ。

 

 それにソウルジェムが無事でも、普通なら心身の過労で倒れてもおかしくない。それくらいギリギリのラインで、凜ちゃんは踏みとどまってる。

 

 

 それでも、私は凜ちゃんを止められない。

 それをすれば、私の魔法が凜ちゃんを害してしまう。あくまで私にできるのは、調整屋の範疇だけ。

 

(せっかく、みたまの心を動かしてくれた子なのにな……)

 

 あの子が今挑んでいるのは、この神浜の憎悪の歴史そのもの。

 滅びの願いと、少女たちの悲しみを食らった魔女。

 

 その憎悪の連鎖を止めるのは、並大抵のことではない。それを成し遂げるなら、凜ちゃんはきっと……。

 

 

(アカンな……。思考が悪い方向に引っ張られとる)

 

 とにかく、今の私らにできることは、1人でも多く怪我人を助け、犠牲者を出さないようにすること。

 

 

 それが、私らに許された唯一の援護。

 

 

 それでも、願っていいのなら。

 

(凜ちゃん……、生き残ることを諦めたらアカンで。みんな、待ってるからな)

 

 

 運ばれてきた子に意識を戻し、私は調整を再開した。

 

 

 

 

 

 DAY.95

 

 

 

 果てなしのミラーズをRTAする実況、はーじまーるよー。

 

 

 

 前回は円環の理の魔法少女たちの力を借りて、鏡の魔女の根城、果てなしのミラーズにたどり着いたところまででした。

 

 

 

 今回はその続き。果てなしのミラーズ攻略戦から始めていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、動画は前回の続き、結界に突入したところからですね。

 

 

 

 

 果てなしのミラーズ ― 第1鏡層 ―

 

 

 

「これが……」

「果てなしのミラーズ……」

 

 静香ちゃんとひめなちゃんは、この結界自体初めてでしたね。

 目を奪われているような二人ですが、それも無理ありません。何度見ても、魔女の結界とは思えないほどキレイなところですからね。

 あらゆるところに鏡があり、床や壁も蒼い大理石のような材質で覆われており、幻想的でありながら気味悪い空間です。

 

 

 さて、ここで果てなしのミラーズの攻略についてサクッと説明しましょう。

 

 え? 魔女結界なんだからいつも通りじゃないの?とお思いの視聴者兄貴たち。そんなんじゃ甘いよ。(煽り)

 

 

 この果てなしのミラーズは他の魔女結界と違い、入る度に構造が変化する仕様となっております。そのため、前回入ったときとマップの構図が変わっているなんてザラにあります。不思議のダ○ジョン形式を思い浮かべてくれれば間違いないです。

 しかも、この果てなしのミラーズ、他の結界と同様に階層(ミラーズは特別に鏡層と呼ぶ)があるのですが、なんとそれが第36鏡層まであるのです! 普通の結界が3~6層くらいなので、普通に5~10倍くらいあります。この結界、頭おかしい……。(小声)

 

 そのため、通常は何鏡層かずつ突破して撤退を繰り返して……、と攻略していく形となります。

 果てなしのミラーズは各鏡層に結界の出口となる鏡があり、その鏡層のボスを倒すと出口が使えるようになる仕様なので、それでちょっとずつ攻略していくんですね。じゃないと、魔力も体力も到底保たないクソゲーになるからね。

 

 ですが、今回はそうも言っていられません。

 鏡の魔女の神浜滅亡計画は発動まで秒読みの状態。撤退などしている時間はありません。言い忘れていましたが、今回の果てなしのミラーズ攻略戦、恐らく時間制限付きだと思われます。結界に入る前から時間がないと色んなキャラが言っていたので、間違いないと思います。

 魔力的にも、こちらのグリーフシードはいくつか予備があるといっても、全鏡層攻略するには圧倒的に足りていません。

 

 この制約の中、時間内にラスボスまでたどり着かなければいけないのですから、ハッキリ言って普通に挑めば無理ゲー、詰みです。

 

 

 

 

 ですが当然、私だって勝算なくここまで進めてきたわけではありません。

 

 その理由こそ、みことちゃんルートをクリアしたことです。

 

 

 彼女の好感度を一定以上にしつつ、神浜への復讐心を捨てさせると……。

 

 この36層もの数の鏡層を大部分ショートカットできるようになります。

 具体的に説明しますと、第1鏡層にショートカット用の特別な鏡が出現するようになり、そこを通ることで本来攻略しなければいけない第2鏡層から第33鏡層までをショートカットでき、第34鏡層からスタートさせることができます。みことちゃんが協力してくれることで、彼女が果てなしのミラーズの結界を弄ってくれるんですね。

 つまり、鏡の魔女本体がいる最下層の第36鏡層を除けば、3層クリアすればラスボスにまでたどり着けるようになるんです。

 

 これ、鏡の魔女攻略があるバグ無しレギュのRTA必須ルートになりますので、よくメモしておいてください。テストに出ますよ。

 

 

 だから、みことちゃんの好感度を稼ぎまくる必要があったんですね。(メガトン構文)

 

 

 今回はみことちゃんがユリちゃんにこの世界の未来を託してくれたので、このショートカットが使えるようになりました。やっぱ、ユリちゃんの善性を……、最高やな!

 

 

 

 

 さらに……。

 

 

「よっし! リンの言う通りなら、この鏡層の奥にある鏡で一気に下まで行けるんだよね?」

「うん、そのはず。みことちゃんが教えてくれた」

「なら、時間もないし最短で突破しよう! あたしに任せて!」

 

 と言ってオルガちゃんが出したのは、彼女の魔法で生みだした馬。

 このゾ○ド感マシマシの馬、下半身に4機のブースターが付いているので、普通の馬を凌駕する速度を出せます。

 

 とはいえ、この人数を馬には乗せられないので……。

 

「ねえ、マミちゃん」

「凜さん? どうかした?」

「ちょっと思いついたんだけど。マミちゃんの魔法でさ……」

「……なるほどね。ええ、任せてちょうだい!」

 

「凜さん? マミさん? 一体なにを……」

 

 ふふふ、まばゆちゃん。私たちの秘策、見たけりゃ見せてやるよ。

 

 

「あ、リボンが馬と繋がって……。え、これって……」

「そう、馬車よ。これなら皆を乗せて移動できるだろうって、凜さんが」

 

 

 はい、ということで、マミさんのリボンで馬車を作ってもらいました。

 

 これによって全員無理なく乗って、下層までたどり着けます。

 

 

 

 よっしゃ! これで行くゾ! (果てなしのミラーズを)最高速度でぶち抜いたる!

 

 

「みんな、喜んでいるところ悪いけど。はしゃいでいる時間は無さそうよ」

 

 ん? ほむらちゃん、どうしたんだゾ?

 

 

 って、あれは……。

 

「ミラーズのコピーたち……!」

 

 

 う わ あ あ あ あ あ(PC書き文字) 

 

 すごい数のコピーが集まってきている!!

 

「どどど、どうします凜さん!?」

「落ち着いてまばゆ。ここまで来て、やることは1つだよ」

「そうね」

「凜さん? ほむらさん? ま、まさか……」

「うん。強行突破といこうか」

「ああああああ、やっぱりぃぃぃぃぃ!!!」

 

 

 ……私が選んでいるパターンもありますが、ユリちゃん、選択肢がそもそも脳筋なことが多い、多くない?

 

 まばゆちゃんカワウソ……。

 

 

 

 とはいえ、ユリちゃんの案に他全員が全員が納得しているような顔なので、強行突破確定ですねクォレハァ……。

 

 

「うううう……! またこのパターンなんて……」

「諦めなさい、まばゆ」

「大丈夫よ、愛生さん! あなたならついてこれるはずよ! 自信持って!」

「時女さんの悪意なき励ましが逆に辛い! ありがとうございます! ちくしょう!」

 

「おまえたち、行くぞ。もう敵がそこまで来てる」

 

 さて、ガンヒルトちゃんにせっつかれたのでさっさと馬車に乗りましょうか。

 

 

「ええ。なら、まずは私が道を切り開くわ」

 

 静香ちゃん、よろしくナス!

 

 

「巫流、奥義! 祈祷通天ノ光!!」

 

 

 よし、静香ちゃんの放ったマギアによって、コピーたちの群れを割るように1つの道ができましたね。

 

 今のうちに突破しましょう。

 

 

「よしきた! みんなしっかり掴まっててね!!」

 

 オルガちゃん、オナシャス!!

 

 

「よぉ~~~し……! 突撃ぃぃぃぃぃ!!!」

 

 

 

 

 はい、というわけで果てなしのミラーズ第1鏡層、戦闘開始です。

 

 

 

 

 

 

 

 DAY.95 Side MA

 

 

 

 オルガさんとマミさんによって作られた馬車に乗り込んだ私たち。

 

 ですが……。

 

「うわぁ!? コ、コピーたちがゾンビ映画でしか見たことない絵面でこっち来てますよ!?」

 

 時女さんの技によって出来た道を進む私たちに、左右に割れていたコピーたちが迫ってきました。

 

「マミちゃん、屋根! 迎撃お願い!」

「ええ、任されたわ!」

 

 凜さんの言葉にマミさんは頷き、すぐさま馬車の窓から屋根へと登ります。

 

 そして、生みだしたマスケット銃で近づくコピーたちを次々と撃ち抜いていきます。

 

 マズルフラッシュと炸裂音と共に、コピーたちが次々と撃ち抜かれていきます。

 

 しかし……。

 

「くっ……!」

 

 マミさんの弾幕を押し返すほど、コピーたちの数は圧倒的でした。

 

 しかも全方位から迫ってくるコピーたち。前方はオルガさんが蹴散らしていますが、それでも手数が足りていません。

 

「仕方ないわね。まばゆ」

 

 外の様子を観察していると、ほむらさんに声をかけられます。

 

「はい? って、おっと。 ……なんですかこの拳銃? そして、なんでほむらさんはアサルトライフルを取り出しているんですか?」

 

 投げ渡された拳銃をキャッチし、反射的にほむらさんを見れば、彼女は盾からアサルトライフルを取り出していました。

 未来視を使っていないにも拘わらず、ほむらさんの考えが予想できてしまい、外れてほしいと願いながらそう問いかけます。

 

 が、返ってきた答えは私の予想通りでした。

 

「決まっているでしょう? この馬車の窓から迎撃するのよ」

「えっ……。ま、マジですか?」

「この中で銃を使えるのが私とまばゆしかいないんだから、早くしなさい。使い方は前教えたでしょ」

「そんなぁ!?」

 

(教わったって、本当に基礎的な撃ち方だけですよ!? それに、止まったものしか撃ってないですし……)

 

 すると、誰かの手が肩に置かれます。

 

「凜さん……」

 

 凜さんは私の目を見て言います。

 

「お願い、まばゆ。私が言える立場じゃないのは分かってるけど、まばゆの力を貸してくれないかな……?」

 

 そう言う凜さんの瞳は、どこか不安そうでした。

 

(そうですよ……)

 

 怖いのは、私だけじゃないんです。

 

「来るわよ!」

 

 ほむらさんの声に、私はハッとします。 

 

「ああもう、こうなりゃヤケです!!」

 

 もうここまで来たんです。ゴチャゴチャ考えるのは後回し。

 

 

 怖いとか、出来ないとか、そんなの凜さんだってずっと感じてるハズです。

 でも、誰かのためなら、そんな感情とだって戦える凜さんが、私は好きだから。そうなりたいと私も思ってきたから。

 

 

 私だって……!

 

 

 銃のセーフティを外し、窓から腕を出します。

 

 

 ――ハンドガンは両手でしっかり握るのが何より大事であります。映画みたいに格好つけず、両目を開けて良く狙う。

 

 

 以前、ワルプルギスの夜との戦いのための特訓で旭さんが言っていたことを思い出します。

 

 両手でしっかり構え、馬車に一番近いコピーに狙いを定めます。

 

 

 ――後は、引き金を恐れず、焦らずに引くこと。恐れや焦りがあるとガク引きになって、弾道がブレるでありますからな。

 

 

 相手の中心を狙い、私は息を整え、引き金にかけた指に力を込めました。

 

 

 

 バンッ!!

 

 

 

 火薬の炸裂音と共に放たれた銃弾は真っ直ぐに飛び、コピーを撃ち抜きました。

 

 

 コピーは後ろへと吹き飛び、転がりながらコピーたちの群れの波に消えていきました。

 

 

「やった……?」

 

 

 現実味がなく、私は呆けます。

 

 すると、直後。

 

 

「「おおおおお、すごーーーーい!!」」

 

 

 凜さんと藍家さんの声が聞こえてきます。

 

 

「まばゆん、スゴっ! チョーカッコいいー!」

「まばゆ、やっぱできるじゃん! すごー!!」

「そ、そうですか? えへ、えへへへへ」

 

 二人に褒められ、私はニヤつきが止まりませんでした。

 

 すると、ほむらさんから声が飛んできます。

 

「バカ! 早く次撃ちなさい!」

「あ、す、すみません!」

 

 私は窓の外に視線を戻し、次を狙います。

 

 そんな私を邪魔に思ったのでしょう。コピーの群れから魔法の矢が放たれます。

 

「えっ……」

 

 他を狙っていて反応が遅れた私は、それを見つめるしかできず……。

 

 

 

 魔法の矢は、私の顔ギリギリのところで、間に差し込まれれた凜さんの刃で防がれました。

 

「大丈夫、防御は任せて」

 

 私の横に並ぶ凜さんの顔からは、不安の色が薄くなっていました。

 

「はい……! お願いします!」

 

 

 

 そうして、私たちはコピーたちを蹴散らして結界内を進みます。

 

 近寄ってくるコピーたちを、私、ほむらさん、マミさんで撃ち続けます。ガンヒルトさんも迎撃に出ていますが、あのデカい斧を軽々振り回してながら軽快に飛び回ってるのは、目を疑いました。

 

 飛び道具を使ってくるコピーたちも増していき、それに応戦するのは凜さん、千鶴さん、時女さん。

 

 千鶴さんは鎖鎌を巧みに操り、馬車を狙う矢や銃弾を次々と弾いていきます。

 

 それでも、敵からの弾幕も苛烈さを増してきます。

 

「クソっ! 飛び道具持ちが多すぎる! 誰か狙えないか!?」

 

 屋根で戦う千鶴さんが叫びます。

 

 とはいえ、この揺れる馬車での狙撃など、とても出来ません。しかし、止まってしまえば、それこそ集中砲火を食らってしまいます。

 

「どうしたら……!」

 

 すると、私と背中合わせに撃っていたほむらさんが、盾からスナイパーライフルを取り出します。

 

「私がやるわ」

「ちょ、ほむらさん!? 本気ですか!? こんな揺れてるんですよ!?」

 

 私の問いかけを気にする様子もなく、ほむらさんはライフルを構えます。

 

「だからって、無視し続けたら凜たちでも防ぎきれなくなるだけよ」

 

 そうして、ほむらさんを背中を壁に押し当て、足で反対側の壁を突っ張り、身体を固定します。

 

「安心しなさい。こういう状況の乗り越え方は、旭に教わってるわ」

 

 そして、ほむらさんはスコープを覗き……。

 

「っ!」

 

 放たれた銃弾は、空気を切り裂き、群れの後ろで弓矢を撃っていたコピーを撃ち抜きました。

 

 ほむらさんはその流れのまま、銃口をずらしていき、引き金を引いていきます。

 弾はコピーたちを次々と貫き、1マガジンで片側の飛び道具持ちコピーを全て片付けていました。

 

「す、すごい……」

 

 この揺れで1、2発しか外していないんですから驚きです。

 

 ほむらさんは反対の私たち側の窓からも同じように狙撃し、飛び道具持ちのコピーを一掃しました。

 

 

 

「よし、これで……!」

 

 

 ひとまずの脅威が去ったと胸を撫で下ろしていると、大きな魔力が動くのを感じます。

 

(なにが……!?)

 

 窓から顔を出すと、砂で身体を構成した魔女が前方に現れていました。

 

 

「アイツがこの鏡層の主だね!」

 

 凜さんはそう言うと、武器を構え、魔女へと飛び込んでいきます。

 

「私たちもいきましょう!」

「ええ!」

 

 巴さんの声に、時女さんは力強く頷きます。

 

「アタシたちもいくぞ!」

「ああ!」

 

 彼女たちに続くように、千鶴さん、ガンヒルトさんも馬車から飛び出します。

 

 

「ティロ……!」

 

 示し合わせずとも、全員の息は自然と揃い、各々の攻撃が魔女に炸裂します。

 

 

「「「「「クインテット!!!」」」」」

 

 

 5人の一斉攻撃は、魔女の身体に大穴を開け、たった一撃で魔女は消滅しました。

 

 

 

 オルガさんが馬車を操り、全員の着地地点に馬車を合わせます。

 

 

 馬車の屋根の屋根に5人が着地し、速度を落とすことなく、第1鏡層を突破しました。

 

 

 

「たしかこの辺りって……」

 

 凜さんは辺りを見渡して、ある一点を指さします。

 

「あれだ! あの鏡! あれが最下層間際まで繋がってる鏡!」

「了解!」

 

 凜さんの声にオルガさんは頷くと、馬車をその鏡の方向へと向け、更に加速します。

 

 

「このまま突っ込むよ! みんな何かに掴まってて!」

「皆、これを!」

 

 マミさんの生みだしてくれたリボンのシートベルトに掴まり、私たちは鏡へと突入しました。

 

 

 

 

 

 

 DAY.95 Side K

 

 

 

 

「うわぁっ!?」

「黒江さん!」

 

 地面を転がりながら、私はなんとか受け身を取る。

 

「黒江さん! 大丈夫ですか!?」

 

 その声と、視界に映った白いフードで、さっきまで隣にいた彼女が駆け寄ってきたことを理解する。

 

「う、うん……。なんとか」

 

 幸いにも大きな怪我はないようで、少し目が回ったことを除けば問題なく動けた。

 

 

 けど……。

 

 

(やっぱり無理だ……)

 

 夕凪さんの姿を見て。彼女を助けるために動く、たくさんの人を見て。

 

 私だって彼女たちに並べると思って、鏡の魔女の株分けに挑むことにした。

 

 

 けど、気合いと決意だけで強くなれるわけもなく。

 

 

 

 私は完全にお荷物だった。

 株分けの強さは今まで私が戦ったどの魔女より強かった。でも、それは予想していた。問題は、その強さを見誤ったこと。

 

 敵の強さは、私が戦うどころか、援護に入れるレベルを超えていた。

 私の隣にいる彼女の弓矢も大して効いている様子はなく、戦闘は神楽さんと遊狩さんがなんとか持たせている状態だった。

 

 それでも援護に入ろうとしたら、先ほどのザマだ。

 魔女から放たれた流れ弾のレーザーが私の前に着弾し、爆発。それに吹き飛ばされ、魔女に近づくこともできず、今に至る。

 

 分かってる。

 1回でダメなら、もう一度挑めばいいってこと。

 

(でも、無理……! 怖い……)

 

 さっきの爆発を見て、足が動かなくなってしまった。

 直撃したわけでもないのに、あんなに飛ばされる爆発を起こすレーザー。あんなのが直撃したら、私のような魔法少女がどうなるかなど、火を見るよりも明らかだ。

 

 神楽さんのように防御特化の魔法でも、遊狩さんのローラースケートのように素早く動く武器も手段もない私では、完全に力不足だった。

 それを補うための勇気すら、私は持ち合わせていなかった。

 

 そして、皆を見捨てて逃げる勇気すら、私にはなかった。

 

 

 結果、戦場で動けなくなる案山子の完成だ。

 

 

「黒江さん……」

 

 あの子が私を心配そうに見ている。

 何か言わないと、と思った。でも、何を言えばいいのか、何が出来るのかが私には分からなかった。

 

 すると、あの子は何かに気づいたのか、私が何かを言う前に立ち上がる。

 

「……分かりました。黒江さんはここで休んでいてください。私が、あなたの矛になります!」

 

 彼女はそう言って立ち上がると、弓矢を構えて、鏡の魔女に攻撃を再開する。

 

 

(なんで……。効かないって分かってるのに。攻撃したら自分が狙われるかもしれないのに……)

 

 

 それでも、あの子は戦う。

 

 あの子だけじゃない。

 

 夕凪さんも、愛生さんも。

 

 

 相手が例えどれだけ強くても、立ち上がれる。

 

 株分けの魔女でこれだけの強さだ。本体の強さなど計り知れない。なのに、私と大して強さの変わらなそうな愛生さんは、夕凪さんに付いていくことを決めた。

 

 

(そっか。みんな、覚悟が違うんだ……)

 

 

 私のように、普通が知りたくて彼と付き合う願いを叶えるような人間じゃない。

 何の覚悟もしないで魔法少女をやっているような人間じゃないんだ。

 

 そう思った瞬間。夕凪さんのような正しさと優しさには、どうあっても近づけないのだと、唐突に理解した。

 

 

 私の憧れた正しさ(夕凪さん)は、一生届かない太陽なんだと思い知らされた。

 

 

 なら……。

 

 

(もういいや……)

 

 

 魔法少女になってしまった以上、普通の日常へと後戻りはできない。

 

 一生を差し出した願いの対価は、自分から手放してしまった。

 

 憧れた正しさは、どれだけ羽ばたこうとたどり着けない位置にあると知ってしまった。

 

 

 

 

 それなら、私に残る価値はなんなんだろう?

 

 それは多分、これしかない。

 

 

(躊躇うな……。命が惜しいから躊躇うんだ。なら……)

 

 

 せめて、夕凪さんの役に立って死にたい。

 

 それが唯一、あの正しさに並び立てる方法だから。

 

 

 これなら、一度の覚悟をするだけで済むから。

 

 

 

 私はクラブを握りしめ、魔女へと駆け出す。

 

 

 魔女は相変わらず大暴れをしており、神楽さんのガトリングガン3門の一斉掃射に怯むことなく、体当たりで神楽さんを吹き飛ばす。

 後ろへと回り込んだ遊狩さんの踵落としを使い魔の銃撃で撃ち落とし、身体から生やした腕の裏拳で吹き飛ばす。

 

 そして、魔女は狙いをフードのあの子へと切り替える。

 

 

(そんなこと、させない!)

 

 

 大丈夫、怖いのは一瞬。

 

(後を考えなければ、この足は動かせる……!)

 

 

 愛生さんの言っていたことが、なんとなく分かった。

 

 

(夕凪さんも、こんな気持ちだったんだね……。やっと、分かったかも)

 

 

 死ぬことを躊躇わなければ、私はこんなにも自由に動けるんだ。

 

 

 私はソウルジェムの魔力を圧縮する。

 

 

(これを一気に解放して、一矢報いる……!)

 

 

 私は全力で走り、あの子と魔女の間に飛び込もうと力強く踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 そんな私を、まるで制止するかのように。

 

 

 私の横をシャボン玉の群れが通り過ぎ、魔女へと直撃。魔女は予想外の一撃に、体勢を大きく崩した。

 

「え……?」

 

 私も突然のことに固まっていると、後ろから声がした。

 

 

「まったく……。まばゆも凜も、そしてお前も。自己犠牲が行き過ぎて、死に急ぎなヤツばっかりなのです」

 

 幼さの残る、しかし達観したような声は徐々に近づき、私を追い越していく。

 

 

 そして、私は声の主を見る。

 

「お前たちはもっと自分のために生きるべきなのです。人助けなんて、もっと心に余裕のあるヤツがやればいいのです」

 

 小学生にすら思える小さな女の子は、白髪を揺らしながら語る。

 

「あなたは……?」

 

 私の問いに、女の子は片目で私を見る。

 

「百江なぎさ。お前たちの援護に来てやったのです」

 

 なぎさちゃんは手に持ったラッパを構え、立ち上がろうとしている魔女にシャボン玉を撃ち込む。

 

「黒江。お前は焦りすぎなのです。人を救えないからなんなのです。人が救える範囲には限界があるのです。その範囲の外に手を伸ばせば、自分が傷つくことになる。お前が傷ついて悲しむヤツのことも考えるのです」

「私にそんな人なんて……」

「いないのとは言わせないのです」

 

 私の言葉を、なぎさちゃんは遮る。

 

「お前のことを助けた凜は、絶対悲しむのです。それにお前の後ろにいるヤツだって、悲しむのです」

 

 私は後ろにいる彼女を見る。

 前髪の間から見える彼女の目は、その通りだと告げているようだった。

 

「黒江。お前だって分かっているはずなのです。じゃなきゃ、お前は命をかけてソイツを助けようとなんて思わなかったはずなのです。思い出すのです。最初にソイツを助けたとき、どんな思いで助けたのですか?」

「それ、は……」

 

 

 魔女に苦戦するあの子を助けようとしたとき。

 

 

 私は彼女に生きてほしかった。

 後から色々な理由はついてきたけど、駆け出した最初の一歩はそれが理由。

 

 

(あっ……)

 

 そっか。

 あの子も、夕凪さんも。私に生きてほしいって思ってたんだ。私に死んでほしくなくて、動いたんだ。

 ならきっと、私だってまだ動ける。

 

「お前たちは生きてるだけで喜んでくれるヤツがいるのです。自分のことを守ることは、誰かの大切な人を守ることと同義なのですよ」

 

 なぎさちゃんのシャボン玉攻撃を食らい続けても、魔女は徐々に立ち上がり始めていた。

 

「ねえ、1つ聞いていいかな?」

 

 私はなぎさちゃんに問いかける。

 

 私の勇気は小さいかもしれない。でも、あの子を助けたとき、私は駆け出せた。死ぬことなんて覚悟しなくても。

 それなら、私に必要なのは勇気の出し方。

 

「なんなのです?」

「それでも、誰かのために戦いたいって思ったら。守りたい人を守りたいときは、どうすればいいと思う……?」

 

 その問いに、なぎさちゃんはニヤッと笑う。

 

「そんな時こそ、周りを頼るのです。1人で届かない距離なら、人を増やせばいいのです」

 

 当たり前だ、と言わんばかりになぎさちゃんは答える。

 

「そっか……」

 

 私はなぎさちゃんの隣に並ぶ。

 

「なら、なぎさちゃん。私たちのこと、助けてほしいな? 私たち、夕凪さんのこと助けたいの」

 

 なぎさちゃんは私たちを見ずに答える。

 

「最初からそのつもりなのです。なぎさが来たからには、百人力なのです! さあ、反撃開始なのです!!」

 

 なぎさちゃんの声は、どこか安心するようで。

 

 

 

 いつの間にか、足の震えは止まっていた。

 

 

 

 

 

 

 DAY.95

 

 

 

 

 いやー、快適快適。

 

 

 オルガちゃんの馬のおかげで、第1鏡層をTA勢並の速度で突破することができました。魔女もみんなとの連携攻撃でワンパンだし、これがRTAじゃないのが悔やまれる。

 

 

 それはともかく、先ほどここのボスを倒したことでショートカット用の鏡が登場しましたね。それではこれをくぐって第34鏡層に向かいましょう。

 

 

 

 

 魔法少女移動中……

 

 

 

 

 果てなしのミラーズ ― 第34鏡層 ―

 

 

 

 はい。画面に出た通り、果てなしのミラーズ第34鏡層に到達しました。

 

 さて、ここからですが。

 ショートカットしたとはいえ、ラスボスである鏡の魔女前に残り2層のボスを倒さねばなりません。さすがにラスボス直行できちゃうと難易度ガタ落ちだからね。しょうがないね。

 

 

 それで第34鏡層のボスは、魔法少女の完全コピー体です。

 

 基本的に果てなしのミラーズのコピーはナオキです……。なクオリティのものが殆どですが、時間をかけて生み出せばコピーのクオリティを上げることは可能なんです。

 

 そのため、この第34鏡層では魔女本体を守るための親衛コピーが待機しています。

 このコピーは固有魔法以外、本物と変わらない戦闘力、戦闘スキルを有しています。

 

 なので、第1鏡層の無双ゲームの雑魚キャラのように簡単に倒すことはできません。

 

 

 私の体感だと、大体杏子ちゃんや鶴乃ちゃんがこのボスをやっていることが多いイメージです。

 

 中堅以上の魔法少女が選ばれるパターンがほとんどですね。前に一度だけ宮尾時雨ちゃんがボスだったこともありましたが、そんな豪運はほとんどありえません。ワンパンで終わっちゃったからね。制作陣は何を考えて、弱小魔法少女も択に入れたんでしょう。イジメかな?

 

 逆にメチャクチャ強い魔法少女が来ることもあります。マミさんとか、静香ちゃんが来ると結構めんどいですね。やちよさんに来られると、もう目も当てられません。最悪パーティーから脱落者が出ます。

 

 

 弱いの来い弱いの来い弱いの来い……!!!(お祈り)

 

 

 

 ちなみに第35鏡層のボスは、これまた完コピ複製体に魔女2体の複数ボス戦が待ち構えています。

 とはいえ、複数戦だからかコピーも魔女も、大体弱いのが配置されています。ラスボス戦の前座だからか、コピーに関しては完全に34鏡層のほうが強いです。

 

 

 なので、この鏡層を突破しちゃえばほぼ勝ったようなものです。(フラグ)

 

 

 

 

 

 と、話している間に結構進んできましたね。

 

 そろそろボスと会敵してもいい頃ですが……。

 

 

 

「っ!? 危ない!!!」

 

 ん? オルガちゃんどうし……。

 

 

 

 

 グッハァァッ!!(1カメ)

 

 

 

 グッハァァッ!!(2カメ)

 

 

 

 グッハァァッ!!(3カメ)

 

 

 

 グッハァァッ!!(4カメ)

 

 

 

 グッハァァァァァ……!(対馬編集)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イテテ……。いきなり横から攻撃受けて、馬車が木っ端微塵になったんですけど……。

 

 

 おいゴラァ! 面見せろ。免許持ってんのかコラ!(意味不明)

 

 

 

 まあ、それはさておき。十中八九、この鏡層のボスの攻撃でしょうね。幸い、馬車が攻撃を受けてくれたおかげで全員無事です。

 

 

 さてさて、煙の中から出てきましたね。果たして鬼が出るか蛇が出るか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 え……。

 

 

 

 

 

 

 

 というわけで今回はここまで。ご視聴、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 DAY.95 Side MA

 

 

 

 

「イタタ……。皆、無事?」

 

 横からの攻撃によって、馬車から放り出された私たち。凜さんの声になんとか返事します。

 

「な、なんとか無事です……」

「私も無事よ」

 

 ほむらさんも無事だったようで、私たち続くように他の皆さんの声も返ってきました。

 

 

 

 そこへ。

 

 

 カチャリ、と金属同士がぶつかるような音と、これまた固いものが当たるような高い足音が聞こえてきました。

 

 

「っ!」

 

 

 全員がすぐさま構えます。

 

 こんなところにいる私たち以外の存在なんて、敵でしかないからです。よしんば人に見えても、恐らくコピーでしょう。

 

 

 

 すると、足音と金属音が止まり、直後、辺りを覆っていた砂煙が吹き飛ばされます。

 

 

 

 その中心にいたのは、人のシルエット。どうやらコピーだったようです。

 

 

 その少女は、ブロンドヘアーを後ろで三つ編みで纏めており、西洋の騎士のような鎧と漆黒の籠手を身に纏い、これまた西洋の騎士剣を持っていました。マントをたなびかせる彼女の威圧感は、今までのコピーとは隔絶したものです。

 

 

 それだけも異質でしたが、それより私が気になったのは、オルガさんたち、向こう側から来た方たちの反応でした。

 

 目を見開いて、冷や汗を垂らしており、明らかに動揺していました。

 

「タルト……」

 

 オルガさんがポツリと呟きました。

 

 その声で、ほむらさんも彼女たちの異変に気づいたようで、オルガさんたちに問いかけます。

 

「ねえ。あの魔法少女、あなたたちの知り合いか何か?」

 

 すると、オルガさんは答えにくそうに口を開きます。

 

「う~ん、知り合いっちゃ知り合いと言えるかもだけど……。あの子は……」

「お前たちも、ある意味知ってる」

 

 オルガさんに続くように口を開いたのは、ガンヒルトさん。

 

「私たちも、知ってる?」

 

 首を傾げた私に、ガンヒルトさんは言います。

 

「タルトは愛称。仲の良いヤツはアイツをそう呼んでいる。なんでも、名前の書き間違いから始まった呼び方だそうだ」

 

 ガンヒルトさんは両手の戦斧を構えます。

 

「アイツの本名は、ジャンヌ・ダルク。恐らく魔法少女の歴史上、最強の魔法少女だ」

 

 

「え……」

 

 

 

 その名前は私も知っています。彼女が主役の映画だって見ました。

 百年戦争でフランスを勝利に多大な貢献をした、勝利の乙女(ラ・ピュセル)

 現代まで伝わるほど歴史に名を刻んだ少女が、目の前の魔法少女だとすれば。

 

 

「つまり……」

 

 

 

 そのフランスを救った歴史の英雄にして最強の魔法少女が、私たちの敵として立ちはだかっているということを意味していました。

 

 

 

 

 

 




まどドラ、一周年おめでとうございます。

この小説をマギレコロスを埋めるための自己満足で書き始め、その内にまどドラがリリースされ、それが一周年を迎えた。そう思うと感慨深いものがあります。
まさか一周年迎えても、小説が書き終わっていないとは思っていませんでした。

ダラダラ続けていても仕方ないのは重々承知ですので、完結までもう少しだけお待ちください。

そして、クレセントメモリアも完結ですね。私はまだ読めていませんが、内容的にこの小説と齟齬が出ないかがちょっと心配です。多分大丈夫な、はず……。

話が一区切りしたら、その辺の時系列も整理して書いてみたいですね。

ともかく、この小説も連載約2年。完結まで頑張りますので、応援いただけると幸いです。

次回もよろしければ、読んでいってください。
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