魔法少女まどか☆マギカ 実績『朝焼けのエンドロール』獲得 作:くろしゅー
(今更ながら超かぐや姫!見たので)初投稿です。
DAY.95
ああああああ、あああああああああああ!!
ふーざーけーるーなー!
あああああああああああ!!
なんで?なんで?なんで?なんで?
……失礼しました。開幕早々、取り乱してしまいました。
とりあえず……。最強の英霊と対峙する実況、はーじまーるよー。
前回は果てなしのミラーズ攻略戦を始め、ショートカットも用いて第34鏡層まで到達することに成功しました。
そして、第34鏡層のボスと戦うことになったのですが……。
そのボスというのが、タルト(ver.Final)でした。
は?(マジギレ)
タルトをご存じない方に説明しますと、彼女は魔法少女たると☆マギカの主人公であり、百年戦争時代のフランスの勝利に大きく貢献したジャンヌ・ダルクその人です。タルトというのは、彼女の愛称のことですね。
まどマギの作中でキュゥべえが言っていた通り、魔法少女の強さは背負った因果によって変わります。そして、国同士の戦争に影響を与え、後世までに名が残るほどの因果が彼女の強さに反映されている、と言えばもうお分かりでしょう。
このまどマギ世界において、まどかを除けば、彼女こそ歴代最強の魔法少女です。
あのマミさんやさやかちゃんすら凌駕するほどの隔絶した才能に、戦乱の世に生まれたことによる戦闘技術の高さ。そして、魔法少女としての異次元の身体能力。そして、契約の願いですら、戦争を終わらせるために魔法少女の力を願ったため、強さは更に乗算されます。
これらの要因によりタルトは、キュゥべえにすらイレギュラーと言わしめるほどの強さを有することとなります。これに比べると、やちよさんの強さはカスや。
このゲームにおいても、たるマギ単行本に載っていたステータスを参考にしたのか、アホみたいな攻撃力と防御力に、決して遅くないスピードを兼ね備えた、チートを疑うほどの爆盛りステータスを与えられています。
素の形態でこれなのに、ver.Finalとなると更にステータスが上昇するので、もう手に負えません。光と影が合わさり、最強に見える……。(誇張なし)
一応、アホみたいな攻撃力の代わりに燃費がクソ悪いという弱点があるのですが……。
今回の相手はタルト本人ではなく、タルトのコピー。つまり、鏡の魔女の手下とも言える存在です。なので、基本魔力切れなんて存在しませんし、この空間は様々な場所と鏡が繋がった結界なため、常に魔力を供給できる状態にあります。これにより、この鏡層の完全コピーは魔力切れを気にせず戦うことができるんですね。
よって、唯一の弱点であった魔力燃費の悪さすら克服しているので、実質タルトの完全上位互換です。(デデドン)
……もうダメだ、おしまいだぁ。(ヘタレ王子)
逃げるんだぁ。勝てる訳がない! ……と言いたいところですが、実はそうもいかず。
理由は簡単。コイツ倒さないと先に進むのが難しくなるからです。
果てなしのミラーズでは救済措置として、第20鏡層からはボスをスルーして次の鏡層に進むことも可能となっております。
ただ、ボスをスルーできるわけではなく、次のボス戦で乱入してくる仕様になります。そのため、スルーすればするほど後がキツくなっていくだけなのです。上手く使えば同士討ちもできますが、残りの鏡層数を考えると今更それをやったところで……。
仕方ありません。このコピーはここで倒しましょう。
ま、まあ、どれだけ強いと言っても所詮はコピー。生身の魔法少女とは違うってこと、見せつけてやりましょう。
というわけで、タルト(ver.Final)戦、開始です。
ここまで積み上げてきた、ユリちゃんのスペックと私のプレイスキルを舐めるなよ! 食らえ、マギア『炎雷斬舞』!!
くそっ、避けられたか!
だが、まだまだ! この攻撃を避けると隙が出来るので、そこに一撃! さらにコンボ繋げて3連撃!
このカウンターは横に避けて……、おっぶえ!? 攻撃範囲が広すぎて当たりそうになったゾ……。
なんで強攻撃が必殺技並なんですか?(正論) 剣の一振りでエ○スカリバ―みたいな光波飛んできたんですけど……。
しかも、さっきの攻撃でミリしか削れてないって、こマ? 攻撃力と防御力が高すぎるだろ……。高火力キャラは防御力低いのが相場だろうが。
とはいえ、こちとら9対1なんじゃい! 人数差ですり潰してくれるわ!
……。
……っ!
……あの、平然と6人同時に相手するの、止めてもらっていいですか? ほむらちゃんたちはほぼ戦力になってないし……。
オルガン姉妹と千鶴ちゃんが渡り合えていますが、静香ちゃんとマミさん、ユリちゃんだと食らいつくので必死って感じですね。
おっ! オルガちゃんのマギア直撃した! ナイスゥ!
見えた! 隙の糸!(TNJRU並感)
今のうちに追撃しましょう! これで決める!
あっち側(36鏡層)に立つんは、オレや!(ドブカス並感)
この偽、も゛っ!?(1カメ)
も゛っ!?(2カメ)
も゛っ!?(3カメ)
3 3 - 4 (チーン)
コピータルト<悪い、もう一回言ってくれ。
DAY.95 Side MA
「ぎゃあああああっ!! 死ぬ! 死ぬ死ぬ死ぬ!! いやもう無理ダメやばいいいいい!!」
私は情けない声で叫び続けながら、ありったけの体力を使って逃げ回ります。
すると、タルトさんのコピーが再び剣を振り上げます。すると、その剣に光が集中し……。
「いや……。いやいやいやいや!! もう無理もう無理もう無理! 次は絶対避けられないぃぃぃぃぃ!!」
振り下ろされた剣から凄まじい密度の魔力が解き放たれ、三日月状の光波が地面を抉り取りながら私に迫ってきます。
「まばゆ!!」
そんな私を、凜さんは横から抱き抱え、すぐさま飛び退きます。
コンマ数秒の後、光波が私たちのいた場所を消し飛ばします。
「まばゆ、怪我は!?」
そう問いかける凜さんの右頬には青い痣。先ほど攻撃を仕掛けた際に、カウンターでタルトさんに殴られた跡です。これでも巻き戻しで治してマシにしたほうですが、痛々しさは消えていません。
「私は大丈夫ですけど、凜さんは……」
そこまで言ったところで、タルトさんは再び剣を振り下ろします。
あんなふざけた火力の攻撃は必殺技でもないのか、当然のように連続で放ってきます。
凜さんは私を抱えたまま、この光波も回避します。
しかし、避けられるのは向こうも分かっていたのか、凜さんが跳んだ回避先にはタルトさんが既に回り込んでいます。
「うっそ!?」
剣を振り上げる姿を見て、凜さんは私を抱きかかえ自分を盾にします。
「させないわ!!」
しかし、凜さんが斬られることはなく。
間に割って入ってきた時女さんが剣の軌道を逸らします。
「時女一心流、旋風鎌鼬!!」
そのまま時女さんは、返す刀で必殺の剣技を放ちます。
が……。
「避けられた!?」
「静香ちゃん、避けて!」
あの一歩分あるかどうかの距離から放たれた斬撃を、タルトさんは避けたのです。それどころか、時女さんの後ろを取ったタルトさんは、既に追撃のための構えに入っていました。
「ティロ・フィナーレ!!」
それを阻止したのはマミさん。砲弾はタルトさんに直撃し、爆発の炎が彼女を包みます。
「助かったわ、巴さん」
「お安い御用よ」
そう言って銃を構えるマミさんでしたが。
「ウソ……」
晴れた煙の中を見て、絶句します。
なぜなら、タルトさんはそこに無傷で立っていたのですから。
マミさん必殺の一撃を背面から防御も無しに受けて、ダメージらしいダメージが確認できないなんて。
(ば、化け物すぎる……!)
「私のティロ・フィナーレが効かないなんて……!」
「冗談言ってる場合じゃないわよ、巴マミ」
「ほむらさん……!」
「ちょっと暁美さん、私冗談なんて……」
「ほむら! そっちも無事で良かった」
凜さんの言葉に、ほむらさんは「なんとかね」と答えます。
「あのコピー、チョー強いんだけど! なにアレ!? あんなんチートじゃん!」
ほむらさんの隣にいた藍家さんも怒ったように言います。
すると、タルトさんが剣を構え、こっちに突っ込んできました。
「っ!? ひめな!」
ほむらさんはすぐに藍家さんの手を取ります。
「っ! りょ!」
藍家さんもほむらさんの意図に気づいたようで、ほむらさんの盾に手をかけます。
「「コネクト!」」
その声と同時に盾が回り、辺りの時が制止します。
「まばゆ! 今のうちにありったけ叩き込むわよ!」
「は、はい!」
今、この空間を動けるのは私とほむらさん、そして藍家さんだけ。
そして、あの化け物のようなコピーに私たちが攻撃を当てられる唯一のチャンスでしょう。
藍家さんは魔力で生みだし、圧縮した水の塊を。私はいくつものハサミを。そしてほむらさんは、ワルプルギスの夜との戦いで余ったロケットランチャーを、弾頭に魔力を込めて放ちました。
時間にして、わずか10秒弱。
時は再び動き出し、私たちが出せるありったけの攻撃がタルトさんに殺到します。
時間停止による反応不可の攻撃は、防御の隙も与えずタルトさんに命中し……。
「……っ」
「オゥ……」
「マジヤバ~……」
結果は先ほどと同じ。無傷のタルトさんが現れるだけになりました。
「くっ……! ひめな、もう一度!」
「タイムタイム! さすがにすぐはムリ味が深いって! ほむりんの魔法、1回使うだけでメッチャ疲れるんだから……!」
その間に、タルトさんは私たちのすぐ前まで踏み込んできます。
私たち全員が反応できない中、タルトさんの動きが突如止まります。
「えっ……」
見れば、タルトさんの剣を振り上げた腕に鎖が巻き付いていました。
「ソイツらに……、手ぇ出してんじゃ、ねえ!!」
鎖の持ち主である千鶴さんは鎖を引き、タルトさんを投げ飛ばす要領で私たちから引き剥がします。
「アンタの相手は、あたしたちだ!!」
投げ飛ばされたタルトさんに追撃したのはオルガさん。勢いよくタルトさんに突っ込み、その盾をタルトさんに叩きつけます。そのまま盾で彼女を押していき、壁にぶつけます。
「ガンヒルト!」
「うん……!」
オルガさんと入れ替わりで攻撃したのはガンヒルトさん。2本の巨大な戦斧を振り下ろし、タルトさんを中心に壁に放射状にヒビが入ります。その衝撃は地面を伝わって、私たちの身体も震わせました。
「やった! 直撃!」
私は思わず声を上げますが。
「……っ!」
ガンヒルトさんの振り下ろした斧が徐々に押し戻され、壁にめり込んでいたタルトさんが出てきます。
「このっ……!」
ガンヒルトさんも力を込めているようですが、それすら上回る膂力でタルトさんは対抗します。
そして……。
「うわぁっ!?」
「ガンヒルト!!」
ガキィン!と重たい金属音と共に、ガンヒルトさんが弾き飛ばされます。
対してタルトさんは、鎧に若干の傷を作りながらも、全く堪えていないような足取りでこちらに向かってきます。
理不尽、という言葉が鎧を着て歩いているような、そんな相手に私たちは完全に足止めを食らっていました。
そんな時、結界全体が大きく揺れます。
「うわっ、なになになに!?」
藍家さんが焦った様子で、周りを見回します。
すると、魔力を探っていた凜さんが呟きます。
「下のほうで大きな魔力が動いてる……。やばい、もう時間ないかも」
「え、ほ、ほんとですか……!?」
下で動く大きな魔力。ほぼ間違いなく鏡の魔女でしょう。結界全体を揺らすような動きを始めたということは、向こうの準備もあと少しということ。
とはいえ……。
(ここを放置して先に進めるわけ、ありませんよね……)
あのコピーからそんな都合良く逃げ切れるとは思えません。
ここを何とかしてから進まないと最悪、下で挟撃されてしまいます。
その時です。
オルガさんが一歩前に出ます。
「みんな、先に行って」
「オルガさん……?」
オルガさんは槍と盾を構えると、私たちを守るようにタルトさんに立ち塞がりました。
「あたしがこの子を抑える!」
すると、オルガさんの横にガンヒルトさんが並びます。
「姉さんを一人にはできない。私も残る」
「なら、アタシも……」
ガンヒルトさんに続くように千鶴さんも前に出ようとしますが、オルガさんがそれを制止します。
「いや、千鶴は先に行って」
「なんでだよ。アタシだって戦力に……」
「だから、だよ。リンたちを任せたいの。それに、千鶴自身もケリつけたいんでしょ?」
「……いいのか?」
「もちろん!」
「私は姉さんの決定に従うまで」
「……悪い、頼んだ」
千鶴さんとオルガさんたちがそう話す中、マミさんと時女さんも前に出ます。
「私たちも残るわ」
「マミさん!? それに時女さんも……! 逃げましょう! 勝てっこないですよ、あんなの!」
私の言葉に、マミさんは首を横に振る。
「勝てる勝てないの問題じゃないわ。私たち二人なら、オルガさんたちにだってついて行ける」
「なら、私も……!」
そう言う凜さんを、マミさんは止めます。
「ダメよ、凜さん。あなたには鏡の魔女を倒すという役割があるでしょ?」
「それは、そうだけど……!」
「あなたがいてくれるのは心強いけど……。私だって、そんなに弱くないのよ?」
マミさんは、隣の時女さんを見て言います。
「だってもう、一人じゃないもの。私のそばにいてくれる仲間が、こんなにいるんだから。だから、もう何も怖くない。例え敵が、どれだけ強くても」
「マミさん……」
その目に、孤独に怯えていたあの頃のマミさんの面影はありませんでした。
強くて優しい、彼女自身の目指す魔法少女のマミさんがいました。
「安心して、愛生さん」
時女さんは私に言います。
「巴さんは私が絶対に死なせはしないわ。時女一族の長として、約束する」
時女さんの言葉で、私と凜さんは引き下がることにしました。
皆さんがこう言ってくれてるんです。私たちが心配し続けるのは、却って時間の無駄になってしまいます。
それに……。
「しずしず、ホントに大丈夫? 私チャンたちも残ろっか?」
そう言う藍家さんの言葉を否定したのはほむらさんでした。
「むしろ逆効果よ。私もまばゆもひめなも、さっきから有効打を与えられないどころか、庇われて足を引っ張ってばかりよ。残ったところで、巴マミたちの弱点にしかならないわ」
「うー……」
「なら、先に進んで私たちにできることを探したほうが、よっぽど合理的よ」
「何も言い返せないけど……。言い方キツくて泣きそう。ぴえん」
「大丈夫そうね」
「ホントに泣いていい?」
ほむらさんの言葉は正論でした。
(たしかに、凜さんや千鶴さんはともかく、私たちはこの戦いには戦力外……。邪魔にしかなりませんか)
悔しいですが、ここは……。
「マミさん、時女さん。お願いします!」
「「ええ、任せて!!」」
マミさん、時女さん、オルガさん、ガンヒルトさんにこの場を任せ、私たちは次の鏡層に向かいました。
DAY.95
マミさんたち、ありがとナス!!
マジで助かったゾ……。
制限時間も残り少ないし、このままじゃ普通にタイムアップになるところでした。
ま、マミさんたちだけで勝てるとは決まってないんだけどね。
と、そんなことは置いておいて。(鬼畜)
先ほど結界全体を襲った振動。あれが、残り時間10分切った証拠ですね。マズいですよ!
次は複数ボスだしなぁ……。これは出来ればやりたくなかったのですが、戦力を分散させて突破するしかなさそうですね。
果てなしのミラーズ ― 第35鏡層 ―
さて、ここのボスは魔女2体とコピー1体ですが、果たして組み合わせは……。
「あれは……」
ウ…ウソやろ。こ…こんなことが、こ…こんなことが許されていいのか!?
敵の組み合わせですが、相手は獄門の魔女、批評家の魔女、そして水名露ちゃんのコピーでした。
これ、魔女はそれぞれ、みかづき荘の仲間だった雪野かなえちゃん、安名メルちゃんが死ぬ原因となった魔女ですし、水名露ちゃんは千鶴ちゃんと関係がとても深い子ですし……。ユリちゃんと千鶴ちゃんの地雷を的確に踏み抜きにいく構成ですね。というか批評家の魔女って、元を考えるともしかして……。おっとっと、ネタバレ、ヨクナイ。
とにかく、これを最後の門番に使うとか、人の心とかないんか?
せっかくですし、水名露ちゃんと鏡の魔女の解説もここでしましょうか。
水名露ちゃんは、千鶴ちゃんと同じ時代を生きた魔法少女です。彼女は、今も神浜に残る水名城の城主、水名正綱の一人娘、つまりお姫様ですね。彼女は城主の娘らしく、水名に住む民たちのために奔走し、対立していた泰党とも手を取ろうとした子です。
泰党出身の千鶴ちゃんともその時知り合い、対立を経て姉妹のように仲良くなります。
しかし、水名の土地が欲しかった泰党の首領にして千鶴ちゃんの父、万守山右衛門が謀ったことにより、水名正綱は暗殺され、露ちゃん自身も瀕死の重傷を負わされます。それにより彼女は絶望し、神浜の土地を呪い続けると言い残し、魔女化してしまいます。
千鶴ちゃんは彼女を止めようと魔女に挑みますが、力及ばず……。
さて、ここでなんで鏡の魔女の解説も同時に行うかというと、この露ちゃんの魔女『藁武者の魔女』が関わってくるからです。
この魔女はその後、水名城の地下に巣くう『象徴の魔女』という魔女に取り込まれてしまいます。正確には、千鶴ちゃんはこの魔女に負けてしまうのです。『象徴の魔女』については、今回の話とは特に関係ないので説明は省略します。超簡単に言えば、数千年前から増えることだけを目的に生きてきた魔女ですね。ちな、1体1体はクソ雑魚です。
今回の円環の使者に露ちゃんがいない理由がこれですね。一応取り込まれたことが生きてる判定なのか、露ちゃんの魔女はまだ死んでいません。そのため、露ちゃんはこちらの世界に来られなかったんですね。
そして、みたまさんの『神浜を滅ぼしたい』願いにより生まれた鏡の魔女ですが、その願いの作用により、数百年神浜を呪い続ける藁武者の魔女、数千年生きる象徴の魔女、そして神浜の恨むみことちゃんの心と感応したのでしょう。
これらの魔女の呪いを鏡によって集めて悪魔合体させることによって、ここまで強大な魔女に成長した、と考えられています。少なくとも、このルートだとそんな感じだと思います。
だから短期間でワルプルギスの夜くらい強くなれたんですね。(メガトン構文)
千鶴ちゃんが止めたがっているのも、これが理由だと思われます。露ちゃんの呪いを体現するような鏡の魔女を止めることで、今度こそ露ちゃんを止めたいんでしょうね。
だからこそこのボス構成は二人の地雷なのですが……。
あーあ、ユリちゃんもうブチ切れだよ。
「このっ……!」
止まってくれよ~、頼むよ~。
ここで足止めを食らってる場合じゃないんだよなぁ。
ユリちゃん落ち着けぇ! それ以上、魔力を高めるなぁ!(ピロロロロ)
「落ち着け」
「っ!? 千鶴さん……」
千鶴ちゃん、ナイスゥ!
「アンタらは先に行け。ここはアタシが受け持つ」
「でも!」
「冷静さを欠いて戦えば、死ぬぞ」
「っ……」
そう。それを言って欲しかったんや!
戦力分散は痛いですが、このペースだと時間内に最下層にたどり着けなさそうなので、ここは手分けしたかったんです。
「なら、私も残るわ」
え、ほむらちゃん!?
「3対1じゃ分が悪すぎるわ。幸い、これくらいの敵なら私だって戦力になれるはずよ」
「なら、私チャンも残る!」
ひめなちゃん!?
「私チャンいないと、ほむりん魔法使えないでしょ? それにこれで3対3。やっとイーブンじゃない?」
「まばゆ、凜。後は任せるわよ」
あ、これもう選択肢ない感じですね……。
「……分かった。ほむら、ひめなちゃん、千鶴さん、お願いします。いこう、まばゆ」
「……はい。皆さん、どうかご無事で」
「モチ!」
……ということで、最下層に進めそうです。
戦力を分散しろと言ったが、そこまでしろとは言ってない。(真顔)
おかげで鏡の魔女本体の戦力、ユリちゃんとまばゆちゃんだけなんですケド。(ブチギレ)
原作で鏡の魔女と戦った戦力の50分の1くらいなんですがそれは……。(戦力事情が)バッチェ冷えてますよ~。
次の戦闘、イベント戦じゃなきゃ勝ち目はありません。(無慈悲)
これ、ユリちゃんの策に全部掛かってるからな!
お願い死なないでユリちゃん! あなたがここで倒れたら、みことちゃんやみたまさんとの約束はどうなっちゃうの?
魔力はまだ残ってる。ここを耐えれば、鏡の魔女に勝てるんだから!
次回、ユリちゃん死す! デュエルスタンバイ!
ということで今回の動画はここまで。ご視聴、ありがとうございました。
DAY.95 Side MA
ほむらさんに魔女たちを任せ、私と凜さんはついに果てなしのミラーズ第36鏡層、つまりこの結界の最深部にたどり着きました。
「この奥に、鏡の魔女が……」
正直言えば不安しかありません。
突入時にはあれだけいた仲間も、今や私と凜さんの2人だけ。この人数で、ワルプルギスの夜に匹敵すると予想されている魔女に太刀打ちできるのか。
でも、私たちに退くという選択肢は用意されていません。
戦わなければ、世界が破滅するだけですから。この奇跡のような時間軸を守るには、必ずここで鏡の魔女を止めるしかありません。
すると、唐突に凜さんが私の手を握ってきます。
「ふぇっ!? り、凜さん!?」
驚いて凜さんを見れば、凜さんも私を見ます。
「まばゆ、怖くない?」
その問いかけに、私は言葉を詰まらせます。
「そ、れは……」
恐怖を感じていないと言えばウソになります。
でも、何が怖いかと言われれば……。
「私は、怖いよ」
私が言いあぐねているのを見て、凜さんはそう呟きます。
凜さんの言葉を証明するように、凜さんの手は震えていますし、少し冷たくなっていました。
「死ぬのが、怖くなっちゃった。ここが正念場だってのに、ダメだね私」
「……それは、違うと思います」
私は凜さんの言葉に反論します。
「死ぬのが怖いのは普通のことです。私だってそうですし、それはダメなことじゃありません」
「でも、この事態の原因は私だよ? その責任から逃げてるってことじゃない?」
「それを怖いと思うのも、普通ですよ。自分の罪に、自分だけで向き合える人なんて、ごく一部です……」
だって、私がそうだったから。
色んな怖いことから逃げたし、向き合えなかった。
「だから、一緒にいましょう。一緒なら、きっと怖くないですよ」
記憶が戻ったとき、凜さんが側にいてくれたから、私は魔女にならずに済みました。怖くても、あなたが側にいてくれたから、ここまで戦えました。あなたのためなら、私もほむらさんのように、戦える。
「まばゆ……」
「大丈夫です。私がいますよ、凜さん」
私の言葉に、凜さんは小さく頷きます。
「ありがとう」
そして、凜さんは私に言います。
「ねえ、まばゆ」
「はい?」
「この戦い終わったらさ、言いたいことがあるんだ」
私はその言葉にドキッとします。といっても、いい意味ではなく……。
「あの、凜さん……。そういうの、死亡フラグって……」
「分かってる」
私の言葉を遮って、凜さんは言いました。
「でも、約束があるから」
「約束?」
「みことちゃんとの、約束。今のは、それを破らないための宣言だよ」
彼女たちが交わした約束。
それを知る術は私にはありませんが、きっと凜さんを前に向かせるものだったのでしょう。凜さんを送り出すための、みことさんの最期のプレゼント。
「……分かりました。楽しみに待ってます」
「ありがとう、まばゆ」
私たちは手を握ったまま鏡に近づき、魔女の待つ最奥の部屋に足を踏み入れました。
DAY.95 Side K
「ハァ、ハァ、ハァ……!」
私は息を上げながらも、眼前の魔女の動きに集中する。
(目が光った! ということは……)
私が横に飛び退いた直後、レーザーが放たれる。
レーザーを避けた私に魔女は腕を伸ばして攻撃してくるが、私はそれも避ける。
(避けられる! これなら、私も戦える!)
なぎさちゃんを加えて戦闘を再開した私たち。
そこで、なぎさちゃんから提案があった。
「黒江は無理に攻めようとする必要はないのです」
「え? で、でも、攻撃しないと魔女、倒せないよ?」
「それはそうなのです。けど、黒江が無理して攻撃する必要はないのです。お前は、とにかく相手の攻撃を避けることに注力していればいいのです」
「それは……」
「別に卑怯でもなんでもないのです。お前の怖がりは、裏を返せば危険を見極めることに役立つはずなのです」
なぎさちゃんにそう言われ、私は攻撃することを考えず、相手の攻撃を避けることだけに集中していた。
そうして戦いだして、分かった。
(戦いやすい……! 攻めを意識しなければ、慌てずに動ける……!)
なぎさちゃんや神楽さん、遊狩さんがその間に攻撃をし、彼女らに注意が向けば……。
(ガラ空き!)
私でも分かるくらいの隙が、必ず生まれていることが見えてきた。
なので、そのタイミングで攻撃を仕掛ける。大したダメージにはなってないかもしれないが、注意を引ければ十分。
(これで十分……! また逃げに徹する!)
皆の協力あってだが、私は間違いなく、今までの戦闘の中で一番戦えていた。
そして、そのやり取りを繰り返すこと十数回。
お互いに疲労が大分蓄積したタイミングだった。
「――っ!」
私に追撃をしようとした魔女が、ついに大きく体勢を崩した。
「燦! ミユリ! 今なのです!」
「了解! いくわよ、ミユ!」
「はい……!」
その隙を見逃す3人じゃない。
3人の一斉攻撃が魔女に集中。大量の弾幕と脚撃を食らった魔女は倒れ込み……。
それでも、腕をついて持ちこたえた。
「っ!?」
「まずいのです!」
大技を使って隙が出来た3人に、魔女はレーザーを撃つ。
爆炎が3人を包み、大きく後ろへ飛ばされるのが見えた。
(あと少しなのに……!)
消耗の激しいレーザー攻撃を撃ったことで、魔女も瀕死だ。
あと一撃、あれば。
「黒江さん!!」
そんな私の躊躇を吹き飛ばすように、私を呼ぶ声がする。
「コネクト、しましょう!!」
あの子が弓を投げ捨て、私にミトンのような手袋で覆われた手を伸ばす。
(1人が怖いなら……!)
「……うん!!」
伸ばされた手を、私は掴む。
「「コネクト!!」」
私たちの魔力が混ざり合い、私たちの前に巨大なボウガンを生成する。
彼女の弓を基に、私のクラブを矢とした特別な一撃。
魔女は再びレーザーを放とうと目を光らせる。
けど、構わない。
(これで貫けば、全部終わる!)
「「いっけええええええ!!」」
私たちの叫びと共に、矢は撃ち出される。
矢は魔女のレーザーを貫き、一直線に魔女に向かう。
その一撃は、まるで未来への道しるべのように辺りを照らし……。
その魔女の身体を大きく穿った。
DAY.95 Side MY
「これで、どうだ!」
レナちゃんの動きに翻弄されていた魔女の隙を突いた十七夜の一撃で、ついに魔女が体勢を崩す。
「かえで、今よ! やっちゃいなさい!」
「うん! ありがとう、レナちゃん! 十七夜さん!」
レナちゃんの声にかえでちゃんも応え、魔法で操った植物の根やツタで魔女を拘束する。
「ももこちゃん!」
「ああ! このチャンス、逃してたまるかぁ!」
そのタイミングを窺っていたように、ももこが飛び出す。
そして、炎を纏わせた大剣を大きく振りかぶり……。
「これで、終わりだあああああ!!」
大剣は魔女の身体を一刀両断した。
勝った。
全員がそう思った次の瞬間。
魔女の影から1体の使い魔が飛び出す。
その使い魔は他の魔法少女に目もくれず、一直線に私へ向かってきた。
「っ!? しまった! 避けろ調整屋!」
「八雲!」
ももこも十七夜も間に合わない。
(戦闘が苦手な私だけでも道連れにしようってことかしら?)
もしかしたら、少し前の私なら攻撃を受け入れていたかもしれない。私の願いが、ここまでのことを引き起こしたなら、それも運命だと諦めていたかもしれない。
でも、今は違う。
私は魔力で作った布を構える。
「凜ちゃんに、これ以上背負わせるわけにはいかないのよ!」
きっと私が死んだら、凜ちゃんはまた背負おうとしてしまうから。
私のためにも戦ってくれる凜ちゃんのために、私は死ぬわけにも逃げるわけにもいかないのだ。
使い魔の突撃を避け、布を使い魔の上に乗せる。
それと同時に調整の応用で魔力の流れを弄る。
そうすれば、まるで血流を逆にされたように、使い魔はその肉体をグズグズと崩壊させた。
「え……」
私に一通の封筒を渡して。
丁寧に閉じられたそれは、よく鏡の魔女の使い魔が魔法少女を果てなしのミラーズに招待するために渡す手紙に似ていた。
(まさか、今の使い魔はこれを渡すために? いや、魔女にそこまでの知能なんて……。それに、そもそもどうして私に……)
そこまで考えたところで、ももこの声が聞こえる。
「おーい! 調整屋、無事か!?」
「あっ……。え、ええ。大丈夫よぉ~。心配してくれてありがと、ももこ♡」
「オイオイ、茶化すなよ……。本当にヒヤッとしたんだぞ」
「ごめんなさい。でも、私は大丈夫よ」
封筒を咄嗟に隠し、ももこと会話する。
なぜだか、全部終わってから確認したほうがいい気がした。
すると、十七夜もやってくる。
「八雲、無事か?」
「ええ。十七夜もありがとう」
「それなら良かった。これで万事解決、と言いたいところだが……」
「ん? どうしたんだよ、十七夜さん」
ももこの問いに、十七夜は外で戦っていた時女一族の子たちを指さす。
「彼女らから少々気になることを聞いてな」
DAY.95 Side YN
「ズッガァーーーン!!」
フェリシアが勢いよくハンマーを振り下ろす。
魔女は直撃こそ避けたが……。
「避けても無駄だ! オレの魔法で記憶飛んじまえ!」
フェリシアの『忘却』の魔法で、直前の記憶が消えたのか、魔女は混乱で動きを止める。
「お、大人しくしてください……!」
そこへ二葉さんが、魔女を取り囲むように盾を展開。取り囲んだいくつもの盾から鎖が放たれ、魔女を地面へと繋ぐ。
「ナイス、さな! 次は最強の私が……!」
盾の壁を飛び越えるように、大きく跳躍した鶴乃が扇子を大きく広げる。
「凜には負けてられないっての!」
一対の扇子に炎を纏わせ、急降下で魔女に突っ込む。
「炎扇斬舞!!」
炎の斬撃がいくつもの傷跡をつけ、魔女にダメージを蓄積させる。
「やちよーー!!」
鶴乃に名を呼ばれ、私は入れ替わるように魔女に突っ込む。
「ええ、任せてちょうだい!!」
自身の周りに槍を円状に追随させ、魔女に突き進む。
魔女は苦し紛れのレーザーを放ってくるが、もう遅い。
「甘い!」
私は持っていた槍でレーザーを霧散させ、その勢いで魔女へと突貫した。
さすがにダメージが限界だったのか、魔女の身体には大穴が空き、その肉体を消滅させた。
魔女の肉体が完全に消滅するのを見届けてから、私はようやく一息つく。
「ふぅ……。やっと終わったわね」
結界から出れば、走ってきた鶴乃に抱きつかれる。
「う゛っ……!」
「ししょー! すごいよー! やっぱりししょーがいれば百人力だー!」
頭をグリグリ押しつけてくる鶴乃に暑苦しさを覚えながらも、その温もりを懐かしく感じる。
(本当にこの子は……。私、さっきまで凜を殺そうと対立してたのよ)
どっちが正しいとか関係ない。
もう私に、凜と会う資格も、この子たちと一緒に戦う資格もないのに。
「さ、行くよししょー!」
「え? 行くって、どこに?」
「凜の援護に決まってるでしょ! あの子たちはまだ戦ってる。早く行って……」
「私は……」
これ以上、一緒にいる資格なんてない、と言おうとしたところで。
「みかづき荘のリーダーとして、付き合ってもらうからね。やちよ」
鶴乃にその言葉を封じられる。
「離れることがやちよの優しさでも、私はやちよと一緒にいたいよ。せっかくまた一緒になれたんだからさ。今度はずっと側にいさせてよ」
鶴乃の諭すような、懇願するような声に、私は少しの沈黙の後、答えることにした。
「……分かったわ。あなたたちが、それでいいなら」
「っ! うん! ありがとう、やちよ!」
鶴乃が嬉しそうに頷く。
その後だった。
「皆さん、ご無事でしたか!」
先ほどから結界の外で他の魔女たちと戦ってくれていた、時女一族の子たちが声をかけてくる。
「ああ、あなたたち。あなたたちも援護ありがとう。おかげで助かったわ」
「いえいえ。魔女も退いていきましたし、こちらも犠牲者無しです」
「退いた……?」
私は彼女の言葉に引っかかり、その言葉を繰り返す。
「ええ。あなたたちが株分けの魔女を倒したくらいに、一斉に離れていきましたよ。親玉をやられたから、戦意喪失したのでしょうね」
いや、そんなことはあり得ない。
魔女は自身の欲望に忠実だ。今回、ここまで集団で動いているのは、鏡の魔女が魔女たちを誘導しているからに他ならない。
株分けを倒して誘導が無くなったとしても、全部の魔女が一斉に退くなんて、普通はあり得ないことだ。
偶然ではなく、集団で同じ動きをしたというなら……。
「1つ聞いていいかしら?」
「なんでしょう?」
「魔女が退いていった方角は?」
「方角ですか? それなら、全部あちらのほうに向かっていきましたが……」
彼女が指さした方角。そこには、高くそびえ立つ神浜のシンボル、中央区の電波塔があった。
「っ! マズいわ!」
「ちょ、やちよ! どこ行くの!?」
突然駆け出した私に、鶴乃が問いかける。
けど、足を止めて説明している時間はない。
私は簡潔に、思い至った1つの可能性を伝えた。
「株分けの魔女は、もう1体いるわ!」
DAY.95 Side LH
「これで……!」
「魔女の動きは封じたんよ!」
サーシャの音色とうららのヨーヨーで動きを封じられた魔女。
「ラビ! 決めるでありますよ!」
「うん、やろう旭……!」
攻め時を見逃すまいと、私と旭は呼吸を合わせ、魔力を同調させる。
「「コネクト!!」」
「これで決めるであります!」
私の魔力で強化された銃を構え、旭は引き金を引く。
銃弾は魔女の頭の中心を寸分違わず撃ち抜き、魔女はその身体を崩壊させた。
「勝てたんよ~~……!」
疲労を全身で表すように、うららが地面に大の字で寝転がる。
まだ魔法少女歴の浅い彼女には、株分けの魔女は少々強い相手だったろう。
「気を抜きすぎないで、うらら。まだ完全には終わってない」
「そうですね……。凜ちゃんたち、無事でしょうか……?」
サーシャが心配そうに呟いたときだった。
「あ、旭さん!!」
切羽詰まった表情で、時女一族の子の一人が私たちの元へと走ってくる。
「どうしたでありますか!?」
旭が走ってきたその子を受け止めると、彼女は慌てた様子のまま話しだす。
「ま、魔女が! たくさんの魔女がこの中央区に集まってきているんです!」
「魔女が……!? しかし、魔女たちの目的地は南凪区の鏡屋敷という話だったであります!」
「そうなんです! だから私たちも訳が分からなくて! とにかく、もうこれ以上は抑えられません!」
「了解であります! とにかく自分たちも援護に向かうでありますよ!」
「ありがとうございます……!」
旭は私たちに振り向いて言う。
「皆、申し訳ないでありますが、一緒に時女一族の援護に来てほしいであります」
「もちろん」
「旭ちゃんのお友達ですからね♪」
「が、頑張るんよ……!」
私たちは、時女一族の子に案内されながら、魔女が集結を始めている場所へと走る。
「それで、魔女はどこに集まっているのでありますか!?」
旭に問いに、その子は答える。
「中央区中心にある、電波塔です!」
DAY.95 Side MA
果てなしのミラーズ第36鏡層。その最奥の鏡をくぐった先の景色は、一見今までの結界と変わらないようでしたが……。
「あれは……」
部屋の大きさが今までと段違いに広くなっていました。それこそ、サッカーコートがいくつも余裕で入るほどの広さ。天井も高く、見滝原の高層ビルすら入りそうなほどです。
そして部屋の奥には、5階建てビルくらいの大きさがある、巨大な鏡が鎮座していました。
「多分、あれだね。あれが向こう側に繋がる鏡。そして、サルべーション・ブルームの爆心地」
凜さんがそう言うのと同時、再び結界全体が揺れます。
それに呼応するように、奥の鏡もピンク色の光を明滅させます。
「もう時間が無さそうだね……。速攻で破壊するよ!」
「はい! ……あれ? でも、鏡の魔女の本体は……」
私がそう口にすると、まるでそれに応えるように、鏡の裏から黒い何かが顔を覗かせます。
それは、羊の角のような、オウムガイの殻のような、捻れた形のもので形成された切り絵のような顔でした。
「鏡の魔女……!」
以前、見滝原で見た鏡の魔女の株分けの姿と特徴の一致する点からして、あれが本体なのでしょう。
魔女は、その角か貝殻がモチーフなのかよく分からないパーツで構成された、シンメトリーの身体を現します。
(大きい……。けど、思ったほどでは、ないですね。これならワンチャン……!)
私がそう思った、次の瞬間でした。
身体から、これまた切り絵のような腕が生えてきます。
その腕は、地上で凜さんと分断された時に襲ってきた腕に似ており、あのトラップが鏡の魔女のものだったと、今更ながらに理解します。
(ん……?)
その腕はまるで鏡合わせのように、反対側からも生えてきます。
胴体の構成するパーツも、まるで重ね合わせていた折り紙を広げるように、次々とパーツが増えていきます。
「あ、あれ……?」
腕が、胴体が、顔が次々と増えていく様は、まさに切り絵の折り畳んだ紙を広げていくのにそっくりで。鏡の魔女は、その身体をどんどん大きくしていきました。
そして……。
「ウソ、ですよね……?」
「これは、ちょっと冗談キツいね……」
私たち2人は、そう呟きます。
私たちの前に立ち塞がった魔女は、ついにその身体を数十メートルにはなろうかというほどにまで巨大化させました。
この部屋の天井に届くかというほどの大きさになって、魔女は巨大化を止めます。
魔女はゆっくりと頭を動かし、私たちのほうを見ます。
巻き貝のような目と、目が合った気がしました。
「っ……!」
見られただけで、凄まじい悪寒が全身を走ります。
「まばゆ!」
凜さんに肩を揺すられ、私は正気に戻ります。
「はっ! ご、ごめんなさい!」
「作戦通りいくよ! まずは未来視で……!」
凜さんがそこまで言った時。
鏡の魔女の身体にいくつもの光が生じます。まるで夜空に輝く一等星のような光は、次の瞬間には青白いレーザーとして私たちに襲いかかってきました。
「ヤバっ!!」
凜さんが私を突き飛ばします。
直後、私たちのいたところにレーザーが着弾し、爆発を起こします。
「なるほど、未来視は使わせないってわけね! なら……!」
凜さんは魔力を解放し、強化状態に変身します。
『まばゆは隙を見て鏡に! 魔女は私が引きつける!』
凜さんはテレパシーで私にそう伝えると、魔女へと飛び込んでいきます。
「凜さん!」
「うあああああああ!!」
凜さんは双刃刀に魔力を纏わせ、ありったけの力で魔女に叩きつけます。
「リベリオーネ・デスティーノ!!」
しかし……。
「っ!?」
ガァン!と甲高い音が鳴り、凜さんの刃は鏡の魔女に届く直前で止まりました。
いや、正確に言えば阻まれていました。
「バリア!?」
そう。鏡の魔女は透明なガラスのようなバリアに覆われていたのです。
「くそ! もう一回!」
凜さんは壁に着地すると、再び魔女に突っ込みます。そして、同じように双刃刀を振るい、阻まれました。
「そんな……!」
私は思わず声を上げます。
凜さん必殺の一撃すら、ものともしない堅牢なバリア。小さな傷1つすら付けられないのなら……。
(今の私たちじゃ、壊せないってことじゃないですか!)
強化状態を使った凜さんの最大火力で割れないなら、もう私たちにバリアを破る手段はありません。
(なら、せめて鏡を……!)
私は光学迷彩を纏い、魔女の守る鏡へと走ります。
すると、魔女の身体が再び光ります。
「っ!?」
放たれたレーザーは、凜さん、そして私を的確に狙ってきます。
「うわぁ!」
私はギリギリでレーザーを回避。
「なんでバレてるんですか!? 透明化してたのに!」
そこで、はたと気づきます。
この部屋にも沢山の鏡があり、それが様々な光を反射していることに。
「ああくそー! また屈折率弄られたんですね!」
屈折率の変わった光が当たれば、光学迷彩はいとも簡単に剥ぐことができます。
私がチートだと思っていた光学迷彩は、ついに魔女にすら破られてしまいました。
そんな私へ、更にレーザーの絨毯爆撃が降り注ぎます。
「ぎゃあああああっ!!」
「まばゆっ!! この!」
凜さんは鏡の魔女に張り付き、胴体を駆けながら双刃刀を振るっていきます。凄まじい連撃ですが、それでもバリアにはヒビ1つ入らず……。
更に、凜さんの様子に異変が生じます。
「――っ?」
凜さんの鼻から血が垂れます。
それを皮切りに、頭から、腕から、足から、胴体からと、次々と血が垂れ始めます。
まるで小さな鎌鼬に全身を切り裂かれるように、凜さんの出血が広がります。
「なに、これ……! ガハッ!」
ついに血を吐いて、凜さんの足が止まってしまいます。
その隙を見逃す魔女ではなく。
巨大なその腕を振るい、凜さんを地面へと叩きつけます。
「凜さんっ!!」
レーザーの爆撃が止んだ一瞬の隙に、私は凜さんへ駆け寄ろうと魔女の足下に近づいていきます。
しかし、魔女に近づくにつれ、私は身体に違和感を感じます。
「な、なにが……。痛っ! 痛い痛い痛い! なんですか、これ!?」
目の端にキラリと光るものが映り、私は視覚に入る光を望遠魔法の応用でねじ曲げます。
すると……。
「鏡の、破片……!?」
私が魔女に目をやると、その破片は魔女から飛んできていました。
(魔力で作られた鏡の破片! これが私たちを傷つけてたものの正体だったんだ! 光の屈折を利用して、普通じゃ目に見えないようになってる!)
私が光を操れる魔法じゃなきゃ絶対に気づけませんでした。これが私たちの身体を切り裂いていたんです。
凜さんは鏡の魔女に密接していました。破片は魔女に近づくほどに大きくなっているようで、それを食らい続けたのだから、あの出血も納得です。
(こんなの、どうしろって言うんですか!)
バリアによってこちらの攻撃は効かず、近づくだけでダメージを受け、向こうからはレーザーの嵐。
全くと言っていいほど、勝機が見えませんでした。
(いや、それよりも凜さんを!)
しかし、私の行動よりも早く、鏡の魔女が動きます。
身体から放つレーザーを全て凜さんに向け、集中砲火を開始します。
「ぐぅっ……!」
凜さんは双刃刀を回転させてバリアのようにし、レーザーの猛攻を防ぎます。が、それも時間の問題。凜さんに向けられるレーザーの数は、とても防ぎきれるものではありません。
言うなれば、人と戦艦の戦い。撃ち合いになればどちらが勝つかなんて、分かりきっています。
鏡を破壊するなら、私に注意が向いていない今しかありませんが……。
(見捨てられるわけ、ないでしょう……!!)
私は凜さんの元へと走ります。
その凜さんは、ついにレーザーを防ぎきれず、爆発で吹き飛ばされます。
吹き飛んできた凜さんを、私はギリギリでキャッチ。
「ま、ばゆ……!」
「逃げますよ! これはいくらなんでも無理です!!」
私は凜さんを背負い、全力で走ります。
その後ろで、鏡の魔女はいくつもの鏡を自身の前に用意します。
そして、その鏡全てにレーザーを撃ち、レーザーは次々と鏡たちの間を反射していきます。
その光はまるで、パラボラアンテナのような形を形成していき、ついに中心の一点に光が集中します。
ソーラークッカーの要領で何倍にも出力を高められたレーザーは、私たちに向けて放たれ……。
「っ!?」
激しい光と音の直後、私たちは熱と爆風に背中を突き飛ばされ、宙を錐もみ回転しながら舞います。
どちらが上で下か分からなくなりながら、落下し……。
私たちは地面に叩きつけられました。
「あ゛うっ!」
私は、割れるように痛い頭を必死に動かし、ぼやける視界で凜さんを探します。
すると、凜さんは私の3メートルほど前に倒れていました。
(凜、さん……)
手を伸ばすも、それ以上力を入れていられず、腕は地面へと落ちてしまいます。
身体はそれ以上言うことを聞いてくれず、瞼も重くなっていきます。
「り……」
せめて凜さんの名前を呼ぼうとして、それも叶わず。
私の意識は、闇へと落ちました。
遅ればせながら、クレセントメモリア読了しました。
無事に脳を焼かれて発狂したので、アナザー終了後にクレメモを扱った短編書きます(鋼の意志)
次回、決着です。