魔法少女まどか☆マギカ 実績『朝焼けのエンドロール』獲得 作:くろしゅー
DAY.95 Side MA
落ちてくるほむらさんたちと魔女、それと瓦礫。
「ちょちょちょ、ウソでしょ!?」
私は飛び起きて、すぐにその場を離れます。
「えええっ!? もう!」
同じく凜さんも起き上がって、私のところまで走ってきます。
直後、瓦礫と魔女たちが着地。
後を追うように、千鶴さんがほむらさんと藍家さんを抱え、鎌を壁に突き立てて減速しながら降りてきます。
「ほむら! ひめなちゃん!」
「ほむらさん!」
私たちが駆け寄ると、ほむらさんは髪をかき分けて軽く整えます。
「まばゆ、凜。無事……、ではないわね。大丈夫?」
「私はなんとか……。それより凜さんが……!」
「私もまだ大丈夫だよ。大丈夫じゃないって言うなら……」
凜さんが後ろを振り返ります。
「この状況かもね! みんな、走って!」
私とほむらさんは、凜さんに手を引かれて走り出します。
するとその直後、私たちに向けて大量のレーザーが飛んできます。どうやら、魔女に私たちが動き出したのがバレたようでした。
千鶴さんも、藍家さんを抱えたまま走り出します。
なんとかレーザーを掻い潜りながら、ほむらさんが言います。
「凄まじい弾幕ね! これ、長期戦してたら全滅よ! 私が注意を引くからあなたたちは作戦を……」
「ダメなんです!」
私はほむらさんの言葉を遮ります。
「鏡の魔女は全身をバリアで覆ってます! 作戦を進めるにもあのバリアを何とかしないといけなくって……」
「なんですって……!?」
「それに、鏡の魔女は全身から、見えない鏡の破片を撒き散らしてる。下手に近づけば、すぐさま身体を切り刻まれるよ」
凜さんの補足に、ほむらさんの顔は悔しさに歪みます。
「手詰まりってわけね……」
「いや、そうでもないよ」
凜さんの声に、私たち2人は彼女の顔を見ます。
「どういうことです?」
「ほむらたちが上の魔女を落としてきてくれたおかげで、何とかなるかもしれないってこと。あの魔女を利用すれば、炎が呼べる!」
あっ、と私は声を上げます。
先ほどまで話していた凜さんのセカンドプラン。それに足りないのは、もう1枚の鏡と、そこから炎を呼ぶための魔女。
でも、魔女が同じ階層にいるなら、後は……。
「私の魔法で鏡を見つければ……!」
「そういうこと」
凜さんはテレパシーを飛ばして、皆さんに作戦を伝えます。
千鶴さんたちも納得したようで、彼女の声が頭に響きます。
『なるほどな。それなら防壁も突破できるってワケか。考えたな」
けど、と彼女は続けます。
『まばゆの魔法をいつ使うんだ。魔女に魔法を警戒されてるんだろ? この攻撃の密度じゃ、足を止めた瞬間に蜂の巣だ』
『なんとか、魔女に隙ができばいいんだけど……』
凜さんがそう言った瞬間でした。
『ねえ、あれ!』
藍家さんの声が聞こえ、彼女を見れば、後ろの魔女を指さしていました。
彼女の指の先を追えば、魔女が別の方角を見て固まっていました。
そして、何を思ったか、私たちへの攻撃を止め、サルベーション・ブルームを引き起こす鏡のところへと戻っていきます。
「な、なにが……」
「まばゆ!」
凜さんに呼ばれ、ハッとします。
(そうだ! 魔女の攻撃が止んだってことは……!)
チャンスは今しかありません!
私は凜さんの瞳を覗き込みます。
「失礼します!」
そして、未来視の魔法を発動。私たちが対の鏡を見つける未来のフィルムを、その目と記憶に焼き付けます。
現実に意識を引き戻された私は、この部屋の一部を指さします。
「鏡! あそこです! 大きな四角い鏡の上! 緑の枠縁のやつです!」
「ナイス、まばゆ!」
そうして動きだそうとする私たちを、目の前を過ぎる熱線が遮ります。
ほむらさんが上層で戦っていた獄門の魔女が、私たちを狙っていました。
続けざまに撃ってきた熱線を、ほむらさんが盾で防ぎます。
「いきなさい、凜! あの魔女は私たちで仕留めるわ!」
「ごめん、お願い!」
飛び出していく凜さん。
それを見届けたほむらさんは盾に手をかけます。
「いくわよ、ひめな! まばゆも手貸しなさい!」
「おけまる!」
「はい!」
3発目が飛んでくる前に、ほむらさんと藍家さんは時間停止を発動。
時が止まったのを確認して、私たちは魔女に近づき、攻撃を仕掛けます。
「「これで……!」」
「終わりです!」
時間にして約10秒。私たちの合体技を放ったところで、時間停止が解除。
攻撃が炸裂し、魔女は体勢を崩します。
それでも、魔女は倒れながらほむらさんを狙います。
そして、魔女から熱線が放たれる直前。
「させるかよ」
疾風の如く割り込んだ千鶴さんが、圧縮されていた熱ごと、魔女を一刀両断しました。
千鶴さんは着地すると、私たちのほうに駆け寄ってきます。
「無事か?」
「は、はい。私たちは」
「よし、ならアタシたちは鏡の魔女を足止めするぞ」
私はその言葉に待ったをかけます。
「いやいやいや、待ってください! 足止めもなにも、バリアが破れないと干渉すらできないんですよ!?」
「それならそれでやりようはある」
見ろ、と千鶴さんは鏡の魔女を指さします。
「アイツ、鏡を外に持ってく気だ。外のヤツらが上手くやってくれたのかもしれねえが、今すぐにでも起爆する気だ。足止めしねえと、凜が間に合わねえぞ」
たしかに、鏡の魔女は今にも鏡を動かそうとしています。
藍家さんは消耗しており、しばらく時間停止の魔法を使えそうにありません。
(となると、もうぶつかって止めるしかないってないってわけですか……)
「ただし、まばゆ。お前は凜の援護に行け。鏡の魔女はお前も狙ってるんだろ? 狙われているヤツを前線に出すわけにはいかないしな」
「あ、ありがとうございます」
内心ホッとしました。
あんなのと2回もやり合うのは、正直ゴメンです。
「他2人はいけるな?」
「当然よ」
「わ、私チャンは……」
顔を引きつらせる藍家さんの言葉を待たず、千鶴さんは走り出します。
「いくぞ!」
「ああ~~~! ヒコ君、頼りにしてるからねー!」
半泣きになった藍家さんとほむらさんが続きます。
その様子を苦笑いしつつ、私は凜さんがいる方向へと足を向けます。
「よし、私も……! 今いきます、凜さん!」
DAY.95 Side RY
「緑の鏡、緑の鏡、緑の鏡!」
私はまばゆに教えてもらった鏡に向かって走る。
ほむらたちが抑えてくれている間にこの鏡を回収して、もう1体の魔女で爆発を起こす。
(これなら、勝てる!)
私は壁にたくさん掛かっている鏡の枠縁を足がかりにし、目標の鏡があるところまで壁を登る。
そして、遂に鏡に手がかかる。
「よし!」
そう叫んだ直後、背後から殺気を感じ、鏡を持ったまま横に跳ぶ。
すると、次の瞬間、壁に巨大な杭が突き刺される。
私は着地して、その下手人の姿を真っ直ぐ見据える。
「ここで立ちはだかるのがあなたなんて……。運命ってのは予想がつかないもんだね」
そこにいた魔女は、ほむらが批評家の魔女と称した魔女。
巨大な黒い人間の腕のような身体を本体として、それを取り囲むように多数の腕が生えている。その周囲には紫の花がいくつも咲いていた。
忘れもしない。あの魔女は、かつて私のいたチームみかづき荘でも勝てず、メルが魔女となった原因の魔女なのだから。
私は鏡を下に置き、武器を構える。
ほむらたちはもう1体の魔女と戦っているのだろう。
(ちょうどいい……)
この魔女があの時の個体なのか、それとも株分け個体なのか。はたまた、鏡の魔女の力で別の時間軸から呼び寄せられた平行同位体なのか。それを知る術はないが、私にとっては些末な問題だ。
みことちゃんのためにも、ここで過去にケジメをつけたかったとこだ。コイツを倒して、私は過去を超える。
「あなたの相手は、私1人でしてあげる」
ジリッと、足を半歩前に出す。
「さあ、おいで」
私の挑発が理解できたかは怪しいが、批評家の魔女は腕を伸ばして攻撃を仕掛けてくる。
「――っ!」
多数の腕による一斉攻撃を、僅かな隙間を抜けて回避する。攻撃を避けきって魔女に一直線に突っ込めば、まだまだ残っていた腕の第2波攻撃が飛んでくる。
それらを双刃刀で逸らし、最後の腕をジャンプで避ける。そのまま腕に着地し、魔女に突っ込む。
「はああっ!」
そうして振るった一撃は、本体の後ろに隠れていたもう一本の腕に防がれる。
さらに、私が避けた腕が戻ってきて攻撃を仕掛けてくる。
「炎雷、斬舞!!」
それらの腕を双刃刀の乱撃で、細切れにして吹き飛ばす。
が、その隙を突かれ、腕の1本の裏拳が私に命中。私はゴムボールのように横へ飛ばされる。
3回目のバウンドで体勢を立て直し、受け身を取る。
「くっ……!」
そこへ、先ほどの攻撃を掻い潜った腕が殺到する。
私はあえて前に飛び込み、腕と地面の隙間に滑り込む。
腕の群れを抜け、再度魔女本体に肉薄。先ほどと同様、腕の1本が魔女を守ろうとするも……。
「もう引っかからないって!」
その腕を切り飛ばし、返す刃で本体に5連撃を叩きこむ。
本体はバランスを崩すも、腕のほうの動きに鈍りは見えず、私に追撃をしてくる。
振り下ろされる杭の嵐を、私は一歩も引かずに迎撃する。ここで引けば、再び魔女に体勢を整える隙を与えるだけだ。
魔女もバラバラの攻撃では無駄と悟ったのか、複数の腕が同時攻撃をしてくる。
「……待ってたよ、その攻撃を!」
私はそれを避け、地面に刺さった杭を抜こうとしている腕を一薙ぎで吹き飛ばす。
これで残りの腕は5本。数は一気に減った。
追い詰められた魔女は、腕を鞭のように振り回し、もはや狙いを絞らない出鱈目な攻撃を向けてくる。
迫る3本の腕を冷静にそれを避け、遅れてきた最後の一撃を蹴りで弾き飛ばす。
そうすれば、魔女への一本道が開けた。
(これで……!)
私は地面を踏み込もうとしたところで、ふと気づく。
(あれ……。さっき攻撃してきた腕の本数、何本だった?)
受け流したのが3本。弾き飛ばしたのが1本。
残っていた腕の数と合わない。
直後、私の耳にまばゆの声が聞こえた。
「凜さーん! 私も援護します!」
私たちのほうに向かってくるまばゆ。そして、そのまばゆに死角から迫る最後の腕。
「っ!!」
それを認識した瞬間、考えるより先に身体が動く。
駆け出す向きをまばゆの方向へと変え、強化状態に突入すると同時に地面を蹴る。
(今度こそ……!)
無我夢中で駆ける。全身全霊の力で、まばゆの元へと走る。
「凜さ――、え?」
どうやらまばゆも、魔女の攻撃が迫っているのに気づいたようだった。が、魔女は既に攻撃体勢に入っている。今からじゃ回避は間に合わない。
(今度こそ!)
あの時と同じ結末にはさせない。そのために、特訓してきたんだから。
(今度こそ!!)
「守りきる!!!」
まばゆと魔女の腕の間に滑り込み、私たちを串刺しにしようと突っ込んでくる腕に、双刃刀を渾身の力で振り下ろす。
私の双刃刀は魔女の杭を砕き、その勢いで腕を真っ二つに叩き割る。
これで腕は最後だ。
残り4本が起き上がる前に、私は弾丸の如きスピードで飛び出す。
両方の刃に魔力を纏わせ、私は魔女に迫った。
「リベリオーネ・デスティーノ!!」
私の叫びと同時に振るわれた刃は、魔女本体の身体を十文字に切り裂いた。
私はそのまま魔女とすれ違う。着地は無理と判断し、地面を受け身を取って転がる。
「あああああっ……! ハァ、ハァ、ハァ……!」
強化状態の反動で激痛が走り、呼吸が乱れる。ピシリ、とガラスにヒビが入るような音を聞いた気がした。
けれど、蹲っている時間はない。私は痛みに喘ぎながらも、すぐに立ち上がる。
そうして魔女に近寄れば、魔女の体はゆっくりと崩壊を始めていた。先ほどの一撃で何とか倒せていたようだった。
「はぁ、はぁ……。リベンジマッチは、私の勝ちだね……」
私はそう言うと、魔女に刃を当てる。
鏡から炎を呼び出すために、身体の一部は貰わないといけない。
適当に指でも切り取って、などと考えていたときだった。
腕の一本が、私に近寄ってくる。
(っ!? まだ動け――!)
私は咄嗟に武器を構えるも、腕はヨロヨロと私の前までやって来ると、そこで止まる。
「……?」
攻撃してこないことに困惑していると、その腕は何かを私に差し出してきた。
「……花?」
私に差し出されたのは、鮮やかな紫のすみれの花、そして白い薔薇だった。
そういえば、この魔女の近くに咲いていた花、すみれだった気がする。見滝原にいた薔薇を育ててる魔女然り、この花も魔女にとっては大切なものだったのだろうか。
「くれるの?」
魔女に問いかけても返事はない。けれど、私がその花を受け取ると、魔女の腕はそっとそれを手放し、その場に崩れ落ちた。
まるで、この魔女に認められたご褒美と言わんばかりの花だ。それとも、倒してくれてありがとう、という感謝か。
――凜! ありがとうです!
――だから、この時間はあなたの時間ですね。あなたはきっと、新しい風を吹き込む人になれます。
――ありがと……。花丸、あげるね。
ふと思い起こされる、昔の記憶。
メルの無念も、これで少しは晴れただろうか。
私は花をギュッと握りしめる。
「ありがとう。使わせてもらうね」
私は反対の手で鏡を持ち、まばゆの元へと走る。
まばゆに合流すれば、彼女は血相を変えて私に駆け寄ってくる。
「凜さん! 大丈夫ですか!?」
「ギリギリね」
「その顔色は、かなりアウト寄りの色な感じなんですが!?」
そんな顔色なのか、と思う。
近くの鏡で自分の顔色を見れば、確かにいつもより血色が悪い感じがする。
とはいえ、それを気にしている時間じゃない。
「まだ動ける。ぶっ倒れるのは、全て終わってから」
「……もう! 本当に、終わったらしばらく絶対安静ですからね!」
「じゃあ、その時は介護お願いね?」
「私でよければ」
そんな軽口を言い合って、私たちは鏡の魔女へと向かう。
すでにほむら、ひめなちゃん、千鶴さんが鏡の魔女と戦っている。しかし、バリアによってダメージは与えられていないようだった。しかも、鏡の魔女のバラ撒く不可視の鏡の破片が彼女たちを傷つけているようだった。
それでも、彼女たちは1歩も退かない。
「ほむら!!」
私が叫べば、彼女はこちらを向いて口角を上げる。
「やっと来たわね! さっさと決めるわよ!」
千鶴さんたちとも合流して、私は皆に鏡を見せる。
「待たせてごめん! これが対の鏡。あの魔女からもらった花を着火剤にして、まずはバリアを砕く。その後、本体も同じ方法で……」
それと、と私は鏡の魔女が運ぼうとしている鏡を指さす。
「あっちはもう砕いちゃおう」
「え? あれを2回目の爆発に使うつもりでは?」
「そのつもりだったんだけどね。多分、向こうもそれは警戒してくると思うし……。それに、鏡を守るのと、この鏡を避けるの。魔女がどっちもやろうとすれば、注意力を分散できるはず」
「こちらの戦力も分散されるけどね」
ほむらの言葉は尤もだが、問題はあれを破壊しておかないと……。
すると、ひめなちゃんも口を開く。
「多分、あの鏡を放置すると、最悪自爆で使われて、この結界ごと吹き飛ばされるかもって、ヒコ君が」
ひめなちゃんの彼氏君も同じ考えに至ったようだった。
「そう。だから、鏡の破壊をお願い」
「分かったわ」
ほむらは静かに目を閉じて頷く。
「鏡の破壊は私とまばゆでやる。3人は本体を任せるわ」
「ありがとう。お願い」
すると、千鶴さんの腕輪が鳴る。
「アタシだ」
千鶴さんが腕輪を起動すると、腕輪からヘルカさんの声が聞こえる。
『千鶴! そちらは無事ですか!?』
「ああ。そっちは?」
『こちらは全ての株分けを倒しました! 後は本体だけです!』
「なるほどな」
千鶴さんは私たちを見て笑う。
「じゃあ、ここが文字通り最終局面だな」
すると、腕輪からヘルカさんの焦った声が響く。
『急いでください、千鶴。私たちがこの世界に顕現できる時間はあと僅かです。その前に決着を!』
「任せろ!」
そう言って、千鶴さんは腕輪の通信を切る。
「ってなわけだ。悪いな、アタシが手伝えるのもあと少しだ。それまでにケリつけるぞ」
「うん!」
鏡の魔女がついに、鏡を持って動き出す。
「いくよ!!」
私の声で、全員が動き出す。
動き出した私たちに気づいたのか、鏡の魔女はレーザーの弾幕を張ってくる。
それらを避け、私は魔女に近づいていく。
魔女は、私が持っている鏡を認識したのか、レーザーを私に集中してくる。
(この数、避けられるかな……!?)
私は覚悟を決め、回避しようとして……。
「はぁっ!」
千鶴さんがレーザーを防ぐ。
彼女は振り返り、私に言う。
「任せろ! お前は突っ込むことだけ考えろ!」
続いて飛んでくるレーザーを、今度はひめなちゃんがリボンを出して防ぐ。
「ゆーりんのことは私チャンたちが守るから!」
「2人とも……。ありがとう!」
防御は彼女たちに任せ、私は相手に触れることだけを考えて走る。
魔女は使い魔を召喚し、私たちへと向かわせてくる。さらに、使い魔の一部をその手に握ると、こちらに向けて投げ飛ばしてきた。
「っ!」
砲弾のように飛んでくる使い魔を、真っ二つに切り裂く。
「こいつ、味方を武器に……!」
千鶴さんも苦々しい顔をする。
(そうまでして、私たちを、この世界を滅ぼしたいの……?)
レーザーと、使い魔の放つ銃弾の雨は苛烈さを増していく。
千鶴さんとひめなちゃんにも生傷が比例するように増えていく。
(もう出し惜しんでる暇じゃない!)
私はソウルジェムに触れる。
先の強化状態使用で小さなヒビの入った、私の命。
(私の魔法で戻せる限界を考えると、10秒でぶん殴って片をつけるしかない、か)
私は覚悟を決め、口を開く。
「2人とも、あと50メートルだけ私を守って! そこからは私だけでいく!!」
2人とも、私の表情を見て何かを察したのか、無言で頷いてくれる。
使い魔たちを蹴散らしつつ、もはやゲームの警備システムでしか見たことないようなレーザー群の隙間を縫っていく。
(あと30メートル……!)
「危ない!」
私目がけて飛んできたレーザーを、ひめなちゃんが身体で防ぐ。
「ひめなちゃん!!」
「ヘーキ! 進んで!!」
地面を転がるひめなちゃんにそう言われ、私は止まりそうになる足を無理やり動かす。
(あと10メートル……!)
埒が明かないと思ったのか、魔女は極大のレーザーを撃ってくる。
「アタシが斬る! 凜はそのまま突っ込め!」
前に飛び出した千鶴さんが、鎖鎌を振り回し、そのレーザーとぶつかる。
レーザーは光の粒子となって削れていき、ついにはレーザーを相殺しきる。
同時に千鶴さんの鎖鎌も砕け散るも、千鶴さんは私のほうを向き、手のひらを組んで足場を作る。
「飛ばすぞ! こい、凜!」
「はい!」
私は彼女の手を足場に、踏み込む。
同時に魔力を解放。強化状態に突入する。
「いっっけええええええええええ!!!」
千鶴さんに投げられると同時に、彼女の足から飛び出す。
加速のついた私の身体は、一気に魔女との距離を詰める。
近づかれた魔女は私を叩き落とそうと、腕を伸ばしてくる。
それに対し、私は鏡と花を構える。
「くらえええええええっ!!!」
薔薇の花を鏡面に押し当て、前に突きだす。
直後、鏡からピンク色の光が溢れ出す。それはそのまま、魔女の腕、そしてそれを守るバリアとぶつかり合い……。
そのバリアを、ガラス細工のように砕いた。
「このまま……! 押し込む!!!」
私は足下に魔法陣を展開し、それを蹴って再加速。
魔女を守るバリアを、鏡を押し込んで砕いて進む。
魔女は、慌てて背後の鏡に手を伸ばすが……。
「あら、残念ね」
「こっちにあるのはもう、スクラップだけです、よ!!」
鏡のあちこちに刺さっていたハサミの1つを、まばゆが思い切り蹴って深く押し込む。
すると、そのヒビが広がり、他のハサミが入れたヒビに次々と繋がっていく。
そしてヒビは鏡全体に広がり、一拍置いた後、甲高い音を立てて砕け散る。
そして、それは魔女のバリアも同じ。
魔女のバリアのヒビは胴体まで到達し、崩れ落ちる。
これで魔女を守るものは、もう何もない。
魔女もそれにようやく気づき、反撃のレーザーを撃とうとするも、ここからなら……!
「私のほうが、速い!!」
私は巻き戻しで持っている鏡を復元し、その鏡面にすみれの花を押し当てる。
再び光が強くなり、鏡から炎が揺らめく。
放たれたレーザーは身を捩って回避し、鏡を突きだす。
「いっけえええええええ!!」
突きだした鏡は魔女に触れ、鏡からは一気に炎が溢れ出す。
「縺弱c縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠!!??」
それを食らった魔女は絶叫を上げながら、炎に包まれて倒れ込んだ。
私も浮力を失い、そのまま落下する。
それをキャッチしてくれたのは、まばゆだ。
彼女の胸に飛び込み、私たちは着地した。
「ぐっ、うううううぅ! くぅぅ……!」
「凜さん! しっかりしてください、凜さん!」
全身に痛みが走り、まばゆの声がどこか遠くに聞こえる。
使用時間は10秒未満だったはずだが、反動が思ったより重たかった。
身体の奥底、それこそ魂に爪を立てられ、引き裂かれるような痛みだ。
それでも私は視線を動かし、倒れた魔女を確認する。
魔女はピンクの炎に全身を包まれ、火の粉を撒き散らしながらのたうち回っている。
(撒き散らしながら……?)
私は急いで周りの様子を確認する。
飛び散った火の粉は、結界に燃え移り、徐々に炎を広げていた。
(そっか、結界の魔女の生み出したものだから、結界にも燃え移るってこと? だとしたら……)
「ま、ずぃ……!」
私はまばゆから転がるように離れ、無理やり立ち上がる。
「ちょ、凜さん! 動いちゃ――」
「まばゆ、ほむら!! 今すぐ上の鏡層にいって、外に繋がる鏡を割って!」
ひめなちゃんを背負ったほむらも困惑の表情を浮かべる。
「ちょっと待って。どういうこと?」
「あれ見て……。サルベーション・ブルームの炎が結界に燃え広がっている。このまま結界に燃え広がったら、魔女が死ぬ前にこの結界が炎に満たされて、この結界自体が爆弾になる!」
「そんな……!」
驚愕で目を見開くまばゆ。
「だから、その前に外に繋がる鏡を全部割って! そうすれば、炎が外に漏れ出すことなく結界が消滅する!」
「あなたはどうするの!?」
「鏡の魔女にトドメを刺す。これ以上暴れられて炎が広がらないように」
「無茶です! 凜さん、動くのだって辛いんでしょう!?」
泣きそうな顔で引き止めるまばゆの手に、私は手を重ねる。
「お願い。手分けしないと間に合わない……! それに、割る鏡を把握できるのはまばゆしかいないの! まばゆなら未来視で迷わずに鏡にたどり着ける!」
そう言うと、まばゆは悔しそうに黙る。
「脱出用に1枚だけは残しておいてね。お願いできる?」
「……分かりましたよ」
でも、とまばゆのは強い口調で言う。
「絶対、すぐに追いついてきてくださいね。お願いですから……」
「うん。すぐに追いつくから」
じゃあお願い、と私の瞳をまばゆに差し出す。
「……失礼します」
まばゆが未来視を発動。
鏡の位置を把握したのだろう。
覚悟を決めた顔でほむらに振り返る。
「……行きましょう、ほむらさん」
「え、ええ」
ほむらは走り出す前に私に振り返り
「待ってるからね。必ず、戻ってきなさい」
そう言って、走り出した。
「……当然。ここまで戻ることを望まれたんだから」
ようやく痛みが治まってきた私は、武器を構え、鏡の魔女に突っ込む。
(みことちゃん……。あなたの憎悪を、私は完全に理解しきれてあげられなかったと思う)
燃える魔女の腕をギリギリで避け、双刃刀で断ち切る。
(それでも、友だちとして……。あなたがこれ以上誰かに恨まれるのは、耐えられない)
反対の腕が振るわれ、私は横に飛ばされる。
(本当は、あなたたちの居場所になってあげたかった。世界が敵だって言うあなたたちに、この世界にも居場所があるんだって、証明したかった)
壁に叩きつけられ、肺の空気が全て吐き出される。
「ゲホッ、ゲホッ」
(でも、私は失敗した。だから、せめて幸せを感じる最期を迎えさせてあげたかったんだ。あなたたちみたいな魔法少女の最期が絶望で終わるなんて、そんなの納得できないじゃん)
咳き込みながらも、双刃刀を杖にして立ち上がる。
(ありがとう、私に付き合ってくれて)
伸ばされる腕を、私は手首から切り落とし、すり抜ける。
(だから、みことちゃん。あなたの憎悪も、ここで終わりにしよう。私が全部、受け止める)
迎撃の手段を無くした鏡の魔女は、それでも吠える。
それはまるで、この神浜に輪廻する悪意と恨みを叫んでいるようだった。
(みことちゃんの絶望。みたまさんの恨み。神浜に巣くう悪意。願わくばこれで……)
私は跳び上がり、魔女の首に一直線に進む。
(ここで、断ち切られますように……!)
振るった刃は魔女の首に食い込み、そのままその首を飛ばした。
今度こそ崩れ落ち、崩壊する魔女の身体。
結界自体も、徐々にその形を崩していく。
(あとは、脱出するだけ……!)
目は霞むし、喉も渇いた。膝だって笑ってる。
(でも、待ってくれてるんだもの……! こんなところで……!)
全身に激しい倦怠感を纏いながらも、私はまばゆたちの待つ上層を目指して走り出した。
DAY.95 Side MA
「そこの鏡! あと、その奥! 赤い縁のもお願いします!」
私は未来視で見た光景を頼りに、外に繋がる鏡を次々と見つけていきます。
上層へ行く途中で、マミさんたちとも合流できました。2人とも満身創痍でしたが、動けなくはないとのことで、鏡割りを手伝ってもらっています。
また、上層へはマミさんたちの戦闘でできたという大穴を使えたおかげで、簡単に上がることができました。
千鶴さんたちは、いつの間にか姿を消していました。
恐らくヘルカさんの言っていた、この世界にいられる時間が来てしまったのでしょう。
(ありがとうございました、皆さん……!)
彼女たちの尽力が無ければ、ここまでたどり着けなかったでしょう。
彼女たちのためにも、後は私たちで被害を抑えるんです。
(それで、凜さんと一緒に脱出して、ハッピーエンドです!)
「まばゆさん! こっちは終わったわ!」
「まばゆ! こっちもオッケーよ!」
マミさんとほむらさんの声が聞こえます。
後は……。
「愛生さん! 私も終わったわ!」
最後、時女さんの声が聞こえました。
「ありがとうございます、皆さん! あとは……」
私は目の前の鏡に触れます。
この鏡が外に繋がる最後の鏡。
炎が広がる前に、全員これで結界の外に出て鏡を割れば、炎が現実世界に溢れ出すことなく、全てが終わります。
唯一の不安点は、外に繋がる鏡はどれも大きく、持ち運びできないこと。
つまり、凜さんがここにたどり着いてくれないと、脱出できません。
すると、結界が大きく揺れます。
それと同時に、結界がガラガラと音を立てて崩れ始めました。
「結界が崩れ始めた……。ということは」
「凜さんがやってくれたみたいですね」
私は皆さんに振り返って言います。
「皆さんは先に外に出ててください! 結界ごとこの鏡が崩れたら、結界内に閉じ込められますよ!」
「でも、まばゆさんも……!」
「私は大丈夫です! 皆さんが外に出るのも、私が視た未来なので!」
そう言うと、皆さん不安そうにしながらも納得してくれます。
ただ1人を除いて。
「まばゆ」
ほむらさんは、厳しい目つきで私を見ていました。けど、その奥には不安の色が色濃くあって。
「あなたの視た未来に、あなたは……。あなたたちは、私の隣にいた? ちゃんと全員、私たちの日常に帰れていた?」
私の肩に、彼女の手が置かれます。
その光景にどこか見覚えがあって、私は微笑みます。
「さあ、どうでしょう?」
「どうでしょう、って。あなたね……!」
「ごめんなさい、そこまでは視えなかったんです。私が視たのは、皆さんを外に逃がし、やって来た凜さんに私が手を伸ばす未来まで。その先は分かりません」
でも、と、私は肩に置かれたほむらさんの手を握ります。
「大丈夫ですよ、きっと」
「どうして、そう言えるの?」
「だって……」
――だって私たちは、助かってほしいって願うんだもの。
「私たちが、この物語の結末をハッピーエンドで願っていますから」
(だよね、お母さん)
未来を視ることができた、お母さんのその言葉。それはきっと、未来へ進むためのおまじないの言葉。
さあ、と私はほむらさんを振り向かせ、肩を押します。
「いってください、ほむらさん」
「……ええ。分かったわ」
ほむらさんは鏡をくぐる前に足を止め、私に言いました。
「待ってるわよ、まばゆ」
「……はい。待っててくださいね」
私の答えに返事をすることなく、ほむらさんは鏡から外に出ました。
「さてと」
私は空いた穴から下を覗き込みます。
炎は既にこの鏡層にも到達しており、壁にも炎が燃え移ります。
空間自体にもヒビが入り、もうこの結界も長くないことが分かります。
けれど、私は彼女を信じて待ちます。
彼女に届くよう、大きく息を吸い込んで。
「凜さーーーーーん!!! こっちですーーーー!!」
私史上、一番の大声で彼女を名前を叫びました。
DAY.95 Side RY
「凜さーーーーーん!!! こっちですーーーー!!」
その声に、朦朧としかけた意識が覚醒する。
(まばゆの声……!)
私は最後の力を振り絞って走り出す。
既に鏡層はいくつも登った。そろそろまばゆたちにも追いつけるはずだ。
そして、亀裂の入った私のソウルジェムが、彼女の魔力を見つけた。
(あれだ……!)
霞む視界でもハッキリと見えた。
こちらに手を伸ばすまばゆの姿が。
「まばゆーーーー!!!」
こちらも大声で答える。
そうすれば、まばゆも返事をしながらこっちに手を振る。
「こっちです! ここまでなんとか来てください!」
既にまばゆの近くの床は崩壊が始まっている。まばゆもあれ以上動けないのだろう。
それでも必死に手を伸ばしている。
あとは、私がその手を取ればいいだけだ。
私は走る。
瓦礫が降り注ぎ、空間が割れようと関係ない。
待ってくれている人がいるんだ。絶対に、たどり着いてみせる。
「っ! おっとと……!」
踏み出そうとした先の地面が抜ける。急ブレーキをかけて、それを飛び越える。
後ろに迫るはピンクの炎。
それらはここの鏡を次々と飲み込んでいく。それはこの結界に作用し、爆心地を中心に時空を歪ませる。
(ヤバいヤバいヤバい……!)
必死に足を動かす。
もはや下の鏡層は、小さなブラックホールかと思うほど、時空の捻れによる暗黒空間が広がっていた。
燃焼反応によって酸素が減るため、空気も下へと吸い込まれていき、本当にブラックホールのようだ。
(あと、ちょっと……!!)
同じ鏡層にはついた。あとはこの数十メートルを走りきるだけ。
「凜さん、急いで!!」
まばゆが必死に手を伸ばす。
私もその手を目指し、走る。走る。走る。
瓦礫を避け、空間の亀裂の間に滑り込み。
最後、彼女と鏡の前に広がる大穴にまでたどり着く。
(ジャンプじゃ届かない……! どっか、渡れるところ――)
視線と脳を限界まで動かして、見つける。
穴の側面。凹凸が多いところ。あそこを渡っていけば。
(いける!)
覚悟を一瞬で済まし、まだギリギリ渡れそうな壁沿いを壁走りの要領で走る。
「うああああああああ!!」
あと、10メートル……!
私は残る力を足に集中し、最後の足場に着地と同時に踏み切る。
その瞬間、足場は砂の城のようにあっさりと崩壊した。
「えっ……」
力は全て下に逃げ、私は一瞬浮遊する。
私は咄嗟にまばゆへと手を伸ばす。
まばゆの手と私の手は、お互いを求めるように近づき。
残り30センチで空を切った。
吸い込まれるように落下する私の身体。
跳び上がる力も、何かに掴まる力も、もう何も残されていない。
それでも、私は必死に手を伸ばす。
「まばゆっ!」
届くはずのない手を、それでも伸ばす。
あの日。お父さんとお母さんから逃げ出したときのように。家を飛び出して、手を伸ばしたときのように。
「たすけ――」
直後、私は暗黒空間へと沈み、絞りだそうとした声とともに、私の意識は黒に握りつぶされた。
DAY.95 Side MA
「凜さんっ!!!」
手を伸ばしても届かない。
彼女の身体は、もう落下を始めています。
あれで届かなければ、もうどれだけやっても。
「まばゆっ!」
彼女に、名前を呼ばれます。
そうして目の合った彼女は、泣いていました。
「たすけ――」
それを最期に、彼女は下のブラックホールのようなものに吸い込まれて、見えなくなってしまいました。
「まばゆ!」
後ろからほむらさんに呼ばれます。
後ろの鏡で中の様子を見ていたのでしょう。
私は立ち上がります。
「ごめんなさい、ほむらさん」
「まばゆ、なに言って……!」
「やっぱり、一緒には帰れないみたいです」
「は……? っ、あなた……!」
ほむらさんが鏡から伸ばしてきた手を避け、私は顔だけ向けて言いました。
「どうか、鹿目さんたちと幸せに」
私は地面を蹴り、下のブラックホールに飛び込みます。
(1人には、させませんよ……。凜さん)
私は彼女に手を伸ばし、その真っ黒な空間に突入します。
身体を滅茶苦茶に回され、潰され、引き伸ばされるような感覚の中。それでも手を伸ばすことだけは止めませんでした。
その手が、彼女に届くと信じて。
永遠にも感じられるような苦痛の中で、手になにか触れた気がして。
やがて私の意識も、黒く塗りつぶされました。
DAY.95 Side HA
目の前の光景が信じられない。
「まばゆ……?」
今起きたことが理解できない。
「凜……?」
炎が包む、鏡の先の景色を、私は呆然と見つめる。
数秒遅れて、私は弓に弾かれたように走り出し……。
すぐに後ろから取り押さえられる。
「離しなさい、時女静香!!」
藻掻きながら、私を羽交い締めにする彼女を睨むも、彼女は全く動じない。
「暁美さん、もう無理よ!」
「無理ってなに!? あの子たちがまだ……!」
そうして見た鏡には、こちらに迫ってくる炎の塊が映っていた。
「っ!」
時女静香の判断は早かった。
私を後ろへと投げ飛ばし、『阻止』の魔法で地面に押さえつけると、持っていた七支刀で鏡を砕いたのだ。
炎は溢れ出す寸前で、現実世界との繋がりを失い、そこに残されたのは静寂だけだった。
時女静香と巴マミに支えられ、私たちは鏡屋敷から出る。
入り口を守っていた杏子たちの声が聞こえるが、全部頭に入ってこなかった。
私は道の隅に座り込む。
これだけ魔法少女がいるのに、私の隣にいてくれた魔法少女の声は聞こえない。
手を伸ばしても、それを取ってくれる人はいない。こんな私に、笑いかけてくれる人はいない。
私は、また失った。
「っ……!」
私は、もはや手癖のように盾に手をかける。
しかし、そこで手が止まる。
(もし、ここで時間を戻したとして……。時間はいつまで遡るの?)
今までは、ワルプルギスの夜との戦いまでの1ヶ月だった。
けれど、もしこのタイミングで時間遡行を使ったら、どうなるのだろう?
今日から1ヶ月前に戻る?
(それなら、瀬奈みことと凜を引き剥がせば、この運命だって……)
でも、ワルプルギスの夜襲来の1ヶ月前まで戻されたら?
私たちはもう一度、あの災厄を超えられる?
そもそも、まどかが魔法少女になっていないこの時間軸を捨てるなんて……。
盾に置いた手が地面へと落ちる。
(私には、できない……)
私の願いは、まどかのためのもの。それで生まれた魔法を他の人に使えば、私は戦う意味を見失う。
きっと、時間の中で立ち上がれなくなる。
つまり、私に残された選択肢は1つしか残されていない。
「ごめんなさい、ごめんなさい……!」
運命を変える力があるのに、行使するだけの覚悟が私にはなかった。
こぼれ落ちる水滴を強引に拭う。
彼女たち2人を見捨てた私に、そんな権利などないのだから。
――私チャンだったら、ヒコ君と親友のどっちか選ばなきゃいけないって言われたら、ヒコ君しか選べない。
ひめなの言葉が、ふと頭の中で反響する。
(ごめんなさい。やっぱり私も、1人しか選べないみたいだわ)
大切なあの子のために、私は全てを犠牲にする覚悟だったのだ。そこには、私の親友も含まれていて。
それでも、私に止まることは許されない。
もう取り戻せない、自ら手放した温かい存在。
この瞬間、私の中の大事な何かが、欠けてしまった気がした。
……スゥー。
はい。これにて鏡の魔女、工事完了です……。
と同時に、今回の攻略もここで終了となります。
思いっきりバッドエンドじゃねーか!とツッコミの声もあると思いますが、私だって必死にやりましたよ!
まさか最後の足場が崩れるなんて、初見じゃ分かんないですって!
まあ、ともかく鏡の魔女は倒しきったので、これでエンディング突入です。
今回たどり着いたのは、まばゆちゃんとの心中ルートでしたね。
ハッピーエンドを目指しましたが、いやー難しかった。
それでは、完走した感想ですが……。
難しスギィ!!
scene0からのみことちゃんルート、難しすぎない? 色んなイベント追加されててビックリしたゾ……。
まあ救済措置もいくつかあったので、攻略次第ではもうちょいなんとかなりそうな気もしましたが……。
まあユリちゃん、あれだけフラグ立ててたらね。助からないのも残当。
今思えば、メルちゃん直伝の占いで『死神』正位置出してたし、あの時点でこのルートのフラグ立っていたのかもしれませんね。
まあでも、ほむらちゃんの大切なものは守り切れましたし、犠牲もたった2人で済みましたし、とりあえずメリバくらいにはたどり着けたんじゃないでしょうか。
ともかく、これにて本攻略は以上となります。
できれば称号『暁天のポストクレジット』も回収したかったですが、それは後でやりましょう。
今回は色々と他の攻略に使えそうな情報も回収できましたし、ヨシ!(現場猫)
というわけで、長い間ご視聴いただきまして誠にありがとうございました。
これでこのゲームの攻略は以上となりますが、またどこかで見かけましたら、その時はよろしくお願いします。
以上、『残照モンタージュ』及び『暁天のポストクレジット』獲得攻略でした。
サラダバー!
「そんなわけないでしょう」