鬼には笑顔がよく似合う   作:努舞我獲留

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強い女の子っていいよね。あと感想感謝。
※編集中につき、前後でつながらないところや、矛盾がありますのでご了承ください。

※編集完了しました(2024年9月9日)


発見

 

 

 走るのが楽しすぎてあっという間に着いてしまった。

 いやなに、こんなに速い生き物なんて今まで見た事なかったから仕方ねぇな。

 まあそれ自分自身なんだが。

  

 

 「(にしてもほんとに存在するとは…)」

 

 

 視線の先。背丈の高い草が生い茂る荒地に、(うごめく)く影が見える。

 

 

 

 緑の肌に、小柄な体躯、そしてそれに不釣り合いな大きい頭。顔は野生的で、ヒシヒシと本能に呼びかける恐ろしさがある。極め付けは、その額についた一本角。

 

 

 「(……間違いねぇ…小鬼(ゴブリン)だ)」

 

 

 手に粗末ながら十分実用的な武器を持ち、ゾロゾロと集団でまとまって動く姿は、よくラノベやゲームに登場するゴブリンそのものだった。

 

 …架空の生物が動いてるその姿を見ていると、どうにも落ち着かねぇ。……よくできた作り物を見てるみてぇで、あれを殺しても罪悪感が本当に湧かないかもと、安心とも恐怖とも言える感情が湧いて、無意識に歯がギシギシと音を立てる。

 

 

 「(……落ち着け、オレ……殺すんだろ…?オレは怪物になったんだから)」

 

 

 ふぅ、と息を吐いて一旦心を落ち着かせる。…焦ってはダメだ。こんな面白い事態が起きちまったんだから、せめてスタートダッシュは綺麗にきりたい。

 自分でもハッキリしない思考を振り払って、視界の先を見る。

 

 

 真っ先に視界に飛び込んではいたが、あまりの現実感の無さに、流石に無視してしまったソレ。

 荒地のど真ん中。ゴブリンたちの背後にある異物。世界から逸脱したような存在感を放つ()()は、星が煌めく夜空のような模様が描かれた、()()()()()であった。

 

 

 「(ゴブリンがあれから出てきてる…ってことは、あれがダンジョンってことか…?なんか、想像と違うな)」

 

 

 てっきり洞窟だとか塔みたいなのを想像していたせいで、ちょっとばかし肩透かしをくらった気分だ。

 歯軋りしながら観察を続けてると、ゴブリン達が一体のゴブリンの元に集まり始めた。

 おそらく指揮官だろうな。

 見た目的にはそんな変わらない……いやちょっと顔つきが違うか…???

 

 

 「(…ぶっちゃけ違いがわからん。これじゃ狙おうにも集団ですぐ紛れちまうじゃねェか。クソが)」

 

 

 クソ……アイツを、指揮官を獲るだけで有利具合は大きく変わる…、

 何かないか何か……何か……。

 カスみたいな頭で、それでも何かいい案がないかと頭を回す。

 

 

 ──頭が痛くなっただけで何も浮かばねぇ…クソ。

 

 

 …アイツを…アイツさえ奪れば、オレ有利でっ…

 

 

 

 

 

 …‥ゆう、り…?

 

 

 …オレが?……『怪物』が?

 

 

 

 

──『怪物』はそんなこと、気にしない

 

 

 ああ、そうだ何でこんな必死に思考してんだオレは……オレは怪物だろう?

 そもそも思考能力はそんな高くないんだっ。お門違いも甚だしい…あぁ、そうだ。考えるのはやめだ。

 

 

「全員ぶっ殺せば…終わりだろ!!」

 

 

 足に力を込めて……一気に飛び出す!!

 

 

 

「ギャァ…?…ッ!?ギィヤ!!ギィヤ!!」

 

 

 

 向こうに気付かれたな…でも、この距離じゃぁ…

 

 

「何も、できねぇだろオオ!!!」

 

 

 出会い頭、顔面にフルスイング!

 バキュッ ゴブリンは顔をひしゃげて茂みにぶっ飛んでいく。

 

 

「即死だろ!!ワンパンだァァ…ナァ!!!」

 

 

 半回転、背後から迫るゴブリンに裏拳をお見舞いする。

「ゴアッ」首が180度回転。こいつも死んだな。…ッ!!!

 

 

 悪寒が走る

 

 

 ヒュッ 本能のまま咄嗟に身を捻れば、直前まで自分がいた場所を斧が高速で通り過ぎた。

 タッタッ、とステップを踏み、着地の瞬間再加速。側面から再び投擲(とうてき)された斧が先ほどまでいた空間を切り裂いていく。

 斧持ちの方向を一瞥する、…距離が遠いか、クソッ。八つ当たりで目に映った近くのゴブリンを握り潰す。

 

 しかも斧が投げられた方向から推測するに、どうやら囲まれつつあるらしい。メンドクセェ…。

 やや遅れて、奥に待機していた槍を持ったゴブリンたちが、こちらに迫ってくる。

 

 

「「「グギャギャ!!」」」

 

 

「チッ!!…クソザコがッ!!!」

 

 

 突き出された槍を掻き分け、剛腕を振り回す。

 また向かってきたゴブリンを撲殺しながら、辺りを見渡す。

 

 

「(……数が減ってる気がしねェ…)」

 

 

 もしかして─とダンジョンの入り口を見れば、未だ途切れることなくワラワラとゴブリンが出現してきている。

 今頬を掠めた斧を尻目に、近くの緑の頭を()()()()。…ぐちゃっ、と口内に溢れる血肉の味に少し吐き気がする。

 

 

「口に入れるモンじゃねェナァ……ペッ」

 

 

 吐き出してもまだ微かに残る気持ち悪さを晴らすために、また目についた緑を潰す。一瞬の抵抗を抜ければ、すぐに赤くなる柔らかくてあったかいモノ。

 

 

「(コイツら、武器にさえ気をつければ全員ザコだな)」

 

 

 デカい棍棒もそうだが、…新しく出てきた(やから)は石槍やら、何に使うかわからんロープやら、投石ひもやら……ロープはあれの替えか?

 …警戒しとくに越したことはない…が、正直どうでもいい…。

 

 振り下ろされる棍棒を半身で避け、そこに突き出される穂先を掴み取る。

 

 掴み取ったそいつの、恐怖で染め上がった貌をじっくりと眺めてみる。

 

 ギョロギョロと瞳が忙しなく動き、顔中から滝のような汗が流れている。

 はぁはぁ、と荒い息が少しうるさい。

 

 

「……カワイいナァ…お前」

 

 

 空いてる方の腕を脳天に突き刺す。グチュグチュとした感触に眉を顰めながら、何回か握ってみる。

 

 ……これなら、大丈夫そうだな。

 

 ひとしきり掴んだそれを、近くの緑に向かって徐に振り下ろす。

 グチャッと生々しい肉音、次いで弾けるように血飛沫が舞う。

 

 

 「……アハ♪」

 

 

 太陽に照らされた赤色のテラテラとした輝きは、眩しいほどに目に焼き付いてしまった。手に持ったそれをぐるぐると振り回し、てきとーなやつにぶち当てる。

 再びの赤色。……ああ、やっぱり……すごく綺麗だ。

 グリン、と首を回し、近くの緑色を見る。

 

 

 ──ああ、幸せだ…。まだこんなにあるなんて。

 

 

 手に持ったそれを、振り下ろした。

 

 

 

 

─────────

 

 

 

 

 潰して潰してまた潰す

 

 

 

 

 どれくらい時間が経ったかわからない。でも。長い間近くの緑を潰し続けてる気がする。

 足元は赤くなってて、飛び散った緑がぐちゃぐちゃしていて、気分がいい。

 

 

 

 ふと、周りを囲んでいた緑色の壁が一斉に動き始めた。

 

 

 …?緑の壁が迫ってくる…?

 …視界がぼやけて、意識も定まらない…。………アレも、壊せば良いんだよな?

 突き出された棒を避けて、緑を割る。

 振りかぶられた棒を受けて、押し返しながらそのまま押しつぶす。

 

 

 潰したやつから、飛び散るソレ。

 開いた口に、赤色が入ってくる。

 甘い匂いで、舌が蕩ける味のソレ。

 

 

 “あア…もっト、ホシイ“

 

 

 近くの緑色に飛びつき、喰らいつく。

 溢れる想像以上に芳醇な香りに、思わず意識がクラクラしてしまう。

 赤いのを頬張ることを止められない。

 

 ……美味しイ

 

 無意識に緑の後ろに手を伸ばして、顔に押し付けるように強く引き込む。

 

 お、いしイ、オイしイ……‥…。

 

 

  

 

 

 

 デモ、ソレいジョウに

 

 

 

 

 

 

 「タノシイ♡」

 

 

 

 

 

 とっくに上がっていた口角から手を外す。

 

 

 周りを見れば、ジリジリと迫ってきていた緑の壁が、止まっている。

 肌越しにもありありと伝わる感情の波。…─恐怖だ。この荒地には色濃い恐怖が渦巻いている。

 

 

 そしてそれが今、ひどく心地良い

 

 

 ギロリ、と視線をばら撒けば、ビクッと面白いくらいに跳ね上がる緑色。

 …イイな…思わず笑みが溢れる。それに……今なら何となくどの方向に、どれだけいるかもわかる。

 1番数が多いのは…‥………。

 

 

 興奮の赴くまま、大口を構えて飛び込む──

 

 

 

 

「“グギィヤアアーー“!!!!!!!!!」

 

「「「「「「「「“ギィアアアーー“!!!!!!」」」」」」」

 

 

 

 

 ──いっせいに緑の壁が動き出した。

 

 

 「ギャギャギャギャギャ!!!」

 

 

 どの緑色も大声で叫びながら突貫してくる。

 ……ちょっとびっくりした…が、すぐに口角が上がってくる。

 

 

 向こうから壊されにきてくれるなんて、…最高だ。

 

 

 腕を振り回して、空に赤い絵を絵を描く。

 赤い噴水を噴き出しながら、緑色が吹き飛んでいく。

 

 

 さっきから何度も繰り返し見た光景。

 オレが腕を振い、緑が潰れ、赤が飛び散る。

 

 また芳醇な香りを味わえるのかと頬を緩ませ──

 

 

 その時、腕の軌道を潜り抜けて、一つの緑色が腰にしがみついてきた。

 

 

 

「──ア?ハナレロ」

 

 

 

 頭を握り潰す。だらん、と弛緩した体を引き剥がし、緑がいる方へ放り投げる。

 何だったんだ、あれ。

 一瞬首をかしげたが、すぐにどうでも良くなった。腕に力を込め、周囲を薙ぎ払う。

 

 

 ──トン、と軽い衝撃。下を向けばまた緑色がしがみついている。

  

 

 「…ナンダ?」

 

 

 ──まただ。武器も持たず、その身一つで突進してきたそれを、吹き飛ばす。

 

 その一瞬を狙って、今度は複数で飛びついてくる。

 

 

 「…!オイッ!ハ、ナ、レ、ロ!!」

 

 

 必死に振り払っても、飛びつかれる数の方が多い。

 足、腰、胴、頭、下から順に纏わりつかれ、動かせなくなっていく。

 

 

 クソ…!!ナんデ、うゴカなイ…!?

 

 肌に細い何かがキツくめり込む感覚。いつの間にか身体中に巻かれた何か、それを複数の緑色が抑えることで、体が強く拘束されているようだ。

 

 …コレは、…ッ!!アの!ロープ!!!そうカ!!あれは、拘束用か!!

 

 慌てて振り解こうにも、頼みの腕はすでに拘束されてしまっている。

 もはや動かせる箇所はどこもない。 

 

 クソッ!!…最悪だ。完全に油断しちまった。クソ!!

 

 しかも今更になって肌を直接触られている不快感が湧いてくる。…クッソ、ガチで最悪じゃねぇか。

 ようやく冷えてきた頭で考える、どうにか、この状況を打破する一手はないか?

 

 

 噛みつき…だめだ頭が動かせねぇ

 

 大声…出して何になる

 

 隙をみて脱出する…無理だ指先まで油断なく拘束されちまった

 

 

 何か…

 

 何か……

 

 何か……‥……

 

 

 

 ふと、体の前面を抑えているゴブリンが、その身を動かし始めた。

 

 …何だこいつら…オレに、何するつもりだ…?

 

 

 ゴブリンが動いたことで開けた視界。その先には

 

 

 

 

 「……石槍?」

 

 

 

 

 

 狙いは─────心臓

 

 

 

 ドッ と冷や汗が溢れる。

 肉体を直接拘束されている不快感すら気にならない。

 こちらに向いた穂先が、意識の全てを奪っているのだから。

 

 

 ゆっくり ゆっくり 槍が迫る

 

 

 ドクドクと心臓が波打って、口腔の隙間からからハァハァと荒い息が漏れる。

 

 

 

 …逃げないと

 

 

  

 グ、と全身に力を入れるも、やはり動かない。ふざけるな。

 拘束から逃れようと身を(よじ)り、隙間をつくろとするも、より強くロープが締め付けられるだけだった。

 

 

「……ふざけるなよ。オレは、鬼だぞ。怪物だ」

 

 

 槍が迫る

 

 

「冗談じゃねぇよゴミどもが…ゆるさねぇぞ。絶対ブッコロしてやる!」

 

 

 

 穂先が胸に触れる

 

 

「ああ!ゆるさねぇ!テメェら如きが!死ね、死ねよ!テメェら全員──」

 

 

 槍が心臓を、貫いた

 

 

 「(──ブッ殺ス)」

 

 

 意識が闇に飲まれた。

 

 

 

 

 

 




投稿するための最低文字数1000文字なんだけど、長くない!?え!?なにこれようやく月一更新とかする方々の気持ちわかったわ。…あれ?じゃあ毎日投稿する人って…?
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