遅くなってしまってすまない。理由はバイト始めたからや。
多分次も遅くなる。
誤字報告感謝。
ドゴンッッッッッ
鬼の巨腕と
一瞬の拮抗の後、この最初の攻撃を制したのは
──オーガであった。
「ッ!!!」
「グゥゥゥォォォオオオ!!!!!」
ズンッっと鬼の拳ごと胴体までめり込んだ剛腕は、それだけでは止まらず、有り余る化け物じみた膂力で鬼を弾き飛ばした。
周囲の木々を巻き込み倒しながら鬼─龍─が打たれたボールのように吹き飛んでいく。
ドォォンッ ドォォンッ ドォンッ ドゴン
何本目かの大木を背にようやく龍の勢いが止まった。
「ガアッハッァ」
とち狂った攻撃力。
胸部の一部ごとへし折れて潰れた片腕を見やり
龍は、オーガを対等の敵ではなく、格上の怪物として認識した。
そして、格上の怪物──オーガは余裕たっぷりに吹き飛ばされた龍の元へゆっくり歩いている。
まるで、今の一撃でもはや勝敗は決したと言わんばかりに。
ピキッ
「…ブッ、殺ス」
ドンッ
重たい物質が地面に落下したような音を奏でながら、龍が弾丸のような速度でオーガに迫る。
それに反応したオーガは余裕たっぷりに腕を引くと、突進してくる龍に負けず劣らずの速度で振り抜く。
ブゥゥン
何の工夫もなくまっすぐに振り抜かれた拳を、空中で身をひねることで回避する。
拳とすれ違うようにオーガに接近した龍は、身を捻った回転の勢いを使って脇腹に爪を突き立てるも──その瞬間、グッとタイミングよくオーガが筋肉へ力を込めて──かすり傷を負わせるだけに終わった。
チッ、硬すぎだろコイツ!てか急に難易度上がりすぎだろ!ゲームならクソゲー確定だわユーザーに謝れ。
内心で散々なことを言いながらも、その実口角が上がるのを止められない。
だって
わかりやすい暴力、わかりやすい一対一…男なら誰でも一度は夢見たシチュエーションっ…!こんなの、こんなの楽しくならない方がイカれてるよなぁ!?
地面に着地した硬直を狙った横薙ぎを、ほぼ伏せるようにさらに低く着地することで回避。
着地姿勢から跳ね上がると同時に、腕を一気に巨大化して、振り抜くッッッ!!!!
「さっキのお返シだァッ!!《
ドッッゴンッッッ
ドォォン ドォォン ドォォォン
オーガに拳が直撃する数瞬前、急激に巨大化した腕から繰り出された想定外の絶大なインパクト、それをまともにくらってしまったオーガは派手に大木をいくつもへし折りながら吹き飛んでいく。
…これで、どんなもんだァ…?
今出せる全力に近しい攻撃が直撃したのだ。いくらアイツが強くても流石にまとまったダメージは入っただろう。
…しかしその思いは、遠くでムクリと立ち上がったオーガの姿を見て、一気に霧散した。
「…………無傷かよ…」
目を伏せたまま、コキッ、コキッっと首を鳴らしているその様は、どこからどう見ても効いていないように見える。
─ピタ
唐突に動きを止めるオーガ、ゆっくりと体全体がこちらを向き──龍の姿を
くるっ…!
そう思った直後、視界が赤い肌で埋まった。
ッッッ!!!
咄嗟に両腕を顔の正面で揃えた時には、凄まじい衝撃が全身に襲いかかってきた。
腕もげるッ!!
くっそッ!!!
あいつ!!あの距離から一瞬でタックルかましやがったッ!!!
正面から来る一直線上の動きは距離感が掴みにくいんだよッ!あの野郎ふざけやがってッ!!
ズズズズズ……!!
咄嗟の判断で相手の攻撃に乗り吹き飛ぶのではなく、正面から耐え忍ぶことを選んでしまったために、オーガの膂力に押されるまま龍は地面を両足で抉りながら後退することになった。
ダラリと龍の砕け散った両腕が垂れると、自然と空いた視界でオーガの姿を探して見渡すも、その姿はどこにも見当たらない。
──…地上じゃ、ない…?
その思考に至った龍がバッと顔を上げる
─逆光で作られた影の中で、遥か上空で蹴りの体制を整えてこちらに狙いを済ませたオーガの姿を捉えた。
「っ!?クソッ!!!」
即座に後ろに跳び退き、直撃をまず回避する。龍は着地するまでの間でも、落下中のオーガを確認する。──落下しきるまで若干時間があるな…。
予定追加だ。オーガの後隙を狩れるようワンテンポ遅らせて突撃するっ!!
オーガの蹴りが地面に炸裂。
ズンッ、と内臓に強く響く衝撃が伝わり、遅れて周囲の土が吹き飛ぶ。
その土の雨の中を龍はつっきり、低い姿勢からアッパーを繰り出すように両手を顎に引き付ける。
オーガは龍を見るやいなや即座に次の攻撃を予測し、龍を、繰り出されたアッパーごと叩き潰すべく弓を引くように拳を高い位置で引き絞る。
両者の距離は瞬き一つする間に埋まっていき──
先に動いたのは龍、まだ距離が残っている場所で腰を捻りながら拳を打ち上げ始める。
次に動いたのはオーガ、龍の動き始めに一瞬戸惑ったものの、先の巨大化を思い出し相殺すべく咄嗟に攻撃を開始する。
相手の拳の中心を見切り、的確に破壊するためにその一瞬一瞬を注視して──龍の掌から撒かれた土に、その目を塞がれた。
「グオォォッ!?」
たまらず目を庇ったオーガの足の下を潜り抜け、背後に回った龍は無防備にさらされた臀部に向けて指を構え──
─御免
ブスッ
「グッッ!?」
巨大化ッ
「ッッッ!?ガァァァァァア!!!!!!!!!!!!」
苦しみ悶えるオーガ。その姿を見ながら、龍は己の所業に罪悪感を感じていた。
そもそもこのやり方は龍にとっても不本意なものだ。できることなら正面から堂々と勝ち切りたかった。
だが、頭の冷静な部分が龍では正面から勝てないということを理解した。
特殊な技も技術も無い似たような戦闘スタイルの両者が戦えば、龍のほぼ上位互換であるオーガの勝ちは必然。そこにまぐれはない。
故に、搦手。勝機はそこにしかないと、龍は本能で理解したのだ。
「悪いな、オーガ…。オレがもっと強かったら、テメェに正面から挑めたのによ。…許せとは言わねぇぜ。それでもオレは死ぬわけにはいかねぇんだ」
グッ、と指に力を込め、さらに巨大化しようとし──
その瞬間、たまらずグリンッとオーガは半回転し、龍の指を根本から引きちぎった。
「おいおい…悪いことは言わねぇよ。その調子じゃ遅かれ早かれ死んじまうぜ?今なら楽に殺してやれる」
こちらを振り返ったオーガの顔は、これまでとは違い顔には珠のような汗が浮かび流れ、その表情は苦渋に満ちている。
挿した指は引き千切れてしまったが、問題無いだろう。
すでに再生している指を横目にそう思う。
問題は、これからどうするかってことだ。
取り残された指は引き抜けず、膨らんだ腹をそのままに地面にポタポタと赤いシミを作るオーガ。
その表情は、今や完全な憤怒に染まっていた。
…再生能力は高くねぇ…。このまま内臓類を攻めれば、行けるか…?
なんとなくそう感じていた時、オーガに変化が訪れる。
「グゥゥゥ……グウッガァァァァァァァァアアアアア」
全力で全身に力を込め始めた。
身体中に血管が浮かび上がり、出血の頻度も上がっている。
何を早まって………。ッ!?これは!?
龍はオーガのオーラ─魔力か、生命力か何か─が急激に高まっているのを感じる。
大地が悲鳴をあげ、空が歪む。
今もなお高まり続ける絶対的な暴威を纏うオーガ。
そしてその体に黒い紋様が浮かび上がった。
「ウガアアアアアアアアアアッッッッッッッ」
禍々しいオーラ、前にしただけで膝を折りたくなる威圧感。
憤怒に染まった相貌、殺意をたぎらせた瞳。膨れていた腹は元に戻り、何らかの手段で指を取り除いたのであろうことが見て取れる。
もはや悪鬼神とも思えるその姿。
その姿に、龍は─
──「……なるほど…ラウンド2と言ったところか」
冷や汗が滝のように流れる体で
かつてないほどの高揚と、体が無意識のうちに下がっているほどの恐怖を感じる。
そんな状況
そんな状況だからこそ
獰猛に笑う
◆
─しんと静まり返った戦場。
耳を澄ませば風が無いのも関わらず、周囲の木々のざわめきが聞こえてくるような静かな場所。
しかし、その静けさに反して、今にもはち切れそうな緊張感が場を覆い尽くしていた。
未だ動かず互いを睨みつけている二体の鬼。
ジワジワと締めつけられるような心臓が、否が応でも高まり続ける緊迫感を体感させる。
オーガは一抹の不安が攻撃を躊躇わせ、その身に纏うオーラを腕部へ集中させるだけにとどまり、
龍は選択を間違えれば死ぬという予感から、一瞬の隙も見逃さないように目の前のことに集中する。
───1分か、はたまた1時間か。
永遠にすら感じられる時間が過ぎたとき、ついに─鬼が痺れを切らした。
バァァァン
弾かれた弾丸のように、3m超えの巨体が飛びかかる。
もはや音すら置き去りにし、先ほどまでとは一線を画するスピードで大砲の如き拳が放たれる。
「ッ!!!」
嫌な予感から咄嗟に身を捩った龍の隣に、圧倒的な体格差によって上から降ってきた拳が突き刺さる。
ズン
ミシ
突き刺さった拳を中心に、大地が円形に凹み、放射状に亀裂がはしる。
「なッ!?」
拳のすぐ側にいた龍は、直撃してないのにも関わらず、その衝撃だけで肉が抉られていた。
その事実に龍が目を剥く中、オーガは上体を戻すと同時に腕を振り上げる。
オーガといえども無理な体勢だったからか、スピードもパワーもあまり乗っていない。
龍は、今度は余裕を持ってオーガの側面に回るように攻撃を回避し、
無防備に晒された脇腹にアッパーをねじ込む。
「かッ、タッ…!?」
龍が突き出した拳は、もはや生き物ではなく分厚いタイヤを殴ったような感覚と共に弾き返される。
オーガは受けた攻撃を意に介さず、すぐさま龍に振り向き体を沈めると、両手を広げ、抱きつくように飛び込んだ。
ズガガガガガガガガ…
ミシミシ
オーガが両手を広げたまま滑っていくと同時に、その何倍もの地面が削れていく。
「アァ…?」
上空に跳ぶことで飛びつきを回避した龍は、オーガの行動に言い表せない気持ち悪さを抱えていた。
あまりにも雑さが目立つ、とても攻撃とは言えない行動。
今さら舐めプじみた行動…?なぜ?もう怒りがおさまって、すでに遊びになってるから…?
だがそんな考えはオーガの発するプレッシャーの前で霧散する。
じゃあなんでだ…?なんであんな杜撰な、触れることしかできない動きを…?そんなのまるで、そう、まるで─
──触れられればそれで十分ってこと…?
─ここでの龍のミスは一つ
先ほど目にした不可解な行動に夢中なってしまったばかりに、
頭が
「──あ」
敵前で気を取られた愚か者に、影が差す
致命的に晒された隙、その隙を、オーガが見逃すはずもなかった。
「やば「グゥアアア‼︎‼︎‼︎‼︎」
咄嗟に動いた龍の右手に、オーガの拳が
ゾワッ
「あ、あああアア!!!!!!」
龍は触れられた時感じた悪寒から、反射的に右手をできる限り巨大化させ、左手でもぎ取った。
ミシッ─バキバキバキッッ
放り投げられた空中でひび割れ、崩れていく右腕。
その光景を目にした龍は、もはや自身でも気付かぬうちに身を引き、さらに大きくバックステップで距離を取った。
「ハッハッハァ、ハァ、ハァ!ハァ!ハァ!…」
龍の全身の穴という穴から、汗が噴き出し、手足がガクガクと笑う。
“怖い怖い怖い怖い怖い怖い…気持ち悪い“
龍は必死に恐怖を抑えようと身を抱きしめる。先ほどの悍ましい気配を忘れるように、思い出さないように、どうせすぐに治るから、と。
「あ、あぁ、そう再生、再生できるんだ。再生。再生。再生…。さい、せ…い…」
これまで通りならすでに半分近く回復しているはず。
しかし、何秒経とうとも未だ再生の兆しは見えてこない。
「な、なんで…」
明らかなミスを犯してしまったこと。そのせいで壊されてしまった右腕。さらに作用しない再生能力。
龍は次々と押し寄せる事態の波についていけず、混乱の最中にあった。
だが不幸なことに、今戦っている敵は、龍に出来事を整理させる時間も、考える時間も与えてはくれない。
オーガは両手にオーラを纏わせたまま一歩一歩、龍の元へ歩みを進めている。
「え、あ、やば…」
不意に、オーガの双眸と視線が合う
「ッ!!…とりあえず今はっ、撤退…!」
龍は事態の整理を一旦放棄し、これ以上の事態が起き、手遅れになる前にと、敵から逃走を開始する。
オーガから顔を背けると、ただひたすらに森の中へ中へ全速力で走る。
小回りは自分に分があるはずと、周囲の木や草を盾にしてジグザグに、乱雑な動きをしながら奥へ、奥へ。
死にたくない。生き延びる。どれだけ無様でも、みっともなくとも、生き延びて、次は、次こそは勝つために。
「ハア、ハア、ハア…なんだ、追撃は、来ないか…?」
オーガが動く気配は──無い。
姿を見失ったか、疲労で諦めたか、はたまた興味を失ったか。どれでもいいが助かったことに変わりない。
「…っし、とりま距離取ってから、どっか落ち着ける場所探すとするか」
バチバチバチバチ
「───え」
電撃が迸るような音、龍はその発生源を見ようとして─
「ในช่วงเวลาของการสูญพันธุ์」
─背後から迫る破壊のエネルギーが、視界を染め上げた
読んでくれてありがとう。まじ感謝。
ほんとは今回でもう1人出すつもりやったのに…。筆が、筆が進まない…。
あと、次回はわりと爽快感ある感じで書く予定。というか書きたい。
こんなんで良ければまた暇な時にでも見てください。
…初バイトで月労働時間ギリギリはやったと思ってる。