問題児が駒王学園に来るそうですよ?―ただし、一人とは言ってない―   作:金谷沙原

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悪魔、はじめました!―友人達は違うようです―

ただ者ではないと思っていたが、一誠の騒動に巻き込まれた人間は予想を遥かに超える存在だった。う

 

魔術使いに神滅具保持者、さらに噂でしか聞いたことのない最強の吸血鬼と謳われる第四真祖。

 

リアスは事情により、彼が吸血鬼でありかつ自分たち悪魔が治める学園に通っていることを、知ってはいたが、まさか伝説の第四真祖とは予想がつかなかった。

 

「あなたが吸血鬼なのは、あなたの担任である、南宮先生から聞いていたけど…。まさか第四真祖とは…」

 

「…まあ、なったのは最近っすから」

 

「『なった』?どういうことかしら?」

 

「あー、そのうちに話します」

 

リアスは追及したい欲求に駆られたが、古城の様子からあまり愉快な話でも無いことを把握し、更に世界最強の吸血鬼である第四真祖の心象が悪くなるのも良くないと判断し追及を止めることにした。

 

「彼も大概だけれど、十六夜くん、でいいかしら?あなたもとんでもないわね。神滅具保持者とは」

 

水を向けられた十六夜は何時もの不敵な笑みを浮かべ、腰を折った。

 

かなり不遜な態度だが、それがしっくり来てしまうのだから不思議だ。

 

「お褒めに預かり光栄だ」

 

「…ちなみに神器の名は?」

 

「さあ?」

 

「さあ、て。ふざけているの?!」

 

柳眉を逆立て怒るリアス。

 

だが、怒るのも当然であろう。

 

神滅具はその名のとおり、神をも滅ぼす力がある。

 

況んや悪魔も、である。

 

そんなものを所持した人間が自身の預かる学園に居り、しかも神器を隠すような真似をしている。

 

怒るなという方が難しい。

 

それを察したのだろう。

 

十六夜は先程までの態度を改め、ることはせず、あくまで不遜な態度は崩さずに言葉を紡ぐ。

 

「別にふざけてる訳じゃない。マジでわからねぇんだよ」

 

疑わしい、という視線を全体から受ける十六夜だったが、そんなことを気にする彼ではない。

 

「神器に詳しい堕天使の総督さまが『正体不明(コードアンノウン)』つったんだ。間違いねーだろ」

 

堕天使の総督、その言葉を聞き、グレモリー眷属達が身体を強ばらせ、突如殺気だつ。

 

一誠は殺気だつことはなかったが、身を強ばらせる。

 

総督、つまり堕天使陣営のトップと関係があるのだ、警戒はし過ぎて悪いことはない。

 

「ああ、言っとくが堕天使とは繋がってねぇぜ。アザゼルは愉快な奴だったけどな。ちょっとしつこかったから、物理的にお帰り頂いた」

 

「お帰り頂いた、て…?」

 

全員が何となく嫌な予感を覚えたが、聴かないわけにもいかなかったので、リアスが訊ねた。

 

十六夜の解答はある意味簡潔かつ明快、不遜な笑みを浮かべながら開いた左手に握った右手を叩き付けた。

 

なんとも予想通りの解答が返ってきたため、全員の共通認識として、『彼はそういうもの』というのが出来上がり、今後もその認識がぶれることがなかったという。

 

「ハア…イッセー、あなたの友人達は考えるのがバカらしく思えるほどの規格外ね。正直手に余るわ」

 

「あー…何かすいません」

 

「まあ、いいわ。…さて、あなたはどれだけ驚かしてくれるのかしら、魔術使いさん?」

 

全員の期待とも諦めとも言い難い視線を向けられた士郎は、表情をひきつらせ気圧されるように後ずさる。

 

「あー、では。お見せした方が早いので…投影、開始」

 

どこからともなく二振りの剣が現れ、最初からそこにあったかのように士郎の両手に握られていた。

 

それを見て、祐斗が驚き目を見開く。

 

「『魔剣創造(ソードバース)』?君は僕と同じ神器を持ってるのかい?あれ?でも魔術使い、て?」

 

祐斗の手にもどこからとくもなく現れた剣が握られていた。

 

しかし、士郎は首を横に振り、握っていた剣を消し、今度は「I am the bone of my sword…」と呟いた。

 

すると、今度は弓と奇妙に捩くれた剣のようなものが現れた。

 

「今度は弓ですか。まるで手品ですわね」

 

「はは、よく言われます」

 

朱乃の言葉に、どこかで同じことを言われた覚えのあるらしい士郎は苦笑いのような笑みを浮かべる。

 

「これは魔術師のなかではあまり珍しくない『投影魔術』といいます。まあ、義父曰く俺の投影は少し特殊らしいですけど」

 

「そういえば、聞き流していたけれど魔術使いっていうのは、所謂魔法使いや魔術師とは何が違うのかしら?」

 

「そうですね…『魔法使い』や『魔術師』は魔法や魔術を極めることを人生の目的にしていますけど、『魔術使い』、まあ、俺と義父くらいですが、はあくまで目的を達するまでの手段程度にしか思っていませんから、その違いから自分たちのことを『魔術使い』と名乗っています」

 

「なるほどね」

 

リアスは納得し、次に本題に入った。

 

「ここからが本題なのだけれど。十六夜くん、衛宮くん、暁くん。あなた達、悪魔に興味はないかしら?」

 

そう、彼女の目的は彼らを眷属に迎え入れる事だった。

 

彼ら3人は異質だ。

 

神滅具保持者に第四真祖、魔術を手段と割り切る魔術使い。

 

一応3人に声をかけはしたが、リアスは断られるのも込みで誘いをかけていた。

 

「断るぜ」

 

「俺も」

 

「吸血鬼の上に悪魔とかシャレにならないんで同じく」

 

案の定、3人は誘いを断った。

 

だが、リアスは断られるのも予想の範囲内だったので、もうひとつの提案をした。

「では、オカルト研究部に所属、ならどうかしら?此方としてもあなた達程の人物を放っておくことはできないのよ」

 

力持つものは争いを呼び寄せる。

 

彼ら悪魔ならば争いに巻き込まれたとしても、自分の身を守ることならば可能だ。

 

それを自分たちの経験から理解した3人は、研究部への参加を承諾した。

 

「さて、あの3人は終わったわ。次にあなたよイッセー」

 

「えっ!?あ、はい!」

 

一誠は3人のことに驚いたり、呆れたりで忙しく、自分のことなどすっかり失念していた。

 

「まずは、悪魔の現状を詳しく説明するわ。悪魔は―」

 

リアスの説明はこういうものだ。

 

悪魔は過去の大戦で多くの純粋な悪魔を失い、勢力を回復させるために下僕を求めた。

 

しかし、悪魔の出産率は低く、しかも冥界を二分する堕天使にも対応が必要なため、時間もない。

 

ならば、外から、人間や他種族から素質のある者を見出だし、下僕に加える、これが転生悪魔である。

 

しかし、下僕だけでは力ある悪魔を増やすことにはならない。

 

だから新しい制度を、転生悪魔でも実力さえあれば地位を、爵位を与えよう、ということになった。

 

そのため、いまでは人間社会に紛れる悪魔も多く、わりと身近な存在になっている。

 

ただし、悪魔を認知できるものは多くはなく、強い欲望や悪魔の手でも借りたい者は悪魔を認知しやすいので、その彼ら彼女らにグレモリー眷属が配っていた魔方陣つきのチラシを渡せば、高い確率で召喚される。

 

そこで、一誠は勢いよく手を上げる。

 

その表情は下心が透けて見えるものだったので、考えていることは1つだろう。

 

「はい、イッセー」

 

「つ、つまり、俺なんかでも爵位が!?」

 

「そうね。勿論、相応の努力と歳月が必要でしょうけど」

 

「うおおおおおおおぉっっ!」

 

部室に一誠の雄叫びが響き渡る。

 

「マジか!俺が!俺がハーレムを作れる!!え、エッチなことをしてもいいんですよね!?」

 

「あなたの下僕にならいいんじゃないかしら」

 

雷にうたれたように、一誠が硬直する。

 

叫んだり、突然黙りこんだりと忙しいことである。

 

表情を見る限りろくなことは考えていないだろう。

 

「また、イヤらしい顔してます…」

 

「まあ、あれがイッセーらしさだからさ?」

 

小猫が変化の少ない表情を迷惑そうなものに変え、小猫を持っていたクッキーで餌付けしていた士郎はフォローとも言えないフォローをする。

 

そして、再び雄叫びを上げる一誠。

 

「悪魔、最高じゃねえか!何これ!何コレッ!?チョーテンション上がってきたぁぁー!今なら秘蔵のエロ本も棄てられ…」

 

また黙り込む一誠。

 

何かを冷静に考えているように周囲には見えた。

 

「いや、あれはダメだ。エロ本はダメだ。俺の宝だ。お袋に見付かるまではやっていける!それとこれとは話が別だ」

 

エロに関しては冷静に判断出来る男、兵藤一誠。

 

さすがは学園内で有名な変態3人組の1人である。

 

「フフ。やっぱり面白いは、この子」

 

「ヤハハ、同意だ。ここまでエロに忠実なバカはそうそう居ないぜ」

 

一誠と一緒にリアスの話を興味深そうに聞いていた十六夜も、彼女の言葉に一緒になって笑う。

 

「あらあら。部長がおっしゃっていた通りですわね。『おバカな弟ができたかも』だなんて」

 

さすがにここまでバカにされて、一誠はその通りだけれど納得いかない、という複雑な表情をしていた。

 

「さて、イッセー。あなたは私の下僕、いいわね?実力があれば爵位を得ることも出来るわ」

 

「はい、リアス先輩!」

 

「違うわ。私のことは『部長』と呼ぶこと」

 

「『お姉さま』はダメですか?」

 

一誠の願望、自分だけの『お姉さま』。その為の提案だった。

 

一誠の提案に、リアスは真剣に迷う素振りを見せたが、最終的に首を横に振った。

 

「その呼び方も素敵だけれど、私は学園を中心に活動しているから、やっぱり『部長』がいいわ。皆もそう呼んでくれているし」

 

「はい!部長!俺に悪魔を教えてください!」

 

その返事にリアスは小悪魔のように微笑み、嬉しそうに一誠の顎を指で撫でる。

 

「フフフ、いい返事ね。いいわ、私があなたを男にしてあげる」

 

なんとも淫靡な響きである。

 

「この部にはそんなサービスがあるのか?」

 

「ありませんわ」

 

「なんなら、有料でも」

 

「いたしません」

 

朱乃と十六夜がそんな会話をしているとは露知らず、一誠はリアスの所作で完全に落ち、しかし、自身の夢を叶えるため新たに悪魔として決意を固めた。

 

「ハーレム王に俺はなる!」

 

かなり不純な動機だが、こうして一誠はオカルト研究部の末席にその名を連ねた。

 

 

―◇―

 

 

「ぬああああぁぁぁー!」

 

深夜、住宅街。

 

普通の人間達が寝静まるころ、悪魔である一誠は自転車で爆走している。

 

理由は簡単、リアスの指示のもと、一誠は魔方陣の描かれたチラシ配りをしていた。

 

片手に周辺の地図が表示された携帯機器を持ち、そのモニターに映る点滅する赤い点の場所に向かう。

 

その場所についたら、チラシをポストに投函し、また別の赤い点に向かう。

 

ちなみにチラシ配りをしているのは一誠だけではなく、体力作りになるからと士郎は走って、十六夜は面白そうという理由で、古城は先輩達がやってるし一応自分もオカルト研究部のしたっぱなんで、というなんとも元運動部らしい理由からだ。

 

ちなみに配るのが一番速いのは十六夜だ。

 

最初はあまりに速いため、ちゃんと配っていないのではないか、と疑われたが、十六夜の常識外の配り方を見て、全員が納得した。

 

一足跳びでその場まで向かうのだ。比喩ではない、訂正もない。

 

それを十数回行うだけだ。

 

十六夜に言わせれば

 

「立ち幅跳びで届く範囲を配るようなもんだ」

 

とのことだが、第三宇宙速度(時速約60,100km)で立ち幅跳びをする人間は十六夜を除いて存在しないので、自分目線で話をするな、というのが、オカルト研究部メンバーの偽らざる気持ちである。

 

話が脱線したが、そういうわけで、一誠はリアスの下僕となった日から連日自転車で深夜の住宅街を走り回っているのだ。

 

ちなみになぜ深夜かというと、ちゃんとした理由がある。

 

深夜は悪魔が最も力を発揮できる時間だ。

 

そして、悪魔は光を嫌う。

 

天使や堕天使が悪魔にとって天敵なのは、彼らが光を扱うからだ。

 

天使や堕天使が主に活動するのは日の出ている時間なので、契約も夜間しか行わない。

 

そうすることで自分達の身を守っているのだ。

 

祐斗や小猫、朱乃も一誠と同じようにこの『下積み』を経て契約をとっている。

 

「早く契約とりてぇな…」

 

そう呟きつつ、一誠は自転車をこぐ。

 

一誠の悪魔生活は始まったばかりだ。

 

「だあああああぁぁぁ!早く女の子に囲まれたいぃぃぃぃ!」

 

 

―◇―

 

 

放課後に一誠、士郎、十六夜、古城が部室に入ると、部室内はカーテンが閉じられ、外の光りを遮り、電灯は消され、かわりに各所に置かれた蝋燭が室内の光源の役割を果たしていた。

 

もともとの研究部室内の雰囲気も相まって、何か得たいの知れない儀式をやろうとしているようにしか見えない。

 

悪魔が利用している部室なので、当然といえば当然なのだが。

 

「今日もチラシ配りか?さすがに飽きてきたんだが」

 

「いいえ、チラシ配りは今日まで。4人ともよく頑張ってくれたわ」

 

十六夜の軽口を否定し、チラシ配りの終わりをつげ、4人を労い笑顔を浮かべるリアス。

 

とびきりの美人の笑顔に一誠は表情が弛みっぱなし、一瞬士郎と古城は見惚れたがすぐに表情を引き締め、十六夜はいつもの笑みを浮かべていた。

 

「それで、一誠には契約をとってきてもらいたいのよ」

 

「マジですか!?やったぁぁ!」

 

小躍りする一誠。

 

「小猫に予約契約が2件入ってしまってね。両方こなすのは難しいのよ。だから、片方、一誠に行ってもらいたいのよ」

 

小躍りしていた一誠の動きが止まった。

 

初の契約で舞い上がっていたが、あくまでヘルプだったのだから、多少気落ちするのも仕方ないだろう。

 

「…お願いします」

 

「では、朱乃」

 

「はい、部長。一誠くんこちらに来てくださいな」

 

一誠は朱乃に手招きされ嬉しそうに表情が弛む。

 

美人に手招きされるだけで元気になるのだから、現金なものである。

 

一誠が手招きされたのは魔方陣の中、中心に立つ朱乃の目の前である。

 

魔方陣内に一誠が立ったのを確認すると、朱乃は小さく呪文のようなものを唱え始め、同時に魔方陣が青白く光り始める。

 

「あ、あの…」

 

「イッセー、静かに。いま、朱乃はあなたの刻印を魔方陣に読み込ませているの」

 

一誠達が立つ魔方陣は『グレモリー』を表すものであり、日本で言うところの家紋にあたる。

 

この魔方陣が契約相手にとって、グレモリー眷属を示す記号になるのである。

 

祐斗たちの身体にも同じ魔方陣が大小各所に書き込まれ、魔力に反応して起動するかたちになっている。

 

大変便利な代物なのだが、転生したばかりの悪魔はまず魔力のコントロールを覚えるため、あえて魔方陣を書き込まないでいる。

 

しかし、今回はその限りではない。

 

「イッセー手のひらを出して」

 

一誠が素直に手のひらを差し出すと、リアスはそこに魔方陣を描いた。

 

描き終えた瞬間、魔方陣が青白い光りを放ちながら浮き出した。

 

「これは、転移用の魔方陣を通って依頼者のもとに瞬間移動するためのものよ。そして、契約が終わるとこの部屋に戻してくれるわ」

 

説明を受け、一誠はへぇ、と感激したように魔方陣を眺める。

 

「朱乃、準備は?」

 

「出来ていますわ、部長」

 

朱乃が魔方陣の中央から身を引き、一誠はリアスに促され、朱乃と入れ替わりに魔方陣の中央に立つ。

 

一誠が中央に立った瞬間、最初よりも一層強く光り始めた。

 

「魔方陣が依頼者に反応しているわ。これから依頼者のもとに飛ぶわ。到着後のマニュアルは大丈夫かしら?」

 

「はい!バッチリです!」

 

「いい返事ね。じゃあ、頑張ってきなさい!」

 

さらに光りが強くなり、一誠は光の強さに耐えられなかったようで目を閉じている。

 

光りがピークに達し、一誠の姿が消え―ることはなかった。

 

光りが完全におさまってからも一誠の姿は健在であり、リアスは額に手を、朱乃は残念そうな表情を浮かべ、木場はため息をついていた。

 

そんな空気が伝わったのか、一誠が目を開く。

 

まったく風景が変わっていないため、一誠も驚きの表情を見せている。

 

「イッセー」

 

「はい」

 

「残念だけどあなたは魔方陣を介して、依頼者のもとにジャンプ出来ないみたいなの」

 

一誠は怪訝そうな表情を浮かべている。

 

「魔方陣を起動するには一定の魔力が必要なのよ。でも、これ自体はそれほど多くの魔力を必要とするものではないの。悪魔なら誰でも、それこそ子供でも可能よ。魔方陣ジャンプは初歩の初歩だから」

 

嫌な予感がしたのか一誠は顔をひきつらせているが、リアスは先を続けた。

 

「イッセー、あなたの魔力が子供以下。いえ、低レベル過ぎて魔方陣が反応しないの。イッセーの魔力が低すぎるのよ」

 

「な、なんじゃそりゃあぁぁぁぁっっっ!」

 

一誠の叫びが室内にこだまする。

 

「…無様」

 

「小猫、それは思っても言ったら可哀想だろ」

 

小さく呟く小猫に十六夜が諫めるように言っているが、顔が半笑いなので説得力は皆無だ。

 

「イッセー、あんまり落ち込むな。俺も魔力の少なさは大概だからさ」

 

士郎は自分も魔力の少なさには悩んでいたため、肩に手を置いてイッセーを励ました。

 

「ですが、困りましたわねぇ。どうしますか、部長」

 

困り顔でリアスに訊ねる朱乃。

 

その問いにリアスはしばし考え込み、答えが出たのかハッキリと一誠に言い渡した。

 

「依頼者がいる以上、待たせるわけにはいかないわ。イッセー」

 

「はい」

 

「前代未聞だけれど、足で直接行ってちょうだい」

 

「足!?」

 

「ええ。チラシ配り同様、自転車で向かいなさい。魔力が低いのだから、仕方ないわ。魔力が足りないなら、他で補いなさい」

 

驚愕する一誠。当然といえば当然かもしれない。魔方陣で喚ばれながら、自転車で現れる悪魔など斬新すぎる。

 

「チャリですか!?チャリでお宅訪問?!そんな悪魔存在するんですか?!」

 

ビシッ。

 

そんな音が聞こえるんじゃないかと思うほど、鋭く一誠を指差す小猫と十六夜。

 

最近、この2人の一誠の扱いの悪さは寒気を覚えるレベルである。

 

あまりに鋭い指さしは一誠の心を深く抉ったようだ。

 

目に見えて落ち込んでいる。

 

「ほら、落ち込んでいる時間はないわよ!行きなさい!契約をとるのが悪魔のお仕事よ!人間を待たせてはダメよ!」

 

一誠を急かすリアス。その顔は真剣そのもので、一誠は諦めて自転車で行く他なかった。

 

「う、うわあぁぁぁん!行ってきますぅぅぅぅ!」

 

一誠は涙を流しながら部室を出ていった。

 

 

―◇―

 

 

「…一誠は行ったわね?」

 

「はい。自転車で、ですけれど」

 

朱乃の言葉に十六夜が吹き出す。

 

「ヤハハ…!イッセー、あいつ最高だな!なかなか居ないぜあんなやつ!」

 

「まあ、自転車で向かう悪魔は初ね」

 

リアスは苦笑いを浮かべる。

 

「さて、祐斗に小猫、朱乃も行ってちょうだい」

 

「「「はい」」」

 

リアスが促し、次々と転移していく。

 

3人は何の問題もなく依頼者の元に転移する。

 

当たり前のことなのだが、一誠の後にこれを見ると安心というかホッとする面々であった。

 

「さて、あなた達にもやってもらうことがあるわ」

 

リアスは3人を見渡し、さきほど一誠に向けたものより真剣、というより険しい表情を向ける。

 

そんな表情を見れば、いつも不遜な態度をとる十六夜も真剣な表情にならざるおえず、3人揃ってリアスの言葉に真剣に耳を傾ける。

 

「今からある場所に向かう。そこで行うことは…殺し合いよ」

 

 

場所を移してここは町外れの廃工場。

 

リアスが部室で語ったのはこうだ。

 

ここ駒王町、グレモリー家の管轄内に『はぐれ悪魔』が複数徒党を組んで侵入し、夜な夜な人間を喰っている。

 

何度か討伐のために悪魔を派遣したが、当初徒党を組んでいるとは予想できず、人員を増やしても返り討ちにあうか、戻ってこないことも多く、手をこまねいているうちにグレモリーの管轄に入ってしまった。

 

そして、それを契機に討伐部隊を組織的に編成し、討伐に向かうという段階である話が持ち上がった。

 

『グレモリーは第四真祖と神滅具保持者、魔術師を囲んでいる』と。

 

どこから情報が漏れたのかは定かでは無かったが、それが知られ悪魔側としてはこれ以上の犠牲は避けたかった。

 

さらに第四真祖といえば世界最強と謡われる吸血鬼である、使わない手はない。神滅具保持者も実力は不明だが、神滅具といえば神を滅ぼせると言われるほどの神器だ。

 

その2つが揃えば簡単とは言えずとも、最小の労力で討伐が可能だろうだからグレモリーの姫君に任せる、というのが悪魔側の言い分だ。

 

グレモリーとしても当人達の身の安全を守るためとはいえ、秘匿していたため、外聞が悪く、彼らがまだ学生の身分であることを中心に撥ね付けたかったが受け入れられなかった。

 

その話をした時、リアスは頭を下げ、断ってもいいと言った。

 

「あなた達は私の眷属じゃないわ。でもあなた達はオカルト研究部の部員よ。私の大切な家族も同然。それを危険に晒すわけにはいかない」

 

故に断っていいと言ったが。

 

3人は受ける、と言った。

 

何故かと、リアスが問うと。

 

士郎は「俺の義父は正義の味方なんだ。俺はその生き方に憧れてる。だから、困ってる人がいたら助けたい。勿論、そこには部長も入りますし、もしかしたらこれから襲われるかもしれない人達もです。だから、俺は行きます」と気負うこともなく言い。

 

十六夜は「そんな楽しそうなこと行かないわけないだろ。…それにグレモリーには母親が世話になってるからな。受けた恩は返さねーとよ」と嘯き。

 

古城は「こんな力でも役に立つなら使わないと。それにここには俺の家族や友達もいるから、関係ねーとはいえないっすよ」と照れくさそうに言った。

 

3人の言葉を聞き、リアスは決断した。

 

当事者の彼らが問題ないと言っているのだ。

 

自分が彼らにとやかく言う権利はない、と。

 

そして、

 

「ここか…スゲー血の臭いだな」

 

「この町での被害はまだ数人だけれど、ここに来るまでに悪魔を含めて数十人の犠牲が出ているわ」

 

血の臭いに敏感な古城が顔をしかめ、リアスが堂々とした態度で古城達の前に立つ。

 

「そういや、2人は暗闇でも大丈夫なんすか?」

 

古城の疑問も当然であろう。

 

悪魔であるリアスや吸血鬼の古城は、暗闇はホームグラウンドのようなものだが、士郎と十六夜はそうはいかない。

 

普通(?)の人間である2人はリアスや古城より夜目がきかないはずなのである。

 

しかし、

 

「平気だ。俺は神器のお陰で全部の身体能力が異常に高いからな、いまだって昼と変わらねーくらいに見えてるぜ?」

 

「俺も大丈夫だ。強化魔術で目を強化してるからさ」

 

「ならいいんすけど」

 

古城はこの2人には常識は当て嵌めない方がいいんだな、と改めて心に刻んだ。

 

「あ、それと古城くんあなたタメ口でもいいわよ。正直似合ってないもの。2人も構わないわよね?」

 

リアスが十六夜達に問うと、2人も同じようなことを思っていたようで、一二もなく了承した。

 

「似合ってないって…一応は努力したんだけどな」

 

「さて、おしゃべりはここまでよ。はぐれ悪魔達を…」

 

リアスが弛んだ空気を引き締めようとした瞬間、それは襲い掛かってきた。

 

士郎と十六夜は直前に気付いたが、位置が悪くリアスの前に出ることが出来なかった。

 

リアスも急なことで反応が間に合わず、身構えるしか出来ない。

 

しかし、

 

ぶしゅっ…

 

嫌悪感を抱く音だった。

 

いつの間にか閉じていたらしい目を開くと、信じられない、いや、信じたくない光景がリアスの目に映っていた。

 

「ガハッ…部長、無事…か?」

 

古城の背中から棘のようなものが生えていた。

 

十六夜と士郎も息を飲む。

 

「ちっ、グレモリーの娘を殺しそこねたか」

 

はぐれ悪魔は古城の体を持ち上げ、さそりのようなその尾を振り、古城を投げ飛ばした。

 

飛ばされた古城は廃工場の壁に叩き付けられ、ベチョッ、と濡れたぼろ雑巾のような音をたてて地面に落ちた。

 

「いやあぁぁ!古城っ!」

 

その光景を見てリアスは悲鳴をあげ、彼に駆け寄ろうとするが、十六夜が止める。

 

驚いて振り返るリアスに、十六夜は首を横に振る。

 

そのままリアスは膝をつきそうになったが、十六夜が支えた。

 

「ふん。グレモリーとはいえ所詮は戦いも知らぬ小娘か。仲間が死んだ程度で悲鳴をあげ、取り乱すとは」

 

「まあ、そう言うな。私達のように討伐隊と殺し合いをしていたものと一緒にするな。気配を殺すのが得意な貴様に直前とはいえ気付いたのはさすがだしな。…とはいえ、無様ではあるがな」

 

古城を殺したさそりのような下半身に人間の男の上半身をつけたような悪魔の後ろから、山羊の頭を持つ悪魔が現れた。

 

さらにぞくぞくとはぐれ悪魔達が集まり、パッと見た限りでは10体以上いた。

 

最大戦力である第四真祖が死に、しかもリーダーであるリアスは恐らく戦闘不能。

 

残るはただの人間がたった2人。

 

はぐれ悪魔側から見れば、ただの餌にしか見えなかった。

 

「十六夜、1分持たせてくれ。…出来るか?」

 

「ハッ、誰に言ってんだよ。『天は俺の上に人を創らず』が座右の銘の逆廻十六夜だぜ?1分もあったら全部もらっちまうぞ?」

 

十六夜の言葉が気に食わなかったのだろう。

 

さそりのはぐれ悪魔が怒りを含む声で猛る。

 

「頭に乗るなよ小僧!ただの餌の分際で!」

 

「ハッ、今からそのエサに叩きのめされる気分はどうだよ、海老野郎?」

 

さすがの煽りスキルである。

 

さそりのはぐれ悪魔は堪忍袋の緒が切れたと言わんばかりの雄叫びをあげ、尾の一撃を叩き込もうとしたが。

 

「しゃらくせぇ!」

 

真正面から拳を叩き付け、鉄よりも固いであろう尾針を叩き壊す。

 

「なっ…?!」

 

「つまんねぇな」

 

驚愕するさそりのはぐれ悪魔の頭上より高く跳び、十六夜は足を振り上げる。

 

両手の鋏を盾代わりに構えるが、十六夜は構わず足を振り下ろす。

 

「死んでろ」

 

振り下ろされた足は信じられない力で鋏を蹴り砕き、頭に直撃する。

 

さそりのはぐれ悪魔は地面にめり込み、それきり動かなくなった。

 

さそりのはぐれ悪魔をまったく寄せ付けず倒した十六夜に、残ったはぐれ悪魔達は気圧されたが、

 

「集団でかかれ!複数なら勝てる筈だっ!」

 

山羊頭の悪魔が号令を出し、半分の悪魔が十六夜に襲いかかった。

 

「残りはグレモリーの小娘を討ち取れ!」

 

号令に従いはぐれ悪魔達はリアスと士郎に襲いかかろうとしたが、途中で足を止めてしまう。

 

士郎から異様な雰囲気を感じ取ったからだ。

 

そして、聞こえてくる呪文。

 

―I am the bone of my sword.

―体は剣で出来ている。

―steel is my body ,and fire is my blood.

―血糊は鉄で、心は硝子。

―I have created over a thousand blades.

―幾度の戦場を越えて不敗。

―Unknown to Death,

―ただの一度も敗走はなく、

―Nor known to Life.

―ただの一度も理解されない。

―Have withstood pain to create many weapons.

―彼の者は常に独り、剣の丘で勝利に酔う。

 

―Yet, those hands will never hold anything.

―故に、生涯に意味はなく。

―So as I pray ,"unlimited blade works " .

―その体は、きっと剣で出来ていた。

 

呪文が完了したとき、周囲の風景が一変した。

 

どこまでも続く荒野、墓標のように立ち並ぶ多種多様な剣。

 

空は赤銅色の夕焼けに見えるが、太陽はなく、空に浮くのは噛み合い回る複数の歯車。

 

あまりの異常現象。

 

はぐれ悪魔達は狼狽し、先程までの統率はなく、その表情には恐怖さえ見える。

 

「へぇ、やるな。風景を、いや、世界を塗り潰してんのか?」

 

「…一発で見破られるとは思わなかったよ」

 

軽口を叩きあっているが、士郎の息は荒い。

 

恐らくこの世界を維持するのにかなりの魔力を消費しているのだろう。

 

突然、先程まで意気消沈していたリアスが、笑いだした。

 

気が触れたのだろうかと敵味方問わず思ったが、そうではなかった。

 

それは勝利を確信した、勝者の笑みだった。

 

「フフフ、アハハハ!士郎、予想以上だわ。これで敵は完全に逃げられない!そうね?」

 

「あ、ああ。だが古城は…」

 

「え?ああ、古城ね。大丈夫よ。彼、生きてるから」

 

士郎どころか十六夜までキョトンとしている。

 

正直2人は何言ってんだこいつ、という極めて普通だが、かなり失礼なことを思っていた。

 

見た限りでは完全に心臓を潰されていた。

 

生きているはずなどない。

 

しかし、

 

「いや、死んでるからな。一応。生き返ってるだけだし、痛いもんは痛いんだよ」

 

制服の胸に穴を開けた古城が現れた。

 

十六夜と士郎が質問しようとするが、リアスが止めた。

 

「聞きたいことはあるでしょうけど、後にして。士郎くん、もう持たないでしょ?」

 

士郎は口をつぐみ、頷く。

 

「長くてあと1分です」

 

「十分だ。一気に終わらせる」

 

あとは任せろとばかりに古城は前に出る。

 

はぐれ悪魔達は既に恐慌状態だった。

 

訳のわからないところに囚われたと思えば、最初に死んだ筈の男が甦る。

 

混乱しない方がおかしい。

 

「さっきの礼をさせてもらうぜ。こっから先は第四真祖の戦争だ!疾く在れ!第五の眷獣!『獅子の黄金(レグルス・アウルム)』!」

 

掛け声とともに金色の獅子があらわれる。

 

金色の獅子は全身が雷で出来ているようで、バチバチと放電現象を起こしている。

 

「やれっ!」

 

「『グオォォオッッ!』」

 

獅子の咆哮とともにその身体から雷撃が放たれ、はぐれ悪魔達に殺到し、突き刺さる。

 

はぐれ悪魔達は一瞬で、焼け焦げ、見るも無惨な状態だ。

 

「ぐ、うぅぅ…」

 

「まだ息のある者がいるようね」

 

リアスがまだ息のあった山羊頭の悪魔に近付きく。

 

山羊頭の悪魔は先程の雷撃で身体が痺れているらしく、身体の各所を痙攣させ、身動きがとれないようだ。

 

「一応、私の力も見せておくわね」

 

そういうなり、翳したその手には山羊頭の悪魔を覆うほどのドス黒い巨大な魔力の球体が現れ、そのまま悪魔を飲み込む。

 

黒球が消えたとき、山羊頭の悪魔の姿はどこにもなく、残ったのは円球状に消え去った地面だけだった。

 

「凄まじいな」

 

「士郎、魔術を解除しても大丈夫よ」

 

「了解」

 

士郎が魔術を解除すると、風景が廃工場に戻った。

 

破壊の痕は最初に十六夜がめり込ませたさそりの悪魔のところだけで、それ以外に目立った損傷見られなかった。

 

「後始末が大変ね。死体をどうにかしないと」

 

「それなら、俺がやっとくから部長はさっきの説明しててくれ。疾く在れ!第三の眷獣!『龍蛇の水銀(アル・メイサ・メルクーリ)』!」

 

現れたのは双頭の龍。

 

なんとなくだが、その表情は2体とも不満そうに見える。

 

古城が指差すとその先にある悪魔の死体を食い散らす―ことはなく、最初から何もなかったかのように消え去った。

 

それはまるで、先程リアスが生み出した黒い魔力が起こした現象に良く似ていた。

 

3人はその光景に驚くが、すぐに役目を思い出したリアスが説明を始めた。

 

「演技?ああ、そういうことか」

 

「十六夜くん、あなた察しが良すぎないかしら?」

 

「悪いよかいいだろ?」

 

十六夜の言は確かにその通りなのだが、いつもの不遜な態度のせいで、素直に認められないリアスだった。

 

「どういうことさ?」

 

「ああ。つまり、奴等を逃がさないための演技だよ。仲間が死んで、リーダーであろう部長様が取り乱してりゃ、後は簡単だろ?ただの人間2人なんだからよ」

 

「なるほどな。そんな簡単な状態なら油断して、全員現れる。逃げるわけもない、か」

 

「そういうことよ」

 

種明かしをされた2人だが、それでも腑に落ちないことがあった。

 

「でも、古城は間違いなく死んでいたぞ」

 

「それは俺も引っ掛かった。まさか、幾ら不老不死の吸血鬼でもあそこから復活は無理だろ」

 

古城のことだ。

 

幾ら不老不死の吸血鬼であっても心臓を潰されていた―厳密にいえば杭ではなかったが似たようなものにやられたのだ、どうあっても生きているはずがない。

 

なのに生きていた。

 

だからこその疑問なのだが。

 

「ところが不死身なんだよ、これが」

 

片付けを終えた古城が歩いてくる。

 

制服の胸にあく穴は健在で、確かに貫かれたのは間違いないように見えるが、その周囲に血痕は見受けられない。

 

「…冗談だろ?」

 

「残念ながらマジだ」

 

士郎が聞くが、古城の顔は真剣だ。

 

「マジか…」

 

「私も信じられなかったけど、結果がこうだからね」

 

流石の十六夜も死んでから甦ってくる吸血鬼には驚きを禁じ得ないようだ。

 

「真祖は普通の吸血鬼なんか目じゃないくらいの再生能力があるからな。お陰で心臓を穿たれても復活できるぜ」

 

「…お前も相当なビックリ吸血鬼だな。ビックリに関しちゃ士郎もそうだがよ。ありゃなんだ?魔術師は誰でもあんな真似ができるもんなのか?」

 

「たしかに。人間の使う魔術や魔法はあまり詳しくないけれど、あれはどう考えても普通じゃないわ。神器や然るべき儀式なんかを行えば可能でしょうけど、魔力のみであの空間を作ることは難しいと思うわ」

 

十六夜の疑問やリアスの指摘はもっともだろう。

 

世界を塗り潰し、通常の空間から切り離し、自らの支配下に置くなど普通の魔術や魔法ではありえない。

 

「あれは『固有結界』と言います」

 

「「「固有結界?」」」

 

聞いたことのない名前にリアス達は首を傾げる。

 

「はい。使い手の心象風景を形にして、現実に侵食し、展開したものです。そうすることで結界内の世界法則を独自のものに書き換えることができます」

 

「それはまた、ずいぶん反則的な魔術ね」

 

「その分世界からの修正を受けますから、消費する魔力は桁違いですけどね」

 

士郎の言う通り魔力の消費は尋常ではないのだろう。

 

その証拠に彼は未だに立ち上がることすらままならないようなのだから。

 

「さて、お仕事終了か?」

 

「ええ、終了よ。古城は士郎に肩を貸してあげて。部室に帰りましょう」

 

「いや、まだだな」

 

「えっ?」

 

リアス達が帰還ムードに入っていると、十六夜が待ったをかけた。

 

もしやまだ敵が?とリアス達は身構えるが、良く見ると十六夜の顔は笑みを浮かべている。

 

ニヤニヤとした、かなり人の悪そうな笑みを。

 

「なあ、部長。取り乱したのは演技、つったよな?」

 

「え、ええ、そうよ。それが?」

 

十六夜の質問にリアスは素早く答えたが、心なしか、目が泳いで見えた。

 

それを見てとった十六夜は一層ニヤニヤとしあ笑みを深める。

 

完全にいじめッ子の表情である。

 

「そうかー?俺には本気で取り乱してるように見えたんだけどなー?」

 

ニヤニヤ

 

「そ、そんなわけないでしょう!変な言い掛かりはやめてちょうだい!」

 

「何ムキになってんだよ。ムキになるほどのことか?」

 

「む、グググ…」

 

リアスは既に涙目である。

 

「ヤハハ、冗談だよ。さっさと帰ろうぜ部長様」

 

「そ、そうね。帰り…」

 

「さっきの取り乱しようは傑作だったな、ヤハハ」

 

「消し飛びなさいっ!」

 

リアスの飛ばした魔力の玉を十六夜は避けて逃げる。

 

逃げる十六夜を翼を広げ追い掛けるリアス。

 

そんな2人を見て、士郎と古城は顔を見合わせ苦笑いし、ゆっくりと2人を追い掛けた。

 

十六夜のケタケタと笑う声が周囲に響いていた。

 

「ヤハハ、あたんねーぜ部長様!」

 

「待ちなさい!」

 

2人の追いかけっこはまだ続きそうだ。

 

 

―◇―

 

 

「…」

 

昨日の事件から日付が変わって、再びオカルト研究部部室。

 

現在部室内は異様な静けさに包まれていた。

 

一誠は研究部部長、リアス・グレモリーの前にデスクを挟んで立っており、他のメンバーは話の聞こえる位置に立っている。十六夜のみ近くのデスクに腰を下ろしているが。

 

研究部の一番入り口から遠く、窓を背にして置かれた部長用デスクに座るリアスの表情は険しく、ともすれば怒りを堪えているように見える。

 

元々端整な顔付き故、その表情は常人より大きなプレッシャーを一誠に与えている。

 

「イッセー」

 

「は、はいっ!」

 

そんな状況で名前を呼ばれ、どもってしまった一誠を責められる者はいまい。

 

言葉を続けるリアス。

 

「あなたには小猫の代わりに契約に行ってもらったはずよね?何故こんなにも遅くなったのかしら?」

 

「そ、それはそのい、依頼者とバトルごっこをしていたからです!」

 

「クフッ…!?バトルごっこって、高2になってバトルごっこ…く、くくく…」

 

一誠の解答に吹き出す十六夜。

 

この空気のなかそんなことができる十六夜はやはり根っからの問題児なのだろう。

 

さすがに声を潜める程度の良識はあるようだが。

 

「バトルごっこ?」

 

「その、バトルごっこはす、好きなキャラを演じて、戦う真似をする遊びです!」

 

「そう。それで?契約はどうしたのかしら?」

 

「そ、その…は、破談になりました!すいません!高校生にもなってこんな…!」

 

「え?…ああ、別に怒っている訳じゃないわ」

 

頭を下げる一誠にそんな言葉がかけられる。

 

キョトンとし顔をあげる一誠に、リアスは苦笑いをする。

 

「とりあえずこれを見て」

 

リアスが一誠に見せたのは、彼が自転車で配っていたチラシと同じもの、その裏面である。

 

そこにはアンケートがあり、一誠の今回の依頼者、森沢からのアンケートへの回答が寄せられていた。

 

『とても楽しかったです。また、イッセーくんに来てもらいたいです。今度は良い契約を結びたいと思います』

 

契約は破談になってしまったが、その評価は高いと言えるだろう。

 

「怒っているように見えていたら、ごめんなさいね。契約を結べなかったのに評価が高いものだったから、ちょっと戸惑ってしまったのよ」

 

森沢からの回答を見る一誠は少し涙ぐんでいるが、その表情は明るいものだった。

 

「悪魔に大切なのは確実な契約。契約は出来ていないけれど依頼者は喜んでいる。前代未聞ね。ふふふ、でも面白いわ。あなたは前代未聞づくめだけれど、その分意外性はナンバーワンね。けれど基本は契約して、願いを叶え、代価を貰うよ。これだけは守ってね?」

 

「はいっ!男兵藤一誠、頑張ります!」

 

気合いをいれる一誠の目には炎が宿っているように見えた。

 

 

―◇―

 

 

「…」

 

明くる日。

 

オカルト研究部の部室にはまたなんとも言えない空気が漂っていた。

 

オカルト研究部全員に同じ魔方陣の描かれたチラシが手渡され、一様に裏面のアンケートの回答欄を見詰めていた。

 

回答欄には、

 

『魔法のパワーをもらえなかったけどとても楽しかったにょ。悪魔さんにはまた会いたいにょ』

 

と、無駄に達筆で無駄に漢らしい字であまりに不似合いな語尾がつけられた、賛辞の回答が寄せられていた。

 

この人物がどんな人間なのかとても気になった研究部の面々であった。

 

 

 

「ハア…今回もダメだったか…」

 

学校から帰宅する一誠の纏う空気は重い。

 

二回連続の契約破談、しかし、高い評価を得る、という前代未聞のことを起こしたためだ。

 

「俺の出世街道は前途多難だ…」

 

「ふにっ…!」

 

「ん?」

 

背後から気の抜けるような声が聞こえたため、一誠が振り返ると、シスターの服を着た女性が両手を広げて頭から路面にダイブしていた。

 

現実でなければギャグか何かにしか見えない。

 

さすがにそのまま放置するのも可哀想だと考えた一誠は彼女に近付き、手を貸してやる。

 

「だ、大丈夫ッスか…?」

 

「あ、ありがとうございます。何でこんなところで転んでしまうんでしょう…?」

 

立ち上がれるように手を引く。

 

少し強い風が吹き付け、彼女のヴェールを飛ばす。

 

ヴェールの下に隠されていた顔を見て、一誠はその顔に釘付けになった。

 

絹糸のような細く、流れるような金髪に、少し幼く見えるが、整った顔立ち、今は困ったように目尻が下がっている大きな眼。

全てが一誠の好み(金髪ver.) の美少女であった。

 

「あ、あの。どうかしましたか?」

 

「あ、いや?!何でもないよ!?あ、そうだ、これ!」

 

さすがに見惚れていた、とは言えず、一誠は近くに落ちていたヴェールを拾い、誤魔化すためにシスターに渡す。

 

「あ、ありがとうございます。それにしても助かりました。私、日本語をあまりうまく話せないので、道に迷って困っていたんです。あなたのような方に出会えて助かりました」

 

「あ、そうだったんだ?この町には旅行に?」

 

「いいえ。赴任先の教会がこの町にあるんです。これからよろしくお願いしますね」

 

あまり博学ではないはずの一誠が、何故日本語が不自由な彼女と会話できたのかというと、ひとえに悪魔になったお陰であると言える。

 

『音声言語』に限り、一誠は何ヵ国語でも聞き取り、話すことができる。

 

「教会か…心当たりならあるかな…」

 

―でも、あそこ使われてたか?

 

ふと一誠は疑問に感じたが、すぐに考えるのを止めた。

 

「本当ですか?ああ、ありがとうございます!これも主のお導きのお陰ですね!」

 

一誠の言葉にシスターは喜びの表情を浮かべ、神へ祈りを捧げるが、一誠としては出来ればやめて欲しかった。

 

神は悪魔の敵なので、近くで祈りを捧げられると軽度ではあるが頭痛に襲われるのだ。

 

しかし、見知らぬ地、しかも言葉も通じぬ地で1人どれほど心細かったか、と思うと、祈りを捧げるのをやめてくれ、とは言えない一誠であった。

 

 

 

一誠が彼女を案内していると、公園の前に差し掛かった。

 

すると突然、シスターは公園の中へ入っていってしまう。

 

「どうしたんだ?」

 

彼女が向かう先に、小学校に上がる前くらいの男の子とその母親とおぼしき女性がしゃがみこんでいた。

 

男の子は地面に座り込み、片膝を押さえながら泣いていた。

 

転んで膝を擦りむいてしまったらしい。

 

シスターは男の子の前でしゃがみ、その怪我をした膝に手を翳した。

 

何をするのかと一誠が見守るなか、彼女の手から緑の光が溢れ、男の子の傷を癒し始める。

 

―あれは、もしかして『神器』か?たぶんそうだ…何か左腕が疼くし…

 

一誠がそんなことを考えているうちに、男の子の治療は終わっていた。

 

「男の子がすぐ泣いてはいけませんよ?」

 

「うん!ありがとうお姉ちゃん!」

 

彼女が男の子の頭を撫でてあげると、彼は笑顔を浮かべて嬉しそうに頷く。

 

しかし、男の子の母親は現実離れした光景についていけなかったようで、男の子の手を取ると、一応お礼のつもりかシスターに会釈はしたが、そそくさと立ち去ってしまった。

 

男の子はこちらが見えなくなるまで手を振っていた。

 

「…あれは?」

 

何となく察しはついている一誠だったが、訊ねずにはいられなかった。

 

しかし、シスターの回答はなんとも曖昧なものだった。

 

「驚かれましたよね?…この力は神様からいただいた素敵なものなんです」

 

神、しかも恐らく聖書の神から貰った異能。

 

『素敵なもの』というわりに、シスターの表情は少し影がさして見える。

 

―「俺も似たようなもの持ってる」とは言いづらい空気だな…異質なものだし、苦労してんだろうな…十六夜とは大違いだな…

 

同じように神器を身に宿すが、それ関係の悩みを全く感じない友人を思いだし、苦笑いする一誠。

 

幸いその表情はシスターには見えなかったようで、追求されることはなかった。

 

そこから会話が途切れ、2人は黙々と足を教会に向ける。

 

公園から歩くこと数分、教会が見え始めていた。

 

そして、教会に近づくにつれて一誠の様子が、おかしくなってきていた。

 

遠目にはわからないが、間近まで近づけば、彼の顔色が悪くなっているのと、冷や汗をかいているのがわかっただろう。

 

しかし、そんなことはおくびにも出さず、さらに教会に近づく。

 

「あ、ここです!良かったぁ」

 

シスターは持っていた地図の描かれたメモと、照らし合わせながら安堵の息を吐く。

 

―合ってたかー良かった。でも、早々に立ち去らないとな。俺悪魔だし。シスターと別れるのは辛いけど…仕方無いよな

 

一誠も合っていたことにホッと息をつき、シスターとの別れは名残惜しかったが、長居するわけにもいかず立ち去ろうとする。

 

「じゃあ、俺はこれで」

 

「待って下さい!何かお礼を!」

 

「いや、俺急いでるもんで」

 

「でも…」

 

困った表情を浮かべるシスター。

 

弱ってしまった一誠は無理矢理だが誤魔化すことにした。

 

「俺、兵藤一誠。周りからはイッセーって呼ばれてるから、イッセーでいいよ。シスターの名前は?」

 

「アーシア・アルジェントです!アーシアと読んでください!」

 

「じゃあ、シスターアーシア。また会えたらね」

 

「はいっ!必ずまたお会いしましょう!」

 

頭を深く下げるアーシアに、一誠も手を振って答える。

 

一誠が見えなくなるまでアーシアは彼を見守っていた。

 

 

―◇―

 

 

「教会に近付いてはダメ。二度とね」

 

念を押すように言い含めるリアスの表情は険しい。

 

教会にシスター、アーシアを送り届けた夜、部室にてその行動が問題になっていた。

 

悪魔と天使は敵同士だ。

 

一誠の100%善意からのこととはいえ、悪魔が教会関係者に近付き、あまつさえ教会の近くまできたことは小さくはない問題だ。

 

「今回は大丈夫だったけれど、次からは気を付けて。教会関係者の中には私たちの仇敵『悪魔祓い(エクソシスト)』がいるからね」

 

「『悪魔祓い』は教会における戦士だよ。悪魔と闘い、狩ることを目的にしてるんだ」

 

一誠が要領を得ないような表情をしていたため、裕斗が説明を付け足す。

 

一誠の得心のいったような表情を確認して、リアスは先を続ける。

 

「悪魔祓いは神の祝福を受けているわ。その力は私達悪魔を滅ぼすほど。更に神器保持者なら死と隣り合わせのようなものよ」

 

だから気を付けなさい、そう締め括りリアスの一誠へのお叱りは終わった。

 

「お叱りは終わりましたか?」

 

「ええ。何かあった?」

 

「大公から討伐の依頼ですわ」

 

 

―◇―

 

 

大公からの依頼は以前と同じ、はぐれ悪魔の討伐だ。

 

すこし、以前と違うのは、

 

「あのときの生き残りがいたとはね。さっさと片付けましょうか」

 

 

 

リアス達が以前はぐれ悪魔達を討伐した町外れの廃工場。

 

残党はまたここで人を喰っている。

 

同じ場所で同じことをしていれば、以前より早く捕捉されるのは当然であろう。

 

成長の見られない彼らの脳は鳥と同じなのだろうか。

 

先日の討伐に参加した4人はそのようなことを考えていた。

 

「敵ははぐれ悪魔バイザー他2体よ。先日の討伐の際はあの場を離れていて、討ち洩らしていたようね。強い敵ではないけれど、油断は禁物よ!」

 

リアスの檄に全員が真剣(十六夜は除く)な表情で頷く。

 

更に廃工場へと近づくと、小猫と古城が顔をしかめ、服の袖で鼻を押さえる。

 

「…血の臭いが強くなってきました」

 

先日の戦闘による破壊も生々しい地点まで来ると、一行に強い害意、敵意や殺意、が向けられた。

 

そのようなものに慣れていない一誠は縮み上がり、顔を強張らせる。

 

暗がりから現れたはぐれ悪魔はリアス達が聞いていた通り3体。

 

先頭に立つ悪魔の特徴、女性の上半身に4足の下半身、独立して動く蛇頭の尾がリアス達が聞いていたバイザーの特徴と一致した。

 

「さて、相手も現れたようだし、一誠には悪魔としての戦いを経験してもらうわ」

 

「マ、マジっすか!?お、俺、戦力にならないと思いますよ!」

 

十六夜が「ヘタレめ」などと口許を歪めながら言っているが、元一般人に戦闘の心得などないので、勘弁してくれ!というのが一誠の偽らざる気持ちである。

 

リアスはそれを心得ているのか、

 

「そうね。それはまだ無理ね」

 

と言ったが、あっさりそれを認められるのも哀しい一誠だった。

 

「はぐれ悪魔バイザー!あなたを滅ぼしに来たわ!」

 

「現れたなグレモリーの姫。仲間達の怨み晴らさせてもらおう!」

 

3体の悪魔がリアス達に向かう。

 

十六夜、士郎、古城の3人が飛び出そうとしたが、リアスに止められる。

 

3人が訝しげにリアスを見る。

 

「ここは私の眷属達に任せてもらうわ。彼らも強いから安心して」

 

リアスの表情は自信に満ち溢れていたため、その言葉を信じ、3人は構えを解いた。

 

変わって朱乃、小猫、裕斗がそれぞれ戦闘を開始する。

 

「4人とも聞いて。以前悪魔の歴史とある程度の現況、下僕を集めていることは話したわね?」

 

リアスの質問に4人は頷く。

 

よろしい、という風にリアスは一つ頷くと、言葉を続ける。

 

「人間を悪魔に転生させる際、主人である悪魔は『悪魔の駒(イーヴィルピース)』を使って、眷属達に力を与えるの」

 

「悪魔の駒?」

 

士郎が訊ねると、リアスは懐から小さな物体を取り出した。

 

それは一見チェスのルークの駒のように見えたが、色が通常の黒や白ではなく赤い色をしていた。

 

「これが悪魔の駒。見ての通り人間が遊ぶチェスからきているわ。転生悪魔のほとんどが人間という皮肉も込めてね」

 

「ふーん。なるほどな。小猫のあの馬鹿力とか、悪魔にしたって速すぎる木場のあのスピードなんかもそいつの恩恵か」

 

十六夜の視線の先には、はぐれ悪魔の周囲を縦横無尽に駆け回る木場の姿と、両腕でバイザーの足を掴み持ち上げている小猫の姿があった。

 

「小猫が戦車(ルーク)、木場が騎士(ナイト)つっても馬上の騎士のほうか。…ちなみに副部長様の『あれ』も駒の恩恵つーか影響か?確かに女王(クィーン)だけどよ?大分意味合いがかわってるぜ?」

 

小猫、裕斗と視線を移し、最後に見た朱乃の姿に十六夜は愉快そうに口元を歪める。

 

十六夜の視線をたどり、一誠達が見たのは、

 

「うふふ。これはどうですか?」

 

「「「ギャアァァァア……ッ!!」」」

 

「まだまだいきますわよ?」

 

「「「グワァァァア……ッ!!」」」

 

裕斗と小猫が朱乃の目の前に誘導し、朱乃の放つ雷撃に身を焦がされ、苦悶の叫び声をあげるバイザー達とその様子をものすごく良い笑顔で眺め、さらに雷撃を放つ朱乃の姿だった。

 

しかも、うっすら頬を赤く染めている辺りガチである。

 

一誠、士郎、古城は表情をひきつらせ、本当に駒の影響なのか確認のため、一斉にリアスを見る。

 

「いいえ。確かに朱乃は最強の駒、女王だけれど駒の影響じゃないわ。朱乃は『究極のドS』なのよ」

 

リアスの返答に駒の影響ではないと喜ぶべきか、もともとの性格なのを嘆くべきかなんとも複雑な心境の3人だった。

 

十六夜は自分には関係ないとばかりにけらけらと笑っている。

 

「大丈夫よ。仲間にはとても優しいから」

 

と、リアスはフォローするが今の朱乃を見ると説得力にかけるのは否めなかった。

 

「部長。お願いしますわ」

 

「わかったわ」

 

リアス達の会話が途切れるのを見計らっていたのか、ちょうどよいタイミングで朱乃がリアスに声をかける。

 

息もたえだえ、まさに虫の息のバイザーの前へリアスは歩く。

 

「何か言いたいことは?」

 

「殺せ…」

 

「そう。なら消し飛びなさい」

 

そう告げるリアスの表情は冷たく、躊躇いもなくバイザーに手を翳す。

 

黒い魔力球が形成され、バイザーを飲み込む。

 

魔力球が消え去ったその場には、バイザーがいた痕跡も地面も魔力球が接していた部分は全て消滅していた。

 

 

 

 

少し離れた場所にいた一誠達はその様子を見守っていた。

 

「あれがどうなってるかわかったか?」

 

「わかんねーよ。ただ、あれが全部消したのはわかった」

 

十六夜の問いに答えた一誠だったが、その表情は魔力球が起こした効果を理解し、ひきつっていた。

 

「滅びの魔力なんだとさ。グレモリー家じゃなく、母方のバアル家からの遺伝なんだとさ」

 

「滅びの魔力…」

 

一誠は小さく呟く。

 

「さて、終わったわ。帰るわよ!」

 

リアスの号令で眷属達は翼を広げ、人間擬きの3人は歩いて帰ろうとする。

 

「あ、あの部長!」

 

「ん?なにかしら、一誠?」

 

「あの、木場達の駒はわかったんですけど、俺の駒って…」

 

慌ててリアスを呼び止める。

 

何となく察しはついているような表情を浮かべる一誠だったが、もしかしたら違う可能性も…という希望が見え隠れする眼をしている。

 

「一誠の駒はポーン、『兵士』よ」

 

「そ、そうっすか…」

 

リアスの非情な回答に一誠は肩を落とした。

 

―俺の出世街道は茨道、か…




次回予告

天上天下唯我独尊。座右の銘は『天は俺の上に人を創らず』『強きを挫き、弱きも挫く』ある意味魔王以上に魔王が似合う逆廻十六夜!

感動することを探して悪魔の世界へ!

第三話『素敵ネームなアイツに会う』

「あれ?魔王て素敵に完全無欠にゲスイ奴じゃねーの?倒したら誰彼構わず感謝される類いの」

「違うわよ…」

やっと更新できた(´・ω・`)

今回は前回より4000文字くらい多いです

随時ご意見ご感想、ご要望もお待ちしてますので、どしどしお寄せください!
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