問題児が駒王学園に来るそうですよ?―ただし、一人とは言ってない―   作:金谷沙原

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かなり空いてしまいました…本当に申し訳ありません!次回更新は早く出来たらいいなぁ(願望)

では、本編をどうぞ!


友達、救います!ー友人達も手伝ってくれるようですー

パンッ

 

オカルト研究部の部室に頬を叩く音が盛大に響いた。

 

リアスが平手で一誠の頬を叩いたのだ。そして言葉を続ける。

 

「何度でも言うわ、認められない。あなたの気持ちはわかるけれど、彼ら堕天使との戦いになれば、それは私達だけの問題では収まらない。悪魔と堕天使の、ひいては天使を含めた三勢力三つ巴の総力戦に発展することにもなりかねないの。わかってちょうだい」

 

リアスの言葉はもっともだ。今この場には世界最強の吸血鬼に、自らの世界を現実に割り込ませる魔術使い、堕天使の総統を退けられる神滅具保持者が揃っている。

 

堕天使の一派ごときに負ける戦力ではないが、ことはそう単純ではない。

 

一誠もそれは分かっていた。

 

しかし、それでもアーシアを助けたかったのだ。

 

だから、願い出た。

 

「わかりました。なら、俺を眷属から外してください」

 

部室内の空気が凍った。

 

グレモリー眷属から外れる、それが何を意味するか分からないほど一誠も馬鹿ではない。

 

そして、一誠が何を意図してその言葉を使ったのか、この場の全員が理解していた。

 

「先輩、はぐれになるつもりっすか?はぐれになればオカ研にも悪魔陣営にも迷惑がかからないから?」

 

「…ああ」

 

全員の心情を代弁した古城の問いに、一誠は頷いた。

 

はぐれ悪魔ならば誰にも迷惑がかからない。

 

一誠の決意に全員が息を飲むが、そんなこと、眷属への情愛が深いリアスが許容するはずがなかった。

 

「ダメよ。絶対にダメ」

 

「…」

 

「…」

 

二人は無言で睨み合う。

 

そこへ割り込むように声が発せられた。

 

「部長、少しお話が」

 

「朱乃、後にしてくれるかしら?今は取り込み中なのよ」

 

朱乃の方を見ないままリアスは不機嫌に返事をする。

 

「ええ、ですがこちらも急ぎなんです」

 

「?」

 

いつになく強引な朱乃にリアスは不審げに眉根を寄せる。

 

話を聞くため、少し待つよう一誠に目で合図し、朱乃に耳を寄せる。

 

「それは本当…?」

 

「はい」

 

リアスは最初小さく頷くだけだったが、最後に念を押すように朱乃に確認していた。

 

すると、部員全員を見回してから、掛けていた上着を朱乃から受け取り、リアスは出掛ける仕度を始めた。

 

「今から私と朱乃は出掛けるわ」

 

「部長!まだ、話が…!」

 

一誠はそうはさせまいとリアスを引き止める。

 

「一誠、あなたは兵士を、ポーンの駒を弱いと思っているかも知れないけれど、それは違うわ。ポーンでもクィーンは取れるのよ」

 

「今はそんな話関係…」

 

ない、と言い切る前にリアスは人差し指を一誠の口元へあて、言葉を遮る。

 

「聞いて、大事なことだから。チェスでは敵陣に入ったポーンはナイト、ルーク、ビショップ、そしてクィーンになることが出来るわ。悪魔の駒のポーンも同じように、他の駒になることが出来るの。キング、つまり私が敵陣だと認識した場所に入ることで『プロモーション』、他の駒になることが出来るわ。覚えていなさい」

 

「…」

 

「それともう一つ。神器は想いの力に反応するわ。想いは人間も悪魔も変わらない、強い想いに神器は応えるのよ」

 

それだけ言い残し、リアスは朱乃を伴い部室を後にした。

 

 

リアスが去った部室には気まずい空気が降りていた。

 

少しして、一誠が部室の出口に向かって歩きだしたため、祐斗がその腕を掴み、行かせまいと引き止める。

 

「…離せよ」

 

かなり頭にきているのだろう。声を荒らげない程度には思考が働いているようだが、リアスの真意を読み解くことは出来なかったようだ。

 

「止めはしないよ。そのかわり僕もついていく」

 

「な!?それは…」

 

「問題がある?」

 

一誠が頷くと、呆れたと言わんばかりに全員が首を横に振り、ため息をついた。

 

全員に呆れられ、一誠はたじろぐ。それでもなにを呆れられているのか分からない一誠に、見かねた古城が呆れている理由を教えた。

 

「先輩、マジで気付いてないんすか?部長が言ってたじゃないすか、王である部長が敵陣だと認めた場所に入ることで、『プロモーション』出来るって。つまり、堕天使の教会を敵陣だと認めた、てことじゃないっすか?」

 

「あっ…!」

 

再び全員が盛大にため息をつく。

 

「ま、そんな君だから僕はついていくよ。個人的に教会や神父は嫌いだからね」

 

「俺も行くぜ。拐われちまったのは俺にも責任があるしな」

 

木場は彼らしい爽やかな笑顔を浮かべ、十六夜はいつもの不敵な笑みを浮かべている。

 

「俺も行くっすよ。戦力はいた方が良いっすからね」

 

「自称正義の味方としては、行かないわけにはいかないな」

 

何か思うところがあるのか、いつもより好戦的な古城に、分かりやすい程の悪に義侠心をたぎらせる士郎。

 

「…私も行きます。皆さんだけだと不安なので」

 

「ありがとう小猫ちゃん…!」

 

男性陣には感謝の言葉はなく、小猫だけ感謝された。

 

「あれ、僕らは…?」

 

「あ、もちろん皆にも感謝してるぜ!」

 

取り繕うように言う一誠に、全員が白い目を向けた。

 

 

 

「…何でこうなった…」

 

「…致し方無いといえば致し方無いかな?」

 

「…バカばっか」

 

呆れる悪魔三人の周囲に積み上げられるはぐれ悪魔祓いと堕天使の死体(生きてる)。

 

オカルト研究部が抱える問題児三人が、堕天使やはぐれ悪魔祓い相手に大立回りを演じていた。

 

一人は圧倒的な身体能力をもって敵を第三宇宙速度で殴り、蹴り飛ばし、一人は世界最強の吸血鬼の名に恥じぬ眷獣を操り、天災紛いの事象を巻き起こし、一人は次々と取り出す名のある武器を握り、時には弓にそれをつがえ矢とし、射出する。

 

「おらぁ!」

 

腕の一振りで十数人を殴り飛ばし、

 

「行けっ、双角の深緋(アルナスル・ミニウム)!」

 

緋色の双角獣の突撃が敵集団を蹴散らし、

 

「フンッ!」

 

握る双剣で瞬く間に数人を斬り伏せる。

 

堕天使、神父の集団はあまりの問題児三人の規格外さに圧され、抵抗らしい抵抗も出来ずに蹴散らされている。

 

本気になった三人の進撃に悪魔三人組は着いていけず、後ろから追い掛けるだけになっていた。

 

 

 

アーシア救出メンバー以外に、周囲に動くものが居なくなったため、再び作戦を練り直す面々。

 

「随分広い…外観と違いすぎんな。魔術か神器あたりで広げてんのか?」

 

十六夜の疑問はもっともだった。

 

いくら教会がある程度の広さを確保しているとしても限度がある。

 

かれこれ数十分。

 

十六夜が潜入のセオリーを無視して教会のドアを吹き飛ばしてから、一端の戦闘終結を見るまでに要した時間である。

 

「かもね。折角用意した地図が無駄になっちゃった」

 

祐斗は持ってきていた教会の見取り図を懐に戻す。

 

「クソッ!足止め食らってる今にもアーシアは…!」

 

一誠が悔しげに右拳を開いて左手に打ち付ける。

 

そんな一誠を見もせず、険しい表情で士郎は小猫を見つめる。

 

視線を訝しむ小猫が士郎に声をかける寸前、士郎が口を開いた。

 

「…塔城、頭下げろ」

 

「 え?」

 

訳もわからず士郎の言葉に従い頭を下げた小猫の頭上を、背後から何かが通り過ぎ、小猫の正面にいた十六夜に向かう。

 

十六夜は慌てることなくそれを右手の親指で中指を抑え、弾く、いわゆるデコピンで弾き返した。

 

バキッ、という破砕音と同時に小さな叫び声が問題児三人が生み出した死体(生きry) の山から聞こえた。

 

「ちょっとちょっと!?デコピンで光の弾丸弾き返すとか、マジに人間辞めすぎじゃないですかねぇ?」

 

「テメェ!?フリードッ!」

 

「あらら?悪魔君に名前覚えられてるとかゲロ最悪何ですけど?」

 

死体の山から抜け出してきたのは一誠とは因縁深い相手、フリード・セルゼンであった。

 

「フリード?…ああ、居たなそんな三流野郎。弱すぎて印象薄いんだよなぁ。不意打ちばっかだしなぁ」

 

「ああん?今俺っちのことバカにしましたぁ?悪魔に加担するような人間の屑の分際で?殺しちまいますよ…?」

 

「ハッ、その人間の屑から命からがら逃げてったのは何処のどいつだよ?ああ、白髪頭は伊達じゃねぇのか、ほら老体は家に帰って茶でも啜ってろよ」

 

「…殺す!」

 

狂っていると言っても過言ではないフリードさえも、完全に怒らせることのできる程の煽りスキルを持つのは十六夜くらいであろう。

 

一直線にフリードは十六夜に向かう。

 

しかし、十六夜とフリードの間に割り込む影があった。

 

「邪魔を…!」

 

「君の相手は僕だよ。それに個人的に教会関係者には恨みがあるしね…!」

 

「ど…!ちぃっ!?」

 

「…私もいます」

 

祐斗とつばぜり合いを演じていたフリードは、横合いから殴りかかってきた小猫から逃れるため、祐斗の剣を弾き、距離をとった。

 

「俺もいるぜっ!プロモーション『ルーク』!オラァッ!」

 

「グッ…」

 

パキッ、という何かが壊れるような音を残し、一誠の左ストレートをまともに受けたフリードは殴り飛ばされた。

 

しかし、流石は元教会の戦士。床に着地する瞬間受け身をとり、直ぐ様立ち上がった。

 

その手に先程まで光の剣を発生させていた柄が握られていたが、一誠に殴られる一瞬に盾としていたらしく今は全体に亀裂が入っている。

 

今まで雑魚と認識していた一誠の渾身の一撃を受け、怒りが冷めたのか、フリードは瞬時に一誠達六人を見渡し、最後に一誠に視線を合わせた。

 

一誠に指を突きつけ、

 

「悪魔君、確か、一誠とかって言ったか?俺、君にフォーリンラヴ。次会ったら殺すから」

 

『次』という言葉を口にした。

 

「逃がすと思っているのか?」

 

逃げに出ると確信した士郎が、弓に矢をつがえる。

 

他の面々も逃がすまいとフリードを包囲するように動いたが、その一瞬、仲間との距離感を考え、フリードから注意がそれた瞬間、それが投げつけられた。

 

それは円柱形で、床に当たってすぐに大量の煙を吐き出した。

 

「口と鼻塞げ!」

 

十六夜の指示に全員従い、口と鼻を手で押さえる。

 

「じゃあねぇ、クソ悪魔共とその協力者」

 

「クソッ!ただの煙幕だ!奴は?!」

 

得意の解析魔術ですぐに煙が何の害もないものだと断定した士郎が、あたりを見渡すが、発煙筒から吐き出される煙はかなり濃く、ほとんど視界がきかなかった。

 

「逃げられちまったか」

 

「いや、逃がしてねぇぞ。俺が行けばすぐ捕まえられるからな」

 

古城が悔しげな声を出したが、十六夜はあっけらかんと、いつもの不敵な笑みを浮かべながら、それを否定した。

 

何故追わないのか、と古城だけでなく全員が思ったが、十六夜の表情を見て、何となく理由を察した。

 

「先輩って、ホント問題児だよな…」

 

「ヤハハ、もっと褒め称えても良いぜ」

 

「誉めてねぇよ…」

 

力なくツッコミを入れる古城に全員が同情の視線を送っていた。

 

「ま、見逃したってのは冗談だ。それに今はもっと優先すべきことがあるだろ?」

 

全員、フリードに気をとられていたが、本来の目的は彼ではなく、彼女、アーシアを助けることだ。

 

「あ、そうだよな。ワリィ先輩、疑っちまっ…」

 

「ま、嘘だけどな。雑魚追うとかつまんねぇだろ」

 

「俺の謝罪を返しやがれ!!」

 

「お、黒ウサギからか」

 

「無視すんな!!」

 

古城がキレたが、そんなのはどこ吹く風。十六夜は携帯の着信を確認し電話に出た。

 

「よお、黒ウサギ。ん?ああ、わかった俺の真下だな。了解、今から行く」

 

「…誰だよ?」

 

十六夜が電話を切ったのを見計らって、古城は不機嫌そうに十六夜に電話の相手を訊ねた。

 

「カカッ、不貞腐れんなって。彼女からだよ。俺らの真下が奴等の儀式場なんだとさ」

 

「何でそんな…」

 

「おっと、全員質問は無しだ。後で紹介してやる」

 

疑問を口に出そうとした古城を遮り、十六夜は拳を振り上げた。

 

「おい、十六夜ちょっと待て!それは洒落になら…」

 

「六名様ご案内、てか?」

 

降り下ろされた十六夜の拳は易々と床を叩き割り、無数の亀裂を生み出し崩壊させてゆく。

 

崩壊した床は重力にひかれ、階下に落ちていく。一誠達を巻き込んで。

 

幸い(?)全員が全員ただの人間ではないため、持ち前の身体能力を駆使して、簡単に両足で着地した。

 

「な、何者だ!?」

 

一誠達六人は儀式場の中心に落ちたらしく、既に堕天使やはぐれ悪魔祓い達に囲まれていた。

 

誰何はしたものの彼らはまだ浮き足立っているようで、身構えてはいるものの、武器を手にしているものは半数を超えなかった。

 

「そうだな…囚われの姫を助けに来た王子様とその一行、てところか?」

 

「ふざけるな!!」

 

「ふざけてんのはそっちじゃねぇか?黒い翼生やして群れてる様はまさにカラスじゃねぇか」

 

いつものように十六夜は相手の怒りの炎に油どころかニトロを注ぐ。

 

ただの人間ごときに虚仮にされた堕天使たちは、悪魔祓い達に指示を出し、自らも十六夜に殺到する。

 

そのさまは悪魔祓い達の神官服も相まって、死体に群がるカラスにしか見えなかった。

 

「ハッ!しゃらくせぇっ!」

 

十六夜の暴腕は直接殴った堕天使を壁に縫い付け、余波でさえ、十数人の悪魔祓いを壁にめり込ませる。

 

「な、何だあの人間は!?」

 

「むしろ人間か?!」

 

「あ、アイツは後回しだ!他の連中を!」

 

彼らは十六夜の異常さに戦き、十六夜以外を狙おうと動き出そうとしたが、

 

「やらさねぇよ!疾く在れ!『獅子の黄金』!」

 

古城が第五の眷獣『獅子の黄金(レグルス・アウルム)』を召喚し、金色の獅子が雄叫びと共に莫大なまでの雷撃を放出し、堕天使や悪魔祓いを焼いてゆく。

 

いよいよ彼らは恐慌に陥る。

 

正体不明の人間の次は誰もが恐れる世界最強の吸血鬼、第四真祖が現れたのだ。恐怖で我を忘れるのも無理からぬことだろう。

 

「あ、あれは第四真祖の眷獣!?」

 

「クソォ!?何だっていうんだ?!奴等は何なんだ!」

 

「構うな!数は此方が上なんだ魔法を撃ち続けろ!レイナーレ様の儀式が終わるまでは耐えるんだ!」

 

何とか恐慌状態から若干回復した彼らは、魔法と光の弾丸で弾幕を作り、十六夜は魔法と弾丸を拳と蹴りで叩き落とし無力化しているが、引き換えに前進することが出来ず、加えて金色の獅子の雷撃は相殺されるまでに至った。

 

古城が緋色の二角獣と金色の獅子を操り、光の弾丸と魔法の弾丸を抑えているなか、古城の後ろに下がった十六夜は敵の指示を聞き、不機嫌そうに表情を歪める。

 

しかし、すぐに頭脳を働かせ、全員に指示を出す。

 

「ちっ、時間稼ぎか。つまらねぇ真似しやがって。…一誠、俺達が敵陣に穴を開けっから、一気にアーシアの所まで行け。小猫と祐斗は一誠のフォロー、残りは最大火力を叩き込む、いいな?古城聞こえたか?」

 

「わかったっ!」

 

古城が大声で応え、全員が頷いた。

 

「よし、三つ数えたら行くぞ。三…二…一、Go! 」

 

「『獅子の黄金(レグルス・アウルム)!』!」

 

「っらぁ!」

 

「…I am the bone of my sword.『 偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)』!」

 

獅子の雷撃が、十六夜の人間離れした膂力で蹴り飛ばされた天井の一部が、敵陣に殺到する。

 

天井であった瓦礫と雷撃が魔法と弾丸の弾幕を蹴散らし、士郎が、投影した弓に矢ー奇妙に捩くれた剣ーをつがえ次の魔法と弾丸が放たれる合間を縫うように射られた。

 

「壊れた幻想(ブロークン・ファンタズマ)」

 

士郎がその言葉を口にした瞬間、敵陣に達した剣が光を放ち、ついで大爆発を起こした。

 

爆発で敵陣中心に穴が空き、一誠達がアーシアの元に走り込む。

 

「邪魔を…!」

 

「イッセーくんここは僕と小猫ちゃんで抑える。だから彼女を!」

 

近づいてきた悪魔祓いを小猫が殴り飛ばし、裕斗が斬り倒す。

 

一誠は頷き、レイナーレに近付く。

 

「アーシアァ!」

 

「イッセーさん…?」

 

一誠の声に反応し、先程まで閉じていたアーシアの瞼が開かれた。

 

しかし、その顔に生気はなく、声にも張りが感じられなかった。

 

例えるならば、病人のような顔だった。

 

「アーシア!助けに来たぞ!」

 

「残念。少し遅かったわね」

 

十字架に磔にされたアーシアの横、宙に浮かんでいたレイナーレがそう口にした瞬間、アーシアの身体が光を放ち出した。

 

「いやぁぁぁぁあっ…‼」

 

「うふふ。いいわ、これであの力が私のものに…」

 

「やめろぉお!」

 

アーシアが絶叫を上げ、一誠は騎士にプロモーションし、アーシアまで距離を詰める。

 

しかし、悲しいかな、悪魔になったばかりの一誠では力が足りず、アーシアまで後一歩というところで、彼女から、光の玉のようなものが抜け落ち、レイナーレの手に収まった。

 

一誠はアーシアから離れたレイナーレに構わず、彼女を十字架から下ろした。

 

光玉が抜けてからのアーシアの顔色の悪さは度を越えていて、もはや、死人のような顔だった。

 

「…イッセーさん?」

 

「アーシア、迎えに来たよ」

 

「…はい」

 

その声に生気はなく、今にも掻き消えてしまいそうだった。

 

ー何だよ、これ?神器を抜かれただけだろう?まだ、まだ大丈夫だろ?

 

「その子、もう助からないわよ。神器を抜かれた者は死ぬしかないのだから」

 

一誠の心中を察したかのように、レイナーレは嫌らしい笑みを浮かべそう言った。

 

「ーならっ!それを返しやがれっ!」

 

「嫌よ。これを手にいれるために上の方々を騙していたのだから。あなたたちも殺して証拠は残さないわ?」

 

「ーおい」

 

ズン、とのし掛かるような重みを感じる声だった。

 

いつの間にか、一誠達の近くに十六夜が来ていた。

 

「その話、ホントかよ?」

 

「ほ、本当よ。神器を抜かれた者は助からない。そしてその神器は、ほらこの通り」

 

レイナーレは最初こそ十六夜の登場に動揺を隠しきれていなかったが、光玉を自分の身体に押し付けた。

 

するとそれは何の抵抗もなく、レイナーレの身体に収まってしまった。

 

「…イッセー、アーシア連れて上に上がれ。護りながらの戦いは苦手なんでな」

 

「わかった!」

 

「行かせないわよ!全員その悪魔を…」

 

レイナーレが指示を出し、堕天使や悪魔祓い達が一誠の進行を阻止しようとしたが、

 

「「「邪魔だっ!」」」

 

「…です」

 

「「「「ぐああぁぁっ!?」」」」

 

「みんなありがとうっ!」

 

四人の援護を受け、一誠はアーシアを抱え、一目散に地上へ上がった。

 

一誠を見送り十六夜はレイナーレに向き直る。

 

「さて、それじゃあ聞かせてもらうかな。テメエからアーシアの神器を取り出す方法をな」

 

「そんなもの教えるわけ…」

 

「ああ、だろうな。だから、身体に聞かせてもらうさ。…俺の拳は痛いぜ?」

 

十六夜は口角をつり上げ、不敵な笑みを浮かべ左手の平に右拳を叩き付けた。

 

 

 

「アーシア…」

 

聖堂にたどり着いた一誠は近くにあった長椅子にアーシアを横たえた。

 

彼女の容態は悪く、誰が見ても手遅れなのが明らかであった。

 

しかし、それでも身近な人間の死を受け入れる事など出来るはずはなかった。

 

「イッセー、さん…」

 

「アーシア、俺はここにいる!待ってろ、もうすぐでアーシアは自由だ!誰に構うことなく俺とも遊べるんだ!」

 

アーシアは力なく一誠の名を呼び、彼を探すように手をさ迷わす。

 

一誠が掴んだその手は体温が喪われていた。

 

別れが、近付いていた。

 

「私、少しの間だけでも、…友達が出来て、しあ…わせでした…」

 

声を発するのも大変なのだろう。それでも最後の力を振り絞ってでも伝えたいことがあるのだろう。

 

「もし…生まれ変わっても、私と…友達になってくれますか…?」

 

「何で、そんなこと言うんだよ。これからもっと楽しいことたくさんしようぜ!カラオケに、ボウリング、またゲーセンも行こう!今度は買い物にそれから、それから…」

 

一誠の瞳からは止めどなく涙が溢れていた。

 

完全に理解してしまったから、アーシアの死を。

 

いくら言葉を紡いでも、アーシアはここで死ぬ。

 

それが理解できてしまったから、一誠は顔に笑みを浮かべながらも泣くしかなかった。

 

「俺らはダチだ。ずぅっとダチだ。ああ、そうだ。元浜や松田に紹介するよ!あいつら、ちょっとスケベだけどスッゲェ良い奴らなんだぜ!絶対アーシアの友達になってくれるっ!そんでワイワイ騒ぐんだ!」

 

「きっとこの国で、生まれて…イッセーさんと学校に通えたら…」

 

「ああ、一緒に行こう!」

 

アーシアの手が涙に濡れるイッセーの頬を撫でる。

 

「…私のために涙、を流してくれる…それだけで…」

 

「…ありがとう…」

 

アーシアの手が重力に従い落ちた。

 

最後の力を振り絞ってでも伝えたかった言葉、感謝の言葉を残し、アーシアは息を引き取った。

 

その死に顔はとても穏やかで、口許には笑みを浮かべていた。

 

ー何でだよっ…!何でこんなに良い子が死ななきゃならないんだよ…?!アーシアが何したってんだ?

 

「なあ神様、居るんだろ?天使や悪魔が居るんだ。あんただっているだろ!?助けてくれよっ…!この子は、アーシアは良い子なんだよっ!ただ友達が欲しかっただけなんだよ!だから、だからっ…!」

 

天に叫ぶも応えはなく、ただただ一誠の声が虚しく響くだけだった。

 

「俺が悪魔になったからダメなんすか?!友達が悪魔だから無しなんすか!?」

 

一誠は血が滲むほど唇を噛んだ。

 

己の無力さに腹が立った。もっと力があれば、結果が変わったかも知れない。

 

たらればの話だったが、それでも一誠は考えずにはいられなかった。

 

そこへ、今の一誠には憎悪の対象でしかない声が響いた。

 

「あら、悪魔が懺悔かしら?それともお願い?」

 

「レイナーレっ…!」

 

一誠の前に現れたレイナーレの右腕は関節が逆に曲がりかなり痛々しい状態だったが、痛みを感じていないかのようにその顔には笑みが浮かべられていた。

 

「これさっきあなたの友達の人間に折られたのだけど、ほら、この通り」

 

左手を右腕にかざすと淡い緑色の光が灯り、ビデオの巻き戻しのように右腕が治っていく。

 

「あっという間に治ってしまったわ。神の加護を失ってしまった私達堕天使にとって、彼女の神器は素晴らしい贈り物だったわ」

 

「…ざけんな」

 

一誠の声は届かなかったようで、レイナーレは表情を陶酔したものに変え、さらに喋り続ける。

 

「堕天使を治療出来る堕天使として、私の地位は約束されたようなもの。アザぜル様、シェムハザ様、お二方のお力になれる…」

 

一誠はレイナーレを睨み付けた。そこには混じり気のない憎悪があった。

 

「んなこと知るかよっ…!?この子にはそんなもの関係なかった!」

 

「いいえ、あるわ。その子は神器に選ばれた」

 

「それでも、静かに暮らせた筈だ…!」

 

「無理ね。異質な力は必ず周囲に疎まれ、嫌われ、絶やされる。ほら、人間って自分たちと違うものは認めないでしょう?」

 

そう言われ、アーシアが傷を治した男の子の母親の表情が一誠の脳裏を過った。嫌悪するものではなかったが、関わりたくないという表情をしていた。

 

「覚えがあるのかしら?」

 

嫌らしい笑みを浮かべるレイナーレを睨み返し、それでも一誠は叫ぶ。

 

「…なら…なら俺がっ!俺が友達としてアーシアを守った!」

 

「うふふ…アハハハハハ!面白い冗談ね。その子は死んだのよ?守るもなにもないわ。それにあなたでは守れない。さっきも夕刻のときも!あなたは何も出来ず誰かに守られていただけじゃない!」

 

「…そうだよ。だから許せないんだよ、お前も。俺のことも」

 

ー許せねぇよ。自分の弱さもアーシアを殺したお前も…!

 

ふと、一誠は出発前にリアスが言っていたことを思い出した。

 

ー神器は想いの力に反応するわ。想いは人間も悪魔も変わらない、強い想いに神器は応えるの

 

「返せよ…!アーシアを返せよぉぉぉっ!」

 

『Dragon Booster‼』

 

一誠の叫びに応えるように今までとは違う、一層強い光が手の甲の宝玉から放たれた。

 

そして、同時に籠手全体に紋様のようなものも浮かび上がった。

 

左腕から全身に力が行き渡り、一誠はその力に身を委ねながら、レイナーレに向かって駆け出した。

 

嘲笑を浮かべる堕天使の目前で、一誠は拳を振り上げ繰り出すも、簡単に避けられてしまう。

 

「ふふふ、バカなあなたにもわかるように教えてあげるわ。単純な戦力差よ。私が千とすればあなたは一。『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』で倍にしても二では千には勝てない」

 

「そんなのは関係ねぇ!俺は…」

 

『Boost‼』

 

二度目の変化。目に見えて一誠に変化が見てとれた。繰り出す拳には鋭さが増し、駆ける速度も最初とは比べものなならないほどである。しかし、

 

「うおぉぉぉぉっ!」

 

『戦車』にプロモーションした一誠の拳はまたも避けられ、この戦いに飽いたのか、レイナーレは両手に光を集め槍を形成。

 

拳を振り切り無防備な一誠に投げ付けた。

 

「ぐあぁぁぁっ?!」

 

二本の槍は一誠の両足に突き刺さり、彼は痛みのあまり立っていることも出来ず、苦悶の叫びを上げながら両膝を地につけた。

 

一誠はとっさに槍を引き抜こうとし、両手で掴んだ。

 

途端、今度は触れた手が焼かれた。

 

「アハハハハハ!光は悪魔にとって劇毒。それに下級悪魔のあなたごときではそれを抜くなんて…」

 

「アァァァァッ!この程度の痛みがなんだ!あの子が、アーシアが感じてた辛さに比べたらこんなものぉっ!」

 

一誠は痛みに耐えながら少しづつ槍を引き抜いていく。

 

そして、ずりゅりという嫌な音をたてながら光の槍は一誠の足から引き抜かれた。

 

引き抜かれた瞬間、両足からは尋常ではない量の血が溢れだし、光の槍は地に落ちることなく宙に消えた。

 

『Boost‼』

 

動きの止まってしまった今になっても一誠の左手の籠手は周期的に音声を発する。

 

「へぇ、やるじゃない。まさか引き抜かれるとは思わなかったわ。でも、そこまでね。今あなたの身体は内側から私の光に焼かれている。私の光は神父共の光の刃の素に出来るほど光力が強い。治療が遅れれば死ぬでしょうね」

 

一誠はレイナーレの言葉が聞こえていないのか、何の反応も返さない。

 

かなりダメージが深いのだろう。

 

ふと、一誠の視線がアーシアに向いた。

 

その瞳はしっかりとアーシアを映し、そして、小さく微笑んだ。

 

こんな状況、絶体絶命の中そんな表情をすれば、気が狂ったのかと疑うが、しかし、一誠の瞳には確かに正気の光が宿っていた。

 

「こんな時、神様に願うのかな?」

 

「何をー」

 

「でも、神様はダメかさっきも俺の言うこと聞いてくれなかったし。アーシアも助けてくれなかったし」

 

「痛みで壊れたのかしら?」

 

「なら、魔王様かな。ちゃんと居ます?聞いてます?一応俺も悪魔なんで、俺のお願い聞いてください」

 

「完全に壊れちゃったみたいね。独り言始めちゃってるわこの子」

 

「あのクソ堕天使を殴らせてください。なんで、邪魔が入らないようにしてください。特に十六夜。あいつ多分面白がって絶対引っ掻き回すんで、特にお願いします。足は、大丈夫です、今から立つんで。だから、俺とあいつのガチンコをさせてください。最高の場面なんです。痛みなんか平気です。だから、一発だけ、殴らせてください…!」

 

膝をついた状態から徐々に片膝、そしてもう片方の膝も地を離れ、震えながらもレイナーレの目の前に立ち上がった。

 

「ーっ!そんな光のダメージで立ち上がれるはずなんて…!」

 

「よー、俺の元カノさん。色々お世話になりました。つきましてはお礼を受け取ってもらいたくてね」

 

「ー立ち上がれる訳がない!光が全身を焦がしてるのよ?!光を緩和する魔力も持たない下級悪魔風情が耐えられるはずがない!」

 

「あぁ、痛ぇなかなり痛ぇ。でもなテメェへの怒りで痛みなんて吹っ飛んじまった。今は…」

 

そこで言葉を切り、少しだけ自らの左手に目をやり、すぐにレイナーレを睨み付けた。

 

「なあ、俺の神器さん。あのクソ堕天使を殴るだけの力は有るんだろう?ここは一つトドメの一撃とシャレ込もうぜっ!」

 

『Explosion‼』

 

力強い機械音声が響いた。

 

変化は劇的だった。

 

先程まで震えていた一誠の両足は震えが止まり、逆に一誠の周囲の空気が震えだした。

 

散乱していた瓦礫は砕け、左手の籠手、甲の宝玉はかつてないほどに光輝いていた。

 

一誠は自分の身体にとてつもない力が流れるのを感じていた。

 

「そんな、そんなバカな…あなたの神器はありふれた『龍の手』だったはず。なのになぜ私の力を越えているの…?!それにこの魔力は、中級…いえ上級悪魔に匹敵するほどの…っ!」

 

レイナーレの言葉の半分も一誠は理解できていなかった。正確には痛みのあまり、そんな余分な情報を取り入れる余裕がなかっただけだが。

 

一誠は騎士にプロモーションし、一息で間合いを詰めた。そのスピードは裕斗のトップスピードと比べても遜色ないものであった。

 

「ひっ…?!」

 

突如目の前に現れたと言っても過言のない一誠の姿に、レイナーレはもう反撃の手札はなく、小さく悲鳴を上げ、すぐに翼をはためかせ逃げようとしたが、今の一誠がそれを許すはずもなく、

 

「は、離しなさい?!わ、わたしは気高き…」

 

「知るかっ!ぶっ飛びやがれっ!」

 

掴んだ腕をぐっ、と引き寄せ、渾身の左ストレートを見舞った。

 

ズドン、という打撃音にしては重すぎる音を残し、レイナーレの身体は一直線に聖堂の壁に激突。壁を崩落させ教会の中庭を滑り、その中央付近でやっと止まった。

 

止まってから動く気配はなく、一誠には生きているのか死んでいるのか区別はつかなかったが、とりあえず決着が着いたのだけはわかった。

 

そして、一誠は全身の力が抜け倒れ込んだ。

 

一誠は思う。さっきまでの力はやっぱり今回限りだった、と。先程まで自分の中で渦巻いていた力が無くなっているのがその証拠だ。

 

そして、

 

「アーシア…。終わったよ…」

 

「やるじゃねぇか一誠。さっきの一撃、俺の半分くらいの威力はあったぜ?」

 

「…もーちょっと誉めてくれてもいんじゃないか?十六夜」

 

仰向けに倒れる一誠を見下ろすように、十六夜が立っていた。

 

裕斗と小猫、士郎は中庭で延びているレイナーレを拘束しに向かい、十六夜、古城は一誠の手当てに回った。

 

「…ま、良くやったほうだろ。アーシアも報われるな」

 

「…っぅ…!?」

 

一誠はそこで涙や鼻水でぐしゃぐしゃの顔を右手で覆った。そういくらレイナーレを殴ってもアーシアは生き返らない。

 

そう思うと一誠は涙が止まらなかった。

 

古城の眷獣の力で一誠の傷は全て治った。しかし、それでも立ち上がる気力はなかった。

 

「…人は斬って殴って撃てば死ぬ。…だけど例外もある。そうだろ、部長様?」

 

「そうね。例外もあるわ」

 

「ぶ、部長?!なんで…それに例外って!?」

 

突如現れたリアスに驚き、しかし、聞き逃せない一言があったため、立ち上がりリアスに詰め寄った。

 

「ま、待って頂戴。順を追って説明するから少し離れてくれる?」

 

「す、すいません」

 

さすがのリアスも切羽詰まったような真剣な表情で正面から見詰められると気恥ずかしいものがあるのか、少し頬を染めながら一誠の身体を軽く押す。

 

一誠も冷静になると大分大胆なことをしたのを自覚したのか、顔を赤くしながら押しやられるまま三歩ほど下がる。

 

「小猫、堕天使をここに。十六夜くんそのニヤケ顔止めなさい消し飛ばすわよ」

 

「…持って来ました」

 

小猫の手には堕天使の黒い羽根が。良く見ると中庭からは引き摺ってきた後が見られた。

 

見た目に似合わず運び方も豪快だが、堕天使を「持ってきた」というのも中々豪快な物言いだった。

 

「さて、起きてもらいましょう。朱乃」

 

「はい」

 

朱乃は魔法で水を生み出し、レイナーレの顔に水をかけた。

 

「く、う…」

 

「お目覚めかしら堕天使?」

 

「グレモリーの娘か…」

 

「そう。リアス・グレモリーよ、短い間だけど宜しくお願いするわ」

 

リアスの名乗りを聞き、レイナーレは悔しげに顔を歪めるが、すぐ口角をつり上げた。

 

「私を追い詰めたと思っているようだけれど甘いわよ。確かに私の計画は上の方々には内密だったけれど、私に協力している堕天使も…」

 

「援軍なら来ないわよ」

 

「何を…」

 

得意気に語っているレイナーレの言葉を遮り、リアスは言葉を発する。自尊心の強いであろうレイナーレは不満げに柳眉を上げ、言葉を続けようとしたが、朱乃がレイナーレの目の前に黒い羽根を出すと顔色を変えた。

 

「わかるようですね?堕天使ドーナシーク、ミッテルト、カラワーナ。彼等の羽根ですわ」

 

「ちっ、あいつら使えないわねっ…!」

 

「というわけよ。私の管理するこの地で堕天使が何かを企んでいるのはわかっていたのだけれど、それは堕天使全体のことだと思ったから私は無視した。でも、いつまでたっても少数で動いていたからおかしいと思って接触したら、独自の計画だと吐いてくれたわ。女二人だと思って甘く見たのでしょうね、冥土の土産に教えてくれたわ。どちらが冥土に近いかも知らずにね」

 

「二人だけで危険だったんじゃ?」

 

一誠の当然の疑問に、朱乃はいつもの上品な笑みを浮かべながら応えた。

 

「大丈夫ですわ。部長は若手悪魔の中でも天才といわれ、別名『紅髪の滅殺姫(ルインプリンセス)』と呼ばれているほどですから」

 

なるほど、と一誠は納得した。

 

「さて、何時までも時間を掛けるわけにはいかないから、あなたには消えてもらいましょう」

 

リアスの瞳に冷酷さが宿る。彼女が本気で殺そうとしているのが伝わったのだろう。レイナーレの表情に焦りの色が見えた。

 

助けも来ず、まさに絶体絶命。逃げようにも前には滅殺姫、周囲にはグレモリー眷属に得体の知れない魔術師、神滅具保持者、更に世界最強の第四真祖。

 

しかし、それでも諦めきれない彼女は最後に一誠に手を伸ばした。それが一番の下策とも気付かずに。

 

「イッセーくん、助けて!この女が私のことを殺そうとするの!」

 

ことここに至るまで少し可哀想などと考えていた一誠だったが、やはり夕麻という少女はレイナーレの演技だと思い知った。

 

レイナーレを直視することに堪えかね、一誠はリアスに願った。

 

「部長、もう堪えられません…お願いします」

 

「私の可愛い下僕に言い寄るな。消えなさい!」

 

ドン!という音とともに緑の光球と黒い羽根1枚だけを残し、呆気なくレイナーレは消滅した。

 

 

 

「さあ、これからが本題よ。さっき言った例外。一誠あなたも知っているこれよ」

 

リアスは懐からあるものを取り出した。

 

血よりも赤い、リアスの髪のような紅色のチェスの駒。

 

「それは?」

 

「僧侶の『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』よ」

 

「へ?」

 

「そういえば説明がまだだったわね。悪魔の駒は普通のチェスの駒と同様に兵士8、騎士、戦車、僧侶2つずつ、女王1つの計15体あるの。僧侶は1つ使ってしまっているのだけれど、これは残ったもう1つ」

 

リアスは説明しながらアーシアに足を向ける。眠るように死んでいるアーシアの胸に駒を置く。

 

「僧侶の力は眷属の悪魔のフォローをすること。悪魔をも癒すこの子の力は必ず役に立つ。前代未聞だけれど、このシスターを転生させてみせる」

 

リアスは眼を閉じた。彼女が言葉を紡ぎ始めると、その身体を紅い魔力が覆った。

 

「我、リアス・グレモリーの名において命ず。汝、アーシア・アルジェントよ。今再び我が下僕となるため、その身に魂を帰還させ、悪魔と成れ。汝、我が『僧侶』として、新たな生に歓喜せよ!」

 

胸に置かれていた駒が彼女の胸に沈んでいき、その後を追うように宙に浮いていたアーシアの神器が身体に戻っていった。

 

すると、先ほどまで色が無かった頬に色がつき、胸が上下し始めた。

 

更にすこし経つと、閉じられていた眼が開き、身体を起こした。

 

「あれ?私…」

 

もう聞くことが出来ないと思っていたアーシアの声を聞き、一誠は涙を流した。

 

「一誠。これからは先輩悪魔として、あなたが彼女を守っておあげなさい」

 

「はい…!」

 

「イッセーさん?」

 

一誠は優しくアーシアを抱き締めた。もう絶対にこの子を離さないという誓いを込めて。

 

「帰ろう。アーシア」




最後らへん大分駆け足になっちゃいましたね。多分みんな活躍出来たんじゃないかなーと。あ、あとこの作品の士郎はうまく立ち回って聖杯戦争をいい感じに終結させました。はい、ご都合主義てやつですね、本当にすいませんm(__)m
ちなみに士郎には師匠がいます投影もその人に教わってます。なので、作中のあんなまね(壊れた幻想)も出来ます。師匠はその内出るかもです。かもなんでわかりませんが
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