問題児が駒王学園に来るそうですよ?―ただし、一人とは言ってない―   作:金谷沙原

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大変長らくお待たせしました(ホントすいません)m(__)m

今までではプロローグ、エピローグを除いて(文章量が)最短です。

ではどうぞ!

戦闘させたい…


悪魔、続けてます!ー問題児たちも健在ですー

『サア、ハヤクオキナサイ!サモナイト、サンソギョライヲクラワセルワヨッ!』

 

午前四時半。

 

某ツンデレ駆逐艦の目覚ましが鳴り響く中、ベッドの中で少年―兵藤 一誠(ひょうどう いっせい)がむくり、と身を起こした。

 

学校では『エロ魔人』、『エロの権化』で有名な彼だが、今朝も例に漏れずとても愉快な夢を見ていたようだ。・・・とても人様にはお見せできない顔をしている、とだけお伝えしておこう。

 

―ぐふふ、朝からいい夢見れたぜ!まさかリアス部長と結婚する夢とはなー。し、しかも一歩手前とはいえ初夜までいけたし。でも最後のあれはないよなー・・・

 

彼は自身の左腕に視線を向けた。

 

「赤いドラゴンか・・・」

 

『神器』(セイクリッド・ギア)。聖書の神が生み出した超常の存在。その中で神さえも殺すとされる『神滅具』(ロンギヌス)のひとつである、自身の身に宿る『赤龍帝の籠手』(ブーステッド・ギア)。龍に関係するらしいこれと、夢の中で見た赤い龍は関係があるのか。

 

思考の海に沈む一歩手前で、彼はなぜこんなに早い時間に起きたのかを思い出した。

 

ベッドから飛び起き、一誠は窓から外を見た。

 

一誠の自宅の前、彼の部屋の窓から見える位置に紅髪の美少女―リアス・グレモリーが一誠を仰ぎ見ていた。

 

一誠と視線が合うと少し呆れたような表情をつくりながら、口の動きだけで言葉を紡いだ。

 

「早くなさい」

 

それをすぐさま理解し、一誠は高校指定のジャージに身を包み、表に出て行った。

 

彼がこんなにも早い時間に主人である彼女と外出するのには理由がある。

 

決して人目を阻んでなどの色っぽい話ではなく、一誠の特訓のためである。

 

 

ー◇ー

 

 

「イッセーだらだら走らない!ダッシュ10本追加するわよ!」

 

走る一誠の後ろから自転車に乗ったリアスが檄を飛ばす。

 

特訓を開始してそれなりの日数が経っているが、最初のころに比べればかなりましになったといえよう。

 

最初から20kmランニングはかなり飛ばしすぎな感も否めないが、継続は力なりとはよく言ったもので、滝のような汗を流しつつも同じペースで20kmのランニングを完走し、各種筋力トレーニングをこなしている。

 

なぜ彼が朝からこんなにも激しいトレーニングをこなしているのかというと、先月堕天使が引き起こした事件が原因だった。

 

一誠はその身に『神器』を宿していたばかりに、堕天使にその命を狙われ、結果命を落とした。

 

しかし、現在彼を自転車で追いかけている彼女、リアス・グレモリ-に命を救われ、彼女の眷属悪魔として新たな生を受けた。

 

最初は自身が悪魔になっていることなど気づきもせず生活を続けていたが、堕天使のはぐれ狩りに巻き込まれる形で自身が悪魔であることを知らされ、さらに転校生に友人、果てには後輩までがただの人間ではないことまでがわかった。

 

そして、駒王町で暗躍する堕天使たちの戦いがあったのだが、その際一誠は周囲に助けられてばかりで自身の力のなさを痛感していた。

 

そのため今のトレーニングを行うことになったのだった。

 

そんな一誠は現在背中にリアスを乗せ腕立てをしていた。

 

彼女は同世代の少女たちと比べても細身の部類に入るだろうが、自身の体重だけでも腕立ての負荷としてはなかなかのものである。さらに彼女の体重が加わればかなりの高負荷だ。

 

しかし、さすがは性欲の権化兵藤一誠。そんななかにもかかわらず、背中に感じるリアスの臀部の感触に心奪われていた。

 

―腕への負荷はヤバイけどそれよりもヤバイのは背中に感じるこのお尻・・・

 

「あうっ」

 

「邪念を感じるわ。腰の動きがいやらしいわよ」

 

つい声が出てしまった一誠は自分にMっ気はないはず、などと考えていた。

 

「トレーニング中に不埒なことを考える子はさらに腕立て百回追加かしら?」

 

「そ、それはご勘弁を・・・」

 

追加は嫌なので一誠は順調に腕立てのノルマに向けて数をこなしていく。

 

残り三十回になった頃、一誠は背中に乗る彼女が先ほどから何も言ってこないことに気が付く。

 

普段ならば、先ほどのように「腰の動きがいやらしい」や「もっと胸を深く落としなさい」などと言って、ノルマの追加を迫ってきていた。

 

しかし、今日は、いやここ数日はいつも何かを考え込んでいて、やや俯き加減であったような気がすると一誠は考えていた。

 

そこで、一誠はいっそ訊ねてみることにした。

 

「っの、部長っ、何かあっ、たんですか?」

 

「え?」

 

「何か、最近考え、込んでい、るみたいなんで」

 

ああ、とリアスは少し驚いたような表情から感心した、とでもいうような表情に変わる。

 

「あら、よく見ているわね?そんなに大したことではないわ。・・・それにしてもそろそろ来てもいい頃だと思うのだけど…」

 

「来る?いったい・・・」

 

何が、と一誠が続ける前にリアスの待ち人が現れた。

 

「イッセーさーん、部長さーん!おはようござ・・・あぅっ!」

 

声の方に視線を向けると走って向かって来たのだろう。先月の堕天使の騒ぎで一誠が命がけで助けた新しい友人、アーシア・アルジェントが派手に転んでいた。

 

 

ー◇ー

 

 

「どうぞイッセーさん」

 

「うん・・・ありがと、アーシア」

 

一誠はアーシアの差し出したお茶を力なく受け取った。

 

彼女が現れてからも一誠のトレーニングは続き、今ようやくすべてのノルマが完了し、一息ついたところだった。

 

受け取ったお茶を一息で飲み干した一誠は、なぜアーシアがこのような時間、朝早くに公園に来たのか。

 

一誠が理由を訊ねると、

 

「イッセーさんと部長さんが毎朝こちらでトレーニングをしていると聞きまして・・・その、私も何かお手伝い出来ないかなー、と。今日はお茶くらいしか用意できなかったんですけど」

 

アーシアははにかみながらそう答えた。

 

一誠はその答えに感動の涙を流した。

 

今まで女子にそんな優しい言葉(だいたい本人の行動、言動のせいだが)をかけてもらったことなど無かったからだ。

 

「そんなことないぜアーシア。来てくれただけでも俺にとっては最高の応援だ!」

 

「ふふふ、そう言って頂けると私も嬉しいです」

 

一誠は先月の事件の影響を感じさせない、アーシアの笑顔に安心していた。

 

彼女は件の事件で一誠達の奮闘空しく、一度命を落としてしまった。

 

しかし、悪魔として再び生を受け、一誠達との再会を喜んでいたが、アーシアは自身が悪魔になってしまったことに不安を感じていたように一誠からは見えていたのだ。

 

笑顔を浮かべるアーシアを微笑ましく感じていた一誠は、ふと、リアスがお茶に口もつけずまた何かを考え込んでいるのに気が付いた。

 

「部長、また考え事ですか?」

 

「ん、ええ。少しばかりね…さて、そろそろ荷物が届くかしら。二人とも行きましょう」

 

一誠は荷物という単語に疑問を覚えたと同時に、どこに行くのかも気になった。

 

それを質問すると

 

「あなたの家に、よ」

 

さも当然のようにそう返って来た。

 

 

ー◇ー

 

 

一誠達一行が彼の家に到着すると、トラックから荷物が運びだされ、家の前に積まれていた。

 

「な、何ですかこれ?何で家の前に荷物が…」

 

「さぁ、運んであげなさい一誠」

 

「へ、俺が運ぶんですか?!」

 

何故自分が、と一誠が問い返すとリアスは当然のように答えを出した。

 

「アーシアの荷物だからよ。今日からアーシアは貴方の家で暮らすの」

 

「はいぃぃ?!」

 

 

ー◇ー

 

 

第二回兵藤家家族会議。

 

第一回の議題も中々だったが、第二回の議題も一誠の両親からすればかなりヘビーな問題であった。

 

「アーシアさんをホストファミリーとして受け入れて欲しい、ですか」

 

そういうことだった。

 

アーシアに対する二人の反応は良好であり、受け入れに関しては問題無かったのだが、唯一にして最大の問題、彼らの息子がいた。

 

彼らの息子は性欲の権化であり、もし、というか二人の中では確実に何かあった場合は国際問題になりかねない。

 

その点を強く、強力に押したがリアスからはある意味期待を裏切る言葉が返ってきた。

 

「今回のホームステイは花嫁修業を兼ねて・・・というのはどうでしょう」

 

リアスのこの一言で二人はあっさり轟沈した。

 

曰く、孫も見れないと思っていた。

 

曰く、老後も独り身の愚息の心配をしなければと悲嘆にくれていた

 

曰く、プラモデルの箱の中にエッチなDVDを隠している

 

最後のあたりで一誠の表情が真っ青になったのは言うまでもない。

 

アーシアの手をとり、リアスにアーシアを責任を持って預かることを快諾した。

 

「ありがとうございますお父様。イッセー。アーシアをよろしくね。アーシアこれからイッセーのお家にご厄介になるのよ。イッセーのご両親と仲良くね」

 

そこでアーシアの表情が少し曇る。

 

「あのいいのでしょうか。わたしなんかが・・・ご迷惑になるのでは・・・」

 

自身を卑下するアーシアに、しかしリアスは表情をいたずらっぽいものに変えた。

 

「あら。でも『日本の文化を知るには現地の家に入るのが一番』、と私が言ったらイッセーのところがいいと言ったのはあなたよ?」

 

「ぶ、部長さんそれは言わない約束です・・・!」

 

「あら、口が滑ってしまったわ・・・」

 

その会話で一誠の両親は『嫁がきた』と涙をこぼし、一誠はそんなに信頼してくれているとは、と呟き、見当違いの感動をしていた。

 

エロに忠実であるのに鈍感とはこれいかに。

 

そんな一誠の呟きが聞こえていたアーシアは自身の本心が知られず、嬉しいような悲しいような微妙な表情をしていた。

 

「アーシアさん、遠慮なんてしなくてもいいんだよ。我が家で日本に慣れるといい。もしかしたら、永住することになるかもしれないし」

 

一誠父がそう言った隣で一誠母が強く頷く。

 

そんな二人の様子を見たアーシアは少し目元を潤ませながら、深く頭を下げ、

 

「よろしくおねがいします」

 

と、言い、満面の笑みを浮かべた。

 

そんな和気藹々とした兵藤家とは対照的にリアスは物憂げな表情を浮かべ、一言だけ小さく呟いた。

 

「花嫁、ね・・・」

 

 

ー◇ー

 

 

アーシアが兵藤家に住み始めて数日がたった。

 

未だその事実が周知されているわけではなく、今現在、一誠とアーシアが仲睦まじげに通学路を歩いている姿を目にした生徒たちは、驚愕と嫉妬(主に男子)の死線(誤字にあらず)を送っていた。

 

そんな死線の中、一誠は軽い優越感を感じながら歩いていた。

 

「アーシア、学校には慣れたか?」

 

「はい。皆さん良い方ばかりです。何故かいつもお菓子をくれますし」

 

金髪碧眼の美少女、しかも天然、と庇護欲を駆り立てるには充分の彼女は、クラスメイトの女子達からマスコットのように扱われていた。

 

そんな他愛もない話を笑顔でするアーシアに、一誠は深い安堵を覚えていた。

 

当たり前の幸せを当たり前のように過ごしているアーシア。

 

初めて会った時のような翳りのある笑みは鳴りを潜め、純粋に心の底から笑えている。

 

そんな幸せを噛み締めながら歩く一誠達の背後から、2つの影が這いよる。

 

「妬ましいー…うらやましいぃー…!」

 

「何故だっ…?!何故イッセーの周りには美少女がいて、俺たちには何の縁もないんだっ…!?」

 

這いよる影は変態二人組松田と元浜。

 

どう考えても本人たちの日頃の言動のせいだが、そんなことは棚上げし、恨めしげに一誠を睨む。

 

そんな二人に、幸せの絶頂と言っても過言ではない一誠は、勝ち誇ったような表情を浮かべた。

 

「まあ、二人にもそのうち良いことあるだろ。…来世くらいには」

 

「「死に晒せ!!」」

 

松田元浜、モテないペアのダブルラリアットが一誠の首に華麗に決まった。

 

 

ー◇ー

 

 

「出席は…まあ、全員いるだろ」

 

相変わらず適当な担任の出席確認にクラス全員が白い目を向けるなか、その視線を気にすることなく担任は朝礼を進める。

 

朝の連絡事項を終え、しかし、彼は教室から出ることはせず、思い出したように声を上げる。

 

「おお、そういや忘れてた。今日は転校生、いや留学生か、がくる」

 

「「「「はあっ?!」」」」

 

何でそんな大事なこと忘れてんだっ!という意味合いを込めた声がクラス中から上がる中、そんなことはお構いなしに担任教師は教室の外に声をかける。

 

控えめな音と共に入ってきたのは金髪の少女。

 

整った顔付きに落ち着き払った表情は冷たさを思わせるが、同時に威厳のようなものも感じさせた。

 

「留学生、自己紹介だ」

 

教卓の隣に立った少女は先程までの表情を崩し、微かな笑みを浮かべて自己紹介を始めた。

 

「イギリスから留学してきました、『アルトリア・ペンドラゴン』です。よろしくお願いします」

 

「一時間目は俺の授業だから騒がずに質問なり何なりしとけ」

 

担任のお許し出たので、早速欲望に忠実なエロ二人組の1人、松田が手を上げた。

 

「はい!アルトリアちゃんは彼氏は居ますかっ!」

 

正直男子生徒の大半は気になるだろう事柄だった。

 

控えめに言っても美少女である彼女だ。隙あらば狙いたい、というのが男子生徒達(一部除く)の本心だろう。

 

その質問に彼女、アルトリアは微かに頬を染めて答えた。

 

「そう、ですね。彼氏、という特定の殿方は居ません…」

 

その答えに、一瞬男子生徒達(一部除く)は沸き立つが、次に続く言葉に打ちのめされることになった。

 

「ですが、ずっと慕っている方が居ます」

 

キャー!という女子生徒達の歓声が響くなか、あまりこういうことに興味が無さそうな1人の男子生徒が立ち上がった。

 

立ち上がった男子生徒にアルトリアは目を向けると、彼女は小さく涙を溢しながらも笑顔を浮かべた。

 

驚愕の表情を浮かべて立ち上がった男子生徒は士郎だった。

 

「セイバー、なのか?」

 

「はい、シロウ。久し振りですね…貴方に会うためにここに来ました」

 

「セイバー…、いや、アルトリア!」

 

普段はそんなことはしないであろう、士郎が大声で彼女を呼びながら近付き、周囲を憚らずにアルトリアを抱き締める。

 

女子生徒達は更に歓声を上げ、男子生徒達は既に屍と化し、完全に収拾がつかなくなっていた。

 

が、ここで先程まで完全に空気だった担任教師が怒声を上げた。

 

「騒ぐなっつたろうがぁ!てめぇら全員、バァカかぁ!!」

 

その後、全員、担任教師のお叱りを受け、その説教は結局一時間目が終了するまで続いた。

 

 

ー◇ー

 

 

放課後、オカルト研究部の部室にグレモリー眷属、問題児3人+黒うさぎとアルトリアが集まっていた。

 

「悪魔、ですか」

 

互いに自己紹介をしていき、士郎の関係者であり一般人には分からなくとも、微量に魔力を発しているアルトリアも異能を宿している、と判断したリアスは自身や問題児たちを除くオカ研のメンバーが悪魔であると明かした。

 

リアスたちが悪魔と知り、若干視線を鋭くする彼女に士郎がフォローをいれる。

 

「悪魔っていってもイメージみたいな奴らじゃないし、人間と契約しても魂を奪うことはあまりしないみたいだ」

 

「この学校の悪魔は、だけどな」

 

十六夜が薄笑いを浮かべながらそう付け足すと、士郎は無言で彼を睨む。

 

「ま、それを差し引いてもコイツらは良い奴らだけどな。他人の為に命を張れる奴らだ。信用には足ると思うぜ?」

 

全員が十六夜に素直じゃないやつ、と思ったのは言うまでもない。

 

そこまで聞いて、アルトリアもある程度警戒を解いたのか、表情が少し和らいだ。

 

「じゃあ、幾らか親睦も深めることが出来たようだし、貴女について詳しく聞いてもいいかしら?」

 

リアスがアルトリアにそう尋ねると、アルトリアは一度士郎の表情を見た。

 

士郎が頷くのを確認すると、アルトリアは徐に手を突き出す。

 

一瞬、爆発的に彼女の魔力が跳ね上がり、魔力が彼女を中心に渦巻く。

 

一般人から発するとは思えない魔力の奔流に、十六夜と士郎を除いた全員が身構える。

 

そして、渦巻いていた魔力が落ち着くと彼女の服装ががらりと変わっていた。

 

先程までは後頭部付近で黒いリボンによって纏められていた髪はシニヨンに変わり、青を基調としたドレスのような衣服、そして胸部や腕、腰周りに最低限身を守る為に装備された鎧。

 

そして一番目を引くのは彼女が突き出している手。

 

そこには何も無いように見えるが、確かに何かが存在している。

 

現に彼女の手は何かを掴んでいるように虚空を掴んでいる。

 

「改めて自己紹介を。私はアルトリア・ペンドラゴン。あなた方が知るブリテンの王アーサー王です」

 

威風堂々。

 

そんな言葉が良く似合う姿だった。

 

「でも彼は…」

 

「ええ、彼の王は男性の筈ですが?」

 

リアスの言葉を引き継ぐように朱乃が質問した。

 

後世ではアーサー王は男性の王であり、グゥイネヴィアを妃としている。

 

ブリテンが崩壊した原因、グゥイネヴィア妃とランスロットの恋、そして王の姉魔女モルガンが王を魔法で操り出来た息子反逆者モードレッド。

 

それが彼の王が男性であることを如実に語っている。

 

しかし、ここにきて知識に乏しい一誠が疑問の声を上げた。

 

「部長」

 

「何かしら、一誠?」

 

「アーサー王て誰ですか…?」

 

「「「…」」」

 

部室内に何とも言えない空気が流れる。

 

そんな空気に耐えかね、裕斗が一誠にアーサー王について教える。

 

「アーサー王は彼女が言っていた通りブリテン、今で言うイギリスを治めていた王様。『騎士王』とも呼ばれていた人だよ。聖剣エクスカリバーを携え、円卓の騎士と呼ばれる騎士を率いて異民族と戦ったんだ」

 

「へぇ~凄い人なんだな…。て、アル、ペンドラゴンさんて王様なのか?!」

 

裕斗の説明を聞き、遅れて驚く一誠に微妙な表情を浮かべる面々。

 

「それで、貴女は自身のことをアーサー王だと名乗ったけれど。そもそも聖剣を携えていたとはいえ、ただの人間であったアーサー王が何故現代まで生きているのかしら?」

 

「そう、ですね。ではその辺りの説明もしましょう。ですがその前にあなた方は『聖杯戦争』を知っていますか?」

 

「「「聖杯戦争?」」」

 

聞き慣れない単語に首を傾げる士郎を除いた面々。しかし、リアスだけは何かを思い出そうとするような表情をしていた。

 

「少し聞き覚えがあるわ。確か魔術師たちが造り出した第三魔法の産物、万能の願望機『聖杯』を奪い合う魔術儀式だったかしら?」

 

「はい。以前私とシロウはその儀式に参加していました。私は願いを叶える為、シロウはその儀式を止める為」

 

アルトリアは昔を思い出すように語りだした。自身の願いの発端と血生臭い戦いの日々、そして今日ここに至るまでの事柄を。

 

 

ー◇ー

 

 

アルトリアが語り終えると部室内はシン、と静まりかえっていた。

 

それはそうだろう。

 

彼女が語った内容は想像を絶するものだったのだから。

 

世界との契約…

 

魔術師同士の殺し合い…

 

汚染された聖杯の破壊…

 

自身が住んでいた町で起こっていた戦いに皆が信じられない気持ちを抱えつつ、確かに不可思議な事件・事故が多発していた時期があったことを思い出し、妙に納得してしまうという、良くわからない心情を抱いていた。

 

「…聖杯を破壊した私はシロウと別れ、世界によってカムランの丘へ戻されました。そこからベディヴィエールによって安全な森へと運ばれ、彼に『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』を湖の乙女に還すよう言い付け息を引き取りました」

 

「ですが、またすぐに目を覚ましました。私も最初は混乱したのですが、私は私の血を引く一族の子供として再び生を受けました。幾度かの転生を繰り返し、今回士郎の生きる時代になりました。恐らくマーリンの仕業でしょうが、今回ばかりは感謝しても良いと思いました」

 

「そして今に至る、と」

 

黒うさぎがそう締めると、アルトリアはええ、と頷き口を閉じた。

 

「貴女の言葉が嘘だとは思わないけれど、他に貴女がアーサー王であるという証拠はあるかしら?」

 

リアスがそう尋ねると、アルトリアは少し考えたあと

 

「私から出来る限り離れて下さい」

 

と言った。

 

全員が離れたのを確認した彼女は再び魔力を放出する。

 

すると彼女の手元が輝きを放ち始めた。

 

その輝きは一瞬で剣の形を取り、アルトリアの手には光輝く一振りの剣が握られていた。

 

「それは…」

 

「はい。これが星が鍛えし聖剣『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』です。そしてもうひとつ、彼の左腕に宿った赤き竜、ウェルシュ・ドラゴン。もう目覚めているのでしょう?」

 

『気付いていたか』

 

「当然です。私には貴方の因子が組み込まれている。気付かない方がおかしい」

 

アルトリアが一誠の左腕に語りかけると、彼が呼び出した訳でもないのに独りでに赤い籠手が出現していた。

 

『それもそうか。それより聖剣を鞘に納めるがいい。悪魔の坊主どもが倒れるぞ』

 

籠手に封印されし竜に指摘され、周囲を見渡すと確かにグレモリー眷属は荒く息を吐き、吸血鬼である古城も冷や汗をかいていた。

 

アルトリアは直ぐに『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』を風の鞘にしまった。

 

「申し訳ない。あなた方が悪魔であったことを失念していた」

 

「大丈夫よ。もともとお願いしたのはこちらだから」

 

それより、と息を整えたリアスは一誠の左腕に注目する。

 

すると全員の視線も同じように彼の左腕に向いた。

 

「お前、喋れたのか?」

 

『ああ、まだ暫くは眠っているはずだったんだがな、あの娘の俺の因子に触発される形で目覚めた』

 

「じゃあ…」

 

『ああ、間違いない。その娘はアーサー王に連なるもの。王であった記憶があるならば、本人と言っても差し支えないだろう』

 

 

ー◇ー

 

 

「それで、何故貴女はこの学園に来たのかしら?」

 

「それは…」

 

リアスが尋ねると学園の制服に戻ったアルトリアはが、先程までの凛とした表情を崩し、士郎に寄り添う。

 

その表情は完全に恋する少女のそれだった。

 

「…士郎と、その、一緒に居たくて」

 

「アルトリア…」

 

「士郎…」

 

見つめ合う2人。

 

「おほん」

 

「「…っ」」

 

リアスの咳払いで我に返ったのか、2人は顔を逸らす。

 

2人の顔はりんごのように真っ赤になっていた。

 

「貴女の顔を見れば嘘でないのは明白ね。ただ、貴女にもオカルト研究部に所属してもらうわ。流石に聖剣の担い手を在野に放っては置けないのよ」

 

「…いいでしょう。貴女方の立場もわかっているつもりですから」

 

「助かるわ」

 

その後、細かい部分を話し合い今日は解散となった。

 

話し合いの中リアスは終始思い悩むような表情をしていた。

 

後日、アルトリアがオカルト研究部に入部したことはたちまち校内に知れ渡り、一誠関係で一時騒然(兵藤に汚される(主に女子)やら、羨ましい(主に男子)やら)となったが、士郎とアルトリアの関係が分かると騒動は収まった。

 

 

ー◇ー

 

 

「今日も契約取れなかったぜ…」

 

『あまり落ち込むな、相棒。まだこれからだ』

 

「…そうだよな。サンキュードライグ」

 

現在一誠は悪魔の仕事を終え、帰宅し、自身のベッドで寛いでいた。

 

『神器』に宿っている赤き竜、ドライグが目覚めてからは、就寝する前に彼と会話をするのが一誠の日課となっていた。

 

『相棒、そろそろ寝なくていいのか?』

 

「ん?ああ、もうこんな時間か。そうだなもう寝るわ」

 

『ああ、良く眠れ相棒』

 

おやすみ、と言いながら籠手を消し、いざ眠ろうとした瞬間、一誠の部屋の中心に魔方陣が展開された。

 

「な、何だ?!」

 

驚いて一誠が飛び起きると、魔方陣の中心には一誠の主リアス・グレモリーが制服姿で立っていた。

 

「一誠」

 

「は、はいっ!」

 

「私を抱きなさい」

 

ーDAKU、ダク、だく、抱く…抱く⁉抱くって、そ、そういう抱くか?い、いや、抱き締めろってことかもしれないし、いやでも…

 

混乱する一誠を置き去りに、事態は更に進む。

 

部屋の中心にいたリアスが徐に一誠に近づき、そのまま彼を押し倒した。

 

絵面的には完全に男女逆だが、リアスはそんなことお構い無しに一誠に馬乗りの状態から、いつの間にか脱いでいた上着を放り投げ、シャツのボタンもあっという間に外してしまった。

 

途端、先程まで押さえ付けていたシャツから解放され、ブラジャー越しではあるが、形の良い胸が一誠の前にさらけ出された。

 

「ち、ちょ、ちょっと待って下さい部長!何が何だか…」

 

そこから、一誠の寝間着に手を掛けたリアスに、流石の一誠も慌ててリアスを止めに掛かる。

 

エロいことは大歓迎だが、流石に訳も分からぬまま、敬愛する部長と関係を持つわけにはいかない、その精神で自身の性欲を理性で押さえ付ける。

 

「理由は終わった後で話すわ。それとも、私では不満かしら?」

 

滅相も御座いません、と一誠が首を左右に振った瞬間、再び、部屋の中心に魔方陣が展開される。

 

「時間切れね…」

 

「はい。ですから、すぐに衣服を正して下さいリアス様」

 

魔方陣から新たな人物が現れた。

 

銀髪を揺らしながら現れたのは、メイド服の女性だった。

 

「ずいぶん早かったわね」

 

「グレモリー家のメイドですので。当然です」

 

メイド服の女性はリアスから一誠に身体ごと向き、姿勢良く腰を折る。

 

「夜分遅くに失礼しました。私はグレモリー家に仕えるメイド、『グレイフィア・ルキフグス』です。以後お見知りおきを」

 

「ど、どうも。部長の眷属兵藤一誠です」

 

「リアス様、私は先に戻ります。お早くお戻り下さい」

 

「わかったわ」

 

そう言うやいなや、彼女は魔方陣を展開し、姿を消した。

 

「一誠ごめんなさいね。今日のことは忘れて」

 

「は、はあ…」

 

「今日はこれで許してちょうだい」

 

呆けた一誠の額にキスを落とし、彼女もグレイフィア同様、魔方陣から帰っていった。

 

「一体何だったんだ…?」

 

部屋には全く状況を飲み込めず、圧倒され続けた一誠だけが残された。

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