フルダイブゲームシステム金髪赤眼のスナイパー、強制ログアウトで女子化しました。   作:中島しのぶ

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運営が出してきた提案

「こんばんわ〜。お待ちしておりました」

「夜遅くに申し訳ございません。ではおじゃまします」営業本部長は、夜に時間指定をしたのはこっちなのにあくまでも丁寧だな……。

 一方開発総責任者は「おじゃまします」とだけ。普通だな。

「あ、お二方もいらっしゃるんですね」と靴を見た本部長。

「はい、三人は仕事でも同じグループでして、いつも一緒なんですよ」と、予防線を張っておく。

「あ、それはこちらも助かります」ん? なんか意味深な事を言うな……。

「では、リビングの方へ」と今回はちゃんとスリッパをお出しして迎え入れる。

「夜分、恐れ入ります。みなさまお揃いで」

「おじゃまします」

「いらっしゃいませ、ただいまお茶を……」とアズサちゃんが席を立つ。

「あ、お構いなく。高岡様、電話でもお伺いしましたが、不都合などございませんでしたか?」

「はい、事前に会社の方へアバターの件は英明が伝えていてくれたので混乱はあまりなかったですが、少々疲れましたので早く上がりました」

「お疲れ様でした……では、早速ですが、弊社からの示談提案をお持ちしましたので、ご覧ください」

 

 そこにはこう書かれていた――。

 

 

『 示 談 書 』

 

 高岡 忍(以下「甲」とする)と『VRMMORPG BulletS II』運営会社アストラル・ゲームス(以下「乙」とする)は本日当事者間にて以下のとおり合意した。

 第1条(事実確認)

 甲と乙は以下の事実があったことを認める。

 

(中略)

 

 第6条(保証人)

 保証人 アストラル・ゲームス 営業本部長 栗山エイジ(以下「丙」という)は本契約における乙の債務を保証し乙と連帯して債務を履行することを約した。

 第7条(その他)

 甲が第1条第2項から従前の状態に戻っても第2条は履行されるものとする。

 

 甲乙丙は本示談書の作成により本証書に定めるほかなんらの債権債務が存在せず本示談書に定めるほか互いに金銭その他の請求をしないことを相互に確認する。

 以上の示談成立の証として本書3通を作成し甲乙丙により各自一通ずつ所持するものとする。

 

合意日

 20XX年XX月XX日

 住所 TS市TS区絶対領域4─1─2.5─606

 氏名 高岡 忍  (印)

 アストラル・ゲームス 代表取締役 栗山エイジ (印)

 アストラル・ゲームス 営業本部長 栗山エイジ (印)

 

 

「す、すごい金額ですね……って、栗山さん社長だったんですか?」

「ええ、恥ずかしながら最初から身分を明かしてしまうと高岡様が警戒してしまうのではないかと思いまして」

「まぁソフト業界の営業でもたまにありますね」

「じゃ、一項目目から見ていこうか」と英明は冷静だ。

 ここは任せておこう。

「はい、よろしくお願いします」と営業本部長改め、代表取締役の栗山さん。

「第1条の事実確認は、特になし。第2条の金額、これは忍がオーケーならこれでいいんじゃないか?」

「うん、貰いすぎかもだけど、今後の事を考えると……とりあえずオッケー」

「ああ。第3条の遅延損害金は飛ばして……問題は第4条だな」

「うん。転居に関しては同意できるけど、1項の『甲は乙が承認した条件下で甲の望む居所に転居し居住する』ってのは、オレ……いや、わたしが望んだ条件を、栗山さんが飲んでくれれば、例えばこの三人で同じ場所に住むってことも可能なんですか?」

「ええ、実は私も高岡様がそうおっしゃられるのではないかなと、うすうす思っておりまして……逆にお三方が一緒の方が、いろいろリスクが低いのではと考えております」

「それは、栗山さんにも何か『メリット』がある……ってことか?」と英明が突っ込む。

「はい。言い方は悪いですが、みなさま今回の件について知りすぎてしまっている……被害者ですので……というのもありますし、マスコミ対策、風評対策も考慮しております」

「確かにな。ま、第5条にあるようなことは考えてもいないし、しようとも思ってない。逆にマスコミに押しかけられるのはごめんだし、御社としても賢明な判断だな。でも、移転先に監視カメラや盗聴器があるのは願い下げだがな」

「はい、移転先はお三方でご納得いただける物件を選定してお引っ越しいただければ、第4項にある通り引っ越し費用と居住費用はこちらで負担いたしますので、そのようなことはございません。それでもお疑いでしたら、入居後にカメラや盗聴器のチェックをしてくださっても構いませんので」

「え? 居住費用って家賃もですか?」

「はい」

「いろいろ御社の負担が多過ぎじゃ……とりあえずは信用するとして……4条の2項に戻るけど、これは本当に忍の精密検査だけに留まるのか?」

「実は高岡様の一刻も一早いVRMMORPG BulletSへの復帰を望んでの事でして、精密検査も行いますが、再LOGONテストも行う予定です」

「え?」

「はい。意外かと思われますが、現在レジェンドと言ってもいいチームS・Sのシノブ様の不在がVRMMORPG BulletS内およびSNSでちょっとした話題になっておりまして……」

「そ、そんな事に?」そういえば自分の事で精一杯で、SNSなんて全然チェックしていなかった。

「なにしろネット内の事なので何がどう転ぶかわからないものでして、VRMMORPG BulletSの評判にも影響がありますので」

「じゃ、転居より先に精密検査と再LOGONテストをやって、忍が正常にLOGONできるかが優先事項ってことか」

「そのとおりです」

「ちょっと三人で相談させてくれるか?」と英明。

「はい、それでは私共は一旦……1時間ほど駅前にでも行きますので、その間にご相談していただけますでしょうか?」

「うん。いいよね英明?」

「ああ」

「では、後ほどまたお伺いいたします」と、二人は出ていった。

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