タウイタウイの美少女? 提督とアレな仲間達   作:ゆっくりいんⅡ

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オリジナルの合間の息抜きに一つ書いてみました。まあ……我ながら、これは酷いとしか言いようがない。

こっちはオリジナルが躓いたら順次書いていく予定です


扶桑・山城編 姉妹愛も程々に

(扶桑視点)

 皆様始めまして、私は扶桑型戦艦の一番艦の艦娘(かんむす)、現在は航空戦艦となった扶桑と申します。只今私達の上司、提督に呼ばれて執務室に向かっているところです。

 あ、知らない方に説明しますと、艦娘というのは太平洋戦争、一般的には第二次世界大戦でしょうか? その戦争で活躍した日本の帝国海軍が使用していた軍艦が、何らかの理由で人、それも全員女性の形として生まれ変わったもの。それが私達です。

 そして、そんな私達を指揮し、導いてくれるのが提督。その他にも私達と人類共通の敵である深海凄艦や、鎮守府のことなど話すことは色々あるのですが……そちらはまた別の機会、別の艦娘にお任せしましょう。

「提督、失礼しま――」

 さて改めて、私はノックしてから扉を開けたのですが、途中で言葉を詰まらせてしまいました。

「ああ、来てくれたか扶桑。急に呼び出してすまんな」

 座って出迎えてくれたのは、襟元に中将の階級章が輝く、私達の提督。私の失言(?)を気にした様子もなく、気遣いの言葉を掛けてくださいます。

 それにしても、相変わらず提督は綺麗な方です。腰まで伸びた艶やかな黒髪、白い軍服に包まれた肢体は華奢で、肌は雪のように真っ白。白百合のような美しさを連想させます。

 二十代らしいですが、十代の少女でも通る若々しさで愛らしく、声も高いのでどこか幼く感じさせます。目付きはちょっと悪いですが、それも魅力の一つですね。

 もっとも、提督本人にそれを言うと、凄く微妙な顔で「その賛辞に、男である俺はどう反応したら正解なんだ」と仰られますが。

 ……ええそうです、男性です。私達艦娘も羨む美貌を持つ提督は、れっきとした男の人なのです。人の身になってつくづく思うのですが、世の中は不平等で、提督は生まれる性別を間違えています、本当に。

 でも提督に、「男と比べるな、大体お前だって美人だろ。大和撫子系の」と臆面もなく言われると、嬉しいやら恥ずかしいやらなのですが――

「扶桑?」

 ……いい加減、逃避してないで現実を見ましょう。

 とはいえ、執務室にいるもう一人、扶桑型二番艦、つまり妹の山城が床に倒れて気絶している状況を見て、どうすればいいのかは思いつきませんが。

 ……一体、何があったのでしょうか。

「あの、提督? 山城はどうしたんですか? 何か失礼なことでも」

 私が尋ねると、提督は困った顔になります。僅かな変化ですが、常に仏頂面なこの人にしては珍しいことです。

「急に入ってきたと思ったら、「扶桑姉様の仇!」って言いながら襲い掛かってきた。勢いで返り討ちにしてしまったんだが……

 仇って言われても心当たりがないし、扶桑は何か知らないか?」

 ……何をやっているのでしょうか、我が妹は。上官である提督に理由もなく暴力を振るうなど、軍令違反とかそういうレベルを超えています。

 幸いにも、提督に怪我はないようです。というか、仮にも人の形をしているとはいえ、軍艦である山城を返り討ちにするあたり、提督も大概非常識ですよね……

 まあ、提督に(物理的に)やられる艦娘達の光景は、この鎮守府では日常と化しているのですが。

「いえ、私も何も……」

 物言いは皮肉っぽいですが、提督はお優しい方です(本人は否定するでしょうが。つんでれ、というのでしょうか?)。私はこの方に返しきれないほどの恩をもらっていても、恨まれるようなことは何一つされていません。

「(小)……伊勢日向よりも重宝してもらってますし、錬度も上ですし」

「何か言ったか?」

「あ、いえ、何も。とりあえず、山城を起こして話を聞いてみては?」

 手っ取り早い解決方法を提案してみますが、提督の表情は変わらず。あまり乗り気ではないようです。

「また襲われても困るんだが……(小)ぶっちゃけ面倒だし」

 ……提督、聞こえてます。

 でも確かに、山城が再び提督に襲い掛かるのも困りますので、私が起こすことになりました。

「山城、起き――」

「姉様!?」

 声を掛けると、言い切る前に白目の気絶状態から飛び起き、私の肩を掴んでくる我が妹。……そういう超反応は、戦場で役立てて頂戴。

「姉様、大丈夫ですか清いままですか!?」

「あ、あの、山城?」

 山城は真剣な顔ですが、私には何を言っているのか分かりません。というか清いって、それは、その……

 『そういう意味』だと理解してしまい、自然顔を赤くしてしまう私を見て何を勘違いしたのでしょうか、山城は沈痛表情で顔を伏せてしまいます。

「おいたわしや扶桑姉様、下衆提督に身も心も穢されてしまったのですね……かくなる上はこの山城、全身全霊を以て姉様を癒します!」

 展開に付いていけずにいると、山城の手は私の服にかかり、顔も徐々に近付いてきます。息が荒いわよ山城?

「山城ダメよ、提督の前でこんな……」

「寧ろ見せ付けてやりましょう姉様。私達が愛し合っている様を目に焼き付ければ、提督も二度と手を出さなくなる筈です」

 その理屈はおかしいと思うわよ、山城……そもそも、前提からしておかしいのですが。

 どうすればいいのか分からないでいる私を見て了承の合図と取ったのか、山城は益々密着して潤んだ瞳で私を見てきます。

「大丈夫です扶桑姉様。私に身を委ねて――」

「やめんかアホタレ」

 ヒュ、ゴスン

「あいた!?」

 提督が投げ付けたCDケースがクリーンヒットした事で、山城はようやく止まってくれました。

 痛そうにはしていますが、仮にも艦娘なので怪我はないでしょう。

「何するんですか下衆提督!? もう少しで姉様と念願の蜜月を果たし――癒して差し上げられたのに!」

「隠す気ないのかお前は。黙って聞いてれば、お前の欲望を満たすために冤罪+百合シーン強制視聴なんていう罰ゲームを喰らわされる俺の身にもなれ」

「……まさか、提督も交ざりたかったんですか? (小)……姉妹丼とか、流石は下衆の極み……」

「何をどう解釈したらそうなる。というかお前、扶桑に何する気だったんだ」

 溜息を吐いている提督に、山城は私から離れて目を見開き、

「もちろん、〔ピーーー〕した後、全身を〔ピーーーー〕して〔ピー〕して〔ピー〕もして、最後に〔エラーが発生しました〕ですあいたたたたたたた!?」

「誰が詳細を言えと言った」

 鼻息荒くその、女性が言うべきではない言葉を連発する山城の顔に、提督のアイアンクローが入りました。

 ギギギギギギギギギギ

 山城は逃れようともがきますが、提督のアイアンクローは決まったら最後、離してくださるまで痛みに悶えるしかないそうです。

 良くこれを喰らっている一人の五十鈴さん曰く、「0フレームでガード不可とかどうしろっていうのよ……」とのこと。やられたことはないのでよく分からないですが、凄いそうです。

 メキメキメキメキメキメキメキ 

 頭蓋からしてはいけない音が聞こえ始めた辺りで、提督が手を放しました。

「落ち着いたか?」

「はい……」

 顔をさすりつつ提督を睨む山城ですが、今のはあなたが悪いわよ……

「で、俺が扶桑に何したってしょうもないデマ流したアホはどいつだ? (小)大体予想付くが。あとはコイツの妄想か」

「自分は潔白だと言い訳するつもりですか? 男って皆そうですよね……」

「こんな時だけ男扱いするな」

 溜息を吐く提督と、睨みつける山城。当事者である私は置いてけぼり気味ですが、黙って見ているのが賢明でしょう。

 ちなみに山城は、『提督を女の子にしようの会』というのに参加しているらしく、事ある毎に提督を女装させたり女喋りにさせようと画策しているそうです。

 え、何でそんなことを知ってるか、ですか? ……本人が嬉々として私に語っていましたから。「形だけでも提督が本当に女の子だったら、色々許せる気がするんです」とは山城の弁ですが、何を許す気なんでしょう?

 ちなみに提督はその話を聞いて、「ウチの優秀な連中はどうしてこんなのばかりなんだ……」と天を仰いでいました。……ご愁傷様です。

「とぼけてもネタは上がってるんです! 鈴谷さんが懇切丁寧に教えてくれたんですから!」

「おいちょっと鈴谷呼べあと熊野も」

 ビシリと指を刺す山城を無視し、提督は傍の受話器で早口に指示を出します。私もその名前を聞いた途端、今回の全貌が見えてしまいました。

 最上型重巡洋艦三番艦、現在は航空巡洋艦の鈴谷さん。彼女は提督も認める優秀な方なのですが……

 その、ハレンチなことに関してあることないこと言って回る癖がありまして、提督へのセクハラも日常と化している、ちょっと困った人です。

 彼女の話を真に受ける人はほとんどいないのですが、どうやら山城はその数少ない例外だったようで――

「チーッス提督、どしたの急に?」

 軽い挨拶をしながら入ってくるのが鈴谷さん、その後に入ってくるのは鈴谷さんの姉妹艦で四番艦の熊野さん。

 大体事情を察しているのか、鈴谷さんを見る熊野さんの目は呆れています。

「おい鈴谷、山城に何吹き込んだ」

 嘘は許さんとばかりにギロリと鈴谷さんを睨む提督。この目で睨まれて言い逃れが出来る艦娘は、我が鎮守府には一人もいません。

 バッと勢いよく目を逸らす鈴谷さん、冷や汗も流れてます。心当たりがありまくるようです。

「こっち見てキリキリ吐け」

「いやー、その、さ? 昨日扶桑さん秘書官だったじゃん? しかも皆出撃やら遠征でほとんど出払ってたから二人っきりなんだし、つい出来心で憶測を」

「本音は」

「山城に面白がってあること無いことエロイこと吹きこんぢった♪ 具体的には〔ピー〕とか〔ピーーー〕とか〔エラーが発生しました〕とか」

 てへぺろとサムズアップする鈴谷さん。

「熊野」

「承りましてよ。とおお↑おぅ↓!!」

 ゴミを見るような目の提督が熊野さんの名前を呼ぶと、

 ゴスン!!

「グベァ!?」

 熊野さんのラリアットが綺麗に極まり、鈴谷さんはその場にひっくり返りました。艦娘同士だとダメージが違うのか、中々起き上がれそうにありません。

「まったく鈴谷は、はしたないことばかり言うものではありませんわよ?」

「ラリアットははしたないとかそれ以前の問題じゃないかなくまのんー……?」

「レディの嗜みですわ。あとくまのん言うなですわ」

 倒れた鈴谷さんを見下ろしながら手を払う熊野さん。とりあえず、ラリアットは淑女の嗜みと違うと思います。

「提督、終わりましたわ」

「毎度悪いな熊野。後で茶でもご馳走するぞ」

「あら、お気になさらなくてもいいですのよ。親友が間違った道を歩もうとしてるなら、説得して道を正すのが親友ですもの」

「説得(物理)ってありなん……?」

「ですが折角ですし――貰ってあげてもいいけど?」

「そうしてくれると助かる、男の面子って奴だ」

「鈴谷のこと無視ですかーそうですかー……」

 ウインクをする熊野さんと、男の面子を語る美少女提督(♂)。間で無視されてる鈴谷さんが若干哀れですが、自業自得です。

「さ、鈴谷。提督の執務を邪魔してはいけませんわ。帰ったらお説教ですわよ」

「この上説教とかどんだけー……提督、ぷりーずへるぷみー。お礼にイイコトするよー?」

 ヒュ、ゴスン

「いでっ!?」

「少し頭冷やせ」

「お説教、プラス一時間ですわね」

 投げた本の角が額に当たり、悶絶しつつ熊野さんに引きずられながら鈴谷さんは消えていきました。

「という訳で山城、誤解だった訳だが」

「提督、私は信じてました!」

「どの口が言うか。大方嘘だと分かってて扶桑とナニする口実にしたんだろ」

「ナ、ナンノコトデショウカ?」

 バン!

「ナニすると聞いて!」

 ドゴス!!

「ぐぺぇ!?」

「お説教プラス三時間ですわね」

 ズルズルズル。

 引き摺られていく鈴谷さん、提督に睨まれて盛大に眼を逸らす山城。

「……クスッ」

 混沌とした状況に、思わず笑いが込み上げてしまいます。

 轟沈や理不尽な命令はなく、妹や提督、仲間が欠けることなくいる日常。少し騒がしいが、あの時に比べれば望外に幸せな状況でしょう(小)提督のお陰で、伊勢や日向にも勝ってますし

 どうかこんな日が、いつまでも続きますように。

「綺麗に終わらせようとしても願い下げだ」

 ……提督、立場上(ツッコミ)大変なのは分かりますが、山城を睨みながら心を読まないでください。

 

 余談

 後日、山城は罰として主砲を全て外し、艦載機を満載して潜水艦狩りに出撃しました。

 出撃前、「こ、これで勝ったと思わないことですね!」と提督に言っていましたが、MVPを取る戦果を上げた山城は、嬉しそうに戦果を語り、提督のことを褒めていました。

 ……山城も、提督に対してはつんでれなのかしら? 

 

 

 

 

 




扶桑姉さまは癒やしキャラだと思うんですが、どうですかね? そして山城……姉妹愛とは行き過ぎるとこういうものかと思って(嘘
あとこれ、どこに謝ればいいのかな……提督の皆さん、嫁艦がアレでも最後まで読んだら作者を許してくださいね?(はぁと)

感想・誤字脱字指摘、よろしくお願いします。

次回:春雨(予定)

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