タウイタウイの美少女? 提督とアレな仲間達 作:ゆっくりいんⅡ
「な~が~と~さ~ん~? ちょおっといいですかぁ?」
「!? な、なんだ文月か。何か用か?」
「はい、御用ですよぉ~。娯楽品関係のことで、お聞きしたいことがあるので」
「(字がおかしいような……)私は経理関係に携わってないのだが」
「い~え~、大したことではないですよぉ~。ただちょっと、用途不明の購入品があったので聞いて回ってるのです」
「な、なんのことだ?」
「目が泳いでますよ~?」
「急に海が恋しくなってな」
「あと、心当たりがない人が『なんのことだ?』はおかしくないですか~? 普通詳しくない人は『そんなのがあったのか』、って言うと思いますよぉ?」
「言葉の綾だろう。そんな探るような目で見られては、変な言い回しも出てしまう」
「そうですか? そうかもしれませんね~。ごめんなさい、疑い深くなっちゃってたみたいです(´・ω・`)ショボーン」
「気にするな、それが仕事だからな」(しょんぼりしてる文月可愛いなあ)
「あたし、探偵さんじゃないんですけどね~」
(苦笑してる文月も可愛いなあ)
「ところで長門さん」
「ん、何だ?」
「最近、皐月お姉ちゃんにクマさんのぬいぐるみをあげたらしいと聞いたんですが~」※軽巡の方ではない
「あ、ああ。皐月が女の子らしい部分もあることをアピールしたいと聞いたからつい、な。それがどうした?」
「あれって、外地でしか買えないものですよね~?」
「それはほら、あれだ。ネット通販があるからな」
「自由に使えるお金がないのに~?」
「あ」
…………
「な~が~と~さ~ん~?」(ニコニコ)
「い、いやその、あれだ。そうだ! 提督に頼んで」
「しれーかんに頼んだとしても、経費で落とす時はあたしに報告が来るんですけどねぇ~?」
「……忘れていたのではないか? 提督も忙しいのだからな」
「しれーかんがそんなミスをするかなぁ~?」
「提督も人の子だからな、間違いもあるだろう」
「まあそうだ、間違いは誰にでもある。もっとも、お前からそんな頼みを受けた記憶は欠片もないが」
「!!??」
後ろから声を掛けると長門は心底驚いた顔で振り返り、俺――提督の姿を見つける。次いで冷や汗がダラダラと流れ出す。
ちなみに、話は廊下の曲がり角で最初から聞いていた(気配を消して)。長門は気付いていなかったが、文月は――気付いていたとしてもそんなに不思議には感じない。
「提督……これはだな、あの」
「人のせいにしようとかいい度胸してるな、長門」
「しれーかんのせいにするなんて、罪は重いですよぉ~?」
いつも通り淡々とした自分とニコニコ顔の文月に詰め寄られ、長門はジリジリと後退しながら口を動かしていたが、やがて目を鋭くしてキリッとした顔つきになり、
「たかだか数千円だろう、鎮守府全体からすれば小銭――」
「小銭だろうと金は金だ」
「ちょっとでも盗むのはいけないんだよぉ~?」
開き直ろうとしたので先手で叩き潰した。そんな理屈は握り潰す。
そして文月の笑みが深まった。これは怒りゲージが上がっている証拠である。
「前回から懲りてないですね~。これはぁ……『お仕置き』も倍かなぁ?」
ビクゥ!!!
それまで虚勢を張っていた長門は一気に顔が青くなり、震えながら文月に視線を移す。
世界のビッグ7が旧型駆逐艦に脅えている。一見すると信じられない光景だが、この鎮守府で似たような光景は多々ある。
「ま、待て文月!! 私が悪かった、だからお仕置きは勘弁」
「だめで~す。さぁ~、悪い子はどんどんしまっちゃおうねぇ~」
「い、いやだあああぁぁぁまだ死にたくなーーーーい!! せめて戦いの中で!!」
「あは~、大袈裟だよぉ長門さん。ちょ~~~と、『オハナシ』するだけだよぉ~?」
さあ行きましょうね~、と文月にドナドナされていく長門。普通に考えて重量も馬力も段違いな長門を引きずるのは不可能なのだが、細かいことを気にしたら負けだ。
そして残された俺はというと、
「仕事に戻るか」
放置である。所詮長門の自業自得だし、文月に任せれば『しばらくは』大人しくしているだろう。
どいつもこいつも懲りないので、また似たようなことをやらかすだろうが。
「……」
懲りない連中(艦娘)の顔を思い出し、俺は溜息を吐いた。
二時間後、書類仕事を一通り終えてから報告があるため、俺は鎮守府内の『内務長官室』とプレートに書かれた部屋をノックする。
「はぁ~い、空いてますよ~」
少し舌っ足らずで甘い声が中から聞こえ、ドアを開く。
元は質素な執務用の部屋だったが、現在は部屋の主によりぬいぐるみや簡易ベッド、鏡台やお菓子入れなどが溢れた女子らしい部屋になっている。その真ん中には、実用性と愛らしさを兼ね備えた机の前には、
「あ、しれーかーん。いらっしゃ~い」
ニコニコ笑顔でこちらを出迎えてくれる、部屋の主文月。机の上には『内務長官』の札が立てられている。
この鎮守府には大まかに二種類の部署が存在し、それぞれ『実務班』と『内務班』と呼ばれている。
実務班は海域の攻略や掃討作戦への従事、遠征など他の鎮守府でも艦娘達が行っている業務全般を指し。
内務班は経費の管理や上層部に提出する書類や許可証の処理など、一般に提督・秘書官が行う雑務を業務とする。
その中で『内務長官』は内務班における最高権力者、要するに内務班のトップである(名前は適当)。
ちなみに文月は二代目長官で、初代は我がタウイ伯地の初代秘書官だ。
まあ何が言いたいかというと、幼い外見に反して鎮守府屈指のやり手である。
「邪魔する。上層部からの新海域に関する報告、持ってきたぞ」
「あ、もうできたんだぁ。ありがとぉね~しれーかーん♪」
「礼はいいから確認してくれ」
「も~、しれーかんはせっかちさんだなぁ」
ぷう、と愛らしく頬を膨らませながらも書類を受け取り、端に設置したソファに移動する文月。手招きされたので俺も座ることにする。
ちなみにソファは一脚しかないので、必然隣り合うことになる。以前は買えよと突っ込んでいたが、「隣で一緒に座るのがいいの~」と文月が頑固に主張するため、好きにさせている。
「旗艦は秋津洲にしようと思うんだが」
「う~ん、秋津洲さん、練度は大丈夫かなぁ?」
「私見だが、問題ない範囲だろう。何より『ようやく戦闘で提督のお役に立てるかも!』と言ってたからな」
「そこまで張り切ってると応援したくなっちゃうねぇ。じゃあ遠征のサイクルを変えてぇ」
一枚の書類を見ながらなので肩と肩が触れ合う距離で話しているが、いつものことなので別段意識はしない。一々気にしていたら仕事にならないからだ。
「これでどうかなぁ?」
「……ん、最適だな。いつも助かる」
「えへへ~、しれーかんに褒められた~。じゃあ、お仕事終わり~?」
「そうだな、これが終わったから余裕はある」
書類をしまいながら告げると、文月はこれまでとは違う甘えた感じの笑みになり、
「じゃ~あ~……これでもくらえ~」
などと言いつつ、こちらの膝に飛び乗ってきた。羽のように軽いので大した衝撃はないが、突然来るのはやめて欲しい。
「毎度乗る時にそれを言うのはなんなんだ」
「これ言うと、乗ってやったぜ~って気分になるんだ~」
「つまり深い意味はないと」
「そうだね~。だがそれがいいんだよ~」
そう言いながら、嬉しそうに頭をぐりぐりと押し付けてくる。少しくすぐったい。
文月は公私の態度は分けるが、反動か仕事が終わると極端に甘えたがる。(他の連中と違って)邪なものは感じないし、相応の結果は出しているので拒みはしない。
寧ろ、仕事量を考えればこれでも少ないくらいだ。本人は「アタシはこれで充分だよ~」と言っているが、今度何か礼をするべきかもしれない。
「ね~ぇ~しれいかーん、髪結んで~」
「ん」
頷いて文月を抱えたまま前を向かせ、髪を解いて用意してあった櫛を髪に通す。
「ん~、ちょっとくすぐった~い」
「我慢しろ、引っ掛かるぞ」
解いた茶色の髪は癖のないストレートで、長いこと触っていたくなる柔らかさだ。ほのかに甘い匂いが漂っているようにも感じられる。
「んふ~。しれーかん、髪梳くのじょ~ず~」
「毎回やってるしな。自分のもあるし」
俺の髪は文月と同じロング。寝起きや風呂のあとに整えるのが面倒なのだが、切るのも勿体ない気がするのでそのままにしている。
「こうやって髪ほどくとさ~、あたしとしれーかんって姉妹みたいだね~」
「お前は姉がいるだろ。あと毎回言うが、俺となら姉妹じゃなくて兄妹だ」
「え~、でもしれ~かん、暁ちゃんに『理想のれでぃ』として見られてるでしょ~」
「……」
たしかに髪だけでなく体躯も男にしては華奢、顔立ちは女寄り「というより美少女だね~」割り込むな心読むな。
後は無意識だが動作の一つ一つが女らしさに溢れているらしく、声が高いのもあって女に間違われることは多い。反面口調はかなり荒いはずなのだが。暁が言う『理想のれでぃ』に関しては色々な誤解と偏見があったのだが、まあ今はどうでもいい話だ。
「にゅふふ~、お姉ちゃんが増えた~」
「だからお姉ちゃんと呼ぶなと……」
「ふにゅう~……ねむ~い」
「おい抱きつくなこっち向くな寝るな、髪結べないだろ」
眠そうな文月の飴玉(いちごみるく味)を放り込んで覚醒させ、髪を結っていく。髪型をいじるのは恒例で、自分で言うのもなんだが手付きは慣れたものである。
「できたぞ」
「ころころ~……わあ、かわいい~♪」
鏡を見せてやると、ツインテール姿の文月が映っていた。五十鈴や瑞鶴などのツインテールを参考にしたが、気に入ったようで何よりだ。
「しれーかん、写真撮ってしゃし~ん♪」
「はいはい」
無邪気にはしゃぐ文月の頼みに従い、ポケットから携帯を取り出して何枚か写真を撮る。文月が天使と言われるのも何となく分かるな、と笑顔をフィルムに収めながら益体のないことを考えつつ。
横で燃え尽きたように真っ白になり、「金は命より重い……金は命より重い……」と延々呟いている長門がいなければ、素直にそう思えたのだが。
その後しばらくは文月とじゃれあっていたが、仕事で疲れていたのか抱きついたまま眠ってしまい、服を掴んで離さないのでベッドに移し、そのまま寝かせてやることにした。甘えている時はつくづく離してくれない奴である。
長門? 面倒なので放置してた。その後どうなったかは知らん。
余談だが、文月は『怒らせてはいけないランキング』のベスト3に入っている。一位は知らないが、多分加賀とかだろう(すっとぼけ)。
後書き
腹黒というよりおっかないキャラになった、次は腹黒感のギャップを出していきたい。そして文月に「あは~」と言わせたいだけだった。反省も後悔もしていない。
どうも、ゆっくりいんⅡです。前回の艦これ小説投稿から何ヶ月たったかな……まあ、過去は振り返らないでいこうと思う(言い訳
今回はツイッターのフォロワーさんからのリクエストで、文月を書かせていただきました。ちなみに作者も文月教入信者です。世に文月のあらんことを(真顔
ちょっと短めかもしれませんが、ぶっちゃけ五時間の突貫作業で書いたものだ、許せ。嘘ですすいません今度はもっとしっかり書きます。ではもう眠気がやばいので、おさらば。
夏イベ楽しみですね!(白目
追記
こんな遅筆かつ未熟な作者ですが、書いて欲しい艦娘がいるという方がいましたら、コメントに記入してください。喜び勇んで書かせていただきます(良く知らない艦娘だと今回のものよりヒドイ出来になるかもしれませんが……すいません)。
ツイッターのアカウントも掲載しますので、良ければそちらからでも大丈夫です。ただ悪戯を防ぐため、フォローしていただいた方限定とさせていただきます。
おまけ キャラ紹介
提督
今回は大人しめだったドS男の娘提督。結果主義だが努力を蔑ろにしているわけではない。
真面目に頑張っている相手には、無自覚ながら少々甘い。変態が多いゆえの反動か。
鎮守府内の『お姉ちゃんと呼びたいランキング』1位(本人は知らない)。
文月
内務長官。立場は提督より下だが権限は実質提督と同クラス。彼女に指図できるのは一部の秘書官と提督くらいである。
別名『鎮守府の金庫番』。お金には厳しいが司令官には甘く、多少私的に使っても見逃すつもりである(提督はそういうことをしない性格だが)。
なお長門がどうやってああなったかは――知らぬが仏である。
長門
ロリコンビッグ7。駆逐艦の艦娘達に何かしてやっては下心ありで近付こうとするが、度々やっているので誰からも警戒されている。
実務班だが諸事情により海域に出ることはなく、演習で新人の訓練を主に担当している。
ちなみに今回の横領は初犯でないどころか既に二桁を数えられる回数である。「次やったら『お仕置き』は三倍かな~」とは文月の言。
暁
勘違いれでぃ。詳細はいずれ語る時があれば。