つくづく、僕はレミリアと友達になっておいて本当に良かったと思っている。
サニーたちみたいに僕の前世云々ひっくるめて受け入れ、優しくしてくれているから。僕だけじゃなくて、全ての妖精さんにほぼ同じ対応というのも、気まずくならなくて嬉しい。
館の皆との関係をとりなして、仲良く楽しく過ごせるように気遣ってくれるのもそう。
お陰様で美鈴にこあ、パチュリーに咲夜、フランにメイド妖精さんたちとは友達かそれに近しい関係になれたから、メイドの仕事が大変だけど楽しくて仕方がない。
後はそう、紅魔館として僕やスターだけでなく、サニーやルナの後ろ楯にもなってくれているのだ。
ない方がいいのは当然として、万が一が起こった時に間に入って仲介するなり、物理的に対応してもらえるとのこと。
それの対価はいらないと、強いて言うなら雇われメイドをこれからも長く続けて欲しいくらいだという。
言われなくたって、僕は雇われメイドを辞めるなんてことはしない。レミリア以外の皆も優しいし、休憩中に自由に食べれるお菓子や飲み物も美味しくて、働く時間とかも相談すればある程度の融通は利かせてくれる。
そして、働いた対価として甘やかしてくれるのみならず、逆にお金とか色々なものを僕に渡してくれるのだ。しかも、頑張って成果を出せば出しただけその量は増える。
こんなにも良いところなのに、どうして辞める必要があるのだろうかと、当時思わずそう返してしまう程だ。
でもまあ、いくらレミリアといえど心の中を覗ける訳じゃない。加えて、妖精にとても気を遣う性格だから、色々と心配に思うのも無理はないか。
「本当、メノウって楽しそうに仕事をするわね。お姉さま」
「ええ、そうね。お陰で咲夜と二大妖精長の休みも増やせて、館の皆の活気も増して、あの子経由で新しいメイド妖精も雇えている……本当に感謝でしかないわ。ありがとう、メノウ」
「えへへ。ところで、今日のおやつのお味はどう? 美味しい?」
「ふふ、そりゃあもう。わざわざ言うまでもないって感じ」
「スターが作ったんだっけ。私好みの甘さでとても美味しかったって、是非とも伝えておいて欲しいわ」
「うん、勿論伝えておくよ」
ちなみに今は、他のメイド妖精さん経由でレミリアとフランに、これで今日の仕事は最後にするからとだだっ広い紅魔館のバルコニーへ呼ばれ、希望に添っておやつや飲み物を用意したり話し相手をする仕事をこなしている。
綺麗に整備された紅魔館の庭園や、走り回ったり飛び回ったりして遊ぶ妖精さんを一望できるこの場所には、当然ながら屋根はない。
ただし、2人が吸血鬼さん故に苦手な日光を遮るために用意された、巨大なビーチパラソルはある。香霖堂で咲夜が買ってきたやつらしい。
今日は快晴、吸血鬼という種族にとっては豪雨に並んで悪天候。そのはずなのに、苦手とはいえそこまで致命的ではない2人にとっては、この程度の対策で事足りる。
何なら、フランに至っては直に日光を浴びてしまったとしても、肌荒れが気になったり、ちょっとヒリヒリしたり、ほんの少し疲れやすい気がして不快と思う程度で済んでしまうとのこと。
いつだかその話になった時、「引きこもりがちな私には過ぎた体質だわ」と笑っていたけれど、致命的な弱点が1つ減る安心感を得られるだけでも、僕は十分だと思う。
幻想郷の妖精さんのように、1回休みで復活できる特性を持っている訳ではないのだ。
「ねえ、メノウ。もし良ければなんだけど、明日も働きに来てもらえないかしら? 勿論、その分の釣り合いは数日以内に取ると約束するわ」
「明日も……? お休みなのに、どうして?」
「本当に申し訳ないのだけど、実は……」
なんてことを考えて、レミリアとフランに紅茶を注いで、魔法のバスケットからケーキを取り出したタイミング、レミリアから想像の範疇を超える提案を受けて驚いてしまう。
本来であれば、僕もスターも明日はお休みだから、サニーたちと一緒に博麗神社とか香霖堂で遊ばないかと、そう提案しようと思っていた。
(レミリア……)
けれど、明日は元々休みのメイド妖精さんが多い日だった上に、はしゃぎ過ぎて体調を崩してしまい、明日働けなくなったメイド妖精さんが結構出てしまったと聞けば、断ろうとする選択肢は消えた。
僕だけではなく、スターや咲夜にも頭を下げなから話を持ちかける程に、困り果てていたレミリア。
体調も良好、遊びの提案云々はサニーたちに伝えて相談する前、何よりレミリアは僕にとって、大切な友達の1人である。釣り合いも取ってくれるというのであれば、尚更そのお願いを断る理由はなくなる訳で。
「分かった。レミリアたちの助けになるならば、僕もやるよ」
「ふふっ。ありがとう、メノウ」
「やる気ばっちりね。ただ、もし途中で辛くなったりしたら遠慮なく私でも良いし、館の誰にでも良いから言いなさい。カバーするから」
「うん。心配してくれてありがと、フラン」
だからこそ、持ってきた最後の紅茶を2人のカップに淹れて、クッキーを出してから僕が返事を返すと、レミリアは勿論のこと話を聞いていたフランも、微笑み返してくれたのだった。
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「2人ならいつか、メノの料理目当てで会いに来るとは思っていたわ!」
「私たちの自慢の家族が良い意味で有名になっている……ふふっ、とても嬉しい」
幻想郷の実力者の間で急速に名前が広がっていっている、私やスター、ルナにとって大切な家族となってくれたメノ。
妖精としては本来あり得ない速さで飛ぶことと同じくらい、料理を含む家事能力の高さが文の新聞でも幾度となく記されてきてたし、白玉楼の2人ならあの子目当てでいつかは接触してくると思っていたけど、今日ついに来た。
しかも、魔理沙と一緒に来てメノの警戒心を極限まで和らげ、拒絶されないように気を遣っている。パッと見、妖夢はともかく幽々子の方は、余程メノの作りたて料理が食べたくて仕方ないらしい。
「あらあら、そうなのね~。まあ、あれ程の子が無名のままだなんて、余程のことがなければあり得ないわ」
「遅かれ早かれってやつですね、幽々子様」
「ふふーん。まだまだ語ろうと思えばいくらでも語れることがあるくらい、メノは凄い妖精なんだから!」
「ははっ、相も変わらずメノのことが好きなんだな。サニー」
「ええ! だって、ルナも言ってたけど、大切な私たちの家族だもの!」
スターやルナと同じくらい大切で、周りに胸を張って自慢できて、大好きな
何度でも言おう。私自身が何かしらで褒めてもらえるのより、何倍も何十倍も嬉しいことだ。
例え、褒めてくれた相手がメノとは未だに会ったことすらない、新聞や又聞きなどを介してしかメノを知らない、完全なる他人だったとしても。
そうすればきっと、考えたくもない地獄のような過去の記憶が幸せな思いで埋め尽くされて、結果的に排除されると思うから。
私があの子に願うのは、前世で負わされた心の傷が完全に塞がれ、より一層幸せになってくれることである。
「サニー、ルナ。ただい……びゃっ!」
「へぇ、珍しいお客さんだねー。メノ目当て?」
「ええ。ここで待ってても良いって言われたから、のんびり帰ってくるのを待ってたのよ~」
そうやって家族自慢をしたり、ちょっとしたお饅頭を食べたりしながら、白玉楼の2人組や魔理沙と楽しく話しながら待っていると、普段より少し早めにスターとメノが帰って来た。
私たちや魔理沙が居るとはいえ初対面であるためか、メノは椅子に座る幽々子と妖夢を視認するやいなや、可愛らしい驚き声を出し、視線も泳ぎ始めた上に表情も緊張のせいで固くなってしまっている。
加えて、自慢の目と耳で事前に2人の存在を察知し、構えておくことができてなかったからか、スターの手をぎゅっと握りしめ、身体をくっつけて落ち着こうとする様子まで見せていた。
しかし、羽の色はギリギリで青色にならずに戻ったから、そこまで相性自体は悪くなさそう。厳密には違うとはいえ、メノと一心同体のウルの存在が良い方に作用しているのかもしれない。
「あっ……もしかして、白髪の不思議なお姉さんの方は……その、半人半霊の妖夢さん?」
「知ってたんですね。はい、妖夢は私の名前ですよ。メノウちゃん」
「じゃあ、桃色の髪のお姉さんは……えっと、
「そうよ~。いきなり来て、ビックリさせちゃってごめんなさいね。メノウ」
すると、警戒しながら妖夢と幽々子の顔を見ていたメノが、ハッとした表情を見せ、2人に対する警戒心を目に見えて下げた。そういえば、普段の会話の中で名前とか特徴を含めて、度々登場させていたっけ。
もしかすると、霊夢や魔理沙やレミリア辺りとの会話でも、登場していたかもしれない。
だからこそ、一時的に記憶から抜けてしまったとしても奥底にはしっかりと根付いていて、少し落ち着いた時に良く見たことで思い出せたのだろう。
「良かった……うん、大丈夫。僕はもう、気にしてないから」
そして、軽い会話を交わしていく内に、やっと落ち着くことができたらしい。帰って来てから15分くらい経った頃のメノの表情は、比較的穏やかなものへとなっていた。
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