幸せ四妖精   作:松雨

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歓喜する地精

 本当に予想外の出来事が自分に降りかかってきた時、驚きのあまり思考が真っ白になるだけでなく、身体は動かず声も出なくなる。

 勿論、それは長くて数秒くらいな上に全員が全員そうなるって訳じゃないけれど、こうなる人妖さんは少なくないはずだ。

 

 それで、何でそんなことを今考えているのかといったら、レミリアと妖夢とスターで午後3時のおやつタイムを満喫していた最中、サニーとルナがメイド姿で部屋の中に突撃してくるという予想外が、まさに今さっき僕の身に起こったためである。

 

 勿論、単にそれだけでも驚きはしただろうけど、今の僕の場合は違う。サニーやスターやルナをどれだけ好いているか、どういう点が好きであるのか、どれだけ感謝をしているのか、ずっと一緒に居たいって強い想いを、半ば興奮(混乱)しながら語っていた状態。

 

 ただでさえ、スターにじろじろ見られながらで顔も身体も火照るくらい照れくさかったのに、予想外のタイミングで愛する家族が皆揃えば落ち着いてなど居られない。

 

 ちなみに、サニーとルナが何でメイド姿なのかについては、単純に僕とスターをびっくりさせたかったかららしい。わざわざロゼネルやスフェにメイド服を借りてまでやるなんて、よっぽどだったんだなぁ。

 

(これは夢? ううん、現実。とっても幸せで温かな、未来永劫守るべき愛しき現実!)

 

 なお、サニーは可愛いだけじゃなくてちゃんと似合ってもいるし、ルナに至ってはそれらに加えて、コーヒーを淹れる姿が堂に入っていた。レミリアが2人を見て、はっきりと「へぇ……いいじゃないの」って口にしたくらいだし。

 

 で、僕がある程度落ち着いてきてから、2人に心の中で思っていたことを包み隠さず言ったら、強くぎゅーってしてくれたり、はにかむ仕草を見せてくれたお陰でまた幸せが溢れて出てきた。

 

 これだけでもう、何にも勝る生きる活力となる。どんなことがあろうとも、これさえあれば僕はいつでも頑張れる。いや、頑張らなければならない。

 

「なるほど、道理で……ふふっ。そんなに幸せをもらったなら、強化形態になるのも当然だわ! 自分で考えてみても、嬉しくなってくるもの!」

「171人分のお祝いメッセージ……スター。勿論、私たちもやるよね? 人数面は流石に勝てないけど……」

「当ったり前じゃない! 初めてのお誕生日会、バッチリ決めてあげなきゃねー」

「わぁぁ……!」

 

 しかし、改めて思うけれど、サニーもルナも僕の興奮しながらのお話をドン引きしたりしないで、喜んでくれて本当によかった。

 

 そりゃまあ、サニーたちが聞いてて酷く嫌がるような究極に恥ずかしいお話だったり、悪口とか愚痴みたいに傷つきかねないお話じゃないにしたって、愛する家族以外の誰かが聞き耳を立ててるかもしれない場所で、プライベートなこともベラベラ言っちゃったから。

 

 無論、そんなことを心配するんだったら最初から言うなと、高ぶる気持ちを理性で押さえつけて耐えるべきだったのは、わざわざ口に出すまでもないだろう。

 

(サニー、スター、ルナ。3人の存在は、僕がこの世に存在する絶対的な意義なんだよ)

 

 だが、正直に心の内を打ち明けるとするなら、まだまだ語り足りない。僕に温かみのある家族という、最大最強の贈り物を贈ってくれた命と心の恩人が、ほんの数十分程度で語り尽くせるだなんておこがましいしね。

 

「さてと、もう時間ね。妖夢、この1週間ご苦労様。お陰で大助かりだったわ」

「あ、はい。役に立てたようで何よりです」

「ありがとねー、妖夢! 楽しかった! また今度一緒にメイドやろーね!」

「機会があれば、お願いしますね。スフェちゃん」

 

 ほら、こんな感じで楽しくて幸せなやり取りをしていれば、たかが1時間にも満たないおやつタイムなんて、すぐ終わってしまう。体感的には、半分かそれ以下の短さにしか感じれない。

 

 そうだ。今気づいたけど、僕はまた同じことを繰り返している。一緒に楽しくおやつタイムを楽しんでたはずのレミリアや妖夢、ロゼネルやスフェを放り出して、サニーたちとの一時に興じるということを。

 

「滅多にない日だったのに、結局僕が妖夢を振り回して終わっちゃったね。その……あっ」

「ふふ、それもいいじゃないですか。幻想郷の妖精らしくて」

「確かにねぇ。それに、振り回した妖夢とスターの分の仕事も頑張ったみたいだし、差し引きちょっとプラスくらいかしら?」

「そんな感じです。お陰様で、後半はゆっくりできましたし」

「正真正銘、メノの全力全開を見れてある意味楽しかったものねー」

 

 しかし、その4人は僕のことをとても理解してくれて、優しくしてくれたりする人妖さんたち。妖夢が、僕がそう言おうとする前に僕の口に人差し指を添え、笑顔で首を横に振る仕草をするのを見て、うんうんと頷いてたんだもの。

 

 本当に僕は、今世では周りの皆に恵まれている。だからこそ、妖精として幻想郷に存在できている限り、皆が僕と一緒に居れば楽しくて幸せだと、与えた恩がちゃんと返ってきてると思ってもらえるように、より一層意識していかなければならない。

 

 無論、これを意識し過ぎてしまうのも逆に駄目だ。自分の気持ちや時間などを全て注ぎ込む、またはそれに比肩するレベルの過剰な献身がサニーたちに、ひいては僕に優しくしてくれる他の皆にどう思われるかは、もう既に結果が出ているんだから。

 

「では、私はこれで帰ります。お世話になりました」

「こちらこそよ。後日改めて行くけれど、幽々子にも感謝してたって伝えておいて……さて、2人とも。今日もお疲れ様」

「うん! えへへ……」

「はーい。また明日も頑張るわー」

 

 と、妖夢が横に置いてた日本刀を持って一礼した後、部屋を出ていくのを見送れば、サニーとルナも一緒に仕事が終わった僕とスターも、着替え部屋に直行して着替える。

 

 ちなみにだけど、2人が着たロゼネルとスフェのメイド服は、別にそこまで汚れてなさそうだからいいよってことで、そのまま返している。

 

 ルナは全然大丈夫だったから普通に返してたけど、サニーの方は僕をぎゅーってしたりして汗とかちょっとかいたからか、少し気にはしていそう。

 

 ただ、当のロゼネルが「サニーちゃんは、あたしと仲良しな友達だからこのくらい全然いーの!」とか、「匂い? 変わらずお日さまの香りだよっ!」って全く気にしていなかったため、気にしないことに決めていた。

 

(えへへ……)

 

 それを言うなら、サニーとぎゅーってした僕の汗とかもついてただろうし、大丈夫かなって聞いたら「メノウちゃんは仲良しな友達で、同じ軒下(紅魔館)の仲間だから、尚更いい!」と。

 

 後は、「くんくん……大丈夫! 爽やかなお水の香りだから!」と、あなたは何を分かりきったことを聞いてるのか的な感じで付け加えてもくれている。

 

 汗をかいたとはいえ、おやつタイム前に僕の力で自分を綺麗にしたばかりだからなのかな。何にせよ、汗臭いせいで嫌な思いをさせてなくてよかった。

 

 ちなみに、ルナが着ていたメイド服からは、貸していたスフェ曰く「コーヒーの香りがする!」とのことらしかった。まあ、自前のコーヒーセット持ってきてて、おやつタイムに淹れてたりしたもんなぁ。

 

「ふぁぁ……楽しかったわね! さてと、次は何して遊ぶ?」

「サニー? 一応、メノとスターは仕事帰りなの忘れてない? まあ、2人ともまだ元気そうといえばそうなんだけども」

「ルナ、今日はメノの方が元気だわー。ということで、リクエストあったら言って!」

 

 ちゃっちゃと着替えを終わらせて部屋を出て、いつものように館の門前に行って美鈴に挨拶してから飛び去った僕たち4人。本来ならば、明日もメイドの仕事がある以上家に帰ってゆっくり過ごすか、昼間じゃないけどお昼寝するとかがお決まりの展開。

 

 しかし、今日に限って言えばお誕生日プレゼントをもらい、サニーたちからも同じようなプレゼントをもらうことが確約されたお陰で、まだまだ僕の元気はいっぱいだ。不完全な強化形態も、まだもう少し続きそうな感覚がするし。

 

 サニーやルナ、スターも多少の差こそあれ元気はいっぱい。今日の晩ご飯の時間くらいまでなら、普通にはしゃいで遊びそうだ。

 

「分かった! じゃあ、魔理沙のお家にとっつげきー!」

「あはっ、いいじゃないの! もし、万が一居なかったら……まあ、その時は家に帰りましょ!」

「流石に、休みの日と同じ勢いで動くのは無理じゃないけど、念のためにやめといた方がいいからねー」

「うんうん、それは確かに間違いない」

 

 という訳で、元々どこに行きたいかとリクエストされていたのも相まって、家に帰る前に魔理沙の家に『突撃! 光の四妖精』を決行することが決まった。

 

 1時間半くらい前の、僕やスターを驚かせるつもりで紅魔館に来たサニーやルナのように、イタズラ目的で向かうのではないので、いきなり扉をどーんと開けて入るみたいな真似はしない。びっくりさせないように、気をつけなきゃいけないね。

 

 勿論、魔理沙が家に居なかった時は当たり前として、僕たちと遊ぶ気分じゃなかったり、研究とかで忙しくて遊べないって断ってきたならば、大人しく引き下がって家に帰るつもりだ。

 

(そう言えば、魔理沙のお家しばらく行ってなかったなぁ……物で散らかってたら、お片付け手伝ってあげなきゃ)

 

 今の時間、魔理沙は何をしてるのかな。のんびりぐうたらしてるのか、魔法の研究開発をしてるのか、本でも読んでるのかな。

 

「おー、すげぇ! ありがとな、香霖!」

「どういたしまして。予想以上に早めに仕上がってよかったよ」

 

 そんなことを考えながら魔法の森の入り口にスタッと降り立って、香霖堂の前を通り過ぎようとしたその瞬間、ふと目をやったところに魔理沙が居た。何やら、霖さんと親しげにお話をしている。

 

 木の後ろに隠れ、目を凝らして見てみたら手元にはいつも使っているミニ八卦炉があったので、もしかしたらメンテナンスとかしてもらってたのかも。あの魔法道具は、霖さんが手塩にかけて作り出したやつって言ってたし。

 

(ひゃっ……)

 

 考えてみたら、魔理沙とはよく会ってお話とか色々としてるけれど、霖さんとは最近あまり会っていなかったっけ。

 

 心の支えだった猫ちゃんのぬいぐるみの件も含め、他の皆のように優しくしてくれるお兄さんなのに、今の今までそのことを気にしていなかった。何てことだと言わざるを得ない。

 

「おっ、どうしたメノ……ってか、お前ら勢揃いじゃねえか。いつから私の後ろをつけてたんだ?」

 

 とまあ、そのことを気にし過ぎて顔を乗り出していたからだろう。会話の途中で後ろを振り向いた魔理沙と僕とで、はっきりと目が合ってしまった。




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