幸せ四妖精   作:松雨

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今話は大妖精視点です。


大妖精の思い

 メノちゃんへの誕生日の贈り物として、手作りのお菓子だけじゃなくお手製の縫い物も贈ることになった、私とチルノちゃん。大切なお友達に喜んでもらうって目的があるから、やる気自体はかなり高い状態を保ったまま。

 

 だけど、そのやる気でもカバーできない欠点が、私やチルノちゃんにはあった。お互いにどっちの経験もあまりなくて、やってもまともに作れない編めないっていう欠点が。

 

 ただ、お菓子作りに関しては編み物よりも早く紅魔館で練習を始めている。レミリアさんの全面バックアップの下、時には霊夢さんや妖夢さんにも教えてもらいながら、着々と経験を積み重ねていた。

 

 とはいえ、それでも贈り物としては全然だからこそ、皆と遊ぶ時間を全部削ってまで練習に精力を注いでいるのだ。勿論、まだまだ私とチルノちゃんのやる気は高止まりだし、むしろもっと高くなってるかな。

 

 私とチルノちゃんが、頑張って作った手作りお菓子に編み物を手渡して、幸せそうに泣いて喜ぶ大切なお友達、メノちゃんの姿を見てみたくて。

 

「へへーん、どうよアリス! 1週間前よりも上手くなった自信があるぞ!」

「ええ、間違いなく上手になっているわ。しかしまあ、相変わらず器用な子ね。好きこそものの上手なれとは言うけれど」

「チルノちゃん、メノちゃんをいじめていた人たちが人里に来た時も、サニーちゃんたちを除けば1番怒ってたから……」

「そうそう! あたいたちが幸せを沢山あげて、早くアイツらの顔とか諸々を忘れさせてやらなきゃだもんな!」

「うふふ。本当にその通りだね」

「全くだわ。尤も、道程は簡単ではないでしょうが」

 

 しかし、お菓子作りや編み物も全部紅魔館の人たちにお世話になる訳にもいかないし、そもそも編み物ならアリスさんの方が断然いいと思うって、お願いした時にレミリアさんに言われていた。

 

 ということで、編み物の練習をする時は自分の家でこつこつやるか、今日みたいにアリスさんのお家に押しかける形でやっていた。

 なお、アリスさんがどうしても無理って日は、霊夢さんの巫女服をしつらえている霖之助さんが面倒を見てくれる流れになっている。

 

 でも、メノちゃんのことを気にかけてくれてるのか、私やチルノちゃんの思いを汲んでくれてるのか、はたまたその両方か。何だかんだ、お家に居る時であれば今日に至るまで断られたことは1度もないけどね。

 

「痛っ……私が妖精でよかった。でも、一応手袋しとかなきゃ」「大ちゃん、大丈夫? 一旦休憩する?」

「ううん、大丈夫だよ。ほんの少し、指先をチクってしちゃっただけ」

「そっか。なら、もう少し続けよう!」

「変わらずやる気満々ねぇ、2人とも」

 

 ちなみに、私とチルノちゃんで編んでいる編み物は手袋と帽子。よく着ているアリスさんお手製のお洋服、ルナちゃんのお洋服にも似合うような淡い水色と白色のやつ。

 

 本当はお洋服とかも含めて全部やって、じゃじゃーんとお披露目してあげたかったけれど、それだと時間が圧倒的に足りなくなるから断念している。

 

 まあ、時間をかけて練習したとして、ちゃんとメノちゃんに快適に着てもらえるものができるとは、正直言えないかな。難しいもん。

 

「たのもー、チルノと大ちゃん!!」

 

 なんてことを考えながら、帽子につける飾りをどれにしようか選ぼうとした刹那、何かいきなりサニーちゃんに叫ばれた。思い切り開けられたアリスさんのお家の扉、大丈夫かな。

 

 で、一緒に来ていたスターちゃんとルナちゃんは、テンションが高いサニーちゃんに少し困惑している。「サニー、道場破りでもしたいの? 目的違うでしょ」とか「あら、私とルナまで巻き添えよー」って、横で言いながらね。

 

(うーん……)

 

 一体、3人は何をしに来たんだろう。事前にしばらく遊べないと伝えてはいるから、誘いに来たとかじゃないとは思うというか、メイドのお仕事がお休みなはずなのにメノちゃんが一緒じゃない。

 

 妖精大樹で1人きりのお留守番ってことは絶対にないから、魔理沙さんが一緒に居てくれてるんだろう。

 

「扉は丁寧に開けてって……まあいいわ。それで、この2人に何の用事があるの?」

「書いて欲しいものがあるのよ! えっと、これなんだけど……」

 

 それで、アリスさんの問いかけに元気よくこう答えてから、サニーちゃんがこっちに来て渡してきたものは、所々に『地球』を表すマークが印されているカード、ないし丈夫そうな紙の束。

 

 これだけだと何を書けばいいのか分からなかったけど、その後に続けて言われたお誕生日祝いって言葉を聞いて、メノちゃんへのお祝いメッセージのことかと即座に理解できた。チルノちゃんも同じだ。

 

 何でも、サニーちゃんたちを含む妖精軍団全員、理想郷の守護妖精さんにお祝いメッセージや似顔絵を書いてもらい、それを1冊の本にして贈るつもりなんだって。

 

 勿論、思い付かなければおめでとうの一言だけでも大丈夫だし、逆に長々と色々書いてページ数を占領することになったって構わないみたい。

 

 嘘偽りなく本気でメノちゃんを祝い、幸せになって欲しいという気持ちさえ、書いた文や絵にこもっていればとも言ってたけど、それは至極当然のお話。言われるまでもない。

 

「サニーとスター、ルナはこんなに書いてるのに、あたいだけ一言ってのはちょっとなぁ……」

「じゃあ、やっぱりお絵かきがおすすめね。私は、一緒にイタズラで悪巧みしてる絵を描いてみたわー」

「あたい、それ苦手なんだよなぁ。うーん……でも、うん。お絵かきも、いっちょ頑張ってみるか!」

「心配しなくても、私より下手っぴじゃないから大丈夫よ! チルノ!」

「サニー。それ、自信満々で言うこと……?」

 

 で、サニーちゃんたちにこのお話を持ちかけられたチルノちゃんは、さっきまでしてた手袋を編む練習をぽいっと放り出し、渡された色鉛筆やクレヨンを片手に真っ白な紙1枚とにらめっこを始めた。

 

 当然、私もその流れに乗っかり編んでた練習用の帽子を棚に乗っけて、どんな絵を描いてみようかを頭の中でぐるぐると考えながら鉛筆を動かしてみる。

 

「考えたら、メノが生まれてからもうすぐ1年なのね。時が経つのは早いものだわ」

「一緒に遊んで、お話しして……ふふっ。本当にそうですよね、アリスさん」

「何せ、優しくていい奴だもんな!」

「だからこそ、私たちが遠くから見守っておいてあげないと。もしかしたら、それを利用せんとする輩から狙われるかもしれないもの」

 

 さて、私は何を描こう。紅魔館でのレミリアさんやフランさんのお誕生日会みたいに、皆で仲良くテーブルを囲んでケーキとかを食べる絵かな。

 

 ううん、私の画力じゃごちゃごちゃした何かになる可能性がなくもないから却下。上手下手以前に、何の絵か分かってもらえなければ意味がない。

 

 ともなれば、私が笑顔で贈り物の入った箱を手渡すだけの、シンプルな絵にしようか。描くものが私と箱だけになるから、相当楽になる。

 

 そこに、日頃の感謝やらずっと友達でいようねって言葉とか、普段あまり言わないようなメッセージも沢山付け加えてあげれば、大切な日のお祝いを私がしてます感が強くなって、メノちゃんがとっても喜びそう。

 

 よし、そうしよう。勿論、絵の方は単純化したとはいえ、普段あんまり描かない私からしてみれば、これでも相応に難しくはなっている。

 

 ルナちゃんやスターちゃんに比べれば下手っぴになっちゃうけど、ちゃんと想いはこもってるから許してね。メノちゃん。

 

「しかしまあ、随分と筆が早いわね。大妖精」

「おー、確かに凄いな! 流石は大ちゃん!」

「えへへ。メノちゃんのニコニコ顔を想像してたら、意外とすいすい進んだの」

「そっかぁ。あまりにも手詰まりだったから似たようなこと始めたんだけど、次から次へと言葉が出てきて逆に進まない! いっそのこと、全部書いちゃおうかな?」

「いいんじゃない? 魔導書みたいに()()()()()()()は必要ない。最低限読めさえすれば、時系列が多少おかしくてもね」

 

 こんなことを考えていたら、さっきからウンウン唸ってたチルノちゃんが、考えるのを止めて手を一心不乱に動かして書き始めた。

 

(……ふふっ)

 

 そう、チルノちゃんはメノちゃんのことを、とてもよく思ってる妖精さんの1人。この間「メノのこと? あいつとは、皆と一緒にずっと友達で居たい!」って、魔理沙さんとか私にニコニコで言ってたくらい。

 

 本人に言ってあげればいいのにとは思うけど、もしかしたらお誕生日会の時までとっておくつもりだったのかな。そんなことを言われたら、メノちゃん絶対にわんわん泣いて喜んでくれそうだもの。

 

「よっしゃ! こんなもんでどうよ、サニー!」

「十分だわ、チルノ! こんなにぐっと来るものを見たら、最終的に絶対に疲れて寝ちゃうくらいに、メノ大泣きするわね!」

「ルナ、慎重に貼り付けて保護して。丸眼鏡の妖精に教わった通りにやるのよー」

「勿論。ここで、いつものドジを発揮する訳にはいかない」

 

 で、案の定私を超える早さで紙1枚どころか、何だかんだで結局紙2枚分裏表びっしり書き込むところまで行っていた。私自身もそうだけど、見る人が見れば上手とは言いにくいような文字と絵である。

 

 ただ、そこから感じる想いの強さで見れば、文字や絵の単純な上手い下手などどうでもよくなるくらい。関係のない私でさえこう思うのだから、メノちゃんならばこのメッセージと絵を見た時にどういう反応を示してくれるかは、想像するに易しかな。

 

「ねえ、チルノちゃん。チルノちゃんが描いた絵って、理想郷大探検の時の?」

「ん? あ、そうそう! 色々あったけど、メノも加えた妖精軍団でする大探検、楽しかったからさ!」

「確かにね。またやりたいな」

 

 しかしながら、私よりも後から()き始めたというのに、いざやり始めたらあっという間に描き終えて、編み物の練習に戻ったチルノちゃんは凄いや。

 

 でも、私だってもうすぐ描き終わる。伊達に早めに始めた訳じゃないもの。

 

(……メノちゃん。私も、ずーっとお友達だよ。だから、メノちゃんも私とずーっとお友達で居てね)

 

 いや、やっぱりもう少し描き足そう。サニーちゃんたちが描くための紙とかは沢山用意してくれてるし、何ならこれを使って折り紙みたいなことをしたって構わないみたいだから、それもやってみなきゃ。

 

 メノちゃんにとって、お誕生日会を生涯忘れることのない最高の思い出としてもらうために。

 

「お待たせ、スターちゃん。想定よりも沢山になっちゃった」

「わぉ、凄い量。これ、メノが受け取った瞬間気絶しかねないくらいに、幸せに満たされそうな贈り物になるわー」

「違いないわね! ルナ、大ちゃんの分もお願い! 私とスターも手伝うから!」

「了解。さて、これが終われば後はリリーとピースだけ。できるだけ、今日中に完成させたいから頑張らなきゃ」

「例え真夜中になってでもねー。まあ、居場所は分かってるから、そこまでにはならないとは思うけれど」

 

 結果、紙2枚分のお祝いメッセージと1枚分の絵に加えて、下手っぴな折り鶴8つなど、サニーちゃんたちに比肩するくらいの量になった。いわゆる、チルノちゃんと同じ筆が乗った状態になったからかな。

 

(……)

 

 個人的には大満足な出来になったけど、いざ贈られてメノちゃんが私のページを見た時に、果たしてどんな反応をするのかドキドキしてきた。可愛らしくて、微笑ましい仕草とかが見れるかな。

 

 でもまあ、メノちゃんが幸せに満たされてくれさえすれば、私とお友達になってよかったと思ってくれてるんだったら、何だっていいや。ルナちゃんが、私とチルノちゃんの描いたそれらを纏める作業をする様子を片目でチラチラ見ながら、そう強く心の中で思う。




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