今更な話だけど、僕は美鈴を大好きな妖怪の友達であると同時に、とっても強くて凄い働き者のお姉さんだと思っている。
来客への対応をしながら、紅魔館自体とそこに住む皆を外敵から守る最初の砦となる、館の門番。
とっても広い紅魔館の庭の景観維持を担い、かつ庭担当のメイド妖精さんの統率も行う庭師兼管理者。
これだけでも僕には想像し難い大変さだって言うのに、レミリアからお願いされた多種多様な雑用、僕を含めた妖精さんたちと仕事の一環として遊んでくれたりと、本当に色々なことを幅広く行っているからだ。
レミリアが真剣な面持ちかつ、凄い誇らしげな感じで「美鈴が居ないと、冗談抜きで館の危機よ」と言ってたのを聞いたことがあるけど、まさにその通りだろう。
身近な要素で例えるならば、理想郷から翡翠の妖精さんが居なくなるようなもの。居なくなった影響がすぐに現れずとも、時間が経つにつれてひび割れがどんどん大きくなっていくタイプかな。
「どこかしら怯えのようなものを感じていたメノウちゃんも、今や他の妖精たちと遜色ない程に元気になって……レミリアお嬢様も、凄く喜んでました」
「周りの皆の優しさと幸運のお陰だよ、美鈴。僕1人だけなら、こんなに幸せな思いはできなかった。絶対にね」
「きゃはは! あたいも少しは役に立ってたみたいでよかったぜ!」
「少しじゃないよ、ピース。とーっても役に立った、だよ!」
「ふふ。まるで、昔からの親友みたいですね。2人とも」
「おうよ!」「うん!」
なんてことを、僕は美鈴や
ちなみに、何でピースがメイド服を着て庭仕事をこなしているのかというと、これが2つ目の願い事だったから。
朝ごはんを皆で食べている途中に、はっとした表情を見せながら「あたいも、メノやスターと一緒に1日メイドをやってみたい!」と、テーブルをばんっと叩いて言ったのだ。
びっくりしたけど、そういうことならと紅魔館に到着するや否やピースと駆け回りながらレミリアと咲夜を探し、お休みの権利の返上かタダ働きをする覚悟もあることを熱弁しながら僕が頭を下げ、了承してもらえたんだっけ。
ただ、その必死ぶりが強烈過ぎたせいなのか、僕かスターの同伴を条件に快く了承はしてもらえたんだけど、お休みの権利返上とタダ働きをするとは冗談でも本気でも今後は絶対に言うなと、というか言わないで欲しいと逆にお願いされてしまった。
こうなったのも、是が非でもピースの希望を叶えてあげなければと思うがあまり、そんなことをせずとも普通にお願いすればよかったってことが、頭からものの見事に抜けていたから。
後はそう、昨日の夜中に霊夢が何かふらっと訪ねてきて、僕に愛用していた湯呑みの1つをプレゼントしてくれた時の高ぶりが、心内に残っているのも加わったからなのもあるだろう。
とはいえ、レミリアや咲夜に要らぬ心配をかけたという意味では、僕のあの行動は反省するべき点である。もうやらない。
「ふんふふ~ん。お花さんたち、僕のお水で元気になってね!」
「メノウちゃん。能力と魔法で水を出すのはいいですけど、噴水があるんですし無理は禁物……ピースちゃん。そこの葉っぱは切っちゃ駄目なやつですよ!」
「うわっ……美鈴、教えてくれてありがとう! それとごめん!」
「どういたしまして。初めてである以上、間違えるのは当然ですから」
「庭仕事も大変なんだな! でも、これはこれで楽しいぜ! メノと一緒だからかな?」
「そうかもしれません。仲良し同士で仕事をすると、メイド妖精たちもメンタルが上向きますし」
なお、僕とスターは今日も一緒のタイミングで仕事をすることはないので、ピースはお昼の休憩を境にスターの方へ行く手筈になっている。
幸いにも、スターの今日のお昼以降は館内の清掃とかなので、やることそのものは料理やお菓子作り程難しくはない。ただ、メイド妖精さんたちのはしゃぎ具合によっては純粋な大変さが凄いことになる可能性が高いのだ。
ピースとも当たり前のように仲良しなモリオンやシャーネット辺りが、メイド妖精の格好をして仕事を体験しているピースの姿を見ようものなら、それは大層喜んでくれることになるだろう。
(ふふっ……ピース、メイド妖精さんたちに凄い好かれてるんだなぁ)
しかしまあ、メイド妖精さん同士の情報伝達速度が凄まじい。今のところ、庭仕事しかしていないのにもう大部分のメイド妖精さんたちに、ピースがメイド妖精になってることが知れ渡ってるもの。
何せ、気になるがあまり仕事を途中で放り出したと思われる、複数のメイド妖精さんたちが見えていたのだ。というか、どう見ても庭仕事担当ですらない妖精さんもちらほら見える。
なお、サボった妖精さんたちの後ろに咲夜が無音無気配で現れて、とっても怖い笑顔で「お仕事が先よね……?」とか、「お嬢様に怒られたいのかしら?」みたいなことを言われながら、どこかへ連れていかれるみたいな光景は今のところ見ていない。
禁忌に触れたり限度を超えないのであれば、イタズラもサボりも許容するってレミリアの方針があるので、ちらほら見える妖精さんたちはその辺はクリアしてるんだろうなぁ。
「しろちゃん、ピースちゃん! 私も仲間にいーれて!」
「お庭のしごと、わたしもがんばるぞー!」
「シャーネちゃん、まだ良いよって言われてないよ!」
で、サニーやルナのような能力を僕やピースは持っておらず、そもそも隠す気なんて全くなく庭仕事をして目立っていれば、モリオンやシャーネットが仲間に入れて欲しそうに声をかけてくるのも、至極当然の流れである。
(堂々と僕やピースと庭仕事をやるために、ここまで……)
ちなみに、任された自分たちの前半の仕事は終わったのかという美鈴の問いに対して、2人は「「もっちろん!」」と胸を張って答えた。完全に同じタイミングで、この上なく綺麗にハモりながら。
うん、それなら大丈夫だろう。ピースのお願いも僕やスター
僕の意思はまあ、別に考えなくてもいい。ピースや美鈴さえ良ければいいからってスタンスだし。
「あたいは別に構わないけど、美鈴はどうなんだ? 紅魔館の庭仕事云々って、美鈴に任せてるってレミリアから聞いたぞ!」
「人手が増えるのは有り難いのでいいですよ。メノウちゃんは……言うまでもなかったようですね」
「ふふっ。僕たちと一緒にお仕事、お昼まで頑張ろうね!」
「「やったぁ、へへっ!」」
ただまあ、ピースも美鈴も2人の仲間入りには仕事の戦力としても、精神的な面でも好意的だったので、僕があれこれ言う理由もない。大好きな友達の皆と大人数で仲良く庭仕事、大変だろうけど何だかんだで楽しくなってきた。
勿論のこと、高ぶり過ぎて任された分の庭仕事が全然終わってもないのに放り出して遊んだりなど、そういうことをして皆を困らせないように注意しなきゃ。
(ふんふふ~ん。ピースは仕事を楽しそうにしてくれてるし、モリオンとシャーネットも……えへへ)
石畳の隙間や花壇などから生えた雑草をむしる、季節や寿命などの問題で完全に枯れてしまったお花や木の枝を取る、変な風に生えちゃった葉っぱとかをはさみで切るなど、紅魔館の庭仕事はやることがいっぱいだ。
僕の能力や魔法にばかり頼るのはってことで、水やりも噴水か井戸水、花の種類によっては霧の湖の冷水をわざわざ汲みに行ったりもするし、新しいお花の種を植えるお手伝いとかも行う。
「虫食いかぁ。こうやって育ててると、避けて通れない問題なんだっけ」
「そう。妖精さんたちが真心を込めてお世話してるから、普通よりは強いんだけど、それでもね。」
「大変なんだな! ちなみに、メノって庭仕事は好きなの?」
「僕? うん、好きだよ。料理とかと同じで頑張れば頑張っただけ皆が喜んで、褒めてくれるんだ。えへへ」
「それはまあ、メノウちゃんの頑張りで皆が助かってますからね。よしよし」
「にゃふっ……美鈴、もっとなでなでして!」
そして、お花や木の葉っぱを食べたり傷つけたりして枯らす、ないし植物の病気の原因となるような虫さんの駆除とかも、重要な庭仕事の1つである。
特に、妖精さんが理想郷から持ってきた光る水晶みたいなお花とか、バラやイチゴによくついているアブラムシみたいな虫さんは、絶対に駆除しなきゃ駄目らしいから大変だ。
放置すると、最悪増え過ぎてくっつかれた植物が病気になったり枯れたりするのみならず、周囲の植物たちにまでダメージを与える結果になっちゃうんだって。
天敵になる虫さんや小動物も居ない訳じゃないけれど、紅魔館の庭の広さに対して全然多くないとも言ってたっけ。
ただ、大変ではあれ妖精さんたちを含めた皆の力を合わせ、時には誰かの助けを借りたりしながらこんなにも綺麗で、植物たちの
「うわっ! この花、何か気持ち悪いくらい虫がびっしりついてるぞ。シャーネ、これ取った方がいいやつ?」
「とったほうがいいやつ! でも、たくさんすぎてふつうの……あっ。ピースちゃん、これつかって! シューってかけるの!」
「ん? おう、分かった……わはっ、凄いなこれ! 一瞬で虫が居なくなったけど、嗅ぎ覚えのあるキノコ臭が凄い」
「魔理沙特製、魔法の強力虫退治用スプレーだよ。ピース」
「そっか。だから、魔理沙の家のキノコの匂いがしたのか!」
ちなみになんだけど、紅魔館の庭の維持を助けてくれている誰かと言うのは、他ならぬ魔理沙のことである。これ以外にも困り事があれば、その魔法や薬品調合の技術を使って日常の問題解決を手伝ってるらしい。
昔から、自分が紅魔館の住人であるかのように自由に出入りし、パチュリーの図書館から魔導書をひっそりと借り、咲夜やメイド妖精さんの作ったおやつを食べに来てる魔理沙が、その
こう聞くと、魔理沙ってある種の妖精さんみたいな人間さんだなぁ。僕が初めて会った時からいい人って思ったのも、サニーたちを含めた多くの妖精さんから懐かれてるのも、当然の摂理だったのかもしれない。
ただし、僕が図書館に居る時だけでもいいから、パチュリーの本をひっそりと借りてくのはやめて欲しいかな。見かければ、声をかけなくちゃいけなくなるから。
(あれ、もう……?)
そんなことを考えていた刹那、時間がお昼になったことを知らせる時計塔の鐘の音が、庭仕事をしていた僕たちの耳に響き渡った。体感的には全然経ってない気がしたんだけど、現実はそんなことはなかったらしい。
同時に、ほうきを持つ妖精さん、じょうろとかで水をあげてる妖精さん、鳥さんに餌をあげてた妖精さんなど、僕たちみたいにお昼が休憩時間な妖精さんたちの動きがすっと止まる。
そりゃそうだ。ここから1時間前後、スターを含めた皆の用意する美味しいご飯やお菓子や飲み物を堂々と、好きなだけって程じゃないけど沢山は楽しめるんだから。
なお、美鈴は美鈴で咲夜と門の前でプチピクニックをする約束をしているらしく、僕たちと一緒に休憩はできないと断られている。ちょっぴり残念だけど、約束が先にあるなら仕方ないよね。
「あー、楽しかったけど疲れた! てな訳でメノ、食堂に行こうぜ!」
「あわわっ……うん!」
相当お昼の時間が楽しみだったらしいピースに腕を引かれ、反射的に引かれてく僕の左手をモリオンが掴み、更にモリオンの左手をシャーネットが掴んで走る流れに身を任せながら、4人で食堂へと超特急で向かっていくのであった。
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