レミリア含めた皆の手助けもあって、渾身の出来映えと断言できるレベルの花冠を完成させることができた僕。
当然、完成したともなれば速攻で手渡しに霧の湖へ行こうとした訳だけど、ルナの「ただ手渡すだけじゃつまらなくない?」の一声により、ちょっとしたお手紙や解説を追加した上で、同じくちょっとしたサプライズで渡そうってことになる。
サニーとスターが居ないので、代わりにレミリアやパチュリーが協力者、美鈴が補助役として一緒に同行してくれた。お陰様で、チルノや大ちゃんにはとても喜んでもらえたので、お祝い本のお返しとしてはこの上なく大成功であったと言えよう。
「へー、これがメノの完全な強化形態かぁ。何か、あたいとお揃いの羽みたいじゃない? 数増えてるし」
「形はともかく、羽の配置はチルノちゃんそのものだもんね……つんつん」
「うひゃっ、大ちゃん!?」
「てへっ。メノちゃん、毎回反応してくれるからやりたくなっちゃう」
「あはは……うん。筋金入りだからね、僕のくすぐりに対する弱さって」
なお、もうすぐお誕生日会という最高のイベントが始まる故の高ぶりに、チルノと大ちゃんの幸せ極まるお礼の言葉という、膨大かつ良質な燃料をくべられた僕の心は、あっという間に幸せの火で燃え上がった。
結果、完全な強化形態へと変化していくのはいいとしても、衝動的に隠れるのを止めてチルノや大ちゃんに抱き着いちゃったのは、かなり失敗だったかもしれない。
唯一無二の親友同士……いや、家族同士のゆったりとした幸せな一時を堪能していたところに、割り込む形になっちゃったんだもの。優しいから、チルノも大ちゃんも僕やルナたちを受け入れてくれたから尚更ね。
「それはそうと、過去のお話盗み聞きしちゃってごめんね」
「大丈夫! ちょっと柔らかくした話自体はするつもりだったし、気にしなくていいぞ! だからその、メノの方は平気だった? サニーたちの話のところとか特に」
「僕? 平気かそうでないかの2択だったら、平気。正直、信じられないってレベルで衝撃的なお話ではあったけど」
「だよね。まあ、あの時は私も含めてサニーとスターにもやり返しがどう見繕っても過剰だったとか、段階を踏むべきだったとか、チルノの事情とか話を聞いてあげずに怒ったり拒否してばっかとか、何かと一線を越えてた面もあった訳で」
「本当、仲直りできて良かったね。チルノちゃんもルナちゃんも」
「「うん、それは間違いない」」
しかしまあ、チルノとサニーたちが1回だけ大喧嘩をしたことがあるって話は聞いた記憶があったけども、まさかそんな強烈な内容の大喧嘩だったなんて、驚き以外の何物でもない。
特に、その大喧嘩の影響でサニーたちとは1度、関係の完全断絶寸前レベルの仲違いをしていたって事実には、強化形態になった今ですら消えない衝撃を僕の心に与えている。
だって、大喧嘩をしたことがあるって事実の存在ですら、今のチルノとサニーたちの蜜月な関係を見ていても、全く以て想像ができないんだもの。
確かに、故意であれ過失であれお互いにやったこと、やってしまったこと自体が起こす結果としては、関係の完全断絶もあり得なくはなかった。心が変な方向へ高ぶるあまり、チルノもサニーたちも僕基準で一線を超えていたんだと、客観的に見た場合は判断ができる。
でもね、多分そのギリギリの綱渡り的な時期と経験を経たからこそ、今こうして全くと言っていい程喧嘩もない仲良し妖精友達をやれてるんだと思うなぁ。
勿論、可能ならばそんな経験などなくても仲良くできてた方が、チルノにとってもサニーたちにとっても良かったのは言うまでもないだろう。
そして、僕自身はサニーたちとは言わずもがな、チルノや大ちゃんを含めたあらゆる仲良しな友達とは、絶対に本気の喧嘩はしたくない。そうならないように、あらゆる方面からやらかさないように常時気を遣っている。
何故ならば、喧嘩をすれば十中八九皆から笑顔の表情、幸せといった感情が嘘のように消え去り、代わりに不幸せや怒り・悲しみ・恨みなどといった感情が湧き出て、苦しませることになってしまうのだから。
「しかしまあ、あそこからよく仲直りできたわね。大ちゃんの仲裁者としての手腕、うちに欲しいくらいよ」
「そういう過去があった話は知っていますけど、詳しい流れを改めて聞くと……レミリアお嬢様に全面同意せざるを得ません」
「ある意味では、魔法の研究よりも難易度が高かった訳だもの。大妖精、貴女は素晴らしいわ」
「えへへ。褒めてくれて嬉しいです! チルノちゃんの笑顔のために、私頑張りましたから!」
当然といえば当然かもだけど、何のフィルターもかかっていない大喧嘩の全容を、当事者故に経験していたルナは驚きも何も感じていなかった。反省すべき愚かな行動とは思っているらしく、苦笑いしてはいたけど。
しかし、僕と同じで全容を全く知らなかったレミリアと美鈴、パチュリーは、そこまで強烈だったのかと予想外にも程があったようで、とても驚いていた。妖精さん同士の大喧嘩を仲裁する手腕で、全てを円満に解決させた大ちゃんを褒めちぎるくらいには。
(本当、大ちゃんは凄いよ。万が一、その立場に居たのが僕じゃ、多分無理だったろうなぁ)
そりゃそうだ。気が立っている状態の、まさしく最強の氷の妖精であるチルノと、それに比肩するサニーやスターやルナの間に立つだなんて、いくら大ちゃん自身も強い妖精さんとはいえ万が一があれば危なかったんだもの。
実際のところ、その万が一は起きなかったみたいだけどね。流石の4人だって、喧嘩に直接関係のない大ちゃんを巻き込むのは駄目だって思ってたみたいだから。
「さてと。用件は無事に済んだことだし、私たちは帰るわよ。メノウ」
「うん! ありがとね、レミリア! パチュリーに美鈴も!」
そして、花冠作りだけでなくチルノと大ちゃんへの、盛大なるサプライズにも付き合ってくれたレミリアたち3人は、成功したのを見届けてから紅魔館に帰っていった。大分長く時間を使ってくれたお返しは、メイドの仕事を一層頑張ることで返していくこととしよう。
勿論、他の何かをお願いされたらそっちで返すつもりだ。一緒に遊ぶでも、弾幕ごっこでも、料理やお菓子作りでも、僕ができることなら何だっていい。
「えへへ。これで、後はお返しをしてないのはラルバとリリーだけ!」
「ラルバちゃんとリリーちゃんだけ?」
「そう! お誕生日会までにお返ししたくて、頑張ったんだよ!」
「そっか……うん。確かに、メノちゃん見てれば私にも分かるなぁ」
さて。これで、お祝い本のお返しができていないのはラルバとリリーだけとなった。制限時間があるって訳ではないものの、湧き上がる大地の力を元手に、早急にお返しをしてあげたい。
ただし、僕はラルバとリリーの居場所を知らないし、ルナも知らなかった。少なくとも、紅魔館と霧の湖と僕の家には居ないことは分かってるから、人里か理想郷、博麗神社を探せばいいだろう。
そこでも見当たらなかった場合はラルバの秘密基地、アリスの家、
もし、夜中まで探しても見つからなかったら致し方ない。お誕生日会の日にお返しの希望を聞いて、お誕生日会以降なるべく早く希望通りに動くって方針で進めよう。
「ところでさ、大ちゃんはラルバとリリーの居場所を知ってたりする?」
「ううん、私は知らないかな。もしかしたら、ラルバちゃんの秘密基地か理想郷に居そうな気はするけど、チルノちゃんも知らないよね?」
「うん、あたいも知らない。でも、博麗神社や人里も可能性は高いと思うぞ! 簡単に探しやすいし、まずはその辺を探してみよう! 4人でかかれば、ちょっとは楽になるでしょ」
「ラルバとリリーを探して見つけろ、だね。範囲が広過ぎるけど、これはこれで面白そうな遊びになりそう」
「スターちゃんが居ればなぁ。人探しにはもってこいな能力持ってる……人というか、妖精探しだけどね」
にしても、ラルバとリリーを探すお手伝いを一緒にして欲しいと、チルノや大ちゃんにお願いしようかなとは確かに考えていた。
だけど、実際にお願いする前からさも当たり前のように、手伝う前提でお話を進めてくれてるのを目の当たりにすると、沸き上がる嬉しさと同時に一抹の不安が頭をよぎる。
サニーたちにも決して劣ることのない、底無しと言っても過言ではないその優しさに僕が、殆んど無意識に乗っかるだけになっていないかと。それを当たり前だと、心の底で考えているのではないかって。
(……)
僕たちがここに来る前、チルノと大ちゃんは霧の湖の氷精さんと戯れながらも、唯一無二の大親友同士ののんびりゆったりとした一時を過ごしていた。過去の経験とか思い出を振り返りつつも、本当に幸せそうな雰囲気を醸し出しながら。
そもそもの話、当初はこっそりお返しの花冠だけを2人の頭にかけて、喜んでくれるかを確認してから立ち去るつもりだったのである。
「チルノ、大ちゃん。ラルバとリリー探しを手伝ってくれるのは嬉しいよ。嬉しいけど、本当に大丈夫? さっきまでその、2人で幸せそうにお話とかしてたのに」
「何だ、そんなことか。大丈夫! あたいも大ちゃんも好きで言い出したことだからな!」
「ルナちゃんは当然として、メノちゃんだって私とチルノちゃんの大切なお友達なんだからね。ただ、どうしても不安って言うなら……」
「え、ちょっと大ちゃん? その両手はうひぃ!? あ……ぶふっ」
「おっ、くすぐりバトル? じゃああたいも参加する!」
「ま、待ってぇ……はひゃうっ!」
しかし、チルノも大ちゃんも僕が抱くそんな不安なんて杞憂だと、むしろそれで遠慮される方が嫌なことであると、そう言わんばかりにニッコニコ。わざわざくすぐりバトルを開くレベルでご機嫌だ。
ここまでされれば、流石の僕でも理解できる。チルノと大ちゃんは今、自分たちの一時に僕やルナが加わることに対して気にするどころか、むしろ歓迎している方であると。
(だ、大ちゃんくすぐり上手になってるの……! ひっ、チルノとルナも……!)
なお、このくすぐり波状攻撃に耐えようとする試みは、大ちゃんにくすぐられ始めてからものの1秒足らずで失敗している。身体の奥底、魂の方から込み上げる右肩上がりの幸福感に比例して、感じるくすぐったさも右肩上がりで増えていったから。
だからなのか、普段くすぐられるよりも完全な強化形態の今、こうしてくすぐられた方が、心なしか耐えられる時間が減ってるような気がする。というか、絶対そうだよね。
何せもう、思考にもやがかかって目の前に居るチルノや大ちゃん、ルナと笑ってはしゃぐことしか考えられなくなってきてるんだもの。無論、一抹の不安なんてどこかにぶっ飛んじゃった。
「はひゅ……けほ、げほっ……げほっげほっ、ひぅぅ……」
「大ちゃん。これ、どう見てもやり過ぎじゃない……?」
「うん。でも、これで強化形態が解除されてないのって……」
「まだまだ元気ってこと。メノはこれっぽっちも嫌がってないよ。むしろ喜んでる」
そうなれば、ばたばたしながら大声で笑い過ぎるがあまり、喉とか肺とかに負担をかけまともに喋れなくなるまでくすぐられるのも、至極当然と言えよう。
(チルノ、大ちゃん、ルナ。楽しそうでよかったぁ……)
ちなみにだけど、一連のこの流れは僕の身体的にはそれなりに負荷がかかったものの、精神的にはこの上ない程の充足感に満ち溢れさせる結果となり、強化形態の維持に一役も二役も買ったのである。
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