遂に明日、メノが妖精の女の子として生まれてから、早いものでちょうど1年となる。あの日から色々なことがあったけど、総じて楽しくて幸せな日々だったわと、感慨深さを覚える。
いやまあ、正確にはちょうど1年ではないかもしれないけど、妖精が何時なんどき生まれたかなんて基本分かる訳がないというか、あまり気にしないか忘れるものなので、こういうのは適当でいいのだ。
私もそうだし、サニーもルナもそんなどうでもいいことなんて忘れたわって、あっけらかんとしてるし。
何なら当のメノだって、私たち3人やチルノ一行を含めた家族や友達にお祝いされることのみを喜び、正確な年月経過は別にどうでもいいってスタンスだもの。
「全く、月日が経つのは早いもんだ。私も、まだまだ先の話だって感覚が抜けきってない」
「ええ、確かにそうね魔理沙! これもきっと、メノと一緒の日々がとても楽しかったからだわ!」
「うんうん。妖精故の時間感覚ってだけじゃ説明つかないし」
「それに、まだまだメノとやってないこととかやりたいことは沢山あるわ。気づいたら、また1年過ぎてそうよ」
そんなことよりも、できるだけ早く明日のお誕生日会に向けた会場の準備、横断幕などの飾り付けや食材調達とかを済ませる方が、圧倒的に大切であり重要。昨日の時点で、当日の流れの相談とかは済ませてあるしね。
故に今日、サニーやルナや魔理沙に加えて、わざわざレミリアにお願いしてお休みをもらった私自身も、会場準備に精を出している。
チルノや大ちゃん、リリーやラルバ、ピースにもお手伝いをお願いしようかとも考えたけど、既に5人にはお祝い本の件を含めて沢山協力してもらっている。お誕生日会の会場準備くらい、発案者の魔理沙と身内の私たちで全部済ませなきゃ。
というか、リリーはお祝い本のお返しの関係で、ラルバはそんなリリーの付き添いとして、今日はずっとメノと一緒に紅魔館に居るんだった。
今朝家に来た時、ニコニコしながら「メノが一緒に春告精やってくれるの!」って凄い嬉しそうに言ってるリリー、そんなリリーを微笑ましそうに見つめるラルバの姿を見たならば、尚更協力のお願いはできないわね。
(レミリアたちに加えてリリーやラルバも居るなら、お泊まりも安心だわ!)
ちなみに、メノに関してはそのまま紅魔館でメイドの仕事をしてもらっている上で、これまたレミリアにお願いして今日は1日向こうでお泊まりする流れになっている。妖精大樹の飾り付けとかが終わって完璧な状態にするまで、見られたくなかったから。
あのメノなら、例えサプライズでなくとも同等以上に喜んでくれるとは思うし、びっくりもしてくれるとも思う。魔理沙だってさっき、同じようなこと言ってたっけ。
だからこれは、私たちのこだわりというかわがままだ。大好きな家族や友達の皆から、生まれてきたことを心から祝われる喜びと幸せを思う存分味わって、一生の思い出として記憶に残してあげたいっていうね。
「メノとやりたいことか。そういや、お前らイタズラ四妖精として有名になりたいって言ってたな」
私やサニー、ルナが各々「お誕生日おめでとう」「生まれてきてくれてありがとう」の文字を書いた紙や紙吹雪などを入れたくす玉。
メノのお誕生日会会場とデカデカと書いた横断幕、その他お誕生日の楽しく幸せなイメージを強くするような飾り物を設置している最中、魔理沙がふとこんなことを呟いた。
イタズラ
「ええ! 私の光を屈折させる力、スターの動くものを探知する力、ルナの音を消したりする力に、メノの自然の力を借りる力に飛行能力が加われば、きっと名を轟かすのも夢物語じゃなくなるわ!」
「ただね、あの速さで急加速・急減速・急旋回・急停止を繰り返され過ぎると、力がかかって痛いわ目が回るわ気持ち悪くなるわであれだしなぁ。やるとしても、しばらくは能力の方がメインになると思う」
「ははっ! 本気の私と張り合える速度なら、そりゃそうだろうな。というか、3人抱えても速度があまり落ちないってのが地味に凄いぜ」
「本当、あれには早く慣れなきゃだわ。メノにイタズラさせるんだから、それくらいはやって然るべきよー」
勿論、如何に私たち3人の使い慣れた力に、メノの便利でイタズラ向きな力や飛行能力が加わったとて、叶えるのが難しい夢であることは変わらない。
というか、こう言っては本当にごめんなんだけど、イタズラにまだ不慣れなメノを加えた初期はむしろ難易度が上がり、成功率が下がる可能性が高い。メノ本人のモチベーション維持は、優先的に考えるべき課題。
ただし、私たち3人のモチベーションは大丈夫。不慣れな内は失敗が多いのは当たり前だし、そんなこと言ったら慣れてるはずの私たちも結構イタズラを失敗しているものね。
「でも、慣れるにしたって毎日メノに練習させる訳にもいかない。身体的にも精神的にも、きっと負担になるから」
「だろうな。そうなると、程度の能力や魔法はともかく飛行能力に関しては、完全強化形態の時以外はピンチの時の切り札扱いってところが妥当だと思うぜ」
「例えば、八方塞がりになって捕まりそうになった時とかよね!」
それに、よく考えてみよう。確かに、成功し続けてイタズラ四妖精として有名になる夢が叶えば当然嬉しいし、記念にパーティーを開きたくなるもなるのは間違いない。
しかし、その過程で一緒にイタズラをしているメノが、精神的に楽しく幸せになっていてくれなければ、夢が叶っていたとしても無意味どころか下手したら害にすらなる。
私やサニー、ルナと同じ軒の下で暮らすのが苦痛になったと思われようものなら、最悪を通り越して地獄でしかないわ。
まあ、今の状態なら仮にそうなる前に、僕のイタズラ参加を止めさせて欲しいとお願いしてくれるとは思うけど、そもそも優しいメノに言わせた時点で地獄に片足を突っ込んだも同然だから、気をつけなきゃ。
(あっ、間違えてルナの絵に少し塗っちゃった。修正しなきゃ……あれ?)
そう考えていた刹那、私の能力が見知った妖精友達の気配がゆっくり近寄ってきたのを捉える。数は3、内訳はピースに大ちゃんにチルノだ。
メノならば、私の能力の探知距離限界ギリギリまで離れていても、まるで側で音を聞いているかのように、会話は当然として足音やその息遣いまではっきりと聞き取れるだろう。
今の妖精大樹とその周辺の環境なら、足枷になる本人の集中力も高水準で保てるのは間違いなく、現時点でチルノたちの会話は筒抜けにできる。
でも、私の耳ではメノと同じことなんてとてもできないし、サニーでもそれは同様。能力を使ってもよければ、ルナが拾った音を選定し増幅させて聞き取りやすくするって方法で、まあできるかしらってくらいだわ。
なお、聴力と同様に視力も凄くいいメノだけど、暗いところだと私たちと同じく相応に見えづらくなるし、透視能力持ちとかでもないので物に遮られれば見えなくなる。まあ、音さえ耳に入れば問題は大体起きずに済むから大丈夫ね。
「きゃはは! よーし、まだまだ手伝えることありそう……ん? スターが居るぞ? というか、メノの姿を見かけないけどどうしたんだ?」
「えっとね、メノちゃんは今日紅魔館でお泊まりするの。ルナちゃん曰く、完璧な状態にした会場を見せてびっくりさせたいんだって。スターちゃんは、会場の準備をするためにお休みを入れたって言ってたよ」
「なるほど! 初めてのお誕生日会って、一生に一度の究極イベントだもんな! 失敗は許されないってやつだぜ、チルノ!」
「おうよ! クラピに言われるまでもなく分かってる!」
途中でよそ見や寄り道しているからか、かなりゆっくりしたペースで進んでくることおよそ20分。ピースたちの会話がはっきりと聞き取れるようになり、姿もようやく見えてくるようになってくる。
よっぽどメノのお誕生日会が楽しみなのか、お願いしに行くまでもなく準備を手伝う気満々で来るとは、全く考えていなかった。最初は、魔理沙に加えて私たち3人で済ませるつもりで動いていたものね。
ただ、これだけやる気満々で居てくれているのに、私たちだけで終わらせるから手伝いは要らないよって言うのは、私としても何だか申し訳ない。
人数が増えればその分賑やかで騒がしくなるけど、手を動かしてさえいれば早く準備が終わり、チルノの言う前夜祭とやらを楽しむ時間が増える。
どうせなら、こっちはこっちでお泊まり会を開いちゃおう。メノの方もリリーやラルバ、紅魔館の面々とお泊まり会を開いて1日楽しく幸せに過ごす訳だし。
「おお、何だお前ら。わざわざ手伝いに来てくれたのか?」
「はい! 魔理沙さん、私たちにもお手伝いさせてください!」
「だってさ、サニー。一応聞いておくが、どうする?」
「勿論、一緒に楽しく手伝ってくれるなら大歓迎よ! ねっ、そうでしょ? スター、ルナ」
「愚問だわ、サニー。これを断る理由なんて存在しないもの。何なら、妖精軍団の皆で楽しくお泊まり会しましょー!」
「それはそう。あ、私もスターの提案には全面的に同意するわ」
そして当然、魔理沙はもとよりサニーもルナもここまで来れば、ピースたちの存在に気づく。で、あれよあれよと飾りつけへのお手伝いのみならず、ルナの援護でお泊まり会を開くことも決まった。
急に決まったことだから準備も何もしていないけど、おやつや料理くらいなら私が作ればいいし、何なら今朝の作り置きのカレーとかでいいならすぐにでもご飯にできるしね。
寝る場所も私たちの部屋かリビングに布団を敷いてあげれば、簡単に確保できる。半分くらいはしばらく使ってない布団だけど、定期的にメノが綺麗にしてくれてるから、そのまま使ってもベトベトしたり臭ったりとかはしないので安心だ。
とまあ、あれこれ考えてはいるけれど、今はまず明日のお誕生日会に向けた準備を完璧に済ませる方が大切だ。食べられるおやつや料理がなかった時ならまだしも、あるのであれば優先順位はお誕生日会の準備で変わらずね。
「で、魔理沙はどうするの? せっかくだから、私たちと泊まっていって欲しいわ! お願い!」
「私もか? うーん、まあいいぜ。どのみち今日から3日間は予定を空けてあるしな……うおっ! 全く、サニーは相変わらず元気なやつだ」
「やったぁ! えへっ、魔理沙にぎゅー!」
「サニーちゃん、嬉しそうだね。スターちゃんとルナちゃんも、顔がニヤニヤしてる」
「ふふっ。それを言うなら、大ちゃんたちも嬉しそうだわー」
「まあ、あの魔理沙だもんな! チルノ」
「おう! 妖精軍団の面々が、魔理沙と一緒を喜ばない訳ないもん!」
ちなみにだけど、魔理沙は妖精じゃなくても実質同じ種族の大切な仲間みたいなものなので、本人が了承してくれた以上このお泊まり会に加わることは、もはや確定事項なのであった。
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