幸せ四妖精   作:松雨

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妖精のおしゃれ(中編)

「こんにちは、人形さん。アリスって、今大丈夫かな?」

 

 思い立ったら即行動。チルノと大ちゃんの協力もあり、香霖堂で見つけた可愛いアクセサリーや小物をいくつか買った後、アリスの家へ僕を含めた3人で訪れていた。

 

 どうせなら、帰った後に洋服も含めた装いが変わった僕を見せて、出迎えてくれたサニーやスター、ルナをびっくりさせたい。

 

 その後は勿論、僕の友達全員にも見せて回ってびっくりさせるつもりだから、こうして行動に移しているのである。

 見せに行く順番は特に決めていないけど、どのみち全員に見せるつもりなので関係はないかな。

 

「あっ、真っ白メノウだ! チルノと大ちゃんも居るぞ!」

「もう、いきなりさわいじゃだめでしょ……アリスさまならひましてるよー。なにかようじ?」

「うん。僕の新しい洋服について、相談したいことがあって来たの」

「そうなんだ。で、それだけなの?」

「一応ね。だけど、ちょっと遊んでもらえたら嬉しいかも……」

 

 僕が求めているような、可愛らしさやおしゃれさに特化した洋服はアリスと人形さんたちを以てしても、おそらくすぐに用意できるような代物ではないのは分かっている。

 

 そもそも、日常生活で着るための普通の洋服だって、ちゃんと着れるものを1着作るのには相応の時間がかかる。

 魔法やら特殊な技術の存在こそあれ、幻想郷が便利な最新式の機械が普及しているような場所ではない以上、尚更だろう。

 

 無論、僕とそっくりな体格をした人形さんの服の替えがあって、アリスがそれを譲ってくれるという展開になれば話は別だけど、流石にそれはこっちから何度もお願いできるようなことではない。

 可能なのは精々、対価を渡す代わりに服をもらえないかなと、聞いてみることくらいだ。

 

 洋服の新調に関しては、あわよくば受け取れて着れたら嬉しいなと思っているだけに過ぎず、駄目で元々。

 最初からちゃんと正式に依頼を出して、快く頷いてもらえたならば何日でも待ち、完成次第受け取りに行くつもりでいるから大丈夫。

 

 親しき仲にも礼儀あり。いくら僕が仲良しな友達だって、あまりにもしつこかったり不快なことをしてきたら、アリスだって僕と話すのも嫌になるだろうし。

 

「こえかけてくるから、ちょっとまってて……アリスさま、メノたちがきたよー! おようふくのそうだんと、あそびたいんだってー!」

 

 それにしても、アリスの人形操作の腕はここ最近一気に上がったらしい。今、声をかけに行ってくれた庭師の人形さんもそうだけど、半分以上の人形さんの動きが更に洗練されたものになっているのが、素人目にも見て分かったからである。

 

 しかも、魔力はともかく生命力は当然の如く微塵も感じないものの、それに類するような力を放っている。

 妖精たちの理想郷によくある、例の水晶が放つあの暖かくて元気になるあの不思議な光の力が、1番近い。

 

「あいつ、随分と元気な人形だな! 羽つければもう妖精だと思う!」

「そうだね、チルノちゃん。まるで、本当に生きているみたい」

 

 そういえば、アリスの魔法とか人形製作の助けになればと思って、どれくらい前かは忘れたけど、大水晶を少しと普通の水晶を沢山あげたっけ。もしかしたら、それが上手いこと役に立ったのかもしれない。

 

 完全自立の人形さん。自分で思い通りに操るのではなく、人形さん自身の意思を以て行動できる人形さんを生み出す、そんなアリスの夢を叶える手助けが少しでもできたなら、恩返しにもなっただろうか。

 

「アリス、入るね」

「ええ。いらっしゃい、3人とも……メノ。話はこの子から聞いたけど、新しい服が欲しいんだって?」

「うん。可愛らしくて、サニーたちをびっくりさせられるような服。着ているところを見せた時に、可愛いって言ってもらいたいの」

「なるほどね。道理で、いつもよりアクセサリーを多く身に付けてる訳だわ」

 

 そんなこんなで30秒、声をかけに行ってくれた庭師の人形さんが手招きしているのが見えたので、チルノと大ちゃんも一緒に家の中に入って、縫い物をしていたアリスに話しかけて軽めのやり取りを交わす。

 

(……わぁ)

 

 会話に支障をきたさない程度に周りへ視線を送ってみると、人形さんの背丈に合わせた大小様々な大きさの洋服のみならず、沢山の小物類がびっしりと並べられている。

 

 人形さん、それも女の子に着せて持たせることを考えられたものばかりで凄く可愛いし、色々な事情とか抜きにして普通にちょっと欲しい。

 

「それでね、アリス。その、えっと……もし良ければ、僕と背丈が同じくらいの人形さん用の服とか小物、もらえないかな?」

「あの子たちの? よっぽど気に入ったものがあるのね」

「そう。僕のわがままなのは重々承知してるけど、今日着て帰りたくて……あっ! 頷いてくれたら勿論、お金とか他にも対価はちゃんと多めに払うよ。僕にできることなら、何でもやるから言って!」

「まあまあ、落ち着きなさい。それにしても、本当に女の子らしく……いや、正直最初から男の子っぽさはあまり感じなかったけど」

 

 だから、アリスに頭を下げて全力でお願いをしてみた。とにかく、僕がどれだけ人形さん用の服や小物が可愛いと思ったかなどを交え、気持ちが伝わるように振る舞いに気を使った。

 

 その最中に、何だか凄くわざとらしいお世辞増し増しな言い方だと、アリスに思われないか不安になったけど、ここまで来たら最後まで行くしかない。

 

 なお、チルノと大ちゃんはおしゃれに食い気味な僕が相当珍しかったのか、人形さんと楽しそうに話しながら「興味あったんだな! あたいはそんなにないけど!」とか「羽が……これ、サニーちゃんたち関係なくても欲しがってそう」なんて、少し驚いたような表情をしながら言っている。

 

 一緒に遊んでるはずなのに、2人をつまらなくさせてたら申し訳ないとの不安は、一瞬で消えていった。

 

「ええ、この『白一式・夏(しろいっしき・なつ)』なら良いわよ。体格的にも、これからの季節的にもメノにちょうど良さそうだし」

 

 それどころか、アリスが白一式・夏と銘打っていた、全体的に白で構成された洋服や小物たちを譲ってくれるというので、心の中が嬉しさで埋められていくのを実感している。

 

 琥珀色のリボンがつけられた、白い麦わら帽子のような帽子。

 袖のない、肩まで出ている白色のワンピース。スカート部分の長さは、ほんの少しだけ膝が見える程度。

 薄緑や薄水色で構成された水晶らしき宝石による装飾が施された、綺麗な白い靴。

 

 他にも、それらに見合った小さなバッグやネックレスなどもあり、全部身につけたらきっと、サニーたちはびっくりしてくれる。そう思うと、今からとっても楽しみだ。

 

「良いの!?」

「勿論。ただし、妖精仕様への変更の時間は必要よ。具体的には、そうね……個人的な事情込みで1時間半~2時間くらいね。どのみち遊んでいくつもりだったらしいし、人形たちに相手させるから私の家で待ってなさいな」

「そっか。まあ、それはそうだよね」

 

 ただし、帽子や靴やその他小物類ならまだしも、ワンピースは元々アリスが人形さんに着せて楽しむつもりだったもの。

 

 妖精の僕が快適に着れるように調整が必要であり、それがまあまあ長めの時間となることも至極当然だろう。何だったら、言われずとも最初から予想済みだ。

 

 これで文句を言ったり不満に思うのであれば、最初からお願いする資格などない。我慢して、人里に自分で買いに行ってこいと言う話である。

 

「うん。僕なら全然、それでも構わないよ。チルノと大ちゃんはその、どうかな? 無理そうなら、何か考えるけど……」

「そもそもここで遊んでくつもりだったし、あたいは別に楽しんでるからいい……って、あっ!? ババ引いちゃった……」

「えっへん! みごと、わたしのおしばいにだまされたねっ!」

「お庭の人形さん凄い……ちなみに、メノちゃん。私もチルノちゃんと同じ理由で全然大丈夫。だから、気にしなくていいからね」

「ふふっ、それなら良かった」

 

 なお、庭師の人形さんとババ抜きをしながら待っていたチルノと大ちゃんは、長時間アリスの家の中か庭で待たされることに何の不満もないらしい。

 

 そのため、もらって着る予定の服の調整が済むまでの間、のんびり遊びながら待つと決まった。まあ、チルノの言う通りアリスさえ頷いてくれれば、最初からここで待つつもりではあったけども。

 

「という訳で……アリス、本当にありがと。服の仕様変更、改めてよろしくね」

「ええ、任せなさい。ああ言ったけど、できるだけ早く終わらせてみせるわ」

 

 こんなにも親切で優しい友達は、是が非でも大切にしていかなければならない。

 

 そして、この対価としてお金は改めて言うまでもなく、それに加えて他に『何か』を求められた場合、全力で僕はそれに応えるつもりである。

 

 サニーたちや魔理沙、チルノや大ちゃんを含めた大切な友達を傷つけるような、酷いものでなければの話だ。

 

 と、ここまで考えておいてあれだけど、正直アリスがそんな要求をする人には全く思えないから、不安などの感情は殆んど抱いたりしなかった。

 

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