幸せ四妖精   作:松雨

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今話はルナチャイルド視点です。


びっくり妖精軍団

 ここ最近、メノがより一層元気よく外出をするようになった。勿論、いつぞや試しにやってもらった時のように、1人でという話ではない。

 

 私たち三妖精や妖精軍団、紅魔館の面々や霊夢に魔理沙、アリスや香霖の内、最低でも誰か1人がどこへ行くにも付き添うと、そう決めたからだ。

 

 ただし、行き先が妖精たちの理想郷(フェアリーズユートピア)だったら話は別で、守護者や本当の意味での家族……即ち、妹にあたる妖精たちが付き添いをしてくれることになっているため、その場合はサニーがメノが1人で出かけることを認めていた。

 

 でも、その権利が行使されたことは今のところ1度もない。大体、私やサニーやスターが家族のお出かけと称して誘われるし、そうでなくともメノの友達が誰かしら一緒なのだ。

 

(サニー、許可したはいいけど、心のどこかで不安そうにしてたもんね。きっと、察したんだろうなぁ)

 

 決意を固めさえすれば、完全なる1人お出かけはできる。しかし、それは精神的な負担にもなりかねないと、あの時の反応を見て分かっている。

 

 つくづく、メノをこんなにした原因が恨めしい。もし、幻想郷にその原因となった存在が居たならば、きっと1発ぶちかましてやっていたことだろう。

 

 とは言うけど、仮に幻想郷に存在していたとしても、紅魔館の情報網に素早く引っ掛かるだろうし、私の出る幕は恐らくない。

 妖精であり、なおかつ雇われのメイドでもあるメノを、ありがたいことにレミリアはとても気に入り、大切にしているのだから。

 

「最近、メノがあたいたちの外出の誘いを沢山受けてくれるようになって、本当に嬉しいな! この間なんか、あたいが誘う前に自分から「僕とお外で、その、遊ばない?」って言ってくれたし!」

「元気になりつつあるってことだもんねー。分かるわ、ピース」

「ふふっ! 前世が散々なせいで抑制されてただけで、本来は身体を動かして遊ぶのが好きな子だったのかも!」

「それは、確かにそうだね。私と秘密基地で飛び回って遊んでる時のメノ、本当に楽しそうだもん」

 

 それに、例え出る幕があったとしても、私の時間を仕返しに使うべきか否かと考えたら、やっぱり否としか考えられない。

 

 メノと遊びに行ってるチルノと大ちゃんは抜きだけど、今日のようにサニーやスターや妖精軍団の皆と楽しくお喋りをしたり、いつぞやみたいに霊夢とかにイタズラをして楽しんだりとかする時間。

 

 相変わらずの平和な毎日を、大切な3人と一緒にこの大樹()で過ごすだけの、のほほんとした一幕。とても硬くて綺麗だけど、何かで強く叩けば簡単に割れてしまうという、宝石のダイヤモンドのようなもの。

 

 他にも沢山ある大切な宝物を捨てて、恨みや怒りのままに()()()()への仕返しに全力を注いだとしても、間違いなく私の幸せに繋がらないからだ。

 

「うん。今日だって、チルノと大ちゃんがメノを誘いに来た時、凄く嬉しそうだった。ニッコニコで家を飛び出してったよ」

「あはっ、だよな! ところで、3人はどこに遊びに行ってるんだっけ?」

「香霖のところには行くって言ってた。その後は、聞いてないから分からないけど」

「霧の湖、紅魔館、博麗神社、アリスや魔理沙の家……きっと、この辺りねー。人里は、知らない人間が沢山居るから除外しても良さそうだわ」

「でも、いつかはメノも一緒に行けたら、きっと楽しいだろうね」

「「「うん、ラルバの言う通り」」」

 

 いや、私だけではない。サニーやスター、付き合いのある友達の幸せに繋がらないのも同じ。

 

 何より、メノ本人がそんなことを望んでいないのだ。こっそり日記帳を覗いた時、とあるページに書いてあった「僕の望みは、大好きな家族の笑顔だけ」の一文を見れば、例え冷静さを欠いていても分かるはず。

 

 幻想郷に居ない、恨めしいそいつのことなんて考えてばかりになって私から笑顔が消えていった結果、優しい妖精(メノ)が抱くたった1つのささやかな願いが、ガラスに弾幕を当てたが如く打ち砕かれる。言わずもがな、洒落にならない。

 

 うん。仕返しだの何だの、考えるのは今日で止めにしよう。

 

「そうそう! あたい、それで思いついたんだけど……え? あっ、ヤバ……わわわっ!?」

「クラピ! だからよそ見は……って、わぉ」

「びっくりしたぁ……本当、相変わらずだわー」

「「「……?」」」

 

 なんて考えながらいた時、椅子の上に立って背伸びをしていたピースが、私の後ろにあった何かに気を取られたらしい。思い切りバランスを崩し、椅子と共に倒れてしまったのだ。

 

 私とサニー、スターは何のことか分からず首を傾げるばかりだったけど、そう言えば扉とか窓は閉めきっているはずなのに、そよ風が吹いた気がしていた。大ちゃんが、瞬間移動をしてきた時のそれと全く同じ。

 

 きっと、一緒に遊んでいたメノやチルノを巻き込んで、驚かせようとしてたのだとは思うのだけど、それにしてはピースたちの反応が大き過ぎる気がする。ラルバなんか、目を見開いていた。

 

 いつもとまでは行かないけど、大ちゃんはそれなりの頻度でこういうイタズラをしてくるから、少なからず慣れとかはあるはずなのに。

 

「あわわわ……ピース、大丈夫……? 凄く痛そうな倒れ方してたよ……?」

「ううん……ごめんごめん。この程度、大したことないから大丈夫だぜ、メノ!」

「「「え? メノ?」」」

 

 しかし、その原因は椅子と一緒に倒れたピースに駆け寄り、すぐさま能力を使っていたメノを見て分かった。出掛けた時の格好と、帰って来た今の格好……勿論、それもそうなんだけど、それよりも雰囲気が変わっていたことであると。

 

 恐らくは、チルノと大ちゃんがメノを誘い、連れていった場所はアリスの家か紅魔館、次点で香霖堂ってところか。おしゃれにも興味を持ち始めたのかもしれない。

 

(そりゃ、こんなの見ればラルバも目を見開くわ。予想外だもの)

 

 まるで、どこからか舞い降りてきた、妖精たちを束ねし(妖精)。可愛らしさもありながら、どこか神秘的なその装いは初見であれば、私たちのようにメノに視線を長く向けることであろう。

 

 というか、妖精たちの理想郷のことを考えれば、私の頭の中で思い浮かんだその文言もあながち間違いではない。

 

 それに、妖精と言う種族で考えればメノは普通に強いし、能力の規模も相当なものの上、魔理沙や霊夢を筆頭とした実力者の手ほどきを受けている。飛行速度に至っては、最速クラスの魔理沙や文とも競い合いが成立するくらいなのだから。

 

「ただいま。サニー、スター、ルナ。ピースもラルバも、リリーもいらっしゃい。その……お洋服と小物、新しいやつもらったり買ったりして身につけてみたんだけど、どうかな……?」

 

 すると、今までにない雰囲気の格好だからか、少し恥ずかしそうな感じにしているメノが私たちの方を見て、こんなことを言ってきた。同時に、身振り手振りを交えて全体像を確認しやすいようにもしてくる。

 

 なるほど。私たちを驚かせたかったか、もしくは可愛いと褒めてもらいたくなったのだろう。チルノと大ちゃんに聞いてみたら、まさにその通りであった。

 

「ふふっ、とても可愛い格好ね! こんな風になって、家に帰ってくるだなんて予想外だったけど!」

「そりゃあ、メノと親交がある人妖だったら誰だって驚くって。袖無しの服を着るイメージ、全然なかったからねー」

「うんうん。まあ、それでも雰囲気もバッチリで似合ってるのが凄いところ」

「えへへぇ……ちょっぴりドキドキしたけど、そう言ってもらえて僕、とっても嬉しい!」

 

 ちなみに、今日は時間的にやるつもりはないらしいけど、明日の朝から魔理沙や香霖含め親交のある面々にもこの格好を見せに行き、同じように驚かせに行くつもりらしい。

 

 だから、せっかくのお休みなのにあまり家族との時間を取れないかもしれないと、褒められまくった後の会話の中でメノが謝ってきたけれど、そんなことは気にしなくても良いと言っておいた。

 

(……驚いてくれるといいね、メノ)

 

 そうやって、自分のやりたいことを少しでも主張してくれる。私にとってそれは、とっても喜ばしいことだから。

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