幸せ四妖精   作:松雨

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一妖精とレミリア

 レミリアのお願いで沢山のおやつを作り、完成したやつを魔法のバスケットに詰め込んで、さあ喜んで食べてもらおうと勇んで大図書館へ行ったら、魔理沙が目に見えて落ち込んでいた。

 少しだけど泣いていて、どういう訳か怒りの感情も抱いているみたいである。

 

 何があったのかは知らないけど元気を出してと、咄嗟にクッキーを1枚あげつつ励ましてたら、他の3人も何だか元気がない。咲夜に至っては、いつの間にか居なくなっている。

 

 もしかして、咲夜と喧嘩でもしちゃったのかな。だとしたら、僕にとっては初めての経験で、どうやって仲直りしてもらえばいいのか分からないから困る。

 

 でも、まだそう決まった訳じゃないから、取り敢えず今僕にできることをしよう。咲夜を探すのは、取り敢えず後回しと決めた。

 

「えっ、あぁ……咲夜が……?」

「そうなのよ。私と一緒に人里に遊びに行ったら、心ない言葉で傷つけられてね。で、その話を語ったら魔理沙がこうなったというわけ。何かと仲良しだったから」

「そっか……辛かったよね、きっと」

「ありがとうね、メノウ。咲夜を心配してくれて」

「友達だもの。心配くらいして当然だよ、レミリア」

 

 しかし、実際の理由はレミリアたち同士での喧嘩ではなく、僕がおやつ作りで居ない間、流れでレミリアが妙に機嫌悪かった訳を語った影響らしい。咲夜が、酷い悪口のせいで傷ついて、ちょっと休んでいるという訳を。

 

(やっぱり、魔理沙は魔理沙だなぁ)

 

 魔理沙は、僕が前世のあの人たちにされたことを聞いても、まるで自分がつい先日経験したかのように共感して、気を遣ってくれる程の人だ。

 

 咲夜とはそれなりに長い付き合いみたいだし、そんな関係にある相手が傷ついたともなれば、そうもなるだろう。事が事なだけに、僕が語ったことも想起していたのかもしれない。

 

 そして、レミリアは咲夜に対してこの上ない親愛の感情……フランに対する気持ちに、僕がサニーたちに抱く気持ちと同じような感情を抱いている。

 

 そりゃあ、機嫌も悪くなるはずだし、何なら暴れたっておかしくはない。いけないことだと分かっていても、家族を傷つけられたという事実の方が大きいはずなのだから。

 

 だけど、レミリアはこらえた。咲夜は家族だけど、フランは言わずもがな美鈴たちやメイドの妖精さんも、同じくらい大切な家族。

 

 勝手な僕の想像だけど、一時の感情の大きな揺らぎで行動に移し、その結果何が起こるのかを能力も交えて考えて、自分を律することができたのだろう。だとしたら……いや、そうでなくても流石である。

 

 ちなみに、あまりにも腹が立って仕方がないのは今も変わらないようで、咲夜を傷つけた人の対策が完璧に成るまで、人里に行くことをなくすつもりらしい。レミリア自身も含め、紅魔館の住人全員が。

 

 なお、僕やスターのように、雇われメイドとして居る妖精はその限りではないみたいだけど、できれば行かないでくれると嬉しいわと、申し訳なさそうにこっちを見てお願いしてきた。

 

(咲夜の心の傷、早く良くなりますように)

 

 無論、言われるまでもない。僕に関しては、元々人里に遊びに行く程度の精神力すら持たないのだから、心配しなくたって良いのに。

 

 それに、友達の1人である僕としても、大切な僕の友達を傷つけた相手には思うところがある。だから、尚更このお願いは聞き入れなければならないだろう。

 

「まあ、こんなところね……それはそうと、せっかくのお茶会に横やり入れてごめんなさい。お詫びの印に、皆でこのクッキーを食べましょう?」

「良いのか? 私が話題の種火を蒔いたようなものなんだが……まあ、そういうことなら遠慮なくもらうぜ、レミリア!」

「ふふ。メノウちゃんのおやつって美味しいんですよね……ありがとうございます、レミリア様」

「レミィが良いなら私ももらうわ。後、メノウはどうする? 自分が作ったクッキーだけれど」

「うーん……僕も食べようかな。新鮮味なんて全くないけど、せっかくだし」

 

 なんて思っている最中、レミリアが僕から渡した魔法のバスケットに皆を注目させて、微笑みながらこんなことを言い始めた。

 多分、というか絶対にそんなことは僕も含め、誰も気にしていないと思う。だけど、本人からしてみればそうではないらしい。

 

 ちなみに、流れで咲夜にもクッキーあげに行っても良いか聞いたら、真剣な面持ちで考えた後に「少し、待っててあげて欲しいわ。ごめんなさいね」と、レミリアにやんわりと断られた。まさか、そこまでだなんてびっくりだ。

 

 おやつ作りをする前に見た時は、パッと見そこまで傷ついていたなんて思えなかったし、何ならかなり機嫌の悪かったレミリアよりも冷静に見えていた。

 ああ見えて、周りの皆に心配をかけまいと、必死に隠していたんだろうなぁ。僕も似たような思考回路だから、良く分かる。

 

 流石に、血の繋がった家族とほぼ同等の感情を抱くレミリアには即見破られたらしいけど、まあそうだろう。

 血の繋がりがなくたって、サニーやスター、ルナが僕のことを家族同然で好きでいるから、日常の些細な変化でも気づいてくれてるのだから。

 

 というか、例えレミリア程の早さではなくたって、ある程度咲夜との関係が深くて長い紅魔館の住人たちならば、隠されてても普通に察知して気遣ってくれそうだ。パチュリーとこあも、あの後割とすぐに察したみたいだし。

 

「んん~、美味しいわ! メノウ、ここ最近で1番の傑作じゃない?」

「そうかな? でも、確かに何かこう……あっ。レミリアが、僕のが良いって言ってくれたのが嬉しくて、気分が舞い上がってたからかも……?」

「それだな、絶対。性格と過去の経緯からして、メノは自分よりも他人……心を許した相手のために動くことが、結果自分の幸せに繋がるタイプだしさ」

 

 なお、僕が作ったクッキーはレミリアは勿論のこと、パチュリーやこあ、魔理沙も勢い良く食べてくれた。

 

 それなりに多くの量を作ったはずだけど、こうして楽しく話しながらお茶会をやっていくと、クッキーの減る勢いが凄く早い。一緒に食べて欲しいと言われたから僕も食べてるけど、食べるスピードを遅くしようかな。

 

 僕の作ったおやつでニコニコの皆を見れているだけでも、十分過ぎるくらいに嬉しい。家族や友達に求められているって再確認ができるから、大満足である。

 

「魔理沙さんの言う通りかと。メノウちゃんの性質は美徳ではありますが、同時に悪意ある者を引き寄せかねません」

「あり得るわね。まあ、そんな愚かなことをしようものなら……ねぇ。レミィ」

「無論、そんな輩は潰すわよ。サニーたちの家族なのは大前提として、うち(紅魔館)メイド妖精(家族)の1人でもあるのだから」

「考えたくもないが、絶対とは限らないもんな。状況とかにもよるだろうが、どこにも冷静な判断を下せない奴は居る」

「ええ。でも、今のところ私の周りにはそんな輩は居ない。ありがたい限りよ」

 

 そうしたら、いつの間にか皆の話が僕を幻想郷にも居るかもしれない、嫌な人たちから守る云々というものに変わった。咲夜の件で、ちょっとばかり敏感になっているのだろう。

 

 自分の欲のために嘘をついて僕と友達になり、本性を表して酷いことをさせる人。

 

 咲夜に酷いことをしたように、僕にも酷いことをしたくて近づく嫌な人。

 

 レミリアとパチュリー、こあと魔理沙が真剣に話し合っているのを見れば、幻想郷にもそういう人たちが居るのは理解できる。そもそも、皆がいい人というのは難しい。

 

 でも、だとしても僕は怖くない。正確に表すなら、怖くても乗り越えることができる、であろうか。その理由は、今世の僕には頼もしい味方が沢山居るからだ。

 

 サニーたちや妖精軍団、レミリア率いる紅魔館の皆、霊夢とあうん、アリスと香霖、そして魔理沙。忘れてはならない、理想郷の皆だって居る。

 

 勿論、そうならない方が皆のために良いのは間違いないけれど、例え他全てが嫌な人となったとしても、僕は大切で大好きな皆が居てさえくれれば、それで満足。

 

 だからこそ、もう恩を返しきれるきれないなんて関係ない。これからもずっと、皆のためにできる限り色々なことをやっていかなければ。

 

「ふふ、どうしたの? メノウ。ほら、おいで……よしよし」

「ふにゃあ……えへへ、レミリア暖かいよぉ」

 

 椅子に座るレミリアの膝の上に招かれ、頭を撫でられる心地よさを満喫しながら、心の中で僕はそう決意を固めた。




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