幸せ四妖精   作:松雨

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ドン引き二妖精

「「あー……」」

 

 メイド妖精さんたちの部屋がある、紅魔館内でも一二を争う程に賑やかなエリアの廊下。

 

 門前で美鈴やスカーレット姉妹、いつも通りの元気になった咲夜と不変で楽しい一時を過ごした後、途中で合流したスターとこのエリアへ向かっていた僕は、あまりにも悲惨な事態を目撃してしまった。

 

 勿論、悲惨と言っても妖精さんたちが大喧嘩してるとか、悪意ある嫌がらせが過ぎたとかいう意味合いではない。単純に楽しい気分が高じた大はしゃぎの結果、散らかり具合が凄まじくなったという意味合いである。

 

 メンバーは案の定、モリオンとシャーネットの2大やんちゃ妖精組に、その妖精組と特に仲良しなメイド妖精さん数人。

 あのレミリアが「普段は優秀で、とても可愛い子たちなんだけどねぇ……」と、ちょっと困り気味だったくらいには凄い、やんちゃなメイド妖精さんたちだ。

 

 ここ最近は頻度が減少傾向にあったけれど、皆は皆なりに我慢していたのかもしれない。恐らく、規模が規模的にそれが今日、何かをきっかけに爆発したのだろう。

 

「あっ、しろちゃんにスターちゃんだ!」

「わーい! ねえねえ、わたしのあたらしいおようふくどう? かわいいでしょ?」

「あはは……2人とも、相変わらず元気一杯だね。えっと、シャーネットのお洋服……うん。とっても似合ってて可愛いと思うよ、僕」

「今日は休みだったのね、シャーネット。ちなみに、私もメノと一緒の意見だわ」

「ほんと!? ふふーん、やったぁ!」

 

 僕個人としては、やんちゃ妖精組の2人も含めた皆か楽しそうにはしゃぐ光景自体はとても微笑ましいと、混ざって遊びたいかもとすら考えている。

 

 ただし、スターや他の館の皆がどう思うか、どれだけ大変な思いをして後片付けとかをするのかという点を考えれば、非常に複雑だ。現に、スターの表情が「片付けどうするのよこれ……」と言いたげな感じで、笑顔ではありつつも微妙に固いのだから。

 

 それに、この散らかり様を見れば、流石に妖精さんのイタズラとかに寛容なレミリアもお説教を選択するかもしれないし、咲夜やノーゼだったら、ほぼ確実にお説教をする。

 というか、皆は気づいていないみたいだけど、微かに咲夜の「あー……うん、まあいいわ」という呆れたような声が僕の耳に入っていた。

 

 僕やスターが対処しているのが見えたから、取り敢えずこの場は大丈夫かと、後で軽い注意くらいにしておこうと考えて立ち去ってくれたのだろう。

 しかし、次にここへ来た時に僕とスターが居なくなるかしてて、なおかつ何一つ変わらないか悪くなっている様だったら、その時は厳しいお説教コースに違いない。

 

 完全に知らない赤の他人とかならともかく、友達がお説教されてへこむ様子はあまり、僕としては歓迎できないこと。

 後片付けを手伝うのは仕事のこともあるから既定路線として、どうにかしてこの気分の高ぶりを今は一時的に鎮めなければ。

 

「さて。これ、片付けしなきゃだけど……館内掃除は今日私とメノの仕事だし、何よりお説教されたくないでしょ?」

「えー……まあ、それはそうなんだけどさ。まだあそびたりないよ、わたし」

「うーん……その気持ちは分かるわ。でも、流石にこのまま見てみぬふりはちょっと無理だねー」

「シャーネちゃん。確かに、私も遊び足りないよ。でも、お説教は嫌だし、しろちゃんとスターちゃんも困ってるから、今日は取り敢えず引き上げよ……?」

「そうそう! さっきまで同じようにはしゃいでたわたしたちが、何を言うかと思うかもだけど……ほら、モリオンさまもそう言ってることだし」

 

 しかし、スターがやんわり説得をしようと話しかけても、よっぽど遊び足りないのか、シャーネットがあまり乗り気ではいてくれていない。

 

 一方で、モリオンを含めて半分くらいのメイド妖精さんたちは、スターの説得が効いていたらしい。シャーネット他数人のメイド妖精さんたちを、一緒に宥めてくれている。

 

 理不尽か過剰に怒鳴られるのではなく、自分たちが皆を困らせるようなことをして、その上でお説教されるのは当然のこと。

 しかも、お説教されるにしたって、その根底には自分たちへの愛がある。ただし、そうだと理解できてはいても怖いし嫌だ。

 それに、今目の前でメノウ()やスターを困らせてしまっている。

 

 こんな感じの思考を、モリオン側のメイド妖精さんたちは頭の中でしているのだろう。いや、理性が若干負けているだけで、シャーネット側のメイド妖精さんたちもそう考えているのかもだけど。

 

「スターやモリオンたちもそう言ってることだし……僕としても、シャーネットたちがお説教される姿は見たくないの。だから、お願い」

「あっ……うん、わかった。ごめんなさい……」

「ふふっ、分かってくれて何よりだよ。さてと、皆でお片付けしよっか」

「うん!」

 

 そうして、根気強くスターやモリオンたちと説得を続けること約10分、シャーネットはようやく落ち着いた上で分かってくれたようで、散らかしたこの場所の片付けを僕やスターと一緒にやってくれることになった。

 

(とは言え、完璧に綺麗にするには……時間かかるね、これ)

 

 後処理が結構面倒な、窓ガラスが割れていたりといったことはパッと見なさそう。

 

 しかし、壁紙やカーペットが水とかで濡れていたり、一部が傷ついて破れてたり、花瓶が落ちて割れていたり、落書きされていたりと、こちらも負けず劣らず面倒そうな感じではあった。

 

 まあ、ここは多種多様な性格の持ち主の妖精さんが居る紅魔館。こんな時のために、オーダーメイドで高性能な魔法的清掃用具が沢山、レミリアによって各所の倉庫に用意されている。

 

 僕の家にもあったら便利そうだなって思ったし、今度いくつか霊夢か魔理沙のどちらかに加え、サニーたちと『河城にとり』って河童の妖怪さんに、いわゆるにとり印の清掃用具をお願いしにいく約束をしている。

 

 初めての妖怪さんに、皆の付き添いありで物事をお願いしにいく。緊張感は拭えないけど、これくらいできなきゃ。

 

「わぁ。しろちゃん、まほうでお水だすのじょうずになった?」

「相変わらず便利だけど、大丈夫? しろちゃん、今日は疲れたりしない?」

「うん。まだ能力とかの練習はしてないし、シャーネットの言う通り魔理沙のお陰で上手になってきてるから、掃除に使う水を出すくらい平気だよ」

 

 ちなみに、本来の適性属性が水だという魔理沙の指導により、能力の扱いだけでなく、水属性の魔法の扱いがとても上手になってきている。

 こうして、掃除に綺麗な水を使うためだけに魔法を使っても、疲れをあまり感じなくなる程度には。

 

 勿論、だからと言ってむやみやたらに使い過ぎれば、疲れること自体に変わりはない。魔理沙にも耳にタコができるくらいに言われているから、慣れたと言っても気をつけて使わないと。

 

 でも、こうやって友達がキラキラした瞳で褒めてくれるなら、もっと使って喜ばせてあげたい。今日は、練習がてら水の魔法を使うことにしようかな。

 

「いやぁ、メノと一緒で助かったわ。お陰でまたダウンしないで済んだから」

「えへへ、それなら良かった。スターの役に立てたなら、この上なく嬉しいもの」

「ほんとうだね! はやいのに、やったところがすごいきれいになってるもん」

「ただ、早すぎて私たちがしろちゃんにやらせて怠けてるみたいで……スターちゃんも居るし」

「その辺は全然気にしてないよー。メノもそうでしょ?」

「えっ? うん。別に僕、そんなこと全然考えてなかったし……そもそもの話、皆だって早いと思うけどなぁ。でなきゃ、他の皆が居るにしても、追い付かなくて汚いところだらけになるだろうし」

「それは言えてるわー」

 

 ちなみに、スターを含めた皆が一緒に頑張ってくれているお陰で、あれだけ色々散らかって汚れていた廊下は、まるでここだけ早送りされているかの如く早さで、綺麗な廊下へと変貌していっている。

 

 確かに、僕とスターの全力の方が動きは早いし、家事の経験値も同じく僕とスターの方が多いだろう。

 

 僕の場合、前世で得た経験や技術や記憶がそのまま残っていて、なおかつ今世の幸福感が、急速にそれらを昇華させていっているからだ。種族の変化などの要因もあるだろうけど、明らかに早く正確になっている。

 

 スターの場合は言わずもがな、僕よりも遥かに長い時間あらゆる家事を、大変でも楽しくこなし続けているからだ。

 

 僕みたいに無理やりやらされたことなど1度たりともなく、自分が抱いた興味から始まり、サニーやルナと仲間(家族)になってからは2人のためという理由が加わり、モチベーションが常に高水準を維持している。

 

 そりゃあ、あれだけ早くもなるはずだ。咲夜やレミリアに頼りにされ、妖精軍団たちからは尊敬の眼差しで見られ、霊夢や魔理沙からは一目置かれるスターは、本当に凄いと常々思っている。

 

「ふぅ……ちょっと疲れたから、魔法で水を出すのはおしまい。後はいつも通り、必要になったら汲みに行ってね」

「はーい! いままでありがとうね、しろちゃん!」

「ふふっ、約束を守ってくれて嬉しいな。メノ」

「じゃあ、これが終わった後はしろちゃんたちも休憩かな?」

「うーん……そうだね。皆でちょっとしたお茶会でも開く?」

「「さんせーい!!」」

 

 しかし、モリオンやシャーネットたちがスターはもとより、僕より早さが遅いのはまあその通りだとしても、その綺麗さは決して勝るとも劣らないというか、早さ自体も決して()()訳ではなくむしろ()()

 

 短期間でここまでできるようになるなんて、レミリアや咲夜を含む皆の教え方や使っている道具が良いのは当然として、モリオンやシャーネットたちの才能は本当に凄いと言える。

 

 これで、後もう少しだけ抑えが利いてくれればレミリアも頭を悩ませることも少なくなって、僕やスターもちょっと楽にはなるんだろうけど、そこは根気強く行こう。

 

 そうすれば、きっとそう遠くない内に抑えが強く利いてくれるようになるから。

 

「はい、おしまい! ふぅ……流石にちょっと疲れたわー」

「そうだね、スター。じゃあ、皆でお茶会しよっか」

「「わーい、お茶会だー!」」

「あまりはしゃぎ過ぎたら駄目だよ、皆」

「「はーい!」」

 

 なお、あれだけ色々と悲惨な状況だった廊下は、楽しく皆で話をしながらではあったけど、僕やスターを含めた皆の精一杯の努力により、ほぼ1時間で綺麗な状態へと元通り。

 誰かに見られていなければ、ここでモリオンやシャーネットたちがはしゃいでたなんて、分からないレベルである。

 

 まあ、実際は咲夜に見られていた訳だけど、今それを言う意味はまるでない。後片付けをしていないならまだしも、ちゃんとして綺麗な状態へ戻したし、軽く注意はされても厳しいお説教はきっとされることなどない。

 

 注意される程度ならしょうがないだろうし、この後には楽しいお茶会もある訳だから、ここは黙っていようと僕は考えたのだった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。
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