幸せ四妖精   作:松雨

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今話は霊夢視点です。


微笑みの霊夢

 ここ最近、うちの神社に遊びに来る頻度が明らかに増えた、光の四妖精(サニーたち)

 それに比例してか、光の四妖精と親しい妖精軍団(チルノ一行)や紅魔館の二大妖精長(ノーゼとスフェ)を含むメイドの妖精たちも、良く集まるようになってきている。

 

 メノやルナ、ノーゼのような大人しめの子も居るには居るけど、基本的に元気で騒がしくてイタズラが大好きなのが、妖精と言う種族。

 

 なので、大体の場合は神社の敷地内が大層賑やかになるし、思いつきか何かで全員が揃おうものなら、その盛り上がりは食べ物をそんなに必要としない違いこそあれ、もはや宴会。

 何だかんだで今挙げた全員が集まったおとといは、皆が帰った後の疲労感が半端なかったのを、はっきりと覚えている。

 

 私の知る妖精たちが嫌いとかではないけど、全員が集まるのはたまにならまだしも、正直ちょっと勘弁して欲しい。少人数か、大人しめの子だけで来るならこの限りではないけども。

 

「霊夢、あうん! 昨日も来たけど、今日もサニーたちと遊びに来ちゃった」

「最近良く来るわねぇ……メノ、いらっしゃい。お菓子はないけど、玄米茶とか緑茶なら沢山あるわ」

「えっ、良いの? お話ししてくれるだけでも僕、十分嬉しいのに」

「気にしなくても良いわよ。ねえ、あうん」

「はい! それと、サニーちゃんたちの分もありますから、飲みたければ良いですよ!」

「ええ! 喉も渇いてきたところだし、遠慮なく飲ませてもらうわね!」

「私は遊んだ後でいいかなー。ルナはどう?」

「うーん……なら、メノと一緒の玄米茶で」

 

 しかし、最近うちの神社に妖精たちが良く集まるのには、人里に自主的に殆んど行かなくなった……紅魔館のメイド妖精組に至っては、レミリアから直々にしばらくは行ってはならないと、珍しく強めに命令されているからだ。

 

 理由は、咲夜が罵詈雑言のせいで酷く傷ついたからとなっているものの、それはあくまでも表向き()

 私も含め、一部の面々にのみ知らされたのだけど、実際はメノの前世で家族だった人間か幻想入りしてきた事実を、当の本人だけには確実に隠しきるためである。

 

 簡潔に言えば、メノの精神を守るための情報操作。主導者は言わずもがな、レミリア含む紅魔館の精鋭と古参のメイド妖精2人。

 

 その念入り具合と言ったら凄まじく、前述の命令のみならず、新聞を発行している文やはたてへの私や咲夜を利用した口封じを、躊躇いもなく実行に移す程。

 まあ、私としてもメノの心が壊されるのは許容できないので、意図してレミリアに利用される選択を取った訳だが。

 

「ああ、そうそう。昨日のお味噌汁も美味しかったわよ、メノ」

「わぁ! 喜んでもらえて嬉しいな!」

「量も多かったし、あの後入れ替わりでうちに遊びに来た『伊吹萃香』って鬼と、『河城にとり』って河童の妖怪にも振る舞ったら、2人して私が作ったものだと思ってたっけ。勿論、訂正したけどね」

「本当に? ふふっ、霊夢と一緒かぁ。えへへ……」

 

 なお、メノの前世の家族の話を咲夜から聞いた時、あのレミリアなら相当ぶち切れてもおかしくはないと思ったけど、案の定すこぶる機嫌が悪かったらしい。

 

 運命(未来)が見えたから仕方なく耐え忍んだものの、あの場で殴り殺しておけば良かったかもと、何度も愚痴を溢していた程だったという。

 

 流石はレミリア、その辺の線引きは感心ものだ。現状、外の世界出身な上に人里の住人からは距離を置かれ気味だったにせよ、彼らは人間。

 

 幻想郷の絶対的な決まりを破り、平和や秩序を乱すような存在となったとかならともかく、そういう意味ではまだ何もしていない。

 

 妖怪が人里で人間を殺してしまったともなれば、博麗の巫女たる私が対処に当たらねばならず、どのように展開が分岐しようとも、後味の悪い結果となってしまうだろうから。

 

「ねえ、霊夢。どうしたの? その……えっと、元気ないよ?」

「私たちが来た時はそうでもなさそうだったけど、確かに元気なさそう。もしかして、本当は遊びに来て欲しくなかったとか」

「えっ。ルナの言う通りだったら僕、霊夢に嫌がらせしちゃったことになる、かも……?」

「あ……メノ! こんなに歓迎してもらってるのに、そんなことないよね。変な想像させちゃって、本当にごめん」

「メノちゃん! 心配しなくても大丈夫だから……ですよね? 霊夢さん!」

 

 この場に似つかわしくない、そんな暗い想像をしていたからだろうか。三妖精に変に心配され、膝上に座って私の顔を見つめるメノを、変に誤解させてしまったことにあうんの声かけで気がつく。

 

 言わずもがな、今日は四妖精が遊びに来ることは嫌ではない。仮に、静かな神社の縁側でまったりお茶を飲んで過ごしたいとか思ってたら、来た時にすぐ断っている。

 

(……メノ。私はあなたに、嫌がらせされたことなんて1度もないわよ。ちょっとしたイタズラなら、まああるけどね)

 

 私やあうんを見るなり、嬉しそうに羽をはためかせながら近寄って甘えてくる、見る人が見れば庇護欲をそそる程の可愛らしさ。

 

 大人しくて相応に臆病だけど、自分のことよりも家族や親しくなった友人は当然優先として、トラウマとなる過去がありながら、他人のことも思いやれる優しい性格。

 

 妖精にしては強い力に幻想郷でも上位に食い込む天性の飛行能力、私や咲夜や妖夢にも全く劣らない家事能力を持ちながら、無駄にひけらかしたり威張ることはない。

 

 無論、誰にだって大小問わずに欠点があるように、メノにも欠点はある。ただし、それを差し引いてもメノはいい性格の持ち主だと言えるだろう。

 

 どうして、そんなこの子にわざわざ無駄に傷つけかねない、来た時に歓迎しておいて実は嫌々遊んでましたなんて、酷いことをする必要があるのだろうか。

 

 そもそも、これは三妖精(サニーたち)のみならず、誰に対してやっても気分を盛り下げて不快に思わせたり、性格や状況によっては相手を傷つけかねない行為。例えイライラしていたとしても、こんなことをやる訳がない。

 

「勿論よ。だから、心配しなくたって良いからね。メノ」

「そっか。じゃあ、どうしてそんな顔をしてたの? お悩み?」

「そんなところね。人里って聞いたら、分かる?」

「あっ。もしかして、霊夢も咲夜のことを考えてた?」

「ええ。そこまでするような人が人里に居るだなんて、私ですら知らなかったのがね。今でも悔しいのよ」

「うん、僕も霊夢と同じ。あの時悲しそうな咲夜の力に、全然なれなかったから……でも、立ち直ってくれたから良かった。本当に」

 

 と言う訳で、メノの問いかけから既に広まっている表向きの理由を最大限に利用し、説得力のある嘘をついた方が良いと勘で判断、申し訳なく思いつつも何とか誤解を解いていく。

 

 そして、サニーたちは真実を知っている側の妖精である上、私の意図を何となく察したのか、悲しみや怒りといった感情を少し大げさに演出しつつ、話に付き合ってくれた。そのお陰で説得力は更に上がったと、メノの様子を見て確信を持つ。

 

 しかし、雰囲気は相応に暗くなり、とても楽しく遊ぶなんて感じではなくなってしまった。1度は歓迎した以上、楽しく遊んで帰ってもらうつもりだった私としては、これはあまり望ましいものではない。

 

 さて、どうやってこの雰囲気を崩し、元の楽しい雰囲気へと戻そうか。

 

「んにゃっ!? その、えっと……僕の羽なんか触って、どうかしたの? あうん」

「ふふーん。メノちゃんって、サニーちゃんたちよりもくすぐり攻撃に弱いんですね! 羽でこれだったら、妖力をああしてこうして……よし、こうだ!」

「ひゃ……にゃははははっ! 何で、あうんにくすぐられるとこんなに……ちょっ、羽の根元は耐えるの無理ぃ……!」

 

 なんて考えていた刹那、サニーとこそこそ話をしていたあうんが何を思ったのか、分身した。

 で、分身の方(もう1人のあうん)に私の膝に座っていたメノを抱き抱えさせると、本体の方は何か企んでいそうな顔をしながら、本気でくすぐり攻撃を始める。

 

 その結果、思いの外くすぐられるのに弱かったらしいメノは、首筋やら脇の下やらをくすぐられて大笑い、じたばたして分身のあうんから逃げようとするも、妖精故に力では勝てずに成されるがままとなってしまっていた。

 

 しかし、本気で嫌がっているようには見えないし、何なら楽しそうにすら思えてきた。弾幕や能力を使わず、守護霊のウルが出て来る様子が全くないからだ。

 

 仮にそれらの要素を全く考慮しなかったとしても、せわしなく動きつつ、ぼんやり桜色に光るメノの羽を見れば分かる。

 あうんやサニーたちが自分の反応を見てくすくす笑い、楽しんでいるのを目敏く察知した結果、嬉しくて幸せに思っているのだと。

 

 じたばたしているのは、くすぐったい故に身体が勝手に起こす反応のようなものか。

 

「うっわぁ、容赦ないね。あうん」

「それにしても、本当に可愛らしい反応ね、メノ! さっきまでの雰囲気が消し飛んだわ!」

「ふーん。くすぐり攻撃に本気を出すと、ああいう感じになるんだ……今度やってみよ」

「ルナ。やるんだったら、ちゃんと順番決めしないとだわー」

 

 私自身、メノがくすぐられて大笑いする光景を見て、釣られて笑うとまではいかなかったけど、心が暖かくはなってきている。鏡を見れば、今の私の表情は微笑んでいるかもしれない。

 

(……ふふっ)

 

 それにしても、場の雰囲気を楽しいものへと変える、こんなにも簡単な方法があったとは。流石はあうん、今の私には全く思いつきもしなかったわ。

 

「あうん。流石にもう解放してあげなさい」

「そうですね! メノちゃん、大笑いしてくれてありがとうございます!」

「ふぅ、ふぅ……疲れた、もう勘弁してぇ……でも、役に立ったのは良かった、かな。えへへ」

 

 頭の中でそう思いながら、メノに笑い過ぎによる疲れが見え始めたことに気づいた私は、あうんにくすぐり攻撃を止めるように声をかけた。




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