幸せ四妖精   作:松雨

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大はしゃぎ四妖精とあうん

 あうんのくすぐり攻撃は、サニーたちのそれよりも正直言って効いた。今まで知らなかったけど、どうやらあうんは誰かをくすぐるのが相当上手らしい。

 

 であれば、羽の根元や首筋、脇の下などの敏感なところをやられれば、事前にやられると予告されていたって、笑わずに耐えるという所業を達成するだなんて、僕には多分無理そう。

 今日みたいに、やられるなんて思っていない時に不意を突かれたら、結果は言わずもがなだ。

 

 あうんも全く容赦なくくすぐり攻撃を仕掛けてきたから、お陰で笑い過ぎて身体が火照ってるし、普通に耐えられる程度だけどちょっとばかしお腹も痛い。

 

 だけど、そんな僕の様子を横から見ていたサニーたちと霊夢は勿論、くすぐってきたあうん自身がとっても楽しそうに笑ったり、微笑んでくれてたって途中で分かったから、この程度ないにも等しかった。

 

 何だったら、それに気づいてから霊夢が止めるまでの間、嬉しさと底なしの幸せで気分がかなり高揚していた。毎日やられたって、別に構わないかもと考える程に。

 

「わーい! サニー、スター、ルナ! 待て待て~! あうんもだよ~!」

「あはっ、嫌よ! 待てと言われても待たないわー!」

「あれだけあうんにくすぐられておいて、まだまだ元気そうねー! 妖精の活力は底なしかしら!」

「スター。私たちもメノと同じ妖精、底なしの活力という意味じゃほぼ一緒……というか、これ鬼ごっこだったよね……?」

「いつの間にか、ただのはしゃぎ合いみたいになっちゃいましたけど、これはこれで楽しいですし、別に良いんじゃ?」

「「「うん、それは言えてる」」」

 

 ちなみに、僕があうんのくすぐり攻撃から解放された後は、少しの休憩を挟んでから何やかんやあり、サニーたちやあうんと博麗神社境内ではしゃぎ合って遊んでいる。

 

 楽しさや嬉しさなどの感情に、それに伴って湧き出る活力。この2つの要素は、僕の大好きな家族であるサニーたちや、チルノ一行を筆頭に大好きな友達が元気であればある程、強力なものへと変化していく。

 

 だから今、もっと騒いだり動き回って遊びたい、何かイタズラしてみたいなど、普段なら理性でとても簡単に抑え込める欲求を、とっても難しいレベルにまで大きくしたのだろう。

 

 というか、僕の気分が普段通りだったとしても、こんなにもニッコニコのサニーから「メノも元気に鬼ごっこしましょ!」と言われたら、断れる訳がない。そもそも、断るという選択肢すらないとは思うけど。

 

「こうしてっと。スター、ようやく捕まえたよ! えへへ……」

「ありゃ、捕まっちゃったわー。という訳で、今度は私が追いかける番……って、メノ? その両手は何?」

「んー? えっとね、スターのほっぺたで遊ぶための手!」

「えっ? 私のほっぺたで遊ぶっ……ふぇ!?」

「あははっ! スター、いじられて変な顔になってる! 何て言うか、うーん……とにかく面白いわ!」

「メノ、そのいじり方は反則……ふふっ」

「ぶっ……ごめんなさい。スターちゃん、私……」

「ちょっふぉ()、メノ? どんないじり方してるのよー!?」

 

 なお、霊夢も同じようにサニーが誘ったけれど、残念ながら断られてしまった。確かに、宴会とか紅魔館のパーティーでならまだしも、霊夢は普段から妖精さんたちみたいにはしゃぐようなタイプじゃないし、仕方のないことではある。

 

 なんて考えていたらすぐに、僕たちの様子を見て食事の用意やお風呂の用意をしたり、寝床を整える時間が必要な気がしたからと、断った理由を説明してもらった。

 

 きっと、僕たちが遊ぶのが楽しくて仕方がないあまり、服とか身体が汗や泥などで酷く汚れても気にしないし、最終的に疲れも相当溜まってしまうと察してくれたんだ。

 

 最悪、僕たちが1日神社に泊まることも想定して。でなければ、寝床なんてわざわざ用意しないはずだから。

 

(……今度、霊夢にプレゼント送ろう。喜んでくれそうな、お金とか食べ物が良いかな?)

 

 2日連続で押し掛ける形で遊びに来たり、こうやって境内ではしゃいだりすることを認めるのみならず、本来する必要すらなかった気遣いをしてくれる、魔理沙のように暖かくて穏やかな霊夢(お友達)

 

 それこそ、僕が生まれるよりかなり昔、ここまで暖かくて穏やかではなかった時期が霊夢にあったという、サニーたちや魔理沙の話が真実ではないと一瞬考えてしまう程。

 

 しかし、それが真実であろうがなかろうが、大好きな友達にどんな過去があろうと受け入れるつもりの僕にとっては、全く以て関係などない。

 

 何だったら、むしろ霊夢は魔理沙みたいに、家族同然の存在だと思い始めている僕が居る。

 

「えへっ……ねえ、サニー。ちょっと、霊夢のところに行ってきても良い?」

「ええ! じゃあ、この辺で楽しい楽しいスターいじりしながら待ってるわ!」

「ちょっと、サニー!? メノがやったの見ててもまだやるの……あっ。ルナとあうんまでノリノリ……びゃあ!」

「スター、メノみたいな反応してる。可愛い」

 

 こんなことを考えていたからか、急にサニーたちや魔理沙へ甘えるみたいに霊夢に甘えたくなってきたので、一旦サニーに声をかけてから家の中に駆け足で向かう。

 

 今は寝床の用意をしているのか、料理の用意をしているのか、お風呂のお掃除をしているのか、はたまた何か別のことをしているのかは分からない。

 

 けど、僕の家よりは広くとも紅魔館みたいに特段広い訳ではない霊夢の家の中、視覚聴覚を総動員すれば大した時間をかけなくとも見つけられる。

 

「あら、メノ。もう疲れたの? まだ全然元気そうに見えるけど、布団は敷いておいたから、寝たければ寝れるわよ」

 

 だから、襖を開けて寝室から出てくる霊夢を簡単に見つけられたのだ。

 わざわざ寝室に訪れた訳だから、僕が疲れて寝たくなったから来たと霊夢が勘違いしたけれど、まあ無理はない。

 

 しかし、実際は霊夢に甘えたくなっただけなので、居場所がどこであろうと関係はない。いや、料理を作ってたりお風呂掃除中だと甘えられても迷惑だから、実質関係はあるか。

 

「霊夢~! だーいすき!」

「おっと……ふふ。全く、そんな勢いで飛び込んできたら危ないわ、メノ。レミリアじゃあるまいし」

「えへへ、ごめんなさい! 霊夢に甘えたくなったこの気持ち、抑えられなくて」

「あー。何があったのかは知らないけど、好意を向けられるのは悪い気はしないから、聞かないでおくわ」

「そう? 別に聞いてくれても良いんだけどね!」

 

 ちなみにだけど、問いかけに答えるよりも前、高ぶる気分のままに霊夢の胸に飛び込み、そのまま抱っこされて頭を撫でられた時はまさに、至福の一時。

 

 1度味わえば、2度3度と味わいたくなってくる心地よさで、仮に今酷いトラウマを想起して辛い気持ちでいたとしても、それごと包み込んで癒してくれるだろう。

 

 サニーたちの抱擁や甘やかしによる究極の暖かさに迫る、魔理沙の抱擁や甘やかしに負けず劣らずな暖かさを、霊夢の抱擁や甘やかしから感じ取ったのであった。

 

「にゃあ……もっと味わってたいけど、サニーたちを待たせてるの。また後で、やって欲しいな」

「ふふ、はいはい。この程度ならお安い御用よ」

「えへっ、約束だからね! 霊夢!」

 

 幾ばくか、湧き出してくる幸せに身を委ね続けて少し落ち着いてきた頃、名残惜しさを感じつつも霊夢から離れて、待たせているであろうサニーたちのところへ駆け足で戻っていく。

 

 スターをいじって遊びながら待っていると言ってたけど、僕が居ない間にサニーやルナ、あうんは一体何をしていじっているのだろう。ちょっと前、僕がやられたくすぐり攻撃とかだろうか。

 

 しかし、きっとスターだってやられてばかりはいない。能力とかを使って、3人の裏をかいて驚かしたりできる実力はあるから。

 

 あっ。でも、くすぐられて笑ってる状態で上手く能力を使えるとは思えないし、何ならサニーとルナとあうんにもある訳で、やっぱり成されるがままかもしれない。

 

 ただ、あうんの能力は『神仏を見つけ出す程度の能力』。名前からして、遊びに主に役に立つのはサニーとルナの能力にはなりそうだけど。

 

「サニー! お待たせ……って、チルノ! 大ちゃんに、皆も!」

「よっ! サニーたちが楽しそうなことしてたから、あたいたちも参加してるぞ!」

「それにしても、いつもより元気そうだね。メノちゃん」

「きっと、霊夢に甘やかされたからじゃないかなー?」

 

 そうして、よそ見をせずにサニーたちが待つ場所へ戻った時、そこで目に入ったのは、いつの間にか妖精軍団の皆も加わり、より一層賑やかで楽しそうにしている光景であった。

 

 例え一緒に参加せずとも、こうして見ているだけでも十分に幸せを感じられる、究極の一時。それに、今から僕も加わるともなれば、もう最高としか言い表せない。

 

(あー……うん、まあそうだよね)

 

 なお、そのお陰かサニーの楽しい楽しいスターいじりは中断されていたけれど、相当いじられたりはしゃいだりで疲れきったのか、スターは少しげんなりしているみたいであった。




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