「えぇ……知らぬ間に、人数が倍に増えてるんだけど……」
「あはは。霊夢さん、何かすみません」
あれからすぐ、スターがいじられ過ぎてかなり疲れているということと、サニーたちやはしゃぎ合いに加わっていたチルノ一行も相応に疲れていることもあり、少し遊んでからゆっくり休もうという話が僕たちの輪の中で出ていた。
で、チルノ一行に関しては来ていることを霊夢は恐らく知らないはず。そのため、食事はともかくお風呂だけでも一緒に入る許可をもらいに声をかけに行ったら、思い切り苦笑いされてしまう。
まあ、それはそうだろう。僕やサニーたちだけだと思って準備をしていたら、居るなんて思ってもいなかったチルノ一行が加わり、人数がほぼ倍になっていたのだから。
「はぁ……まあ良いわ。取り敢えず、あんたたち全員お風呂で全身の汚れを落としてきなさい。勿論、身体は先に洗っておくのよ」
「「「はーい!」」」
「それと、チルノ。入るのは良いけど、はしゃぎ過ぎるがあまりお風呂のお湯を凍らせないこと。
「そんなの分かってるぞ、霊夢!」
「チルノちゃん、
「きゃはは! 霊夢の言い草、まるでチルノのお母さんみたいだな! 妖精にそういうのはないけど!」
だけど、霊夢はチルノ一行もため息をつきながらであれど、優しく招き入れてくれた。食事にしろ寝床にしろ準備するものも増えるし、僕たちが帰った後の片付けも増えて、休まる時間がなくなってしまうのに。
(ありがとう、霊夢。僕たちに、気を遣ってくれて)
いつか必ず、霊夢が僕たちにくれた1日をそっくりそのまま、僕が返そう。
普段、あうんと2人でやっている家事を可能な限り肩代わりして、その間霊夢には縁側でのんびりお茶を飲んでてもらったり、親友の魔理沙とかレミリアと遊んだり、とにかく自分が好きなことをして心休まる時間を過ごしてもらいたいな。
本当なら人里へのお使いとかも含め、幻想郷中を1人であちこち駆け回って霊夢の代わりができれば良かったんだけど、未だにそれは負荷が強すぎてできないし、そもそもサニーたちから固く禁じられている。
何だったら今は、レミリアが僕の精神云々とは別の理由で人里へは行くなと、僕を含めたメイド妖精さんたちへの
香霖堂に魔理沙の家、アリスの家にラルバの秘密基地、僕の家がある魔法の森にある、大好きな友達が住んでいる場所かつ近場。
それらより遠くとも、飛べば時間的に大したことがない紅魔館や博麗神社ですら、僕は1人では行けない。
正確に言えば、頑張れば1人でも行けるけどそれですら負担が大きいし、サニーたちがやっぱりまだ駄目と拒否しているからだけど。
「よーし! さっさと身体洗って水風呂入るぞー!」
「あたいは水風呂苦手だから、やっぱり熱々風呂が良いな!」
「2人とも! ちゃんとかごに入れなきゃ……もう!」
「ふふっ。代わりに僕が探してかごに入れとくからいいよ、大ちゃん」
「ごめんね、メノちゃん。チルノちゃんとクラピちゃんの代わりにありがとう」
「楽しくなると、妖精軍団の中で1番はしゃぐ2人組だしね。予想できたとは言え、服はともかく下着も放り投げるのはちょっとあれかも」
「ラルバの顔の横スレスレに飛んできたもんねー。チルノのドロワーズ……あっ」
「あはは……クリーンヒットしちゃいました。2つも」
「「「あちゃー」」」
ちなみにだけど、霊夢の家のお風呂は大部分が露天な上に広い。どこかの旅館の温泉みたいな雰囲気で、とっても落ち着けるような場所。
ただし、今日は落ち着くとは程遠い感じになるだろう。脱衣所へ着くや否や、服や下着を脱ぎ捨ててまでお風呂に入っていったチルノとピースを含め、妖精が9人も集まっているから。あうんも入れれば10人だ。
(良かったぁ。2人とも、霊夢に怒られなそう)
少しばかり、チルノとピースが身体を洗わないで入っちゃわないかと心配だったけど、僕たちも服や下着を脱いで露天風呂の方へと歩みを進めた時、しっかりと2人で背中を流し合っていたからほっとした。
僕自身が怒られるのも勿論嫌だけど、大好きな友達が怒られてしょんぼりするのを、端から見るのも嫌だから。
ただ流石に、僕が居ない時のことまでは関われないし、2人が楽しそうに語るイタズラに関しても、それで怒られるのならまあしょうがないのかなとは思うけど。
「おーい、皆! 早く身体洗って入ってこーい! あっ、でも早く入り過ぎるとのぼせちゃうから、やっぱ急がなくても良いや!」
「あはは……ピース、熱々お風呂で更に元気になってる。凄いなぁ」
「チルノもチルノで、1人しかいないから悠々自適に水風呂で泳いでるし……というか、身体を洗うの早くない?」
「見た感じ、綺麗にはなってるから良いと思うわ! ルナ」
「それにしても、あれで洗えてるのも凄いですよね! 本当、何で洗えてるの……?」
「チルノとピースの七不思議って奴ね!」
「二つしかないですよ、サニーちゃん!」
「分かってるわ!」
しかし、それにしたって2人の身体を洗うスピードは速かった。僕がサニーやスター、ルナと背中の流し合いをしながら話している時には、もう既に髪の毛まで洗い終えて
まあ、ちゃんと洗えているのなら、別に身体を洗うのに使った時間なんて関係ない。霊夢だって、お風呂場を汚したりして欲しくないだけなのだから。
その際、隣でラルバやあうんと一緒に背中を流しているリリーも驚きの眼で2人を見て、「よっぽど入りたくて仕方なかったんだねー」と評していたけれど、当然の摂理だ。
「ふぃぃ、すっきりしたわ! メノ、今日もありがとうね!」
「どういたしまして、サニー。じゃあ、皆も身体を洗い終わったことだし、お風呂入ろ……あっ、先にチルノの方に行ってくるね」
「チルノの方に? じゃあ、私も一緒に行くわ!」
「メノちゃん、私もチルノちゃんのところに一緒に行って良い?」
「私も行くね、メノ」
「勿論です、行きましょう!」
そんなこんなで身体を洗い終えた後、さて大きな露天風呂の方に行こうとする前に僕はサニーや大ちゃん、ラルバやあうんと一緒に水風呂の方に行くことにした。特性上致し方ない面はあれ、チルノだけが少し離れているのが気になるからである。
氷精の割に熱や火に耐性がある方とはいえ、それでも熱いものや火は弱点。1回休みがあろうとも、無理をさせて下手に体調を崩させるなんてことになれば、苦しい思いをするのはチルノなのだから。
ただし、一緒に入ることはしない。まだ身体が暖まりきっていないのもあるけど、チルノの冷気の力故に水風呂の水がキンキンに冷えた氷水となっていると、そう考えられるのが大きいから。
無理して入れなくはないものの、そのせいで風邪を引いたりなどで体調を崩したくはないし、チルノ本人がいつぞや「あたいと水風呂に入る? うーん……体調とか考えるなら止めとけ!」とか、「どうしてもって思ったら、あたいが冷気を抑えて一緒に入るし!」と言い、ニコニコで親指を立ててきたので、入る選択肢は消えた。
「あれ? 大ちゃんたち、先にあっち入らなくて良いの? 身体洗っただけだと、暖まらないんじゃ?」
「大丈夫。気にしないで良いんだよ、チルノちゃん。それより、楽しそうで何よりだね」
「おう! 水風呂は実質あたい専用で誰も居ないけど、見えるところに皆が居るし、大声出せば楽しく話もできるしな!」
「ふふっ……確かに、この距離だったら普通にお話できるもんね」
「そう! だから、あたいは全然寂しくないし、仲間外れにされてるだなんて思ってないぞ……メノ!」
「……そっか。えへへ、良かったぁ」
「あー、やっぱり。メノのそういうところ、本当に分かりやすいね」
「はい! それにこれは、メノちゃんの1番の美徳だと思いますっ!」
で、水風呂で渦を作って遊んでるチルノに声をかけると、僕の心の中を秒で察したらしい。幸せで楽しい会話の最中に水風呂から出て、僕の方にニコニコしながら近寄ると、両手で僕の手を優しく握ってくれた。
お陰でちょっぴり重たいような気がした心が、すっと軽くなる。勝手な思い込みで背負っていた罪悪感を奪い取り、捨ててくれたのだから当たり前なのだけど、これが本当に嬉しかった。
(気を遣わせちゃったなぁ……)
同時に、何かと高頻度で大好きな家族や友達に気を遣わせる、こんな自分に呆れてしまう。トラウマがあるにしたって、いい加減どうにかしなければとは思うものの、まだ難しいかな。
「チルノ。これからもずっと、僕とお友達でいてくれますか?」
「あははっ! 改まって丁寧にお願いされなくても、あたいとメノはずっと友達だぞ!」
なお、僕の手を握るチルノの両手は氷のようにとっても冷たかったけれど、不思議と辛いなんてことは全くない。
むしろ、そのままずっと握っていて欲しいと思うくらい、僕は
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