幸せ四妖精   作:松雨

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うとうとルナチャ

 霊夢の手料理は、味そのものだけを鑑みればスターの手料理と同じか、それ以上に美味しい。普段よく作る和食は勿論のこと、和菓子も頻度は少ないけど得意だし、洋食に洋菓子だっておいしく作れる。

 

 きっかけは、一人暮らしをする上である程度自炊できる能力が必要だったこと。ただ、料理でも天才的な才能を発揮した霊夢はめきめきと上達していき、短期間で今とそう変わらない領域に辿り着く。

 

 魔理沙やレミリアなど、親しい友達からも満場一致の面倒くさがり屋さんな性格だけど、しっかり集中して練習したことに関しては、凄くできるようになる人間さんなのだ。というか、そうでなくても練習さえすればある程度できちゃう。

 

 到底僕なんかが追い付けるような存在じゃないけど、大好きな家族同然な霊夢がそういう人間さんなら、僕も普通に嬉しい。

 勿論、そうじゃなくなっても霊夢との関係は絶対に変わらない。霊夢から変えてこない限りは。

 

 何だかんだ、皆とはしゃぎながら入ってたお風呂から上がって、のぼせる寸前だった皆やひんやりしてたチルノと縁側で涼んだ後、居間に用意されていた美味しい料理やお菓子の数々を食べながら、僕は考えていた。

 

「ん~! 甘いシロップがかけられたかき氷、やっぱり美味しいな! お祭りじゃなくても毎日食べたい!」

「チルノちゃんなら、シロップさえあれば毎日自分で食べられると思うけど、やっぱり違うの?」

「違うぞ! 味というか、気分的にってやつ。そもそも、誰が作ってくれるかって結構大切じゃない?」

「……あっ、確かにそうだね。メノちゃんも、スターちゃんとか霊夢さんの料理の方が、自分が作るよりも美味しいって言ってたっけ」

 

 ちなみに、霊夢が用意してくれた料理やお菓子は多岐に渡る。チルノが食べてるいちごシロップかき氷やようかん、柏餅やたい焼き、お味噌汁に玄米ご飯、油揚げの乗っかったうどん、各種お野菜など。

 

 食べ合わせとかは全然考えておらず、僕たちを見てとにかく思い浮かんだものを用意できるだけしたみたいだ。面倒になった時用の蓄えとかにも、遠慮なく手を出して。

 

 明日から合わせて3日間は、メイド妖精としてのお仕事があるから厳しいけど、その次の休みの時は霊夢へのお返しとして、本人が望むなら料理を含めた家事を1日はやろう。

 

 なお、ようかんや柏餅は人里の和菓子屋さんで買ったものらしい。包装が如何にも高そうな感じを醸し出しているけど、聞いてみたらそんなに高くはなかった。ただし、安くもなかったけど。

 

「うん。霊夢の手料理だったら、お味噌汁が1番だよ。全部が同じくらい美味しいから、1番を決めるのはとっても大変」

「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃないの。練習した甲斐あったわね」

「スターだったら、やっぱり断トツでクッキーかな。今でも食べる度に幸せすぎて涙出ちゃうもん」

「ふふっ。初めての、私のお菓子だったもんね。いい思い出になったようで何よりだわー」

 

 わざわざ言うまでもないことではあるけど、出された料理やお菓子はとても美味しく、量さえあればおかわりしていたかもしれない。

 

 だけど、当然ながらこれだけ用意してもらった以上、追加で料理やお菓子の要求などできる訳ない。本人が欲しいか否かと聞いてくれたのならば、話は別だけども。

 

(皆、とっても楽しそう。僕も楽しいよ、皆)

 

 それはそうと、霊夢が用意してくれた料理やお菓子、玄米茶やほうじ茶などの飲み物を、サニーたちが嬉しそうに味わいながらワイワイ騒ぐ様子は、とても心暖まる光景である。

 

 霊夢は、僕も含めた妖精たちやあうんが遊び疲れ、お風呂に入ったはずなのにまだ元気が有り余ってる様子を見て、かなりの呆れ顔になってる。

 確かに、これだけを切り取ればスタミナが無限にあるかのようだから、まあしょうがない。

 

 ただし、この場合は高ぶる気分との相乗効果によって、限りなくスタミナの限界が引き伸ばされているだけで、いずれはスタミナ切れが、徐々にではなく一気にやってくる。

 

 勿論、気分が落ち着いてくればその反動でスタミナ切れになり、動く気力がなくなったり、眠くなったり、個人差はあるものの色々な反応が現れるのだ。ちなみに、僕の場合は極度の眠気がやってくる。

 

「……あれ? おーい、ルナ。大丈夫かー!」

「ん……? うーん……」

「あら、流石に疲れが限界っぽいわ!」

「ルナちゃん、珍しく大はしゃぎしてたもんね。そうなると、メノちゃんはどうなんだろう?」

「僕? 今のところは特に……でも、言われてみればちょっぴり眠たいかも……?」

 

 なんてことを考えていたからか、気づいたら実際にルナがスタミナ切れになっていた。俯いてゆらゆら、眠気故にぼーっとしているようで、チルノからの呼び掛けにも殆んど反応がない。

 

 僕程ではなくても、霊夢や魔理沙に大人しいと評されるくらいには普段、はしゃがない妖精さんのルナ。今日は僕以上にはしゃいでたのもあってか、サニーやスターと違って心地いいお風呂と美味しい食べ物で、完全に落ち着いてしまったのだろう。

 

 これ以上はこの場に居ても、ルナにとっては辛そう。ここでは騒がしくて寝れない、寝るために寝床に行こうにも身体が重くて動かない、そんな風に思っているに違いない。

 

 サニーやスターも、そんなルナを見て「もう寝かせてあげましょ!」「無理させるのはいけないしねー」と、寝室に運んであげようとする感じを醸し出している。

 

 そりゃあそうだ。こんな状態で遊んだって誰も楽しくないし、幸せにならないのだから。

 

「よいしょ。サニー、僕がルナをお布団に運んでくるよ」

「あらそう? じゃあお願いね、メノ!」

「何だったら、メノも一緒に寝たらいいよー。眠たいんでしょ?」

「そうなの? だったら、明日も明後日もその次もあるんだから、寝ておきなさい。私と遊ぶ機会なんていくらでも作れる訳だし」

「うん、分かった」

 

 だったらと、僕は隣に居たルナを抱き抱え、寝室のお布団で寝かせてあげる選択を取る。無理に眠気を吹き飛ばさせたとしても、同様に誰も楽しくないし、幸せにならないのだから当然であろう。

 

 しかも、スターも言うように、僕自身も疲れや眠気を感じているのだ。ついでに一緒に寝てしまおう。

 

(ふふっ、可愛い寝顔。ルナが、眠ってる僕を抱っこしてくれた時も、こんな気持ちだったんだろうなぁ)

 

 なお、抱っこして寝室に向かう途中でルナは完全に眠りについたようで、耳元ですうすうと気持ちよさそうな寝息を立て始めている。トレードマークである三日月のような羽もぴょこぴょこ動いていて、まるで眠っていてすら遊びたがっているかのよう。

 

 寝顔だって、とっても可愛らしい。例えどんなに辛く苦しい出来事があろうと、これを見るだけで心が癒される。

 

「えっと、よし。ルナ、下ろすよ……」

 

 起こさないように足音をできるだけ立てずに寝室に入り、抱っこしていたルナをそっと下ろして布団に寝かせ、毛布をかけた。持っていた本は、部屋の端っこに置いてあったルナの荷物の上に置いておく。

 

 そして、そのまま僕自身もルナと一緒の布団に横になり、毛布も一緒の物を被る。僕が個人的に、ルナと一緒に寝たくなったのだ。

 

 大宴会で人妖が大勢泊まることを想定してか、博麗神社の寝室は広い上に布団や毛布の数も相応に多い。霊夢やあうん、僕たちや妖精軍団の分を合わせても足りる程には。

 

 でも、絶対に1人1つの布団と毛布を使わなければいけないルールは、当然ここにはない。それに、こうやって勝手に布団に潜り込むくらいなら、ルナも嫌がらないだろう。

 

 どのみち、こういうお泊まりの時は僕とサニーたち合わせて4人、示し合わさずとも一緒に寝ることになるのだし。

 

(えへへ。起きて、僕が隣で寝てたのに気づいたらびっくりするかな? 自分も家でやるから、別に驚きもしないかな? まあ、どっちでも良いや……おやすみ、ルナ)

 

 なんてことを考えつつルナの寝顔を見続けていたら、とうとう僕もうとうとし始めてきたので、このまま目を瞑って眠ることにしよう。

 

 そうすればきっと、とっても幸せな夢を見ることができるだろうから。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。
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