幸せ四妖精   作:松雨

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今話はサニーミルク視点です。


ぐっすり二妖精

 冬が終わって春となり、日が出ている時間が伸びてきていたとはいえ、午後7時半ともなれば外は真っ暗になる。

 

 でも、人里のお祭りや紅魔館のパーティー、博麗神社の宴会やたまにある真夜中の妖精会議に参加したりなど、夜の外出も結構な頻度で楽しむことがある。

 

 メノが来てからめっきり減りはしたけど、その点に関しては別に私は気にしてないし、スターもルナも同じく気にしていない。

 

 だって、一緒に家の中や庭とかではしゃいだり、料理を作って食べたり、他にも細かなものを挙げれば、どう考えても楽しいことだらけなのだから。

 

「2人とも、今日はかなり遅いわね」

「確かに、今までで1番かも。サニー、どうする? 様子を見に紅魔館行ってみる?」

「うーん……もう少しだけ待ってみましょ」

 

 なお、スターとメノは紅魔館に雇われメイド妖精として、夕方の5時まで働いて戻ってくるはずだったのだけど、どういう訳か今日は未だに帰って来ない。

 

 仕事が忙しくて少し遅くなるってことならたまにあるけど、流石に今日はその次元を超えている。

 

 レミリアが約束を破り、2人を無理に働かせるなんてことは絶対にしないだろうし、きっと何か予想外の事態でも起きたのだろう。

 

(本当、何があったのかしら? ルナの言う通り、様子を見に行った方が良いかも?)

 

 しかし、何が起きたのかについては皆目見当がつかない。

 

 道に迷うなんてあり得ないし、妖怪とかに襲われた可能性もなくはないけど、スターもメノも妖精の中では強い方。

 見境なしに襲ってくる木っ端妖怪程度であれば、普通に撃退できるくらいの力はある。

 

 というかそもそも、紅魔館と魔法の森の入口間は空を飛んで向かっている上、メノの飛行速度は魔理沙と本気の勝負ができるくらいには速い。

 

 しかも、妖精くらいの体格と重さの相手であれば、1人抱えても速度自体はあまり落とさず飛ぶことができると、私やスター、ルナで実験した結果判明している。

 

 つまり、いざとなればスターを抱え、その凄い速さと変幻自在な飛行軌道、急加速や減速を駆使し、敵をあっという間に振り切ることができるのだから。

 

 まあ、スタミナ自体は特別優れているという訳ではないので、異変解決組筆頭の2人(霊夢と魔理沙)やスカーレット姉妹、文のような幻想郷トップクラスの飛行速度とスタミナを誇るような相手でない限りとの注釈はつく。

 

「ルナ、やっぱり様子を見に行きましょ! 2人が心配だわ!」

「了解。ちなみに、もう準備はできてる」

「早いわね! 私がこう言うって分かってた?」

「何十年一緒にいると思ってるの、サニー。このくらい、分かって当然」

「そっか、そうよね。ルナ!」

 

 更に待つこと30分、午後8時を過ぎても戻ってくる気配が全くないことから、流石の私も我慢できなくなって、ルナと一緒に紅魔館へ様子を見に行くことを決断した。

 

 緊急性が高いのなら、紅魔館から誰かしら知らせに来る手筈になっている。

 

 今のところ、レミリアとか咲夜が直接来ることもなければ、蝙蝠を介した連絡もないから、大したことはないのだろう。

 

 それこそ、聞いたら思わずクスッと笑っちゃうような、しょうもない理由なのかもしれない。

 

「ちょうど良かった。サニーちゃん、ルナちゃん。遅くなってごめんね」

「体調が悪い訳でもないのに、勝手に着替えさせる訳にもいかないから、格好はそのままよ。はい、これが2人の普段着」

「あっ……うん、ありがとう。美鈴、咲夜」

「ところで、2人ともぐっすり眠ってるのは、やっぱり仕事が忙しかった?」

「はい。簡単に言うと、モリオンちゃんとシャーネットちゃん絡みでして」

「「あー……」」

 

 外出準備を手早く整え、さあ行こうと立ち上がって扉を開けた瞬間、寝ているスターとメノを抱っこやおんぶしていた美鈴と咲夜から、申し訳なさそうな感じで声をかけられた。メイド服のままである。

 

 美鈴曰く、ここ1ヵ月で最大級に帰るのが遅くなってしまった理由は、モリオンとシャーネットが大きく関わっているらしい。

 

 で、若干レミリア自身も直接かつ意図的ではないにしろ、間接的に関与していたとのこと。

 

(「付きっきりで遊んでくれる」ねぇ……レミリア大好きメイド妖精筆頭2人組だし、それを聞いたら仕方ないわね)

 

 まあ、あの2人にとってレミリアは、メノにとっての私たちに相当するポジションだから、テンションが大幅上昇してもおかしくはない。

 

 メノも、妖精たちの理想郷で生まれ、私たちの家族となってから大分経つけど、少しだけでも一緒に居てあげれば満面の笑みを浮かべ、喜んでくれる。

 

 何かを褒めてあげたり物をあげたりすると、場合によっては疲れて寝てしまうレベルで嬉し大泣きする。

 

 お泊まり会以前は要求することが殆んどなかったものの、以降はよく甘えてくるようになったので要求通りに甘やかすと、羽が強い桜色で輝くようにもなった。

 

 というか極論、私やスターやルナが楽しく談笑している姿を、その輪に混ざらず遠くから見ているだけでも幸せと、即座に断言してくる程なのだ。

 

(……メノ)

 

 そして、メノが私たちとの生活で幸せを感じた分だけ、恩返しとしていつか確実に倍以上となり、私たちの元に返ってくる。

 

 朝起きたら、リビングのテーブルに美味しそうな朝ごはんが並んでいたり、場合によっては掃除とかも含めて家事が全部終わっている。

 

 例え本来の気分とは違っても、私かスターかルナが誘えば確実にお出かけに付き合う。仮に、その行き先が人里になったとしても、私たちが望むのであれば僕のことは構わないとまで言うくらい。

 

 いつぞや「毎日サニーたちから幸せを沢山もらってるから、恩返しが終わらないや」とか、「サニーたちの幸せが、僕の幸せだよ」と笑いながら言った時の表情が、お日さまのように輝いていたのが印象に残っている。

 

「しかし、あのスターが先にダウン(寝落ち)する仕事量……考えただけでも恐ろしいわ! でもまあ、疲れてる時にメノに膝枕してもらったっていうなら納得ね!」

「へぇ、そうなんですか?」

「ええ! 私の時はメノの能力と子守唄もおまけされたんだけど、あっという間に夢の世界よ!」

「起きたらすっきり疲れが吹き飛ぶくらい凄い。まあ、メノ本人には何の効果もないから、途中で眠くなって寝ちゃっても、普通のお昼寝でしかないんだけど」

「そこまで言いますか。1度経験してみたいものですね、咲夜さん」

「膝枕はともかく、能力と子守唄のセットは確かに……というか、頼めばやってくれるの? サニーたち限定とかじゃなくて?」

「咲夜と美鈴に? 間違いなくニコニコでやってくれるわ!」

「メノだからね。家族は言わずもがな、友達相手でも分け隔てなく、むしろ「求めてくれるの? えへへ……」とか言って、喜ぶこと間違いなし」

「メノウの解像度高いわね。まあ、家族であるなら当然かしら」

 

 ちなみに、元々メノの膝枕で寝ていたということで、スターはメノと一緒のベッドに寝かせている。

 

 最初は仰向けだった2人だけど、いつの間にか寝返りを打っていたのか、今では向き合う形ですやすや。見ているこっちまで暖かい気持ちだ。

 

 メノに関してはよっぽど幸せな夢でも見ているのか、寝ていても羽が比較的強めの桜色で輝き、忙しなくパタパタと動いている。

 

「ふふっ、何だかんだで良いものね。微笑ましいわ」

「レミリアお嬢様が、妖精をメイドにしたがるのも分かる気がします。紅魔館が、退屈とは無縁の場所となりますから」

 

 咲夜も美鈴も、私やルナと同じような感情を抱いているのか、寝ているスターとメノを微笑ましいものを見る目で見ていた。

 

 レミリアが積極的に妖精をメイドとして雇い入れ、可愛がっているから、2人を含む紅魔館の精鋭たちも影響を受けて、妖精に好感情を抱いているのだろう。

 

 幻想郷で妖精を怯えさせないどころか、慕われ懐かれるレベルになる程丁重に扱ってくれる妖怪は、レミリア自身やレミリアが率いる紅魔館の精鋭以外に私は知らない。

 

 より範囲を広げれば、あうんやアリス、人間と妖怪の血を持つ香霖もかなり良くしてくれている。

 

 メノも、この3人については「大切な友達だよ」と、嬉しそうに羽を輝かせながら言っているのだ。

 

「あ、そうそう。お嬢様からの伝言なのだけど、「今日のお詫びに明日は2人は休みでいいわ! 伝えといて!」とのことよ」

「りょーかい! 起きたら伝えるわ! じゃあ、4人でゆっくり過ごせるわね!」

「どうせなら、チルノ一行と魔理沙誘って妖精会議でも開く? 紅魔館の妖精たちは……」

「ちなみにだけど、明日はノーゼとモリオンが休みよ。声かけしておく?」

「本当? じゃあ、お願いしておくかな」

「ええ、分かったわ。ところで、魔理沙も妖精会議に誘うのね。人間だけど」

「まあね! 魔理沙は妖精じゃないけど、特別扱いだし」

「確かに、魔理沙さんは紅魔館の妖精メイドたちからも好印象ですからね。サニーちゃんたちが慕うのも、納得がいきます」

 

 ちなみに、妖怪以外の個人にまで拡大すると、異変解決筆頭の2人を真っ先にパッと思い付く。後は、咲夜も紅魔館の住人なだけあって、妖精に対する態度は非常に柔らかい。

 

 特に、魔理沙はチルノ一行を除けば私たちと最も親しく、メノに至っては魔理沙を家族とほぼ同等であると認定し、遊びに来るなり駆け寄って甘えるくらいだ。

 

(まだ遥か未来の話だけど、ちょっと……ううん、かなり不安だわ)

 

 だからこそ、数十年後に人間であれば必ず訪れる不可避の未来が、どうしようもなく不安で仕方ない。例え、その頃にはメノの精神が完全復活していたとしても。

 

 でもまあ、今からそんなことを考えてたら気が滅入るだろう。だから、その時が近くなるまでこの現実は、頭の片隅に置いておくだけにしよう。

 

「さて、用事は済ませたから私と美鈴は帰るわ。じゃあね」

「わざわざ、スターとメノのためにありがとうね。2人とも!」

 

 スターとメノを送り届ける用事を済ませ、帰っていく美鈴と咲夜をルナと見送りながら、私はそう考えた。

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