「てな訳だ。参加してくれるとメノがマジで喜ぶんだが――」
「「「当然、参加するわ!」」」
メノと一緒に妖精たちの理想郷へ遊びに行き、帰ってくるなりメノのお誕生日会という単語を口にしたと思ったら、それに関して経緯などを詳しく説明し、参加をお願いしてきた魔理沙。
道理で、背中の羽が滅多に見れない強さの桜色の光で輝いていた訳だと納得したと共に、メノの家族として参加しないなどあり得ないと思った私たちは、魔理沙の説明が終わると同時に参加の意思を表明した。
(そういう意味だと、メノって……ううん、考えるのは止めましょ。あいつら、まだ人里に居るんだし)
妖精にとって、誕生日という概念は種族の性質上殆んどないに等しい。あくまでも、知識がある程度なのだ。
無論、私やスターやルナも、誕生日がいつで今が何歳かなんて魔理沙から話を振られるまで、考えたこともなかった。少なくとも、数百年単位で生きているとは思うけど、正確な情報はない。
「わっ!? ふふっ……大泣きする程喜んでくれるなんて、こっちも嬉しくなっちゃうわ!」
「ふぅぅ、ぐすっ……サニー、スター、ルナぁ……!」
「よしよし、メノ。私の洋服のことなんか気にせず、思う存分泣いちゃいなさい!」
「あの時以来の泣きっぷりだねー。それにしても、もうそんな時期が近づいてきてたなんて、時が経つのは早いものだわー」
「数百年生きてる私たちにとって、1年なんてすぐだもんね。メノが来てからは、毎日が楽しいから尚更」
しかし、前世が人間の男の子だった記憶を持つメノであれば、今世で妖精の女の子として生まれていても話は別だ。家族があいつらだったから、特別な日を祝われる嬉しさが余計に心へ染み渡るのも、至極当然である。
おまけに、魔理沙がお誕生日会に誘うのは私やスター、ルナだけではない。メノととっても仲良しな人妖全員、場合によっては幽々子と妖夢と文にも声をかけるつもりだという。
確かに、白玉楼の2人は初めて来た時以降、メイドの仕事が休みの日を見計らい、度々家へ遊びに来てはメノが作る料理やお菓子を心からべた褒めしたりと、色々構ってくれている。
そのお陰か、ここ最近ではメノもあの2人が来ると「ゆゆさんと妖夢だ……! お料理作らなきゃ!」と、見るからに嬉しそうにするのだ。
文も、取材を円滑に進めるためとか、新聞の購読者を増やす目的で近づいてはいるけど、その割にはメノに対して親切なのだ。
人里にあいつらが出現して以降は、今まで以上の頻度で優しく声をかけにきてくれているため、この間心をもう1段階許している。
呼び方は変わらず文『さん』ではあるものの、態度は同じくさん付けの
なので、魔理沙がその3人を誘うつもりなのは納得いく。メノだったら、普通に喜ぶだろうし。
「それで、どこでやるつもりなの? ここ? それとも、他の場所?」
「今のところ、候補はここか理想郷か紅魔館、博麗神社に私の家……ただまあ、1番はここってところじゃないか?」
「確かにそうね! メノのお誕生日だし、やっぱり1番安心できて思い出のある場所じゃないと!」
「ともなると、集まるであろう人数的に家の中が手狭になる。庭の部分も含めて、色々と飾り付けとか必要」
「最悪、咲夜に頼んで空間を広げてもらいましょ。終わった後、元に戻してもらうかはまあ、考えとくわー」
なお、私に抱かれながら大泣きしているメノは、私たちと魔理沙がお誕生日会の相談をし始めてから、もっと勢いを増してきていた。
声だけを聞けば、あまりにも辛く悲しい出来事があって、感情が爆発しているように思うだろう。メノをよく知る人妖であれば、声を耳にした瞬間慌てて駆けつけそうなくらいには声量も大きい。
しかし、声と表情以上にメノが抱く感情がハッキリと現れる羽を見れば、決して辛く悲しい出来事があったのではないと分かる。
パタパタと可愛らしく動き、発している桜色の輝きも眩いくらいに強いから。
「それにしても、ずっと泣いてる……メノ、大丈夫かな? 喉枯れそう」
「妖精だし、そうでなくても能力だってあるから、身体に関しては心配要らないわ! いわゆる、精神的なそれと違ってね!」
「あー……うん。それはそう」
「どんな大怪我でも、最長一晩で綺麗さっぱり。最悪1回休みで復活できるもんねー。痛みとかはちゃんとあるから、場合によっては後に引きずるけど」
故に、それを視認している私たちや魔理沙も眩さに応じた影響を受けている。心がぽかぽか、意識していなくても自然と笑顔になってきたりとか。
ちなみにだけど、メノ自身この性質というか能力のことを、「うーん……せめて、ただ光るだけだったらなぁ」と、あまり良く思っていない。皆の心を、意図せずいじってるみたいだからとかいう理由だった。
でも、私からすればメノに『大自然の力を借りる程度の能力』とは別の、この能力が宿っていたのはとても幸運だったと思える。何故なら、これのお陰でメノの心が保てていると言えるからだ。
(……まあね)
確かに、影響があること自体は認めよう。でも、それはメノが抱く感情の大きさから見てみても、本当に微々たるもの。
直接視認しさえしなければ何ともないし、視認したって意思の力で容易に抵抗できるし、影響を受けても
何なら、普段から常に感情を想起させる程の強い光を放っている訳でもないのだ。だから、普通に許容範囲内である。
「うぅ……ぐすっ……泣きすぎちゃって、喉がヒリヒリする……」
「あはは! 普段、こんなに大声出すことないからよ、メノ! まあ、妖精だしその程度なら何もしなくたってすぐ治るわ!」
「良いよなぁ、妖精のそういうところ。私が喉を痛めたり枯らしたら、下手すりゃ数日はかかるぜ」
過剰に抱いてしまった感情を、魔法の光という形で変換して外部に排出する、メノのこの力。
もしかしたら、人間の男の子から幻想郷に妖精の女の子として生まれ変わったのも、前世の環境のせいで感情を発散することができずに溜まり続け、限界を迎えてしまったせいかもしれない。
大切な家族が感情を発散できずに苦しみ、精神をすり減らしていった果てに限界を突破し、心の死を迎えるよりは私たちに多少影響があってでも排出した方が、遥かにマシである。
知らない他人ならいざ知らず、私たちは言わずもがなメノと親しい人妖であれば、このことに文句を言ったり不満を抱いたりはしないだろうし。
「じゃあ、私はそろそろ帰るぜ。全員に声かけする以外にも、色々とやることあるしな」
「うん……魔理沙、今日は本当にありがと。大好きだよ」
「私からもお礼を言うわ! メノを喜ばせてくれてありがとうね!」
「右に同じく。私もサニーもスターも、提案されるまでお誕生日会なんて、全く思い至らなかったから」
「感謝してるわー、魔理沙」
そんなこんなで、ようやくメノの感情の高ぶりが完全に抑まり、羽の輝きもいつも通りまで抑えられてきたところで、魔理沙はメノの頭を撫でてから家を立ち去っていった。
さて、この後はどうしよう。お誕生日会の準備をするには当然早すぎるし、どこか遊びに行こうにもメノは疲れているだろうから無理だし、ここはやっぱりのんびりお茶会といこう。
ただし、飲み物ならともかくそのためのお菓子は、スターに用意してもらおうかな。面倒だからって訳ではないけれど、私やルナが作るとどうしても、メノはもとよりスターよりも形や味は劣ってしまうから。
でも、それを理由に任せっきりにするのも何か悪い。だから、スターに用意してもらうのは変わりないけど、言い出しっぺの私も道具の用意とか後片付けをするくらいはしなきゃ。
「ねえ、スター。この後、ちょっとしたお茶会でもしない? お手伝いはするから、良ければお菓子を作って欲しいんだけど」
「いいわー。ちょうど何か食べたいって思ってた頃だし、任せておいて」
「ありがとう! メノ、ルナ。2人はそれまでゆっくり待ってて!」
「うん! えへへ……スターのクッキー、楽しみだなぁ」
「メノ、スター。クッキーを作るとは言ってない……まあ、定番メニューだから作るんだろうけど」
そう思いつつ、スターにお茶会のためのお菓子作りをお願いしたところ、快く了承してもらえた。
スターのみならず、メノやルナの反応を見るに私の提案が気分的にも合致したようで、何よりである。
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