幸せ四妖精   作:松雨

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追いかけっこ

 ただでさえ、楽しくて嬉しくて幸せな気分で居られる、チルノたちとのお花畑でのピクニック。

 そこに、この世で最も大好きな家族の1人であるスターが加われば、もうとにかく最高。

 

 途中からの参加ではあったから、用意したお菓子とか紅茶とか水も大分なくなってはいたけれど、少しは食べたり飲んだりしてもらえたから良かった。

 

 ちなみに、僕の作ったお菓子を食べたスターの感想は、「うん。やっぱり、安定と信頼の美味しさだわー!」である。

 

 お菓子作りの大天才で、皆に自作のお菓子をプレゼントすれば大体喜んでくれるスターからそう言われたから、本当に嬉しくてうるっとしちゃいそうだった。と言いつつも、数秒後には実際にしちゃったんだけど。

 

「待て待てぇー! 僕が皆を捕まえてやるー!」

「あたいともあろうものが、地上じゃそう簡単に捕まってやらないぞ! 空中は無理だけど!」

「空中じゃ、メノは私たちの誰よりも速いからねー。それどころか、幻想郷の中でもトップクラスだもの!」

「本当、初めて見させてもらった時はあたし、目玉が飛び出るかと……わっ!?」

「あちゃー、避けられちゃった。えへっ」

「タッチできなかったのに何か嬉しそうだわ。まあ、メノだし今この状況そのものが楽しいんだろうねー」

「私たちが楽しんでいることなら、基本的にどんなことでも楽しんでくれるもんね。メノちゃん」

 

 そして今、お花畑ピクニックが終わった後は紅魔館の庭で、お花畑の妖精さんやスターも含めた、楽しい妖精追いかけっこに興じていた。発案者はチルノであり、勿論事前の相談の際には全員賛成している。

 

 とはいえ、本気の勝負をしているかと言われると、決してそうではない。一応、追いかける妖精を決めるためにじゃんけんをしてはいるけど、あくまでも取り敢えず決めておいただけ。

 

 皆でまとまって逃げて、いわゆる鬼の役割の僕が追いかけて遊んでいるだけの時点で、純粋な鬼ごっことは言えない。

 周りから見たら、ただ単に僕がチルノたちを走って追いかけて、はしゃいでいるだけとしか判断できないだろう。

 

 でも、それはそれで楽しいから、僕としては全力で追いかける役割を全うするに限る訳だ。

 

「えへへっ。スター、交代だよ」

「あらそう? じゃあ、今度は私が追いかけるわー!」

「といっても、やることは今と全く変わらないんだけどな!」

「まあね。でも、楽しいから私はいいと思うよ」

「確かに! あたしもそれは同感!」

 

 ちなみに、これだけゆるゆるな追いかけっこだけど、空を飛んだり能力や魔法や弾幕を使ったりしてはいけないと、皆で決めている。

 

 空中もありにしちゃえば、1番空を飛ぶのが速い僕の存在がある以上、皆が明らかに楽しめなくなる。

 能力や魔法や弾幕は言わずもがな、追いかけっこにそれを加えたら本気の勝負だし、やったが最後単なる追いかけっこではなくなる。

 

(スターも、チルノと大ちゃんも、お花畑の妖精さんも、楽しそうでよかった。ふふっ)

 

 スターは能力で動くものを正確に捉えられるし、大ちゃんは能力で高精度な瞬間移動ができるし、チルノは言わずもがな氷や冷気を自由自在に操れる。僕だって、能力で大自然の力を借りて色んなことができるようになった。

 

 高ぶる心のままに全力で能力を使おうものなら、とんでもなく混沌とした状況になるのは勿論のこと、紅魔館の綺麗なお庭を荒らしに荒らした挙げ句、レミリアたちに怒られる未来が決まってしまう。

 

 いや、それ以上に息抜きにお手入れをしている美鈴や、お庭担当の妖精さんたちを悲しませてしまうだろう。

 

 せっかく頑張ってお庭を綺麗にして、レミリアに褒めてもらったのに、ただのお遊びの余波でそれを台無しにされるともなれば。

 

「あはははっ! ただ単に走り回ってるだけなのに、何だかとっても楽しいわ!」

「スターちゃんも、身体を動かして遊びたかったってことなんじゃないかな? まあ、このメンバーなら何してたって楽しいと思うけどね」

「あたいに大ちゃん、メノにスター、お花畑の妖精……そりゃそうだ。楽しくない訳ないしな!」

 

 それだけではなく、今日は空を飛んでいる蝙蝠さんを通して、レミリアやお客さんたちが僕の様子をリアルタイムで見ている。しかも、その中にはチルノや大ちゃんの友達も居るらしい。

 

 下手にやらかそうものなら、レミリアの僕に対する気遣いが無に帰すのみならず、更に顔に泥を塗ることになる。

 それに、僕の評判が悪くなり過ぎてしまうと、いつかメノ()も加えた四妖精で人里に遊びに行きたいという、サニーの幸せな夢を無惨にも破壊しかねない。

 

 だから、皆との話し合いの結果下したこの能力などの使用禁止の判断は、決して間違いではないと断言できる。

 

「ふぅ、ふぅ……ぶっ通しで走り回ってたらちょっと疲れてきたわー。取り敢えず、休憩しない?」

「そうだね、スター。チルノたちも、それでお願い。僕も疲れてきちゃったし」

「そっかー。うん、分かった! 一旦おしまいにしよう!」

 

 当たり前だけど、妖精特有の元気と有り余る体力がある僕たちだって、こんなに長くはしゃぎながら走り回っていれば、息があがってしまう。

 

 特段元気そうだったスターもそれは例外ではなく、休憩したがっていたので、ひとまずこの追いかけっこは止めることで意見が一致した。

 

 休んだらまた追いかけっこをするのかは、体力が回復してきた時の皆の気分次第だ。ちなみに、僕の場合はどちらでもいいと思っている。

 

 何故なら、大切な家族や友達である皆と一緒であれば、僕は何をしていても凄く楽しいし、何もしなくたって楽しいから。

 ただし、一緒に居る大切な家族や友達が誰1人として、悲しいや苦しいなどといった感情を抱いたり、そこから来る涙を流していないという絶対条件が達成されていればの話。

 

 僕に対してこびりつき、刺してくるようなトラウマを塗りつぶす程の、とびきりの幸せという名の生き甲斐を、無償で与え続けてくれている家族や友達が辛そうにしている中、どうして笑顔になれるだろうか。

 

「ねえ、チルノ。休憩し終わったら次の所、大ちゃんが選んだ図書館に行くってことでいい? ちなみに、スターとお花畑の妖精さんはいいって」

「なら構わないぞ! でも、本を読むといっても正直あたいメノとかルナ、大ちゃんに比べたらかなり興味薄いし……何かこう、おすすめとかある?」

「だったら……チルノみたいな妖精さんが、同じ妖精仲間と一緒にお宝とかを得るために、大きな迷宮を探索していくっていう絵本があるんだけど」

「へぇー……ん? よく考えたら、妖精たちの理想郷って迷宮みたいなものだよな!」

「確かにねー。何回も行ってるけど、探検しつくせる気がしないわー」

 

 なお、30分前後も休んでいれば体力も結構回復してくる訳だけど、はしゃぎ回って身体を動かして遊びたい欲求が解消できたからか、次は図書館に行くことになった。

 

 見渡す限り、無限にあるのではと思ってしまうくらいに大量にある、紅魔館の地下の大図書館。レミリアはもとより、そこに居ることが多いパチュリーでさえどんな本があるかは把握してても、読みきれていないと言っているくらいなんだから、そう思うのも無理はないだろう。

 

 その分、行く度に新しい本との出会いがあるし、本を読むのが好きであれば幸せな場所と断言できる。魔理沙とかルナを見てれば尚更。

 

 勿論、僕も本を読むのは好きな方であるため、そこに行くと出る時にはいつの間にか、体感よりも時間が経っていることが多い。

 今のところ、休憩時間に地下の大図書館に行った時に、気づいたら過ぎていたことはないものの、時間ギリギリだったことは何度もある。

 

 なので、休みの日に僕以上の本好きなルナと大図書館に行こうものなら、帰る時にどのくらい時間が経っているかは、推して知るべしである。

 

「よし! じゃあ、地下の大図書館にしゅっぱーつ!」

 

 そうして、今は殆んど関係のないことを考えながら、これから本を読みにいくとは思えない程高いテンションのチルノの掛け声と共に、僕や皆は地下の大図書館へと軽やかな足取りで向かうのであった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。
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