「わぁ……サニー、ルナも居る!」
お花畑ピクニックや追いかけっこを思う存分に楽しんだ後、チルノや大ちゃん、スターやお花畑の妖精さんと一緒に地下の大図書館へ、ルンルン気分で向かった僕。
入り口付近で本の整理をしていたこあに挨拶をして、パチュリーにも声をかけようといつもの定位置に行ったら、そこでサニーがルナと一緒に本を読んでいたから、ちょっとびっくりした。
いつもみたいにルナに付き合う形で一緒に来て、何もしないで待ってるのも退屈だからと、絵本を読んでいたのだろう。お庭で遊んでたのに僕が2人の存在に気づかなかったのは、夢中でチルノたちと遊んでたからに違いない。
お陰様で、僕のテンションは最高潮である。静かにしなければいけない大図書館なのに、思わず大声をあげて駆け寄ってしまうくらいには。
「もう! 相変わらず大げさなんだから、メノ!」
「2人とも、その格好で一緒にお仕事……違うか。チルノたちと色々やってたのを見たけど、休憩時間? それとも、単に遊んでるだけ?」
「えっとね、単に遊んでるだけなの。でも、僕の許可はちゃんとチルノと大ちゃんが取ってくれてたから、大丈夫なんだよ」
「私は途中参加だからあれだけど、こういう場合はまあ……ん? 蝙蝠に何かメモ書きが……『スターも許可するわ! 仕事なんか気にせず、思う存分遊びなさい!』。流石レミリア、準備が早いねー」
「ていうか、いつの間に呼び戻してたんだな! 全然気づかなかった!」
「レミリアさん、メノちゃんが喜ぶところが見たかったんだね。私みたいに」
そして、チルノや大ちゃんはさも当たり前のようにサニーとルナを加えてくれたし、お花畑の妖精さんもそのことに何も言わず、ニコニコしながら会話に参加してくれている。結果、ほぼいつもの面々でのお遊び会みたいになった。
どうせなら、ピースとラルバとリリーも来てくれたらもっと嬉しいのにとは思うけど、決して欲張らない。というか、欲張れない。
前々から誘っていて、分かったと了承してもらっていたならともかく、誘ってすらいないのに僕のことを察して来てくれだなんて、いくらなんでも無茶が過ぎるのだから。
(あっ、それ……)
今気づいたけれど、サニーがルナの隣で読んでいる絵本、僕がチルノにおすすめした絵本だ。ルナの付き添いで来ているとはいえ、サニーもこういう感じの絵本に興味があるらしい。
ワクワクしながら、「この後の展開はどうなるのかしら……」とか、「あっ、そうなるかぁ……想定外だわ!」なんて言っているのを聞けば、僕にはすぐに分かる。
この静かな大図書館では、控えめとはいえサニーの元気な声はそれなりに響いているけど、少し向こうの方で本棚の整理をしているパチュリーもこあも、こっちに視線を向けてくる程度だ。
まあ、それを言ったら今の僕たちの話し声も大概だし、サニーやルナを見つけた時の僕みたいな大声をわざと出したりしなければ、きっと大丈夫だろう。
「サニー! それ、次はあたいに貸して」
「ええ! 別にいいけど、チルノもこういう本に興味あったの?」
「メノにおすすめだって言われたから、読んでみようかなって思っただけだぞ! だから、何とも言えない!」
「そうなのね! なら、もうすぐ読み終わるから、ちょっと待ってて欲しいわ!」
それにしても、元気っ子筆頭なサニーとチルノの楽しそうなやり取りは、何度見ても実に微笑ましい光景だ。
仮に今、僕の心が陰鬱に支配されていたとしても、あっという間に支配から解き放ってくれると思えるくらい。
スターやルナ、大ちゃんにお花畑の妖精さんも、そんな2人に感化されて自然と笑顔になっていってるし、僕としては願ったり叶ったりである。
(大図書館だもんね、ここ)
正直、本を読まなくたってこれだけで十分楽しいのだけど、他の皆はそうではない。何かしら本を読みたくて大図書館に来た以上、読まなければ退屈で仕方ないはず。
だからこそ、「メノちゃんも、本を一緒に選びに行こう」と声をかけてきた大ちゃんと、「せっかくだし、読む本どうしようかなー」と迷ってたスターも一緒に大図書館内を歩き回って探しに行くことにした。ちなみに、お花見の妖精さんはこあとお話することがあったと言って、さっき僕に声をかけてきてから立ち去っている。
さて、本を探しに行くとはいうものの、どんな本を読もうかなんて殆んど考えず、チルノたちとのお話に意識をほぼ集中させていた僕。ここに来といて何を言ってるのかという話だけど、急に話を振られて戸惑う人みたいに、僕の心の中はなっていた。
取り敢えず、大ちゃんもチルノと好みはそんなに変わらないし、絵本のコーナーにでも立ち寄るだろう。そこで、何か適当に選んで読めばいい。
「メノちゃん。私ね、お菓子作りを始めてみようかなって思ってるの」
「そうなんだ……えっと、急にどうかしたの? 大ちゃん」
そんなことを考えつつも、目の前の本棚の本とにらめっこしながらどれを読もうかと考えてたら、後ろから大ちゃんに話しかけられた。振り向いたら、初心者に向けたお菓子作りのコツというタイトルの本を抱えていた。
何で今急に言い出したのかは分からないけど、その表情を見ればとってもやりたくなったことだけは理解できた。ならば、僕としては応援するつもりだし、頼まれれば練習に付き合ったり教えたりもしよう。
ああでも、和食料理とかならともかく、お菓子作りならスターの方が先生役には圧倒的に適している。大ちゃんもその辺は分かっているはずだし、僕が先生役をやることはないだろうけど。
「えへへ。メノちゃんのお誕生日会の時に渡すプレゼント、これにしようって決めたんだ。練習、頑張るから楽しみにしててね」
「んぇ……?」
なんて思っていたら、大ちゃんは笑顔で予想の斜め上の発言をしてきた。お菓子作りを始めてみようとした理由が、お誕生日会であげるためだという発言を。
わざわざそんな風に言わなくたって、大ちゃんお手製のクッキーがお誕生日会でもらえるともなれば、楽しみでしかない。というか、あまりの幸せと嬉しさで泣けてすらくる。
しかも、作ろうとしているお菓子はクッキー。妖精として生まれてから初めて食べた、スターの大得意な思い出のクッキーと同じ材料を使うらしい。
「すぅ……はぁ……ぐすっ……」
「うん、言うまでもなかったみたいだねー。大ちゃん」
「そうだね、スターちゃん。頑張って、とびきり美味しいクッキー作らなきゃ」
そして、そんな中
僕から言わせれば、今この時点で永遠の思い出になることは、既に決まったようなものである。クッキー作りが成功しようと、失敗して見た目や味が残念なことになろうとも、それは決して変わることはないだろう。
(嬉しすぎて力が抜けちゃった……立てないよぉ……)
それよりも、ずっと記憶に残る思い出にしてあげたいと思うがあまり、大ちゃん自身に支障をきたさないかが心配である。
親友のチルノを含めた沢山の友達と遊んだり、1人でふかふかハンモックでお昼寝をしたり、時にはサニーたちと一緒にイタズラをしに行く。
大ちゃんにとっては毎日の妖精生活を彩り、精神衛生をこの上なく高い水準で維持するために必要なこれらの要素。
僕のことを考えて動いてくれるのは嬉しいけど、そのせいで自分が辛くなるのであれば、僕のことよりも自分のやりたいことを優先して欲しいな。
それを理由に、当日にもらえるクッキーの味が落ちたのであれば全然構わないし、何やかんやでクッキーを作らなかったとしても微塵も気にしない。ただ一言、おめでとうと言ってくれるだけで、十分幸せで嬉しいから。
「妙に戻ってこないと思って見に来てみれば……大ちゃん、スター。メノに何か言ったの?」
「お誕生日会に、大ちゃんが手作りクッキーをメノにプレゼントするって言ってたよー」
「あはは! それは確かに、メノだったらこうなるよな! あたいも色々考えてるけど、思い付かなくて……いっそのこと、あたいも大ちゃんと一緒に作っていい?」
「もう用意してあるんだけど……これを見たら、私も加わりたくなったわー。大丈夫?」
「勿論だよ、チルノちゃん! スターちゃん!」
ちなみにだけど、このやり取りを長く大ちゃんと続けていたお陰なのか、隣で頭を撫でてくれているスターと、心配して様子を見に来てくれたチルノの手作りクッキーも、流れで同時にプレゼントしてもらえると決まる。
その結果、僕は大ちゃんとチルノとスターにほぼ無意識に抱きついた挙げ句、大図書館に居る皆や蝙蝠さん越しに様子を伺うレミリアたちの目も憚らず、号泣してしまうのであった。
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