幸せ四妖精   作:松雨

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今話はスターサファイア視点です。


星見と月見

 メノと一緒にのんびり休憩するだけだったはずの時間が、なんやかんやでその後の仕事時間も全て、レミリアの一声によって思う存分遊び倒す時間に化けた今日。

 

 チルノや大ちゃん、サニーにルナ、お花畑の妖精といったほぼいつものメンバーも流れで加わったお陰で、とっても幸せで楽しかった。本来は仕事の時間だったというだけあってか、特別感もひとしおだったと言えよう。

 

 それに、メノのために手作りクッキーをお誕生会に作るという発言を大ちゃんがして以降、メノが桜色に羽を強く輝かせながら遊んでいる時のサニーと同等程度に騒がしくなるという、何とも珍しい光景も目にできた。

 

 大ちゃんの手作りクッキーだけでも腰が抜けるレベルで嬉しがっていたのに、そこへ私やチルノの手作りも加われば、まあこの程度は当然だと言えるか。

 

(ふふっ……いい兆候だわ、メノ)

 

 なお、普段のメノとはあまりにかけ離れた変貌ぶりを見て、ルナとパチュリーは思わず二度見していたけど、その時の表情が実に面白かった。とはいえ、何も知らない側だったならば、私も同じような反応をしていただろうけど。

 

「スター。メノの様子はどうだった?」

「変わらずぐっすり熟睡中よー。羽は相変わらず、桜色に光りっぱなしね」

「そう。まあ、あれだけ幸せの奔流に流されてた訳だし、当然と言えば当然のこと」

「本当に凄かったものねー。これでお誕生日会となったら、どうなるのかしら?」

「間違いなく、今日のあれ以上になる。とはいえ、当日は全員が盛り上がるだろうから、相対的には同じくらいかも」

 

 なお、私は今ルナと一緒に妖精大樹の屋上で、真夜中の星見と月見を楽しんでいた。コーヒーやりんごジュースを飲んだり、特製のお団子を食べたりしながら。

 その際の会話の内容も、紅魔館の大図書館での出来事以外は他愛もないものだったりしている。

 

 勿論、サニーとメノも誘おうかと一瞬考えはしたけれど、すぐに止めた。あまりにもはしゃぎ過ぎていたせいか家に帰ってくるなり、根性でシャワーを浴びた後に即ベッドへ直行、そのまま仲良く2人で熟睡していて全く起きそうになかったからだ。

 

「ちっとも眠くならないのも、メノに元気と幸せをお裾分けしてもらったからだわ」

「うん、確かにその通り。メノは本人だからともかく、サニーはそれ以上にはしゃいだから、限界が来たんだろうけどさ」

「だねー。あの様子だと、明日の朝までぐっすりかも」

 

 ちなみに、私もルナもサニーやメノ程ではないものの、その煽りを受けて後半は一緒になってはしゃいだりもしてたから、疲れてはいる。

 まあ、私の場合はメイドの仕事とか、より長くメノたちと遊んでいたというのも相まってルナよりは疲れ度合いも高いけど、それでも2人よりはマシだった。

 

 とはいうものの、他にも細かい理由はいくつかあるけど、大なり小なり疲れているのは変わらない。それなのに、ルナはもとより私も殆んど眠くならないし、何ならまだ元気だ。

 

 だからこそ、こうして2人で一緒に楽しみながら、穏やかな眠気が来るのをのんびりと待っているのである。まあ、未だに眠気は来そうにはないんだけど。

 

「あら、取り込み中だったかしら? ルナチャイルド」

「わっ……ああ、1週間って言ってたし、来るなら昨日辺りかと思ってた」

「私用でね。昨日は暇がなかったのよ」

「ふーん、なるほど」

 

 なんてことを考えていると、突然聞いたことのある声が辺りに響くと同時、目の前に不気味な空間、いわゆるスキマが開いて中から紫が出てきた。

 

 ルナに何の用事があって来たのかと考えている中で、そういえばメノとの対話を紫がしたがっていたことを思い出す。ということは、返事をルナ経由で聞きに来たに違いない。

 

 しかし、メノはまだ紫との対話をどうしようか悩んでいる。直接会って聞かせる訳にもいかないし、現時点では保留といったところかな。

 

「まあいいか……よし。スター、屋上に近づく反応は?」

「ないよ。メノとサニー、幸せな夢でも見てるのかも」

「なら大丈夫かな。まあ、サニーなら別に来てたっていいんだけど」

「確かにねー」

 

 すると、ルナが能力で屋上から出る音を漏れなくすると共に、私にも能力を使えと言ってきたので使い、その結果を告げた。探知できたりできなかったりしてるということで、メノもサニーも未だにぐっすり寝ていることがよく分かる。

 

 何年か前にやっと、誰がどこで動いてるかは分かるようになってきたし、動きが小さくても探知自体はできるようにもなってきている。

 しかし、寝返り程度の小さな動きだとまだ不完全で、動いてない相手に関しては私の能力は相変わらず無力。

 

 いつか、全く動いてなくても探知できるようになるのか、そうしたら能力名を改名しなきゃなんてしょうもないことを考えながら、紫と相対するルナを見る。

 

「それで、用件はメノとの面会についての話の返事だよね?」

「ええ。それで、どんな感じかしら?」

「初めてのことだから、まだ凄い迷ってる。ただ、もう少し時間があれば結論は出そうかな」

「そう。まあ、1度こっそり理想郷を覗こうとした以上、仕方のないことかしら」

 

 で、案の定ルナにメノとの面会の可否を尋ね、ルナはそれに対してまだ決まっていないと言ったところ、紫は淡々と仕方ないと返してくる。まるで、事前に予想していたと言いたげな感じで。

 

 紫のことだから、幻想郷の各所から仕入れたメノの情報さえある程度でもあれば、そのくらいは容易に思い付けるだろう。本人が言うように、警戒されるようなことをしているのだから尚更。

 

 後は、スキマでこっそりメノの様子を見て情報を集めたという可能性はあるけれど、そこは考えないでおこう。

 今のところ、紫の能力を全く気にしないでいられるのは、理想郷の妖精大庭園以外にないのだから、気にしていたらキリがない。

 

「なら、また1週間を目処に聞きに来るわね。もしかしたら、藍や橙を代わりに向かわせるかもしれないけど」

「分かった。1回目の時も言ったけど、期待はしないで待ってて」

 

 そして、ルナからメノが迷っていることを聞いた紫は、次に聞きに来る時を伝えてからスキマでこの場を去っていった。確か、1回目にルナに伝えた期間は1週間だったから、間隔は同じ。

 

 合計で2週間。これくらいあれば、メノもきっと結論を出せるだろう。

 

(……メノ。私たちを頼ってくれて、ありがとう)

 

 妖精の女の子として生まれてから、まだ1年も経ってないメノ。前世を合わせたって10年ちょっとにしかならない上に、洒落にならないトラウマまで抱えている。

 

 そんな子が一大勢力の主になった挙げ句に、幻想郷を作った賢者の1人と対話をするだなんて、とてつもないことだ。霊夢や魔理沙だって、妖精にしては大出世だと感心していた程なのだから。

 

 私が今のメノと同じ立場だったら、緊張のあまり体調を悪くしてしまうかも。一緒にその場に付き合ってと、メノが私やサニーやルナに頼ってくるのも至極当然のことだ。

 

「スター。何か考え事?」

「ええ。本当、メノって凄い妖精だよねって、改めて考えてたわ」

「それはそう。紫にここまで注目された妖精は、過去に類を見ないし」

「うんうん。自分のことのように、誇らしくて嬉しいことね」

 

 ちなみに、メノに聞いたら私たち以外に後5人……霊夢と魔理沙、レミリアとフラン、アリスにも同席をお願いするつもりらしい。

 選んだ理由は、自分ととっても仲良くて、紫ともある程度の関係性を持ちつつ、同時に何があっても頼りになる上位の実力者だからとのこと。

 

 確かに、そうなるとその面子になるのは納得である。霊夢と魔理沙は言わずもがな異変解決のエキスパート、レミリアとフランもかつての異変で実際に戦った経験もあるし、アリスもそれ絡みで紫が頼るくらいには強い魔法使いなのだから。

 

 とにかく、自分1人では無理そうだと判断するや否や、無理をしないで家族や友達を頼る選択を取ってくれて何よりである。

 

「でも、凄い妖精であろうとなかろうと、たとえ凄くなくなったとしても、メノが私たちの大切な家族の一員なのは変わらないけど」

「そうね……ふふっ。今じゃもう、メノの居ない生活なんて考えられないわー」

 

 ルナの何気ない言葉を聞いて、メノの大はしゃぎする光景を頭に浮かべながら、私はとても暖かい気持ちになった。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。
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