チルノや大ちゃんやお花畑の妖精さん、途中からサニーたちも加わって楽しく遊んだ昨日。
お誕生日会の日に手作りのクッキーを作ってあげるとか、特別なプレゼントをあげるとか、その過程で皆から言ってもらったという究極の幸せのお陰なのか、今日になっても余韻が全然抜けてきていなかった。
輝き自体は昨日よりは全然強くはないけれど、羽がずっと桜色に光っているものだから、今日も紅魔館でいつものように働いているだけで、メイド妖精さんたちからがっつり注目されて、話しかけられることがかなり多くなっている。
結果、手が止まる頻度も増えている訳だけど、それは僕にとっては幸せなことだ。僕に割り当てられた分はいつも、余裕を持って終わらせているから、その点でも問題にはほぼならない。
まあ、そもそも僕の羽が桜色に光ってなかったとしても、話しかけてくれるメイド妖精さんの割合こそ減るけど、純粋な数としては言えないけども。
「本当にその、大丈夫なの……?」
「いーよ! しろちゃんはわるくないし、このあとぜんりょくでおわらせるもん!」
「そうそう! ちなみに、わたしとこの子は終わってるから安心してね!」
「頑張ったもんっ! しろちゃん、褒めて褒めて!」
「そっか……うんうん、頑張ったんだね。偉い偉い」
「にへへぇ~」
勿論、皆にはお仕事の方を優先した方がいいよとは何回も言ってあるし、レミリアとかに注意されがちな妖精さんに対しては、お願いという形で言ってはある。
しょうがないこととはいえ、友達が怒られているのを見るのは僕としても、あまり好ましくはないから。
けど、それでも一部のメイド妖精さんたちは、構わず話しかけてくれるのだ。どうしても、
とてもじゃないけど、そんなニッコニコな妖精さんをはね除けるなんてことはできないから、申し訳ないけど毎回は駄目だよと前置きをした上で、僕に与えられた権利を行使して楽しくお話させてもらっている。
「メノウ、貴女に謝らなければいけないことがあるの。楽しそうなところ悪いけど、少し私の部屋まで良いかしら?」
そうやって、メイド妖精さんと楽しくお話ししながらお掃除していた時、とっても真剣な面持ちのレミリアがこう話しかけてきた。声も心なしか、ちょっぴり元気がなさそうな気もしている。
(何かされたっけ……? 僕の知らないところで何かしちゃったのかな……?)
謝らないといけないことと言ってるけど、僕にはレミリアから何か嫌なことをされた心当たりは微塵もない。というか、大抵のことは気にしないか笑って許せる自信すらある。
何故と問われれば、僕や僕の家族といつも仲良くしてくれる、大好きなお友達だから。
だからこそ、レミリアが僕に何をしちゃったのかは聞いていないけど、もう既に許そうと決めた。聞かなくたって、大したことじゃないって分かるんだもの。
「しろちゃん! わたしたちのことはいいから、レミリアさまのお願い聞いてあげて!」
「うん、分かった……大丈夫だよ、レミリア」
「ええ。ありがとう、メノウ」
という訳で、メイド妖精さんたちと一旦別れた後、ちょっぴり心配な気持ちになりながらレミリアの後をついていく。
(大丈夫だよ。何を言われたって、僕はレミリアが大好きな友達だってことは変わらないから)
本当なら今すぐ、安心してもらうために許してあげると言ってあげたいけども、それじゃあレミリアにとっては心残りになる。言うにしたって、全部の話を聞いてからでないと絶対に駄目なのだ。
「ふぅ……本当にごめんなさい。私はね、昨日貴女の過去というか前世の話を理由があったとはいえ、メノウに了解を得ずに勝手に全部話してしまったのよ。昨日招いた来客にね」
「……え?」
そうして部屋の中に入り、レミリアがわざわざ扉の鍵まできっちり閉めたところで、辛そうな表情をしながら頭を下げてきた。僕の前世のお話を、昨日レミリアが招いたという人里のお客さんに話してしまったと、そう言いながら。
何でも、人里ではレミリア自身も含めて誰も話していなかったにも関わらず、どういう訳か最近元々男だったなんて
元々、前世云々以外の真偽不明で変な噂が流れていたところに、少しの真実を織り混ぜた嘘と憶測だらけの滅茶苦茶なことを言ってる人も出てくる、何とも混沌としたことになっていたとのこと。
で、それを知ったレミリアが、昨日もどうにかしようと考えていた最中、能力で見てしまった未来からこうするべきと反射的に判断、僕に了解を得るという段階をすっ飛ばしてしまったという。
聞くに堪えない噂で埋められるくらいなら、僕から話された純然たる真実を話してそれで埋めた方が、まだ傷としては浅いだろうと。自分の能力の精度は自分自身が1番信用できるが故に、そう判断したと言っていた。
なお、連れてきたお客さんは全員人里で多くの人に信頼されていて、なおかつ噂を懐疑的に見ていたとのこと。しかも、その中にはチルノや大ちゃんとも仲の良い妖怪さんが、3人も居るらしい。
(そっかぁ……知らないところで、そんなことになってたんだね。レミリア)
やっぱり、大したことはなかったというか、レミリアにそんな苦労をかけていたことに、僕の方が申し訳なく思えてくる。
これを許すか許さないかのどちらか2択を選ぶなら、言わずもがな許すを選ぶ。何だったら、僕のために色々とありがとうと、辛い思いをさせてごめんなさいと、むしろこっちが言うべきだとすら思った。
まあ、ごめんなさいの方は余計に気を遣わせそうな気がするから、言わないではおくけど。
「えへへ。大好きだよ、レミリア!」
「わっ……メノウは、私を許してくれるの?」
「うん! むしろね、こんなに僕のことを考えてくれてるんだって、嬉しく思っちゃった」
「そう……ふふっ。ありがとう、優しいのね。お詫びと言ったらなんだけど、私にできることなら何でもやってあげるわ」
「本当に? えへへ……じゃあ、考えておくね!」
そんなことを思いながら、僕自身が甘えたくなったというのも兼ねて、レミリアに抱きついて許すよと言ってあげたら、頭を撫でてくれながら微笑む、いつものレミリアに戻ってくれた。
うん、やっぱりレミリアはこうじゃなくちゃ。他の要素で辛そうなのは勿論だけど、僕のせいで悩んで辛そうにしてるところなんて、尚更見たくないもの。
それはそうと、一体どこの誰が大元となって僕の噂を流し、レミリアを困らせたのだろうか。大好きな僕の家族や友達経由ではないってことだけは何となく分かるけど、この件に首を突っ込むのは止めておこう。
「そうだ。どうせ人里の人たちに僕のことが知れ渡るんだったら、館のメイド妖精さんたちにも全部話しておきたいな」
「確かにね。昨日は慌て過ぎて、色々とすっ飛ばしちゃったけれど……本当なら、こっちの方が先だものね」
で、そういう展開になるのであれば、まだ僕の前世云々を含めて知らないメイド妖精さんにも全部教えよう。勿論、一部の過去はそのまま表現すると酷いので、ぼかしたりやわらかくした上だけど。
(大丈夫。皆優しいから、ごめんなさいって言えばきっと受け入れてくれる……はず)
勿論、教えたことによって今まで仲良くしていた妖精さんたちに、どう思われるのかという不安はある。
何人かと一緒の部屋で私服からメイド服にお着替えしたり、仕事中に凄く汚れた時にお風呂に入ったり、僕を信用してくれているからこその抵抗感のなさだったと思う。
「さてと、行きましょうか。メノウ」
「……うん!」
でも、前世云々の話を言いに行くと言った僕を、優しい笑顔で見つめてくるレミリアを見れば、きっと僕が想像したような展開にはならない。心の中で、そう思うことはできたのであった。
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