「サニー。今日は青い空にお日さまが輝く、とってもいい天気だね」
「ええ、そうね! まさに私の日と言っても過言ではないわ!」
日の光が降り注ぎ、心地よい風も吹いてくる僕たちの家の広い屋上のテラスで、休日の僕はサニーを誘って一緒にのんびりと過ごしていた。
特別なことをする訳でもなければ、会話の内容も普段している他愛もない話と大して変わらない。スターが朝作ってくれたクッキーをつまみ、お互いに好きな飲み物を飲みながらというのも、同じく大して変わっていない。
だけど、これでいい。大好きなサニーが一緒に居てくれるだけで僕はとっても幸せだし、サニーの方も僕との他愛もない一時が楽しくて幸せだと、そういってくれているから。
本当なら、スターとルナも一緒が良かったけれど、リビングで何か楽しそうにしている様子を見たら、とてもじゃないけど声をかけづらかった。
多分、そんなこと考えないで僕が誘ったとしても、大抵はニコニコしてお誘いに乗ってくれるって確信があるから尚更。
「ねえ。僕のお誕生日会、どんな感じになるかな?」
「きっと、紅魔館のパーティーと同じくらい……ううん。それ以上に楽しくて、盛り上がるものになるわ!」
「えへへ……だよね。ここ最近、結構な頻度で同じことばかり聞いててその……ごめんね。面倒くさい妖精で」
「大丈夫よ、メノ! 仲良い皆が殆んど参加してくれて、手作りのプレゼントも何個かもらえるって決まったのが、たまらなく嬉しいだけって分かってるもの! 多分、私でも似たような感じになりそうだし!」
「うん、ありがと。サニー」
でも、ここ最近はサニーだけじゃなくて、スターやルナともお誕生日会の話をすることが目に見えて多くなっている。1週間前に紅魔館で一緒に遊んだ時、大ちゃんとチルノが僕に手作りクッキーをプレゼントしてくれると聞いてから、ずっと。
ああ、それとサニーたちも特別なプレゼントをくれるって、あの後言ってくれたっけ。そのお陰でもう、あの時は感情が大爆発しちゃったし、今でも思い出すと涙が出てくる。
それに、その次の日だって館のメイド妖精さんたちの優しさのお陰で、幸せが更に増えた。これまで以上に、皆のために色々とやってあげたいという思いが強くなって、意識してないと休憩をすっぽかしてしまいそうになる。
加えて、紫さんとのお話の時に付き添うのみならず、それも紅魔館を会場として提供して欲しいという僕のお願いをレミリアとフランは聞いてくれたし、霊夢と魔理沙とアリスにも話したら、二つ返事で付き添いに了承してくれた。絶対に外せない急用などができなかったらの話だと言ってたけど、それは当然であろう。
同じく、付き添いしてくれると言ってくれてたサニーたちに対してもそうだけど、どれだけ感謝してもし切れない。
そうでなくとも、皆がお祝いしてくれるお誕生日会の想像ばかりしているから、僕の背中の羽はここ最近常にぼんやりと桜色に光っているのだ。
「うーん。今更だけど、気になってきたなぁ」
「ん? メノ、何が気になってきたの?」
「5日前くらいだったかな。チルノたちと遊んでる時にさ、僕が紅魔館で泣きじゃくったの覚えてる?」
「勿論覚えてるわ! ふふっ、あんな光景見ちゃったら、忘れるはずないものね! きっと、スターもルナも同じよ!」
「蝙蝠さん越しに僕の様子を見てた、レミリアとレミリアが連れてきたっていうお客さんが、どう思ったのかなって。訳ありで、僕が元人間の男の子って過去……前世? それを話したって言ってたし」
「あー……でも、レミリアの連れてきたお客さん、皆いい妖怪と人ばかりだから大丈夫よ。メノが不安がることはないと思う」
そういえば、あの時レミリアの蝙蝠さん越しに僕の様子を見ていた人たちは、どんなことを思っていたのだろうか。
心配してくれてたレミリアのことは当然として、将来人里で僕と一緒に遊びたいサニーたちのこともあるから、変な妖精だと思われてなければいいな。
ああでも、僕の過去というか前世のことをレミリアに知らされた人妖さんたちみたいだし、印象はちょっとあれかも。
僕個人としては、サニーたちを筆頭とした大好きな家族や友達という最大で最強の味方が居るから、多少変な妖精とか思われてても平気だし、悪口を言われてようとも大丈夫。
ただまあ、チルノと大ちゃんの大切なお友達だという3人組の妖怪さんに関しては、個人的でも悪口とかを言われるのはやっぱり嫌だ。というか、何とも悲しくなってしまう。
だって、そうなると僕のせいでいずれ、チルノと大ちゃんのお友達が3人減ってしまうかもしれないのだから。紅魔館のメイド妖精さんたちみたいに、僕の前世云々を受け入れてくれる、優しい妖怪さんだったら嬉しいな。
(あれ? この声と足音はチルノと大ちゃんと……えっと……あっ!)
と、思考を巡らせながらサニーとお話ししていた刹那、僕の耳が
名前からして、サニーとの会話にも登場した例の3人組の妖怪さんたちである。姿とか性格とかも、サニーたちやチルノと大ちゃんからの又聞きでしか知らないけど、会話内容から仲良くできそうな気はしている。
でも、人里とかには遊びに行けないし、他にも色々と気を遣わせちゃう場面も出てくるから、正直言ってちょっぴり不安でもあるかな。
「サニー。こんなお話してたら、何か本当に来たっぽいよ。チルノと大ちゃんが、例の3人組の妖怪さんたちを連れて……目的はやっぱり僕っぽい」
「あら、そうなの? やっぱり、メノとも仲良くなって欲しいのね……さて、行きましょ! 気分は大丈夫?」
「うん、大丈夫。備えはできてるから」
そうと決まれば、今すぐ行こう。距離的にはまだもう少し時間がありそうだし、外に出てお出迎えしてあげれば、歓迎されていると伝えられるだろうから。
「あれ? 2人とも、屋上でののんびりタイムはおしまいなのねー」
「ていうか、外に出ようとしてるっぽいけど、お出かけ行くの?」
「えっとね、実は……」
で、そうすると当然リビングでのんびりしてる、スターとルナにも一体どうしたのかと聞かれるので、これこれこういう訳なんだと答えたところ、2人とも「だったら私たちも一緒にお出迎えするわ」と、一緒に4人でお出迎えする流れになった。
チルノと大ちゃんはともかく、3人組の妖怪さんの方はもしかしたらびっくりするかもだけど、僕1人だと初対面はまだ不安だし、何よりサニーたちがそれを許さない。
だから、心の中でびっくりさせちゃったらごめんねと、心の中で謝っておこう。
「なんだなんだ、全員勢揃いじゃん。お待ちかねって感じだなー」
「チルノ、私たちが来るってこと言ってたの?」
「結構思い付きで行動するところあるからさ、チルノって。言ってないと思うわ」
「みすちーの予想通り、言ってないぞ! 何ならあたいと大ちゃんが、この時間に遊びに来るって話もしてないし!」
「多分メノちゃんが、音で早くから私たちの存在に気づいたんだね。お庭でのんびりしてたのかな」
「へぇ……本当に耳が良いんだ。そりゃ、みすちーが屋台車牽いてる音もあれば尚更気づきやすいかぁ」
すると、話し声と足音と……何かを牽いてくる音が徐々に鮮明になり、少し待てばサニーたちも視認できる距離にまで、チルノたちが近づいてくるのが確認できるようになる。
ちなみに、何かを牽いてくる音の正体はどうやら、見た目の特徴的にミスティアって妖怪さんが牽く、移動式の屋台だった。ここから見えるお品書きを見たところ、一押しの商品は八目鰻や鰻の蒲焼き、おでんや煮物であるらしい。
僕の好きそうな各種お茶や、日本酒などの酒類も取り揃えられていて、大人の人がお酒を飲んで楽しむような雰囲気っぽい。幻想郷だと、お酒好きな妖怪さんが来そうだ。
チルノも大ちゃんも言ってたけど、ミスティアは和食料理作りがとても上手な妖怪さん。基本は屋台で出すものしか作らないとのことだけども、それはそうだろう。
(……)
ここまでの道のり、歩くだけならともかく移動式の屋台を牽いてくるとなると、ガタガタ揺れたりで結構大変だったと思うけど、パッと見る限りでは大丈夫そうだった。移動式ということで、その辺の対策とかはバッチリということだろうか。
「よっ、メノ! 今日はちょっと、あたいと大ちゃんの友達たちと話して欲しくて来たんだけど、一応大丈夫? お出迎えしてくれてるところを見れば、大丈夫そうではありそうだけどさ」
「大丈夫だよ、チルノ」
そして、サニーがアイコンタクトで許可を出したことで、ミスティアが皆で移動式の屋台のセッティングを始める中、チルノが皆を代表して僕のところへと話しかけてくる。
自分の友達とお話して欲しいけど、果たして大丈夫なのかと心配そうに問いかけてきた。
勿論、僕は大丈夫。だからこそ、こうしてサニーたちと一緒にお出迎えをしにきたのである。
でも、それでもチルノは僕が無理していないかなと、少し心配そうな表情を見せている。なので、お誕生日会のお陰で生まれた勇気と幸せを出して、屋台の準備をしているミスティアたちのところへと歩みを進める。
背中の羽の桜色の輝きは多分消えたけど、青色へと変わる様子も多分ない。だからこそ、サニーもスターもルナも、僕を止めようとはしていないんだ。
「あの……えっと、こんにちは。知ってるかもだけど、僕はテルースメノウ……だよ。その、こんな妖精なんだけど……よろしくね」
そして、僕としてはわりかし大きめな声で簡単な自己紹介をした後に、皆の方に向けて勇気を振り絞って右手を差し出してみる。
「うんうん、よろしくなー。私はルーミアだぞー」
「それで、こっちの私はリグル・ナイトバグ。友達になりたいし、皆と一緒の『リグル』って呼んでくれたら嬉しいな」
「ミスティア・ローレライよ。ちなみに、私は皆からみすちーって呼ばれてるから、メノも遠慮しないで同じ感じで呼んでね」
すると、ミスティア……いや、みすちーたち3人組は僕の右手を代わる代わる取って、ニコニコしてくれた。その瞳からは僕の過去、前世を気にしている様子は全くない。
(えへへ……ちょっとうるってきちゃった……)
やっぱり、チルノと大ちゃんの仲良しなお友達なだけあって、皆とっても優しかった。これなら、僕がよっぽど馬鹿なことをしなければ仲良くできそうだと、ほっとひと安心である。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。