「でさ、今日は楽しかった?」
「うん、私も一応聞いてみたいな。ルーミアちゃんたち」
ルーミアにリグル、みすちーを誘ってサニーたちの家に遊びに行き、存分に楽しんでいったその帰り道。あたいと大ちゃんは何気なく、そんなことを聞いてみていた。
まあ、わざわざこんな質問をしなくたって、見れば楽しんでくれていたってことは分かる。ルナ以外ルールを全く知らなかったがために、ゴタゴタだったチェス遊びも含めて。
しかし、それでも聞かずにはいられなかった。サニーにスター、ルナだけではなく、3人にとって直接会って話をするのが初めてな、メノが居たから。
正直言ってしまえば、最初はメノとルーミアたちの相性がバッチリかそうでないかは、半分くらい賭けであった。勿論、ちゃんと考えた上で誘ったのは言うまでもないけど。
「言うまでもなく、楽しかったぞー」
「私も同感。改めて思ったけど、メノって凄い気を遣ってくれる妖精だよね。というか、ちょっとした親切で本当に泣いちゃうんだって驚いたよ」
「うん。それに、屋台の料理を美味しそうに食べてくれたのが、嬉しかったわ。あの子自身、料理が凄く上手だって聞いてたから」
ただ、あたいが抱いてた不安は全くの杞憂。楽しかった気分がある程度落ち着いた後となった今でも、ルーミアたちははっきりと楽しかったと同意してくれたのだ。
それだけではなく、メノに関してもレミリアによって、その振る舞いや性格を間接的に見聞きしていたとはいえ、かなり好意的。あたいにとって、最も嬉しい展開になってくれたと言ってもいい。
(メノ。あたいが、
ルーミアもリグルもみすちーも、それぞれの
だから、あいつらのムカつく姿とか発言を、あたいや大ちゃんはもとより、サニーたちよりも多く見聞きしている。実際に、昨日も例によって少し騒いでいたらしい。
知らないやつにどうこう言われるならまだしも、ルーミアやリグルやみすちーにまで、メノを悪く思って欲しくない。何もしていないのに、あいつらのせいで悪いイメージを持たれるなんてあんまりだ。
「チルノ、大ちゃん。だから、この間あんなに怒ってたんだね。人里で」
ふとした時、リグルがあたいと大ちゃんの方を向いて立ち止まり、こんなことを呟いた。
いきなりの発言に皆揃って不思議に思うも、休憩がてら歩みを止める。
人里でメノの悪口ばかり言って騒ぐあいつらに凄くムカついて、大ちゃんと一緒に
儚げで優しいあのメノに、どうしてあそこまで酷いことを言えるのか。
どうしてそこまで酷い扱いを、一切の罪悪感もなくできるのか。
自分たちが前世のメノにしてきた扱いが、巡りめぐって帰ってきただけなのに、今世のメノにあたるのはお門違いではないのか。
何にせよ、あたいは大切な友達を酷く苛めてくれたあいつらを、金輪際許すことはないだろう。氷漬けにして、レミリアにでも差し出してやろうと思ってしまったくらいには、ムカついている。
(……)
そして、あたいと大ちゃんでこの時の話をした妖精の中でも、サニーたちを除けばクラピが1番ムカついていたっけ。とても仲間思いな妖精だから、当然と言えば当然だった。
レミリアみたいに物騒な言葉こそ吐かなかったけれど、この状態の時にあいつらに会ったら問答無用で攻撃してしまいそうなくらいの剣幕で、怒りを露にしていたクラピ。
お陰で、あたいの中に渦巻いていた感情が和らいで落ち着くことができたから、本当に感謝している。勿論、早くあいつらが人里から居なくなれとの思い自体は変わらないけど。
「メノと接してみて、2人の気持ちがよく分かったよ。何にも関係ない時ですら不快なあれを、メノと凄い仲良しな状態で見たら……」
「あたいと大ちゃんみたいに怒りが頂点に達して、食ってかかってたと思うぞ!」
「だよね。私もそう思った」
正直、ちょっとだけ心配ではあるけれど……でもまあ、あいつらがこのままのうのうと、人里で暮らし続けるなんて運命には絶対にならないだろう。何せ、あのレミリアが「うちのメイド……メノのためだもの。全力で頑張るわ」と誓い、色々と作戦を立てているのだから。
仮にレミリアが何もせずとも、遅かれ早かれ人里からは追いやられるに違いない。メノに対する事柄以外にも、今の人里にはあいつらによりもたらされる負の影響が少なからずあるからだ。
1つ例を挙げれば、人里の商店街に関してだ。人間が大多数故に活気こそ保たれてはいるけど、紅魔館のメイド妖精や愉快な住人たち、サニーたちが無制限に来ていた頃に比べれば、やはりどうしても劣ってしまっている。
妖精御用達の駄菓子屋のおばあちゃんも、寺子屋の子供たちも、凄く怖い顔をしたおじいちゃんも、程度の差こそあれ寂しがっているのを見ていれば、そう言わざるを得ない。
「確かに……そういえば、レミリアがもう死ぬほど怒ってたのを見たっけ。「もうあれ殺ろうかしら」って、美鈴の前で愚痴を溢してたぞー」
「うっわぁ……それ、相当頭に来てるやつじゃん。人間をあれ呼ばわりするって」
「まあ、気持ちは理解できるわ。でも、もう少しで排斥運動が起こりそうだし、何だかんだで耐えられるんじゃないかな? レミリアさんなら」
「慧音先生と長老さんたちが、メノちゃんの味方してくれてるもんね」
「そうそう! レミリアの作戦が凄いのはそうなんだけど、1番はメノの飾り気のない優しい性格のお陰だな!」
しかし、実際レミリアは全力で動いている。あたいや大ちゃんもけーね先生たちと一緒に、レミリアの要請に基づいてできる限りのことはしているし、早く追い出すことが可能になると信じよう。
で、なんやかんやで追い出されたあいつらは、メノにした酷いことの報いをその身で受けるだろう。で、その後に多分相対することになる
もしかしたら、その前に幽々子辺りに何かされるかもと思ったけど、まあそれはないか。あんなのの幽霊を能力で従えたって、何の得もないどころか損でしかないもんな。
何にせよ、その段階まで行ってようやく、
「さてと。こっちから振っておいてなんだけど、取り敢えずこの話は終わりにしよう。せっかくの楽しかった気分が消えちゃうし」
「そうだね、リグルちゃん。メノちゃんにイタズラされて、わたわたしてたスターちゃんの話でもした方が、100倍は楽しいし」
「あー。サニーだけじゃなくて、メノも爆笑してたやつだっけ。チルノ、何か協力した?」
「おう! 「スターにちょっかい出したいの。チルノ、氷出して」って小声で言われたからな! 頼まれた時はびっくりしたけど……いやー、本当に面白かった!」
「今までだったら、サニーちゃんたち相手でもイタズラできなかったからね。こうやって、メノちゃんが元気になってくれて私も嬉しいよ」
そして、リグルが再び歩き出したのをきっかけとして、流れもサニーたちの家で遊んでいた時に、メノが決行したイタズラについてに変わる。
サニーにお風呂でイタズラしたという例の日を境に、親しい家族相手であればちょくちょくイタズラをするようになったメノ。あたいや大ちゃんにも、いつの間にか後ろに居たりとかくすぐってきたりとか、ちょっとしたことをしてきたりもしている。
今日も、何がきっかけになったかは分からないけど、あたいたちと遊んでいる途中でそういう気分になっていたようだ。
内容としては、サニーが気を引いてる隙にあたいが氷を出し、それをメノが後ろからこっそりスターの背中に入れて、反応を見て楽しむという至極単純なもの。
しかし、意識外から行われたそのイタズラの効果は絶大で、「あひゃあ!? つ、冷たいぃ……えっ、なに……?」と大声を出し、羽をバタバタさせわたわたしながら入れられた氷を出そうと四苦八苦するという反応を、スターは見せた。
で、その後にイタズラの犯人となったメノの方を向いて、お返しと言わんばかりにくすぐり攻撃を繰り出し、自分も笑いながらも何とかノックアウトさせてたっけ。
(……ふっ。今思い出しても笑いが……)
ただ、その時のスターの表情は、イタズラされたにしては何だか嬉しそうだった。端から見れば、変な話ではあるだろう。
でも、主犯がメノな上にされたイタズラも、そんなに強烈なやつじゃない。頻度も大して高くないともなれば、スターがそう思うのも理解できた。
いつかあたいたちにも平気で、サニーたちにするようなイタズラをするくらいに元気になってくれれば、あたいはとっても嬉しいな。
「サニーの気持ちが痛い程分かった。メノにイタズラされると嬉しいっていう意味がさ」
「チルノちゃん……でも、その気持ちも何か分かるよ」
そう思っているからこそ、うっかり心の声を口に出しちゃって、大ちゃんや皆に少し変な目で見られるのも、まあしょうがないかな。
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