幸せ四妖精   作:松雨

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今話はルナチャイルド視点です。


対話に向けて

 あのメノが、自分から友達になってと話しかけられるようになった。その結果、ルーミアとみすちーとリグルを友達として増やすことに成功した。

 

 メノをよく知る者であれば、これがどれだけ凄いことかが理解できるだろう。事前情報として、幾ばくか3人のことを知っていたとしても。

 

「メノ、夢の中でも幸せそうだったよね。一体、どんな夢を見てるのかな?」

「きっといつものやつよ、ルナ。もしかしたら、ルーミアたちが加わってるかもだけど」

「ふふっ。自分からお友達になろうって言ったくらいだし、よっぽど楽しかったのね!」

 

 なお、自分から申し込んだだけあってその相性はかなり良さそう。チルノと大ちゃん経由で、ルーミアたちがメノに対して気遣ってくれたのも相まって、凄く楽しそうに遊んでいた。

 

 途中でスターにイタズラを仕掛けて爆笑したり、私にちょっかいを出してきたくらいには、この一時を幸せに感じていたのだろう。実におめでたいことである。

 

 ただし、初対面の相手に自分から話しかけに行くという勇気ある行動も含めて、流石に今日はかなり疲れてしまったようで、メノは私たちの誰よりも早く布団に横になり、そのままぐっすり眠っている。

 

(友達、順調に増えてってる。よかった)

 

 そして、ルーミアたち3人組もメノのことを結構良く思ってくれたようで、遊んでる時間はかなり楽しそうにしてくれていた。事前にどういう性格の妖精なのか、レミリアを介して知っていたのもあるだろうけど、何にせよありがたい限りだ。

 

「順調に元気になってくれてる。だけど、ちょっとしたことでも泣いて喜ぶところは、やっぱり変わらないね」

「ええ! でもまあ、そこはそう易々と変わるものではないわ! 前世の14年分味わった地獄は、1年にも満たない期間くらいじゃ打ち消せないはずだもの」

「それはそうね。ちょっとした親切くらいで泣くことなく、喜んでくれるだけになる日が早く来てくれるように、私たちで頑張って行きましょー」

 

 ちなみに、大した親切でもないのに泣いて幸せそうにするところは、ルーミアたちが相手でも相変わらず。スターが言うように、ちょっとした親切ぐらいで泣かずに喜ぶだけになる日は、まだまだ遠い。

 

 とはいえ、その反応自体は親切にする側にとって、驚きこそすれ嬉しいものではある。私だって、メノが何をしても喜んでくれるのなら、それ以上のお礼で返してくれるのであれば、次は何をしてあげようかなって思えてくる。

 

(……メノ。もっともっと、幸せになってね)

 

 しかし、そんな反応を見せてくれる理由が、メノが前世で酷い扱いを受けていて、家族にすら優しくされたり褒めてもらえた経験が皆無であるが故のこと。

 

 だから、嬉し泣きするところを見せてくれた時に前世の話がちらついて、喜ぶことができないのだ。現に今、その元凶たるあいつらが人里に存在している以上、余計にそう。

 

 これがもし、メノが単に感情が豊かなだけって理由であったなら、私はもとよりサニーやスターも微笑ましく思えていただろうし。

 

「こんばんは。三妖精団らんの時間、お邪魔だったかしら?」

「いいえ、そんなことはないわ! それよりも、スター。メノは起きてこないよね?」

「相変わらず、自分のベッドでぐっすりね。今のうちに、用件はサクッと済ませちゃいましょー」

 

 なんてことを思いつつ、リビングでのんびりサニーやスターとお話ししていたその刹那、目の前にスキマが開くと同時に紫が現れ、そう声をかけてきた。

 

 咄嗟にリビング全体に遮音幕を張り、万が一ぐっすり眠っているメノが起きてこないようにすると同時、スターに今現在のメノの様子を能力で確認してとお願いする。

 

 起きたらいきなり、初対面の妖怪である紫が居たともなれば、相当大きな不安と恐怖を与えてしまうのが目に見えているから。

 

「うん……じゃあ、紫。メノはね、紫との対話自体はしてもいいって」

「あら、そうなの? 断られることも想定していたのだけど……それはよかった」

「ただし、その場所はここじゃなくて紅魔館。加えて、付き添いで私たちを含めて何人か同席させてもらうことが絶対条件って」

「なるほどね……ええ。むしろ、その程度で了承してもらえるだけありがたいわ」

 

 スターもサクッと済ませようって言ってることだし、話しかけられてからすぐ、私はメノの意思をしっかりと代わりに紫へと伝えたところ、満足そうに微笑む。この条件でも、紫的には全く問題ないようだ。

 

 まあ、仮に紫的に問題があったとしても、メノと会って話をしたいのであれば致し方ないと飲み込むしかないのだけど。

 

(大丈夫だよ、メノ。凄く不安だろうけど、私たちがついてるから)

 

 なお、現状紫との対話にメノ側で同席してくれるのは、私たちや理想郷の守護者以外だと5人。異変解決組の霊夢と魔理沙、紅魔館のレミリアとフラン、魔法の森のアリスである。

 

 言うまでもないけど、今挙げた全員はメノととっても仲良しな人妖たちで、なおかつ幻想郷トップクラスの実力者。いくら紫とて、対話を自分のペースに持っていくことは難しいだろう。

 

「では、およそ半月後としましょう。紅魔館での対談、楽しみにしているとテルースメノウに伝えておいて」

「うん、分かった」

 

 そして、私を介したメノの返答を聞いた紫は、これ以上私たちと話すことはないと言わんばかりの早さで、スキマの中に入って家から去っていった。

 

「さてと……あっ、メノが起きたっぽいわー」

「あら、タイミングバッチリね! もう少し早かったら、お話中断してもらってたところだわ!」

 

 と同時、スターの能力がメノが起床したことを捉える。サニーが言うように、目覚めるタイミングとしては今でよかったと思う。

 

 ああそうだ。もう紫も居なくなったことだし、メノにいらぬ不安を与えかねない遮音幕は解除しなければ。

 

 後は、ついでに紫との対話の日にちが決まったことも伝えようかと思ったけど、起きたばかりで寝ぼけているはず。すぐに伝えても忘れる可能性があるから、次の日にでも伝えようかな。

 

「ふぁぁ……えへへ、サニー」

「わっ! おはよう、メノ! 夜中なのにおはようってのも変な話かしら!」

「ふふっ。その様子だと、余程良い夢見れたみたいねー」

「うん。僕がサニーとスター、ルナに甘やかされる夢を見たの」

「へぇ。どんな感じに、夢の中の私たちに甘やかされてたの?」

「えっとね……何だろ。ほぼいつも通り……かな?」

 

 そして、案の定寝ぼけ眼な状態でリビングへとやって来たメノは、そのまま近くに居たサニーへ自然な流れで抱きつくと、スターの問いかけをきっかけに、嬉々として自分が見ていた夢の内容を語り始める。

 

 私やサニー、スターに甘やかされる夢。頭をなでなでされたり、抱きしめられたり、肩車されながらその辺を歩き回ったりなど、現実でも簡単に実現できるものであった。

 

 寝顔や羽の動きに色を見ていれば、そうではないと分かってはいたけど、前世のトラウマが甦るような悪夢でなかったのなら、何よりである。

 

「あははっ! 夢の中でもドジなのね、ルナ!」

「うん……否定はできない。現実でもやりそうだから」

 

 なお、メノの夢の中の私は相変わらずドジっ娘要素を押し出していたのか、色々とやってくれていたようだ。

 肩車をしていたら小石に躓いて仲良く泥だらけとか、何もないところで何回も転んだとか、他にもいくつかあったみたい。

 

 当然、サニーはそれを聞いて爆笑、スターも「ふふっ……ルナったら」とクスクス笑う訳である。何というかまあ、私もメノの夢の中でくらいドジ要素なしで居れないのかなぁ。

 

 とはいうものの、この流れを不快に思っている訳ではない。私自身現実でもかなりドジなのは自覚してるし、サニーやスターのおかしな行動に笑うことだって多々あるのだ。

 

「えっと……ルナ。このお話、しない方がよかった? ごめんね」

「いいや、大丈夫。メノの夢の中でも相変わらず私はドジだなぁって、思ってただけだから」

「そうなの?」

「うん。それよりも、私たちと夢の中でも遊べて楽しかった?」

「……うん、とーっても!」

 

 そして、何よりもこの話をしている時のメノが、とっても幸せそうにしてくれていたのだ。前世のトラウマを払拭する助けになるのであれば、私としても願ったり叶ったりなのだから。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。
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