「わぉ……これが冥界への入り口なんだね、ゆゆさん。想像以上に凄いことになってる……」
「まあね~」
僕の家に来たゆゆさんと妖夢に
白玉楼があるのは冥界という場所であり、そこに行くには一見何もない幻想郷の遥か上空にある、とっても大きな扉ないし門のような形状をした『幽明結界』を通る必要があるという話は聞いてたから、突然目の前に現れたこと自体にはそれほど驚きはしなかった。
「大丈夫なのかな……? まあ、多分大丈夫なんだろうけど……」
「はい。大分悲惨ではありますけど、今のところこれのせいで何か問題が起きたって話、聞いたことはありませんので」
「妖夢の言う通りよ! ちなみに、私たちも初めて来た時はメノと同じようなことを思った覚えがあるわ!」
「サニーたちも? やっぱりそうなんだ」
しかし、
でもまあ、サニーたちはともかく冥界に住んでる妖夢がこれを見ても心配してなさそうだし、ゆゆさんも「何故かは分からないけど、あの紫がこれを放置してるから大丈夫よ~」って言ってたし、大丈夫なのは間違いない。
完全に壊れさえしなければ必要な機能を喪失することがないのか、はたまた何かしらの理由で維持する必要がなくなったのか、色々と考えてみたけれど、ゆゆさんが分からないのに僕が分かる訳がないので、考えるのは取り敢えずやめた。
(幻想郷って、本当に面白いところだなぁ)
何にせよ、死んでなくて閻魔さまの裁判を受けていない僕やサニーたちが、冥界と現世を自由に行き来可能というか行ってもいいというのは、僕からしたら常識外れではある。
逆も然り、ゆゆさんと妖夢が冥界から現世に行けるというか行ってもいいというのも、常識外れである。
だけど、この常識外れの性質のお陰で僕はゆゆさんや妖夢とお友達になれたし、こうして今日白玉楼に遊びに行ったりできるのだ。感謝でしかない。
「変わらないね、ここ。事前に話を聞いてなければ、ここが冥界だなんて信じられないよ。ルナ」
「うん。見かける動物や昆虫、人間や妖怪が基本的に死んでるってところを除けば、殆んど幻想郷と一緒だから」
「四季もあれば昼夜のサイクルもあるし、桜と紅葉の季節は賑やかなお花見と紅葉狩りイベントもやってるのよ。メノウも、気が向いたら三妖精たちと来てみて」
「うん! こんな場所があるなんて知ったら、行かない訳にはいかないもの!」
そして、結界の穴から冥界に入って高度をある程度落とした瞬間、目に入ったのは幻想郷と何ら変わりのない世界であった。まさに、事前情報の通りである。
勿論、冥界独特の形容しがたい雰囲気や、植物以外の生き物が放つ生命力を殆んど感じないなど、目に見えない部分での違いならほんの少しだけ実感してはいる。
だけど、これは無視できる程度でしかないし、守らなければいけないルールとかも幻想郷とほぼ一緒と、分かりやすくていい。
ゆゆさんや妖夢、サニーとスターとルナ、この5人と一緒であれば、冥界も思う存分に楽しめる場所の1つと言っても過言ではないだろう。
「メノウ。あれが、私と妖夢の家……白玉楼よ」
「わぁ……綺麗な和風のお屋敷、ゆゆさんにとっても似合ってる! 勿論、妖夢もだよ!」
「あらあら、嬉しいこと言ってくれるじゃないの~」
「ありがとうございます、メノウちゃん」
「ふふっ。意識しないで自然とそういう褒め言葉が出てくるの、流石はメノね!」
「えへへ……」
何も知らなければここに住みたいとすら思えるくらい、豊かで静かな大自然を誇る冥界を上空から皆と見ていると、遠くにお屋敷が見えてきた。紅魔館よりは高さも広さも低いし狭そうだけど、それでも十分に広さはある。
というか、咲夜の能力で空間が拡張されている紅魔館と比べること自体、おこがましいだろう。
そして、庭部分も典型的な日本庭園のそれであり、紅魔館の庭と同等の手入れが成されているからか、ずっと見ていられると言い表せるくらいに綺麗だ。
なお、見て分かるけど階段の段数が凄く多くて、歩きで行くとなったらかなり大変そうである。人の姿をした、何かしらの理由で飛べない幽霊さん用なのだろうか。
「ところで、メノウたちは今お腹はどのくらい空いてる感じ?」
「うーん、普通くらいよ! メノの作ったおやつは食べたけど、ご飯1杯なら食べたいわ!」
「同じく普通ねー。まだまだお腹には余裕あるわ」
「私は微妙な感じ。コーヒーとトースト、メノのおやつを家で食べてたから」
「僕はその、ごめんね。お家でクッキー沢山食べてて、あんまり多いと食べきれないかも。でも、妖夢とかゆゆさんの作るお料理なら食べたいな」
「なるほど……妖夢、メノウとルナには軽めかつ少なめのご飯をお願いするわ。サニーとスター、私には普通の量でお願い」
「分かりました。初めてのメノウちゃんも居ることですし、一層腕によりをかけましょう」
そんなことを考えながら庭園の中心部分に降り立って、妖夢がゆゆさんに言われてお屋敷の中に入っていった後、ふわふわ浮かびながら未知の方法で道具などを使い、お庭の剪定をしている幽霊さんたちの様子を見回す。
紅魔館のメイド妖精さんみたいに分かりやすい姿をしてはいないけど、動きがなんか楽しそうって感情を伝えてくる気がした。
まあ、ウルに「あれ、作業自体はとっても面倒がってるよ」と言われたので、僕の予想は的外れだったことが分かったんだけど。
じゃあ、ゆゆさんや妖夢とあんまり関係が良くないのかなとも思ったけど、それはそれで違うらしい。メイド妖精さんとレミリアの関係程ではなくても、どちらかといえば仲良しではあるみたい。
まあでも、確かに仲良しな相手からのお願いであっても、この広い庭園を綺麗にするのはかなり骨が折れそうだし、無理もない。幽霊さんたちは結構な数が居るけれど、それでもだ。
ちなみに、僕の場合はサニーたちに家のことを全部やってと言われても、それを全部完璧に終わらせることができるかどうかは制限の有無次第であれ、身体的には疲れても精神的には全く影響しないと断言できる。
「メノ、とっても楽しそう。幽々子と妖夢に誘われたのが、よっぽど嬉しいんだね」
「うん。それに、妖夢の本気の料理はどんな感じなのかなって。サニーたちとかゆゆさんからのお話でも聞いてるけど、どう美味しいのかはやっぱり食べてみなきゃ分からないもの」
「だねー。でも、その辺は心配しなくても大丈夫。改めて、私が保証するわー」
「ふふっ。スターが太鼓判を押した料理に外れはないわ、メノ!」
「メノウもそうだけど、スターもいっぱしの料理
それはそうと、妖夢の手料理が完成するのが楽しみだ。サニーたちは勿論のこと、霊夢や魔理沙、レミリアや咲夜、ゆゆさんが揃って美味しいと評するんだもの。
しかも、初めて食べる僕が居るとの理由で、いつもよりも気合いを入れてくれると言ってくれた。こんなの、嬉しくない訳がない。
いつもの如く、嬉しさのあまり涙が出てきそうになるけど、今日は何とかこらえる。
念のため、僕の近くに寄ってきていた白いひんやりふわふわな幽霊さんの方を向いた時に、手で顔に少し触れてみたけど、涙で濡れている感じはしなかった。気づかぬ内に泣いていたということは、なかったようだ。
「メノ! ふふっ、また泣きそうになったのね!」
「本当ね。相変わらずだわー」
「でも、何かをやってあげる側にとっては、嬉しい反応でもある。あの過去さえなければ、微笑ましく見れたのに」
「うぇっ……あはは。やっぱり、サニーたちにはお見通しかぁ」
ただまあ、僕には感情に応じて光る色を変える羽というものがあるし、そもそも一連の仕草自体がサニーたちにとっては非常に分かりやすかったらしい。
隠したつもりでいたけれど、案の定サニーたちにはバレバレなのであった。
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