幸せ四妖精   作:松雨

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妖夢の手料理

「大変お待たせしました。ゆっくりお召し上がりくださいね」

 

 サニーたちやゆゆさんと居間でお話をしたり、簡単なゲームをしながら待つこと1時間と少し。エプロンを身につけた妖夢が、食欲をそそる香りを放つ料理を運んできてくれた。

 

 洋食も作ればするけど、得意な料理は和食全般。そういうだけあってか皆に出された料理は全てが和食で、やはりというべきかとても美味しそう。

 

 僕の作る和食とどっちが美味しいのかは言うまでもないけど、和食作りが得意な霊夢とスターとみすちーの3人と比べろと言われたら、とても迷う。というか、比べるだなんて僕には無理。

 

「メノウちゃん。幽々子様と一緒に遊びに行った時、毎回ご馳走してくれてありがとう。今日はゆっくり食べていってね」

「えへへ! あれは僕が好きでやってること……妖夢やゆゆさんが僕の料理を食べて、嬉しそうにするところを見た時に感じる、幸せと暖かさが欲しくてね」

「なるほど。あれだけ美味しければ、嬉しくもなりますよ」

 

 ちなみに、僕のところに出された料理は豆腐のお味噌汁と小さめなお椀によそられたホカホカご飯、飲み物は熱々の玄米茶。

 お腹がそんなに空いていない今でも食欲がそそられるのに、これをお腹が空いている時に出されようものなら、待てずに食べ始めてしまいそう。

 

 惜しむらくは、家で自分でおやつを作って食べてしまっていたが故に、妖夢の和食を少ししか味わうことができないことだ。

 

 とはいうものの、食べようと思えばサニーやスターに出されてる分くらいならいけるけど、そうすると本当に()()()()()になってしまう。そんなのは楽しくないし、何より美味しく食べて欲しいとの思いを込めて、僕に料理を出してくれた妖夢に対して、失礼極まりない行為である。

 

 僕だって、サニーたちが僕の料理を無理して食べてるところを見てても、ちっとも幸せじゃないもの。

 

「いただきます……わぁ……お味噌汁、美味しい! このさっぱり感、凄く僕好み!」

「気に入ってくれました?」

「それはもう、とっても! ご飯と合わせると、尚更お箸が進むね!」

「ふふっ、それはよかったです。メノウちゃん」

 

 そんなことを考えながら、両手でお椀を持ってまずは1口お味噌汁を飲んでみると、言うまでもなく美味しかったし、身体も心もぽかぽか暖まってきた。ホカホカご飯も併せて食べてみると、殊更お箸が進んでいく。

 

 正直、おかわりをお願いしようかと考えるくらいだったけど、そこは何とか耐える。高ぶる気分のままにリクエストして、やっぱり食べきれませんでしたって未来、もしくは無理して食べる未来が見えるから。

 

 仮にそうなったとしても、優しい妖夢のことだから怒ったりはしないだろうけど、内心どう思うだろうと考えたら、やっぱりおかわりはすべきではない。

 

「はふっ、はふっ……少し冷ましてから食べればよかったぁ……でも、このコロッケ凄くサクサクで美味しいわね!」

「霊夢に宴会のお手伝いさせられるくらいだもの、美味しいに決まってるわー。それはそうと、お味噌汁の方はどう? ルナ」

「勿論、美味しいよ。メノがよくご馳走してくれるお味噌汁もさっぱりめだから、久しぶりに食べた感じがしない」

「確かにねー」

 

 ちなみに、ルナは僕と同じ少なめな量とメニューを、サニーとスターとゆゆさんには量もメニューもいくつか追加されてるけど、皆一様に美味しそうに食べていて、見ているだけでこっちまで幸せになってくる。

 

 そこに、実際に美味しい豆腐のお味噌汁やホカホカご飯を食べる一時を加えれば、この上なく満たされるのも至極当然。

 そういう意味でも、今日僕を白玉楼に誘ってくれた妖夢とゆゆさんには深く感謝し、近い内にまたお返しをするべきだろう。

 

 また家に遊びに来てくれた時に料理をご馳走する、僕ができる限りのお願い事を聞いてあげる、とにかく2人が喜んでくれそうなことは何でもしたい。

 

「ねえ、ゆゆさん。ゆゆさんと妖夢って、人里に良く行ってる方?」

「そうね~。何かと大食いな私だし、食材の買い出しついでに妖夢を連れて食べ歩きとかしてるわ」

「流石に自重はしていますよ。でないと、他の方の食べる分がなくなってしまいますから」

「そっか。2人にとって、どんなところ?」

「最近は結構回数が減りはしましたが……優しくて穏やかな人が多く、故に息抜きに最適で楽しいところです。メノウちゃんもいつか、遊べるようになるといいですね」

「とはいえ、無理は禁物よ~。妖精なんだから、焦らず騒がずゆったりと……ねっ?」

「……うん」

 

 ああでも、人里に行く必要が出てくるようなお願いだけは、いくら妖夢やゆゆさんの頼みでも聞くことは絶対にできないや。今はとてもじゃないけど、行けるような状況ではないから。

 

 後は、僕自身が沢山の知らない人が居る場所に行くと緊張し過ぎてしまうから、という理由もある。

 耐えられなくもないけれど、緊急時以外に1人で行くなんてもってのほかだし、サニーたちが居てさえ精神的な疲労が物凄いことになるのが、目に見えてるのに。

 

 どちらもなければ、誘い誘われでお金が足りなくなるくらい、行っていたに違いない。

 

 そうしたら、もっと沢山のお友達が僕にできていたかもしれないし、より一層幸せで楽しい妖精生活を、サニーたちやチルノを筆頭とした妖精軍団の皆、紅魔館のメイド妖精さんたちも送れていたかもしれない。

 

 妖精以外のお友達だって、僕が人里に行けるってなったら色々と選択肢も広がるし、同じようにより楽しい一時を過ごしてくれるだろうし。

 

(いつか近い内に、レミリアたちが人里でわいわいできる日が戻りますように)

 

 そんなことを考えてたから、今でこそ元気になってくれたけど、一時期凄く落ち込んでいた時の咲夜が、頭に思い浮かぶ。

 人里で咲夜に悪口を言った人の存在が、気軽に人里に行けるような状況ではない状態を作り出した、元凶なのだ。

 

 見ていて分かるけど、レミリアは紅魔館で暮らす皆のことを家族のように大切にしている妖怪さんだから、悪口を言った本人だけじゃなくて、人里そのものが許せなくなっちゃうのも無理はない。

 

 僕がその立場だったら自分自身は勿論行きたくないし、皆にも同じようにしばらくは遊びに行かないでと、そうお願いしてしまいそうだったから。

 

 でも、人里はレミリアも含めて館の皆にとって豊かな生活を維持するためのパイプラインであり、なおかつ精神衛生を保つ意味で必要な場所でもあったのも、これまた否定しようのない事実。

 

 故に、前までのように楽しく遊ぶために出かける許可を出そうと、どうにかして折り合いをつけようと頑張っている。いや、頑張らざるを得ないと言った方が正しいのかな。

 

(サニー、スター、ルナ……)

 

 それに、レミリアたちだけではない。サニーたちだって僕が妖精の女の子として生まれる前までは、人里に遊びに行って思う存分に楽しんでいた。

 

 勿論、今も全く行かないって訳じゃないけど、レミリアからのお願いもあって当時と比べれば明らかに頻度も時間も減っていて、純粋に楽しむという意味では皆無と言ってもいいらしい。

 

 僕がお話を聞いた時、駄菓子屋のおばあちゃんとお話したり、ご飯やお菓子を食べてはしゃいだり、人里の住人にイタズラを仕掛けてお説教されたり、他にも色々とあれをやったこれをやったと楽しそうに話すサニーたちを見ていて、暖かくも申し訳ない気持ちになったっけ。

 

 ちなみに、今挙げた以外の僕の大切な友達に関しても、多かれ少なかれ訪れる頻度が減っているという話は聞いている。

 方々に良くない影響を与えるだなんて、咲夜への悪口以外にもその人は何かやらかしていたのではなかろうか。

 

「サニー、スター、ルナ。僕と一緒の生活は、幸せ?」

「えっ、急にどうしたの? 私はメノと一緒で幸せだし、今だってとても楽しいわ!」

「さっき、幽々子や妖夢と人里の話をしてたし、嫌な未来か何かを想像しちゃった? でもまあ、こればかりはどうしようもないのよねー。酷いことされてた時間の方が長いもの」

「本当にそう。ちなみに、言わずもがな私も幸せだよ。メノ」

「むしろ、メノが居ない生活の方が無理だわー。もし居なくなったら悲しくて泣いちゃうし、しばらく地獄みたいに辛くなりそうよ。というか、しばらくで済むのかしら?」

「「絶対に無理」」

 

 だからこそ、どういう返答が帰ってくるかなんて分かっていても、短期間に何度も同じことを聞かれるサニーたちが面倒に思うかもと考えていても、こう聞かずにはいられない。

 

 そして、チルノや大ちゃんを筆頭とした妖精軍団、紅魔館の皆に霊夢とあうん、魔法の森の皆にゆゆさんと妖夢、そして文さん。何かと僕に親切にしてくれる大切な友達にも、同じことを僕はしてしまっている。

 

「本当に強い絆で結ばれてるわね~。これも、メノウの性格と振る舞いの賜物よ」

「三妖精の皆さんに拾われてよかったですね、メノウちゃん」

「えへへ……うんっ!」

 

 できるだけ早く、大好きで大切な皆のためにもこの癖は治さなければ。笑顔のゆゆさんによしよしされながら、僕は強くそう思った。




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