ルナを転ばせて酷く泥まみれにし、僕たち全員をも巻き込むイタズラを敢行した白いふわふわ幽霊さん。
サニーたちや僕の話し合いによって、同じように泥まみれにしてやろうと仕返しが決まる。
でも、ただ泥団子を作っては地面から投げるのを繰り返すだけでは、幽霊さんには到底当たらない。僕たちが出す弾幕よりも、圧倒的に速度も密度が足りないからだ。
かといって、砂だったり泥水を汲んだ桶とか瓶を持って空中を追いかけるのも、妖精の身では色々と大変だろう。空を飛んだり魔法や弾幕を出せたりできる力があるといっても、純粋な膂力は見た目相応か若干高いかなってくらいだから。
ただし、僕とサニーたちで上手いこと役割分担をすれば、どちらの方法でも想定通りに仕返しを成功させられるポテンシャルはある。
「待てー! ルナや僕たちを泥まみれにしてくれたお返しをするんだから!」
「仮にも同じイタズラ好き、一方的にやられてばかりじゃないわ! 幽霊であろうと、覚悟することね!」
「そうだそうだ! って言いたいところではあるけど、僕ってイタズラ好きって言ってもいいのかなぁ」
「いいんじゃない? この間、私にしたイタズラの時のメノの反応を見てれば、素質あると思うわー」
「……そっか!」
ということで、ルナとサニーは泥水や泥団子を沢山作り、対処ができない隙を晒すまでひたすら隠れ待ち続ける役を。
そして、僕とスターは2人の行動が確実に成功するように、表立って色々とやりながら追いかける陽動役をやることになったのだ。
サニー曰く、幽霊さんを泥だらけにするのにこっちが泥だらけになるのは、何か負けた感があるからということで、追っかけて捕まえて自分ごと作戦は待ち伏せ作戦が失敗するか、成功する見込みが極めて薄くなった時に決行すると決められている。
その際に、幽霊さんを追いかけて捕まえるのは、この中で空を飛ぶ速さが1番早い僕だ。魔理沙と同等以上の速さとスタミナでなければ確実に追い付け、いざという時のウルも僕の中に居るからとのこと。
なお、僕としてはこの作戦内容に文句は一切ないし、ウルも「勿論! この私に任せなさいっ!」と僕に声をこっそりと送ってきてくれたので、文句は一切なさそうだ。
ちなみに、ゆゆさんや妖夢からはしっかりと許可をもらっている。よほどのことがない限り、後片付けをちゃんとやることが条件なんだけど、言われずともそのつもりで僕たちはいたので問題はない。
「てぇーい! これでも食らって、大人しく捕まって泥まみれになってよね!」
「わっ、そう易々とは行かないかー……やるじゃない! でも、弾幕ごっこじゃあなたに負けないわよー!」
「だね!」
正直なところ、僕たち……というよりは、サニーやスターやルナと同じくらいのイタズラ好きであろう幽霊さんには、この考えが見破られている可能性も十分にあり得る。何なら、その上で楽しまれている可能性もあるだろう。
というか、本気でイタズラをやり返したいなら、僕たちが今やっている方法ではあまりにも不足している。
最初から僕が追いかけて捕まえる、ウルに力を借りる、ゆゆさんたちに協力を依頼する、咄嗟に思い付くだけでこれだけ出てくるのだし。
(今度、サニーにちょっと相談してみたら……喜んでくれるかな?)
イタズラ決行は言わずもがな、そうでなくとも何か1つの目標に向かってとにかく全力で楽しめるように、4人で協力するという行為そのものがとっても楽しく、それでいて幸せだと言ったサニー。
イタズラとは存分に楽しんでこそ、相手に意図がバレバレでもこっちの計画がガバガバでも、私たちや友達が楽しければ問題なしと言ったスター。
確かに、自分自身も純粋に相手の反応を楽しんではいるけれど、やっぱりサニーやスターと一緒じゃないと、イタズラをする気が今一つと言ったルナ。
そして、いつか一緒に
今まで、無償の幸せをこれでもかと与えてくれたお礼として、ここいらで1度そういう類いのお話がサニーたちから出た時に、僕の方からイタズラ大作戦に参加してみたいなと、声をかけることもやぶさかではない。
僕に気遣ってか、今はまだ参加しないで欲しいともサニーたちは言ってたから、何だかんだ家事とか妖精会議への参加とかで、与えられた無償の幸せに対する恩を返すいつもの流れは、当分変わることはないだろうけども。
「今よ、ルナ!」
「了解。せーの……あっ」
「「わわっ!!」」
とまあ、そんな思考を巡らせつつ弾幕を放つなどして幽霊さんを追いかけていた刹那、唐突に泥水入り竹バケツや泥団子……いや、謎に光る泥大団子を抱え、投擲態勢に入っているサニーとルナが進路上に現れた。
それを合図に、僕の隣で一緒に飛んでいたスターを抱き抱え、更に上空へ全力で飛んでいった直後、竹バケツの泥水を逃げ切れなかった幽霊さんにかけ、ほんの少し時間を置いて泥大団子も直撃させることに成功するのだった。
ちなみに、泥大団子は爆弾のように爆発して飛散するように仕組まれていたので、サニーは幽霊さんに泥水をかけるや否や、日光の力を纏ってからある程度上空に避難していた。故に、多少スカートの裾が汚れた程度で済む。
「ありゃま。ルナ、また泥まみれになっちゃった」
「ちょっと大き過ぎたのかしら。あの威力なら、もう少し小さくてもよかったと私は思うのよ」
「うん。えっと、ルナに怪我とかは……なさそうでよかった。まあ、妖精だからあまり心配しなくてもいいんだけど、痛みとかは普通だからさ」
「それはそうだわー。さてと、仕返しが成功したところで、そろそろ降りよう。メノ」
「そうだね、スター」
ただ、ルナはここで天性のドジっ娘ぶりを発揮してしまったらしく、勢い良く両手で投げた拍子に足を滑らせて転び、起き上がると同時に爆発に巻き込まれ、幽霊さんと一緒に再び泥まみれになってしまう。
仕返しの成否だけを見れば幽霊さんに直撃したので大成功、だけど結果ルナもろともみたいになったから、僕的にはちょっぴり成功といったところかな。
で、辺りを見回してみると泥とかがまあまあ悲惨な飛び散り方をしていて、遠目で見ていたゆゆさんや妖夢も少し被害を受けていた。僕やスターとの追いかけっこの影響も相まって、間違いなく後片付けが相当面倒なことになりそうだ。
それ以上に、サニーたちとのイタズラ仕返し作戦を楽しみつつも遂行し、上手いこと結果を残せた事実のお陰でとても嬉しく、幸せではあるからよしとしよう。
「皆の協力もあって、仕返し大成功……でいい? ルナ、せっかくメノに綺麗にしてもらったのに、同じくらい泥まみれになったし」
「ぺっ、ぺっ……うん。作戦自体はとても上手く進んでたし、大成功でいいと思う。幽霊を泥まみれにできなかった上で、私だけがこうなった訳じゃないから」
「だねー。にしても、泥とか結構口に入っちゃった?」
「入った。吐き出してはいるけど、まだ口の中がジャリジャリしてて気持ち悪い。でも、目に入らなかっただけマシかぁ……あっ、ありがとう。能力また使ってもらっちゃった上に、口をゆすぐ水まで出してもらってさ」
「えへへ、どういたしまして。ルナ」
なお、サニーもスターもルナも体力や精神力に余裕はあったし、ゆゆさんや妖夢に併せ技を使っても動ける程度の余力はある。ということで、すぐ後片付けに入ることになる。
一応気を付けながら放っていたとはいえ、気を引く役割の僕たちが放った弾幕が壊したというか、汚したものは少ないながら存在しているっぽかった。
こちらに関しては、ありがたいことにゆゆさんも妖夢も「許可を出した私たちがやる」と、そう言ってくれたのでよかった。
だけど、ルナの泥大団子の爆発で汚れた箇所に関しては約束通り僕たちがやる上に、前者よりも圧倒的にやる箇所が多い。
併せ技で綺麗にできれば楽だったけど、そんなことをしたら僕が普通に倒れるかもしれないので、掃除道具を借りて地道にやるのだ。
ただし、どうしても落とせなかった場所だけは一旦休憩してから併せ技を使い、あまりにも多かった場合はゆゆさんに許してもらえれば一旦今日は帰らせてもらい、明日また来て綺麗にする。
勿論、放置してても僕の併せ技の効果が及ぶと分かってるが故のお願いであると、ゆゆさんや妖夢に伝えるのも忘れない。
2人の前で併せ技を使ったことはほぼないし、信じてくれればいいな。
「さてと、4人でお庭のお掃除頑張るわよー!」
「「「おーー!!」」」
頭の片隅でそんなことを考えながら、お掃除を頑張ろうとのサニーの掛け声に、スターやルナと共に僕は答えるのであった。
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