幸せ四妖精   作:松雨

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ぐったり妖精

 ついさっき、館の廊下でいつものメイド妖精さんたちと一緒にワイワイ騒いでいるピースに遭遇、イタズラで生クリームパイをぶつけられた僕とスター。

 

 言うまでもなく、お騒がせパーティー会場と化した廊下の後始末は大変だったというか、ピースたちのボルテージが上がり過ぎてとんでもないことになり、それどころではなくなる。

 

 予想通りスターが声掛けしても効果はなく、落ち着かせようとして僕が能力を使ってみてもまさに焼け石に水で、止まることはなかった。このままでは、さっきまで頭の中で考えていた展開が、そっくりそのままやって来かねない。

 

 なので、せめて少しでも被害を抑えようと、僕とスターがさりげなくやった誘導が思いの外上手くいき、追加で大部屋1つがぐちゃぐちゃになった程度で済んだのは本当によかった。

 

 これが失敗してたら、まず間違いなくスペカ級の弾幕やらレーザーが辺り一面に吹き荒れて、全員が落ち着くまでに紅魔館が悲惨な状態になりかねなかったし。

 

「うへぇ。何とか、咲夜が来るまで凌ぎきれたわ……ふぅ。しばらく休ませてー」

「お疲れさま、スター。何かその、止められなくてごめん。僕の能力、使う?」

「いや、このまま使わないで大丈夫よー。メノだって疲れてそうだし……眠い?」

「うん、ちょっとね」

 

 なお、誘導に成功した結果の賜物であるイベントの内容は、お察しの通りお遊びが極まったものとなった。

 

 何もなければ普通に仕事をしようとしていた大部屋の中で、スターや近くに居た二大妖精長が必死に僕がつけてるメイド用のカチューシャを取られないように周りを防御。

 その際、僕自身は床に敷かれた絨毯から出てはならず、飛んでもいけないと決められる。

 なお、途中参加は大歓迎であったので、何となくで遊びに来てたらしいチルノや大ちゃんが興味本位でこちら側として加わっても、特に不満などは出なかった。

 

 で、ピースや他のメイド妖精さんたちを味方にしていたいつもの2人組の方は、スターと二大妖精長に加えて、途中からはチルノと大ちゃんによる防御も突破し、僕に攻撃を仕掛けてカチューシャを取ろうと頑張る。

 

 このやり取りは、終盤僕やスフェの疲労が限界に達しかけたことが決定打となり、隙を見てウルに頼み咲夜が呼ばれたことで、何とか防御側が疲労困憊になりながらも勝利という形で決着がついた。

 

 これで、攻撃側であるピースたちが勝ってたらと思うと、初手の誘導が失敗していた場合の展開予想と似た形となっていただろうから、ほっとひと安心である。

 

 なお、僕やスターには他にもやるべき仕事はあったけれど、こんなヘロヘロの状態ではとても働けそうにないなって咲夜に判断を下され、持っていた権限で今日は1時間の休憩後に帰ってもいいことになっている。

 僕に至ってはさっきから眠気が来始めているし、帰っていいとならなくたってどのみち無理そうかもだけど。

 

(ふぁぁ……これも、僕の羽の光を視認したせいなのかな……? いや、モリオンとシャーネットたちのことだしなぁ……分かんないや)

 

 関わった他の皆もそうだったけど、スターも僕も後が面倒になりそうと思いつつ、途中から熱気に当てられて楽しんでもいたのに、こんなご褒美をもらって本当に良かったのだろうか。

 

 でもまあ、何とか止めようと頑張った結果このイベントに落ち着いたと、あくまでも楽しんだのは勝手についてきただけのおまけ要素であると、咲夜にはちゃんと分かってもらえた。

 

 だからこそ、スターには焼きたてのアップルパイと紅茶、僕にはそれに足して頭なでなでをしてくれたのだから、心配はしなくても大丈夫そう。

 

 とはいうものの、僕やスターも責任の一端くらいはあると思うし、こうして今日いい思いをさせてくれたお礼だってする必要もある。後、メイドじゃないチルノや大ちゃんの分もかな。

 

 ただ、元々レミリアからもらったお休みを明日から早速使うつもりなので、お詫びとお礼を兼ねてお仕事をより一層頑張るのは、最短でも1週間後になる。

 

 1時間の休憩が終わったら、スターと一緒に咲夜とレミリアを探して、そのことを伝えなきゃ。

 

「これだけスターたちと楽しんで、その上ケーキまでもらえるなんて、あたいたち最高に得したよな!」

「えへへ。そうだね、チルノちゃん……えっと、メノちゃんとスターちゃんも、少し食べる?」

「ううん、僕は大丈夫」

「私も大丈夫よー。正当な報酬なんだし、2人で食べちゃって」

 

 ちなみに、チルノと大ちゃんはイチゴのショートケーキを2個ずつ報酬としてもらっていて、今まさに館の庭のベンチに座って嬉しそうに食べている。

 

 美味しそうなケーキを、2人で仲良く食べる。あれだけの活躍をしてくれたんだから、途中から楽しんでたとはいえ十分に正当な報酬だと僕は思う。良かったね、チルノと大ちゃん。

 

「ピース、モリオン、シャーネット、メイド妖精さんたち、やっぱりお説教コースだったんだ」

「そうですね。今の紅魔館は、人里の解禁云々で全体が浮わついているので、ある程度は止むに止まれないとは思ってますけど」

「うん、それはそう」

「あまりにも咲夜さんが怒っていたので、少し気になって見に行ってみれば……確かに、あれははしゃぎ過ぎかなって。お部屋と廊下、大分滅茶苦茶になってましたから」

「あれはねー。正直、私でもちょっとドン引きかな。気持ちはまあ、理解できなくもないけど」

「あはは……クラピちゃんたち、凄い熱気だったよね。お説教、絶対に長引きそう」

 

 それで、案の定というべきか、この惨状の元凶になった2人組やピース、騒ぎに参加したメイド妖精さんたちは怖い顔をした咲夜に正座させられ、お説教を受けていたという。さっき、一緒にいいですかと声をかけてきて、僕の隣に座っている美鈴がそう教えてくれたのだ。

 

 何で知ってるのと尋ねてみたら、たまたまメイド妖精さんたちの部屋の前を通りがかった時、少し開いてた扉からそんな光景が見えたかららしい。

 

 うん。まあ、あれだけ派手にはしゃいで凄いことになったのだから、当たり前といえば当たり前かな。

 

(でも、懲りないんだろうなぁ。それでこそピースたちって感じだけど)

 

 同時に、ふと頭をよぎった。この出来事は、もう既にレミリアの耳に入っているはずだと。

 

 身内同然の妖精さんたちに対して、怒ってるところを見たことがないレベルで心優しい吸血鬼さんとはいえ、あれだけ大はしゃぎすれば多少なりとも気にならないはずはないだろうと。

 

 ああでも、愛情のある正当なお説教だったのと、当のモリオン本人が変わらずレミリア大好き妖精さんのままではあれ、昔本気で怒った時から性格が少しおかしくなったんだっけ。

 

 以来、よほどの理由でない限り、妖精相手に声をあげて怒るという行為がちょっとしたトラウマになってるみたいだし、多分そこまで厳しく怒ったりはしなさそう。

 

 もしかしたら、咲夜がよくお説教をしたりしてるのは、そんなレミリアの心を気遣って、役割を買って出てるからなのかも。

 

「んにゃぁ……美鈴? えへへ、どうしたの?」

「あぁ、いえ。何となく、メノウちゃんの頭に手を置きたくなったと言いますか」

「そうなの……? よく分からないけど、僕も嬉しいから好きなだけ続けていいよ……ううん、むしろ頭を撫でて欲しい」

「あはは! いつも思うけど、メノって本当に頭撫でられるの好きだよね!」

「スターちゃんたちみたいな心優しい家族、私たちを含めたお友達から、頭を撫でられる心地よさを知ったからだろうね、チルノちゃん」

 

 なんて思っていた刹那、美鈴の温かくて大きな手が僕の頭にぽんと、ただ単に乗っているのに気づく。隣を向いたら、表情は不安が消えて心が軽くなった人が見せるような、穏やかなものであった。

 

 声をかけられた時には夢にも思っていなかったけど、レミリアも含めて誰にも言えない秘密の悩みでもあったのかな。

 何にせよ、こんな簡単なことで喜んだり安心してもらえるのであれば、いくらでも付き合おう。

 

(いいのかな……? うん、いいのかな)

 

 わざわざ言うまでもないが、僕もスターたち程ではなくても気分が高ぶってて、なおかつ色々と動き回ってたお陰でまあまあ汗ばんでいる。

 

 泥や埃だらけとかじゃないにしたって、汗でベトベトなのは嫌じゃないのだろうか。でも、嫌だったら頼まれようとも触ろうとはしないはず、だよね。

 

 とまあ、それでも本当なら能力を即使って綺麗にしたいところだけど、僕も疲労困憊だからすぐには使えない。厳密に言えば使えるけど、周りに心配かけちゃうから本当にごめんね、美鈴。

 

「ねえ、美鈴。もしも、僕に何かできることがあったら、その、遠慮せず言ってね」

「勿論です。それはそうと、どうしても眠いのなら無理はしなくていいですよ、メノウちゃん。起きなかったら、私が抱えて送りますし」

「えっ、いいの……?」

「はい。その程度、私にはなんてことありませんからね」

 

 その代わりと言ってはなんだけど、いつかもし美鈴が何か僕にお願い事をしてきたら、頑張って聞き入れてあげないと。

 

 なお、1度や2度聞き入れた程度で僕が今まで美鈴にもらった、計り知れない量の恩を返せる訳がないという点は、この際考えないことにしよう。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。
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