幸せ四妖精   作:松雨

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賑やか妖精軍団

 紅魔館のすぐ近くにある、昼間はほぼ霧がかかっている霧の湖。太陽が照りつける真夏の昼間でもひんやりと涼しく、水も透き通っていて綺麗なため、その水や涼を求めて妖精さんや妖怪さんが集まってくることでも有名な場所だ。

 

 ただし、冬になるとかなりの寒さになるので、暖かい場所を好む妖精という種族にとって、環境的に良い場所とはいえない。いやまあ、それは大体の人妖に当てはまることか。

 

 かくいう僕も、上空から見たことはあっても何やかんやで実際に遊びに行ったことはないものの、サニーたちや僕の大切な友達は皆、何度も遊びに訪れたことがあるとのこと。

 

 理由は言わずもがな、霧の湖がチルノと大ちゃんの住んでいる『家』があるからである。そうでなければ、好き好んで来るはずがない。

 

「いらっしゃい、メノちゃん。そういえば、ここに来るのは初めてだったよね」

「うん。紅魔館の近くにあって、チルノと大ちゃんの家があるって知ってたのに僕、行こうとすら思わなくて……」

「ううん、気にしないで。私とチルノちゃんも誘ってなかったし、むしろこっちからメノちゃんのお家に遊びに行ってたもん」

「そうそう! ていうか、メノの方から遊びに来てくれない程度で気にするあたいたちじゃないしな! だから、この話はおしまいにして……ところでさ、皆揃ってここに来たのはあたいと大ちゃんを、妖精会議に誘いに来たってことでいいのか?」

「察しがいいね、2人とも。という訳で、私たちと一緒に行かない?」

「おう! 大ちゃんも、一緒に行こう!」

「勿論だよ、チルノちゃん。スターちゃん」

「了解。良かったねー、メノ」

「うん、えへへ……」

 

 そして今日、妖精会議にチルノと大ちゃんを誘うためだけとはいえ、サニーたちやリリー、ラルバと一緒に霧の湖へ僕は初めて来ていた。

 

 一寸先も見通せない程ではないけど、少し遠くに視線をやると白くなっていて見えない。

 

 チルノの能力で防がれたけど、真夏じゃなくて春だったから、来てすぐは普通にふかふか毛布が欲しくなるくらいに寒かった。

 

 氷の妖精さんらしき透明度の高い羽を持っている子が、楽しそうにはしゃぐ姿や声を見聞き出来た。良く見たら、紅魔館のメイド妖精さんも何人か居る。

 

 何というか、霧と寒さに慣れれば楽しそうな場所だなと、ラルバの秘密基地みたいに近い内、1日遊びに行くことのみを目的としてここに来たいなと思う。

 

 ないとは思うけど、万が一何かがあったとしても紅魔館が近くにあるから、助けを求めたりできるのは安心だ。

 

「さてと、次は博麗神社へ……と思ったけど、良く考えたら紅魔館の方が圧倒的に近いし、後回しにしましょ。ということで、行き先変更! 紅魔館に行って、ノーゼとモリオンを誘うわよー!」

「ノーゼちゃんとモリオンちゃんも? メイドのお仕事だったら行けないと思うけど」

「咲夜が昨日、あの2人は休みだって教えてくれたから大丈夫!」

「そうなんだね。で、誘い終わった後はクラピちゃんと魔理沙さんも?」

「勿論! 妖精会議には欠かせない、大切な2人だもの!」

「おー、随分と賑やかな面子になりそうだな! じゃあ、準備も整った事だし、今から行くぞー!」

「「「おぉーー!」」」

 

 一切の迷いなく、チルノと大ちゃんが妖精会議への参加を決めてくれた後は、サニーの一声で次の目的地を博麗神社ではなく、紅魔館へと変更することが決定した。

 

 確かに、霧の湖から博麗神社へ行って居るであろう魔理沙に声をかけ、紅魔館へ行くルートはそうすべき意味がないから、普通は取らない。それに気づいたのであれば、考えを変えるのも至極当然だろう。

 

 でも、僕たちが使える時間に今日はかなりの余裕があるし、無駄な遠回りしても何ら問題はないし、僕的にはむしろそれでも構わない。

 

 大好きな家族で、僕の前世を含めた全てを受け入れてくれて、僕が幻想郷で生きる意味そのものとなってくれたサニーとスター、そしてルナ。

 

 サニーたちと同様に、前世で僕が人間の男の子だった事実を聞いてさえ、変わらず友達で居てくれたリリーとラルバ、チルノと大ちゃん。

 

 皆とのお話はもとより、会話がなくたって一緒に居れるのであれば、この上なく幸せだから。

 

 勿論、今から誘いに行く予定のノーゼとモリオン、ピースと魔理沙も同じく、僕を変わらず友達として見てくれている程に優しいから、一緒に居ればとても幸せな心地になれる。ここに居る4人と、何ら変わらないくらいには。

 

「来た来た……おーい。あたしとモリオン、妖精会議にいつでも出発できるよー」

「あっ、しろちゃんも居た! えへっ、やったぁ!」

 

 霧の湖を立ち去った後、そんな事を考えつつ紅魔館へ飛んで向かうと、既に出かける準備万端なノーゼとモリオンが、門の前で美鈴と一緒に待っていたことに気づく。

 

 あの様子だと、昨日僕が寝ている間に咲夜経由で妖精会議のことが伝わった瞬間、一切の迷いなく参加を決めたに違いない。誘う手間が大幅に省けた。

 

「よっと。ノーゼ、モリオン、準備が早くて助かるわ! そんなに楽しみにしてくれてたの?」

「うん。()()()()()だけで集まって、ワイワイ騒ぐのは好きな方だし……そういえば、スフェも行きたがってた」

「あー……まあ、あの性格なら当然」

「あの子、僕たちとのお喋り好きだもんね。こっちから話しかけると、基本的にどんな内容でもニコニコしてくれるくらい」

「スフェーンさま、お仕事のお休みもらえば良かったのに……レミリアさまと咲夜さまだったら1日くらい、お願いすれば許してくれると思うけどなぁ」

 

 そして、2人ともどういう訳か今日は一段と気合いが入っているらしく、着ている私服がいつものと違う。

 

 目立つダリアの花飾り付きの紺色帽子、紺色を主としつつも所々灰色で彩られた長袖ワンピースで着飾っていて、優しげな微笑みを浮かべるノーゼ。

 

 何でも、服飾担当のメイド妖精さんからこれを着ていってと言われたらしい。理由は全然分からないみたいだけど、デザイン的には気に入ってるから良いとのこと。

 

 一方で、全体的に動きやすさを重視したと思われる、白や黄色系統の半袖にミニスカートに2羽の鳩の髪飾りを身につけ、快活を体現したかのような可愛らしい笑顔のモリオン。

 

 こっちの方は、自分が持ってる私服の中から選ばれているらしいけど、ノーゼの格好とは雰囲気が違うから余計に目を引く。

 

 今日の妖精会議で何をするのか決めていないけど、弾幕ごっことか冒険ごっこみたいな遊びをするのなら、ほぼ間違いなく服は汚れるし、下手すれば破けたりすることだってあり得る。

 

 ただまあ、モリオンはもとより、ノーゼやノーゼにこの服を着ていくようにお願いした服飾担当の妖精さんも、その辺は了承しているからわざとでなければ、そんなに気にする必要はない。というか、そう簡単に破ける代物ではなさそうだけど。

 

 なお、2人の格好は純粋に似合っていて可愛いらしいと皆が思ったようなので、当然の如く僕を含めた全員で褒めたところ、モリオンは「ありがとうね、みんな!」と、全身で喜びと嬉しさを露にした。

 

 ノーゼは性格上、モリオンほど露にはしなかったけど、相当嬉しかったらしい。照れ臭そうにしながら、「この格好で来てよかった。褒めてくれてありがとうねー!」と、快活な妖精らしい一面を覗かせる。

 

 話を聞けば、レミリアにも「似合ってるわ、ノーゼ」と言われたらしいので、ここまで嬉しがるのもそれが合わさった結果なのだろう。これで喜んでくれるのなら、僕はいくらでも言葉をかけてあげよう。

 

「さて、最後は魔理沙とクラピちゃんだけだね! 博麗神社に居てくれるかなー?」

「大丈夫だと思うよー。魔理沙もピースも探せば大体博麗神社に居るし、そうでないとしても魔理沙の家か香霖堂、人里に居ることが殆んどだから」

「うん……ていうか、スター。それなら一応、魔法の森を出る前に探しておけば良かったかも」

「確かにね、ルナ。でもまあ……過ぎたことだし、考えても仕方ないと思うわ」

 

 そんなこんなで話が終わったら、門番をしていた美鈴に見送られながら僕たちは飛び立ち、博麗神社へゆっくり向かっていく。

 広い広い空を、大好きな家族や大切な友達と一緒に飛んで回り、楽しくはしゃいで過ごすこの一時が、()()()()好きだからだ。

 

 無論、そうはいっても地上で歩くよりは当然速くなるので、できる限りゆっくりを心がけていても、結構短い時間で到着する。僕1人であれば、もっと速く到着できる。

 

 だから、もう少し色々と遊びを入れたりもしたいけど、今は妖精会議に魔理沙とピースを招きに行く道中。

 

 余計な寄り道をしすぎたせいで、2人を加えた妖精会議に使える時間が極端に少なくなってしまえば、それはあまり良くないことなのだ。

 

「あっ……えへへ、魔理沙ー!」

「ん? おお、メノか。この様子だと、妖精会議の途中か?」

「ううん、皆を誘ってる途中だから違うの。後はその、魔理沙とピースだけなんだけど……どうかな?」

「なるほど。じゃあ、私もいつもみたいに仲間に入れてくれ」

「本当に? いつもありがとね、魔理沙。大好きだよ」

「ははっ、面と向かって言われると少し恥ずかしいぜ。ところで、お前ら2人の格好……初めて見るやつだな。どうした?」

「あたしの格好? うちの服飾担当のメイド妖精に、着て欲しいって強く頼まれたから」

「わたしはね、ノゼアンさまが可愛いお洋服着るなら、わたしも着ようって思ったから着てきたんだよっ! 皆にも、褒めてもらえたから嬉しかったなぁ」

「へぇ。だったら、汚れたりするのは気に……愚問か。気になってたら着てこないか」

 

 案の定、皆でお喋りしながらゆっくり飛んでいても、おおよそ15分程度で博麗神社の上空にたどり着き、降り立って境内に居た魔理沙に話しかけるところまでできた。時計とかは持ってきてないから、体感での話になるけど。

 

(……えへへ)

 

 やはりというべきか、魔理沙は僕からのお誘いに迷いなく乗ってくれた。相変わらずの優しさである。

 

 で、僕やノーゼ、モリオンやあうんが魔理沙と話す傍ら、神社の縁側では駆け寄っていったサニーたちやチルノ一行の相手を霊夢がしつつ、ピースの膝枕になってあげていた。

 

 よっぽど眠たかったのか、その寝顔はとても穏やかで幸せそう。ピースにとって博麗神社という場所はもとより、霊夢やあうんが一緒に居て楽しく、安心できる存在でなければこうはならない。

 

 確かに、僕も博麗神社という場所は当然として、霊夢やあうんと一緒に居ると安心できるし、楽しいからピースの気持ちは良く分かる。

 

 そして、それは僕だけでなくサニーたちやチルノ一行、ノーゼやモリオンも一緒であろう。間違いない。

 

「ふぁぁぁ……わっ! サニーたちが勢揃い……もしかして、妖精会議?」

「そうよ! ピース、参加してくれるかしら?」

「きゃはは! 勿論、あたいがこんな楽しそうな遊びに参加しないなんて、あり得ないぜ!」

「ふふっ、じゃあ決まりね!」

 

 なお、妖精会議へのピースの参加に関しては、サニーからの問いかけに答えている時の様子を見聞きしたところ、既に決定事項であったようだった。

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