幸せ四妖精   作:松雨

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今話はルナチャイルド視点です。


暇持て余す日精と月精

 スターとメノが仕事をしに行ってて、なおかつ誰も遊びに来ない日の昼間辺りは、私とサニーにとって最も暇な時間帯である。

 

 どこかに遊びに行くとか、イタズラしに友達や知り合いへ突撃するなんて日もあるにはあるけど、毎回それをやってると面白味が薄れて飽きてしまう。

 それに、前者ならともかく後者ともなると、スターが居ない場合に失敗してその場でお説教となる確率が高くなるから、ある意味最終手段みたいな扱いかな。

 

 そういう時、私であれば屋上にコーヒーセットを持っていって、甘めのお菓子を片手にのんびりしたり本を読みながら過ごすか、自分の部屋で同じように過ごしてれば簡単に時間を潰すことができる。

 後は、メノウやスターの代わりに簡単なおやつや料理を作ったりすることも、たまにだけどある。

 

 しかし、妖精らしく生粋のアウトドア派であるサニーは、私のようにはいかない。そこそこ高確率で暇を持て余し、部屋に突撃してきては遊びに行こうと私を誘いに来るのだ

 

「暇だわ、ルナ! 一緒に出かけましょ!」

「あー。サニー、今ちょっとコーヒー淹れたばかりなんだけど」

「飲む時間くらいなら待つわ! 数時間単位でかかる訳じゃないんでしょ?」

「うん。満月の月見の時ならまだしも、普段はそんなことしない。せっかくのコーヒーが冷めちゃうし」

 

 現に今、既に外出する準備が万端なサニーがニコニコしながら、こうして突撃してきている。

 まるで、私が誘いを断らないかのように話を進めていくサニーだけど、それでもし気分が乗らないと言われたらどうするつもりだったのかな。

 

 まあ、今日は気分的にはそこそこって感じだし、元から断るつもりはなかったからいいけど。

 

(魔法のバスケットに大きめのトートバッグ、中身は替えの洋服に簡易テント……なるほど)

 

 装いを見る限りでは、近場でのピクニックという感じだろう。理想郷の探検も行けそうに見えるけど、メノとスターが帰ってくるまでの時間では全然足りない。

 

 というか、それをやるならメノとスターは言うまでもなく、妖精軍団や紅魔館の仲良し妖精組、場合によっては妖精以外の親しい面々を加えてやる。サニーだって間違いなく、同じ考えだろう。

 

 そうなると、どこがピクニック候補地となるか。家の庭でやるならお出かけの準備なんて要らないし、魔法の森はキノコの胞子やら何やらで鬱蒼とし過ぎて、探検ならともかくピクニックとしては論外。

 

 近場に限定するなら、香霖堂辺りかラルバの秘密基地となりそうだ。香霖やラルバが不在だったり、無理だと断られたらもう少し遠出することになるかもだけど。

 

「あぁ~……サニー、ルナ、ただいまー……あれ?」

「靴もありますし、留守ってことはないかと。お部屋ですかね?」

「多分ねー。もしかしたら、屋上でのんびりしてるって可能性もあるかも」

 

 淹れたコーヒーを少し急ぎ目に飲み終え、さてお出かけしようかとしたところで、不意に疲れきったであろうスターと美鈴の話し声が聞こえてきた。メイドの仕事はどうしたのだろうか。

 

 それに、帰って来たなら来たで美鈴が一緒に居て、メノの話し声が聞こえてこないのだろう。まあ、どちらか片方だけ先に帰って来たことはないから、多分そういうことなのかも。

 

 一体、今日のメイドの仕事はどれだけ大変だったのかと、私は心の中でそう考えた。

 

 ちなみに、お出かけ気分だったサニーはどうなのかというと、2人の声が聞こえた瞬間に荷物を置いて、いつもみたいにお出迎えをしに部屋を出ていっている。

 

「お帰りなさい! 随分早いわねって思ってたら、やはり大変だったのね。スター」

「そうそう。一緒にやってたんだけど、自分で歩くのも辛そうだったもん。メノ」

「ふふっ、すやすや気持ちよさそうに寝ちゃってる。運んでくれてありがとう、美鈴!」

「サニーと同じく、ありがとう。美鈴」

「はい、どういたしまして。この程度、お安いご用ですよ」

 

 サニーの後を追い、私も2人をお出迎えに行ったリビングで見たのは、声色通りに疲れきったスターと美鈴に抱かれてすやすや眠る、メイド服姿のままのメノであった。

 

(大方、モリオンとシャーネット絡みかな。聞かなくても分かる)

 

 これで実感した。美鈴が一緒に居る事実に加えて、メノと一緒に仕事をしていたスターがこれ程疲れているというなら、いつものお騒がせ2人組がまた大はしゃぎしていたところに巻き込まれたのだと。

 

 ただ、相変わらず幸せそうで可愛い寝顔を見る限りでは、大変ではありつつも楽しかったのだとも分かる。仕事の度に毎回こうでは困るけど、たまにであれば私としても言うことはない。

 

「ピースも参戦してたんだ。そりゃ、あの2人と混ざればどえらいことになるし、咲夜のお説教もどえらいことになる」

「それにしても、大ちゃんはともかくチルノがあっち側に行かなかったのは意外ね、スター」

「確かにね。お陰で大惨事は免れた訳だけど、まあそれでも酷かったわー」

「又聞きですけど、相当奮闘してくれてたみたいですものね。何にせよ、咲夜さんやレミリアお嬢様も感謝していました」

 

 案の定、モリオンとシャーネット絡みの出来事だったのは、美鈴とスターの話から分かったけど、その渦中にチルノや大ちゃん、ピースも加わっていたと分かったのだからビックリだ。美鈴も、この騒ぎが耳に入るまでピースたちが居ると思わなかったらしい。

 

 そんなんで大丈夫かと思うかもだけど、美鈴の場合は全く問題にはならないし、レミリアも全く気にしてはいない。スターの超上位互換とも呼べる『気を使う程度の能力』の扱いが、あまりにも凄いから。

 

 例え立ち眠りをしてようが、庭仕事やメイド妖精の相手をしてたりで目を離してようが、意識すべき相手はもとより真に警戒すべき相手は絶対に見逃さない。

 

 その分、顔見知りや友達相手だと無意識に警戒心が薄くなり、能力で追うのをやめるので、結果として記憶から抜けて実質知らなかったってなるのだけども。

 

「ああ、そうだった。私とメノ、明日から最短1週間休みをもらったから、お泊まりで理想郷探検に行けるわー」

「「えっ?」」

 

 すると、美鈴が抱いていたメノを寝かせに部屋に行ってくれたタイミングで、スターが今までの話の流れを切り出す形でこう言ってくる。私もサニーも、全く予想してなかった内容であった。

 

 詳しく聞いてみたところ、どういう訳か人里に出かけていってめちゃくちゃご機嫌だったレミリアに、お給料が出る休みをもらったという。

 

 自分の好きなタイミングで取って良かったみたいなんだけど、メノがそれなら「明日から取る!」と言ったらしく、一緒に取るつもりだったスターも自動的にそう決まったのこと。

 

 というか、最短で1週間のお休みってことは、最長ともなると多分倍くらいになる。振れ幅のある休暇ってのも不思議だけど、そんなに与えて館の仕事は困らないのだろうか。

 まあ、全く困らないか最低でもどうにかなる算段があるから、こんな風にスターとメノに言ったのだろうけど。

 

「お泊まりで理想郷探検……楽しそうね! ルナ、妖精軍団の皆を誘いに行くわよ!」

「サニー、疲れきったスターとメノを残して外出はちょっと……」

「おっと、テンション上がっちゃってすっぽり抜けてたわ! でも、そうしたら準備の時間が少なくなるし、どうしよう」

「でしたら、私もお留守番しましょうか? 夕方辺りまでなら、時間が取れますので」

「えっ、いいの? 是非お願いしたいわ!」

 

 その結果、この話を聞いてたサニーはテンションが爆上がり。表情的に何気なく言っただけであろうスターの言葉を真に受け、あれよあれよとメノを部屋に寝かせて戻ってきた美鈴にお願いを取り付けた後に、私の手首をがっと掴んでくる。

 

 少なくともサニーの頭の中では、四妖精全員でのお泊まり理想郷探検は確定しているらしい。

 

(ふふっ)

 

 まあ、確かに楽しそうではあるから私は賛成寄りだし、スターも「ありゃー」と言いつつ、表情はワクワクしている時特有のものであるため、賛成ではありそうだ。

 

 メノに関しては、このことを伝えるのは起きてからになるけども、返答はぶっちゃけ聞かずとも分かる。

 瞳をキラキラさせながら、「サニーたちとお泊まり理想郷探検? えへっ、僕は行くよ! 行きたい!」みたいな感じで言ってきそう。

 

 一応、断られたり行けなくなる可能性も想定し、その場合は魔理沙を筆頭としたメノの妖精以外の友達にお願いして、期間中は一緒に居てもらおう。

 

「本当にもう……という訳だから、留守番お願い。スター、美鈴」

「分かったわー。行ってらっしゃい」

「はい。皆頷いてくれるといいですね、ルナちゃん」

 

 頭の中で色々と想定したりしながら、私は半ば強引にぐいぐい引っ張ってくるサニーに連れられて、皆を誘いに出かけることになる。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。
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