幸せ四妖精   作:松雨

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今話はレミリア視点です。


紅魔館会議

「今日は色々と苦労をかけたわね、申し訳ないわ。私自身、大分浮かれてたのよ」

 

 大方私の予想通り、人里への立ち入り解禁という情報はあれから凄まじい勢いで館内を駆け巡り、日が沈んだ今では既に知らぬ者はいない状態となる。

 

 言わずもがな、その人里関係で決まったとある事を伝えたいがために自室へと集めたフラン、美鈴と咲夜、パチェとこあ、スフェとノーゼの7人も同じである。

 

 それに呼応して、メイド妖精たちが色々とはっちゃけたという話も耳に入ってきているけど、これによる影響も概ねいつも通り。

 勿論、一部例外も発生しはしたものの、対応してくれた面々のお陰で結果的にはいつも通りの範疇に収まるのであった。

 

「大丈夫よ、お姉さま。私もそうだったし、浮かれてしまうのも無理はないわ」

「ええ、フランと同意見ね。大図書館で騒がれたりしても、仕方ないと思える程度には思うところはあったから」

メイド(館の住人)の妖精ちゃんたちに、色々と我慢させなくても良くなるのはもとより、メノウちゃんにとっての安寧の妨げを排除できる訳ですしね」

「本当にね。今日に至るまで、皆とこの話をしている時に何度殺してやりたいと呟いたことか」

「レミィ。私が覚えている限りだと、二桁は余裕で超えてるわよ」

「あら、まるで呪詛みたいだわ。自分で言うのもなんだけど」

 

 で、その一部例外というのが、いつものお騒がせ組(モリオンとシャーネット)。咲夜と涙目で謝ってきたメイド妖精たちから、事のあらましを聞いた時は、よくもまああの程度で済んだものだと感心したっけ。

 

 ただしそれは、ノーゼとスフェが疲労困憊かつメノウとスターが疲労のあまり途中で帰る羽目にまでに頑張り、同じく遊びに来ていたチルノや大ちゃんが助けてくれたからに他ならない。

 

 大ちゃんはともかく、チルノがピース側に行かなかった理由は全く以て分からないが、お陰で館へのダメージを軽減できたのだから本当にありがたい限りである。

 

「ところで、咲夜。モリオンとシャーネットたちは、あれからどんな感じ?」

「至って普通です。はしゃいでこそいませんでしたが、殆んどいつも通りニコニコしていました」

「そう。相変わらず、立ち直るのが早いのね。見る人が見れば反省しているのかと思うでしょうけど、妖精はあれくらいがちょうどいいわ……で、ピースはあの後帰ったの?」

「はい。私がお説教したからというのもありますが、何だかんだあれで満足したみたいなので」

「ならよかった。分かっているとは思うけど、遊びに来るのを止めるつもりはないわよ。何日かは注視しておくけどね」

「了解しました」

 

 なお、咲夜にお説教されてからとはいえ、ピース共々後片付けを済ませた上でちゃんと謝りに来てくれたあの子たち全員は、もう許している。というか、元々怒りは湧いてきていない。

 

 彼女たちの行動は、こんな時こそもっとしっかりと私が注視しておくべきだった事柄。なのに、浮かれてて油断していた結果こうなったのであれば、私も悪いのだから。

 

 まあ、仮にそんな事情なんてなくたって、やったのはいつもの大はしゃぎの延長のようなもの。こんなことを言うのは対処に当たってくれた皆に申し訳ないけど、少なくともお互いに楽しんではいた訳なのだ。

 

 身体はもとより、精神的に酷く傷つけ合うなんて事態でもない限り、瞳を潤わせながらちゃんと謝りに来てくれたあの子たちへ更に怒るなんてこと、私はしたくない。

 

 そうは言っても、周りに迷惑をかけるような行為は謹むのと、メノウやスターを筆頭に迷惑をかけたメイド妖精には、同じようにごめんなさいをしておいてと注意する程度ならやっておいたが。

 

「ところで、レミリア様。パチュリー様を含め、わざわざ紅魔館の主力陣を人里案件で集める……もしや、遂にお決まりですか? 彼らを排除する、正確な日時が」

 

 とまあ、前座であるこの案件についての話を軽くしていた最中、こあが話の途切れたタイミングで、こう切り出してきた。瞬間、集まった全員の瞳が真剣なものへと変わる。

 

 そう、遂にお決まりというやつなのだ。日時は5日後の早朝、奴らを人里から追い出すと慧音から蝙蝠を通して、ついさっき知らされたのである。

 

 1週間前後と私の能力は告げていたが、これだと大体その通りの期間で以前のように人里を解禁することを、全員に告げられるだろう。

 無論、人里の様子や雰囲気が以前とほぼ同様に戻るまでにはより長い時を要するものの、それは許容範囲(想定)内にある。

 

「ええ、5日後の早朝よ」

「5日後の早朝ですか? それは、非常におめでたいことではありますね。 ただ、それには……」

「メノウに諸々の事情をある程度打ち明けることが、避けては通れない道であると、そんな感じのことを言いたいのよね? こあ」

「はい! 教えない選択肢を選び、いざ解禁だけしてしまえばどうなるか、容易く想像できますので」

「そうね。幸せな日常生活を謳歌する中、完全無防備な状態で奴らの存在を知るだなんて、メノウは壊れてしまうわ。であれば、お姉さまが十分な備えをした上で教えた方がまだマシ……なのかしら」

 

 しかし、それらはこあも含めて全員が懸念しているように、あいつらが()()()()()()という事実をメノウに打ち明けるのみならず、その際に起こるであろう精神の揺らぎを極めて小さくするという、普通であれば難儀な絶対条件を達成してこそ。

 

(本当、魔理沙には感謝してもしきれないわ)

 

 だからこそ、魔理沙によるメノウのお誕生日会開催は、そういう意味でもこの上なく都合がよい。羽を見れば分かるけど、今の彼女の心はそれによって常に大きな幸せで満たされ、精神に対する外的影響に相当強くなっているのだ。

 

 勿論、だからと言ってそれにかまけ、あいつらの話をしたことで万が一心に傷を負ってしまった時の、リカバリー策を練らないなんて愚かな行為はしない。

 

 日付が変わったその瞬間から幻想郷よりあいつらを排除し、メノウに打ち明けてどうこうするまでは、色々と忙しくなりそうだ。

 

「運命は、精神の揺らぎを極小で抑えられると告げてくる……か。やはり、今のタイミングで人里を解禁しつつ揺らぎを回避するのは、不可能に近いのかしら」

「同意見です、レミリアさま。あたしとスフェを参考にすれば、回避したいなら年単位の時間が必要じゃないですかねー」

「年単位? ノゼちゃん、それは難しいんじゃない?」

「そりゃそう。現実的ではないって分かった上で、敢えて無視して言ってみただけ」

「そうねぇ。いっそのこと、三妖精にお願いして……いや、流石に丸投げは良くないわね。人里の解禁時期云々は、こちらの事情が占める割合が大きいもの」

 

 それはそうと、やはり悩ましいことこの上ない事柄だ。メノウは、私にとって大切な存在であることは言わずもがなだが、私を慕ってくれる皆の存在も同等以上に大切。1人に注力して他の皆には強制だなんて、とてもじゃないができる訳がない。

 

 というか、あの子は自分に優しく接してくれる大切な家族や友人の方を、半ば無意識に優先して気にかけれる程の優しい心の持ち主。

 

 ただでさえ長く我慢させているのに、メイド妖精たち()()()()()()()に年単位で我慢させて、自分自身が館内に大きな不和をもたらす要因の1つになっていたと知ったならば、さぞかし気分が悪いはず。

 

 しかも、不和をもたらした元凶の相手は同じく友達と思っているレミリア()。どうしたら、この事態を嫌われずに穏便に解決へと導けるのかなど、数多もの思考がメノウの頭の中を駆け巡ることだろう。

 

「お姉さま、どうかしたの……?」

「どんな運命が見えようと、それが来るまで座して待つつもりはない。メノウや皆のためにも、どれだけ大変であろうと変えられるように頑張るわ」

「……そうね。ここに居る全員同じ思いよ、お姉さま」

 

 メノウだって馬鹿ではないし、私たちだって完璧ではない。今でこそ何とかなっているけど、人里禁止が長くなればなる程綻びが生まれる確率も比例して高くなる。

 

 頭の中でそんなことを考えていたから、今この場で一瞬見えてしまったのだろう。

 

 実際に口にすることはもとより、考えることすらしたくない程におぞましい未来が。 

 

(結局は、当初の予定が最善……か。このルートを選んだ以上、そりゃそうよね)

 

 とまあ、色々と考え過ぎていても仕方ない。事前に想定していた通りに動きつつ、リカバリー策を当初の予定以上に強化することにしよう。

 

 恐らく、寝不足やら酷い疲労で私の体調も良くなくなるだろうけど、メノウや館の皆に辛くて苦しい思いをさせるくらいであれば、こっちの方が断トツでマシだろうから。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。評価や感想をしてくださっている方々には、心より感謝いたします。
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