幸せ四妖精   作:松雨

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今話は前半が主人公、後半が魔理沙視点です。


地獄の女神と妖精軍団

 スターの何気ない発言から始まった、理想郷の大探検。いざその日が始まってみればあれよあれよと時は過ぎ、気づけばもう今日で4日目に突入していた。

 

 リリーの気遣いと皆との話し合いの結果、2日目の夜に大風の大森林を出ることになって以降の流れは、簡単に説明すればこんな感じ。

 

 翡翠の妖精さんのお話と相談を挟みつつ、僕たちが行ったことのない場所に行ってお泊まり込みで楽しみ、次の日の朝かお昼にはそこを出る流れを繰り返す。

 

(理想郷、まだまだ知らないことばかり……僕のお家でもあるのにね)

 

 初めて見るものや風景、妖精さんや動植物さんたち、どこに行くにも新鮮さを感じられているから、2日目から今日まで同じ流れでも飽きが微塵も来ていない。

 

 皆がどの程度楽しめているのかは分からないけど、僕に関してはまるでついさっきまでそこに居たかのように、当時の光景をはっきりと思い出すことすら容易な程だった。

 

「メノ。今、どんな想像してたの?」

「想像というか、大探検で作った思い出に浸ってたの。ラルバもどう?」

「そりゃ、聞くまでもないでしょ。たった1週間程度で終わっちゃうのが、凄くもったいないくらい」

「えへへ……だよね。僕も同じ」

「私も同じだよー。あんなに気持ちのいい春は、久しぶりだったわ!」

 

 例えばおととい、蒼い氷と凍てつく冷気に覆われた一面銀世界な蒼氷の渓谷では、冬の気配に当てられたチルノが春のリリー以上に元気になっ(強化され)て、もはや妖精の域を突破したのではと皆が驚いていたっけ。

 

 環境的にも厳しい場所でありつつ、翡翠の妖精さんや強化されたチルノの能力と即席の防寒装備があったから、寒いのが特に苦手なピースやラルバも普通に楽しんでくれてたし、本当によかった。

 

(えへへ……)

 

 昨日行った、可愛らしい動物さんたちが多く暮らしていた常夏の湖岸、環境的におととい大人しめだったピースやラルバだけじゃなくて、太陽の光が強かったお陰でサニーも常時元気いっぱいだった。

 

 初日と2日目はリリーに振り回されていた分、お返しと言わんばかりに逆に振り回していて、それを止めるために何時間もてんやわんや、結局黄昏時までどうにもならなかったなぁ。

 

 なお、そのせいで昨日の夜中は完全にグロッキーだったリリーだけど、その時の表情は幸せ極まっているんだとすぐに分かる、満面の笑みではあったけど。

 

「見渡す限りの大自然もいいけれど、作られた場所感が結構残ってる場所もたまにはいいわね! ルナ!」

「うん。異世界だと、妖精だけで人里みたいな場所を作ることがあるんだって、ちょっとびっくり」

「今はやってないけど、甘味処とかもあるみたいだしねー……ところで、メノ。今気づいたんだけど、小鳥に髪の毛むしられてるわ。痛くないの?」

「えっ、わわっ!? えっと、どうしようスター。言われてから、急にチクチク痛くなってきた」

「うーん……頑張って退いてもらうしかないんじゃない?」

「ふふっ。この小鳥、メノが大声出しても私たちが手を近づけても逃げない。警戒心が薄い子なのかな」

 

 ちなみに、今日もは翡翠の妖精さんにここを見て欲しいとお願いされたから、『妖精の里』と呼んでいた場所を訪れている。かつての悲劇で、1度はほぼ壊滅していたらしい。

 

 建物自体や街道などの再建は終わり、幻想郷移動後に起こった僕の生誕の副産物である自然の侵食への対応は完璧に済んでいて、やろうと思えばもっと早く()()()()復活させることはできていた。

 

 築かれていた文化とかも記録や記憶に残ってて、教えて受け継いでもらうことだって可能だったという。

 

「うわっ、あの妖精何か落書きしまくってるし、里の中で弾幕ごっこみたいなことしてるけど……守護妖精的にはあれ、大丈夫なの?」

「はい。あの程度であれば、かつての悲劇前でも比較的よく見られた光景ですので問題はありませんよ、チルノ様」

「へぇ。あれ見てると、いつぞやの妖精軍団を率いてやったイタズラを思い出すなぁ」

「そうだね、チルノちゃん。霊夢さんの神社に持ってきたペンキで落書きしたり、おはぎにしょうゆとからしと激マズキノコを――」

「ぶるぶるがたがた……笑顔があんなに怖いって思ったの、あの時くらいだわ! ねっ、ルナ」

「うんうん。あの時の霊夢、怖過ぎてメノにはとても見せられない」

 

 しかし、妖精さんたちこそ数十人単位で居れど、実際は今でも復活している様子は見られず、守護者兼遊び相手の苔と蔦が絡んだ石の魔法人形(ゴーレム)さんも、目を瞑ったまま動いていない。

 

 何者にも縛られず自由気ままにはしゃいで遊ぶ、新たに生まれたここの妖精さんたちには関係のない、消えてしまった異世界のあの子たちの文化を引き継いで欲しいという、自分のエゴを押し付けることへの抵抗感。

 

 他にも、僕が想像もできないような色々な思考とかが、深く絡み付いて離れなくなった。

 

(そっか……)

 

 何より、仮に異世界の妖精さんたちの遺した文化を、ここで生まれた妖精さんたちに引き継いでもらうことになれば、否が応でも過去を思い出さなければならなくなって辛いから、その1歩が進めない。

 

 僕が1人でお出かけをした時の言い様もない不安や恐怖みたいなのを、何十倍も濃縮したものを感じているのであれば、そりゃあいくら翡翠の妖精さんが精神的に強くたって、進める訳もないよね。

 

「うぉう、びっくりだぜ! えっと……いらっしゃいませ~、神さま1名ごあんなーい!」

「おー、かみさまかみさま~!」

 

 すると、そんな思考を遮るかのように、元気いっぱいな妖精さんの声が唐突に耳に入ってくる。当然、僕に聞こえるのなら他の皆にも聞こえていないはずもなく、数秒後に視線がある一点を向いた。

 

 周りのお家よりも小さな、昔ながらの駄菓子屋さんのような建物。そこに、野次馬と思わしき妖精さんたちが集まって、お祭り騒ぎをしている。

 

 幻想郷というより、紅魔館の好きなおやつが食べれる日に食堂でよく見る感じの光景に、僕はちょっぴりほのぼのした気分になった。

 

「我こそは至高の神、丁重にもてなしたまえ……ふふっ、冗談よ。この際神かどうかなんて忘れて、いつも通りでいいわよん」

「この声、この語尾、何よりこの神気……わはっ!」

「ピース!?」

 

 それにしても、神様って言葉が出てくるのもそうだけど、ピースが初めて聞く語尾の人の声を聞いた瞬間、一瞬驚いた後にパアッて嬉しそうな笑顔を見せてから、野次馬妖精さんたちを掻き分けて中に入っていったのには呆気に取られた。

 

 この反応からして、ただの知り合いや友達などではなく最低でも親友か、僕とサニーたちのような関係であることは確実。

 

 全く知らない人というか、生まれて初めて会うであろう存在だけれど、一体どんな見た目で性格の神様なんだろう。

 ちょっぴりドキドキしてるけども、ピースがここまで懐いている相手であるならば種族なんてどうでもいいし、僕も仲良くできたらいいな。

 

「やっぱりご主人様だ~! あはっ、何で居るの? もしかして、あたいに会いに来てくれた?」

「そんなところよ。にしても、理想郷は()()()()()()()()()()()()()ねぇ。とてつもなく眩い命の輝きに満ちている」

「でしょでしょ! きっと、ご主人様も気に入るってあたい思ってたんだ!」

 

 スターに正気に戻してもらってから、皆で後を追って建物の中に入った時に見えたのは、赤い髪の変わった格好の女の人……神様をご主人様と何度も呼び、今までにないくらいに幸せそうに甘えるピースの姿だった。

 

 サニー曰く、実はピースはあの神様の部下のような立ち位置で、今日に至るまで色々と指示を受けては活動しているらしい。皆と仲良し妖精軍団として遊ぶようになったのも、元は神様が幻想郷に行けと言ったからだという。

 

 で、元々は頃合いを見計らって地獄に帰らされる予定だったけど、予想以上にサニーたちや他の妖精軍団の皆と仲良くなって、帰りたくなさそうなピースを当の神様が見る。結果、なんやかんや理由を作ってくれたから、晴れて幻想郷に住むことが許されたとのこと。

 

(そっかぁ、ピースの家族……)

 

 そもそも、神様はピースを部下としても見はするものの、どちらかといえば大切な自分の子供的な感じで接する方向がかなり強いらしい。

 

 甘味処で一緒に甘いお菓子を食べてくれたり、自分が求めるままに遊んでくれたり、イタズラに使える情報を渡してくれたり、ひたすら甘えさせてくれたり、他にも色々あるという。

 

 うん。そりゃあ、血の繋がり云々とか実は上司と部下の関係だったとかは置いておいて、ピースが神様をこの世で1番愛する家族と認める訳だ。好きになる要素しかないんだもの。

 

(あっ……妖精さん、ごめんね)

 

 ちなみに、木のお皿に大きいりんごを乗せて赤い髪の神様に渡そうとしていた妖精さんは、唐突に乱入する形となったピースに少し不満げな様子だったけど、何かしら思うところもあったらしい。すぐに、表情は元に戻った。

 

「じーっ……うん、よし!」

「びゃっ! ピース……?」

「メノ、紹介するぞ! この(神様)があたいのご主人様、へカーティア・ラピスラズリ! 怖いことしてくる神様じゃないぜ!」

 

 すると、ピースがこっちを見つめていたかと思ったら寄ってきて、僕の手を少し強引に掴むと、さっきまで甘えていた神様の前に引っ張ってきた。

 どうやら、この神様はヘカーティア・ラピスラズリっていう名前らしい。今関係のないことなんだけど、フランのフルネームと同じ長さなんだなぁ。

 

(凄い……これが、幻想郷の神様の1人……)

 

 一目見ただけで分かる。この神様は、僕が幻想郷で会ったことのある人妖さんたちの誰よりも、圧倒的に強いと。もし戦えば、一息で皆が消し飛んでいくくらいには強いと。

 

 しかし、同時に僕やサニーたちにとって怖い神様だとか、嫌な神様だとは全く感じない。どちらかといえば、面白くて親しみやすそうな神様なんだろうけど、それはそれとして緊張しないで話しかけるのは無理である。

 

 なんていっても、目の前に居る僕の方をじっと見つめてきてるんだもの。

 

(あっ。何やってるのさ、僕……)

 

 それで、緊張の果てに僕は何を思ったか、自己紹介をしないどころか無言でただ両手を伸ばして広げ、差し出すという自分でも訳の分からない行動をしてしまう。

 

 端から見れば、大切な友達のお母さんないしお姉さんに初対面でいきなり、無言かつ無表情で抱っこを要求しているように見えるだろう。やられる方からしてみれば、戸惑ったり驚いたりするのは当然として、不気味にすら思うかもしれない。

 

「これは……ピース。この子が、抱っこしてって頼んでるってことでいいのかしら? でも、羽の色がコロコロ変わってる上に、無表情なのよねぇ」

「緊張してて、訳も分からず手がこう出ちゃっただけだと思う。あたい、やっぱり判断間違えたのかな……あっ、ちょっとニコってした。羽の色も普段の透明になってる」

 

 案の定、ヘカーティアさんは戸惑っている。僕のことを、ピースだったり他の誰かから聞いているみたいだったし、それ故に気を遣ってくれてるのが分かるだけに、変なことをした申し訳なさがいっぱいだ。

 

 だけど、このまま両手を引っ込めようかどうか、正直迷っている。気まずさとか恥ずかしさというよりは、本当に抱っこしてくれたら嬉しいって感情がちょっと芽生えてきたからかな。

 

 でも、今はやっぱり引っ込めておこう。もう少し、仲良くなることができてからお願いした方が、心から暖かくなれそうだから。

 

「うわわっ、たいへんたいへん! お空から、にんげんさんにちょくげきしちゃったよ!」

 

 ただ、そんな僕の頭の中で巡りめぐっていた思いは、慌てながら中に入ってきたとある妖精さんの、ちょっぴり奇妙な発言にリセットされることになっちゃったけれども。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ありがとうな、霊夢とあうん。私の誘いに乗ってくれてさ」

「どういたしまして。まあ、かくいう私もあうんも暇だったからね。ちょうどよかったわ」

「こちらこそ、ですよ! 魔理沙さん」

 

 今現在、幻想郷における種族『妖精』の存在感は、『文々。新聞』や紫などを介して拡散している、メノが主となっている妖精たちの理想郷の影響でより大きく増していた。

 

 理想郷の中でのんびり暮らす妖精たちの、尋常ではない数に当てられてか、理想郷外で生まれる妖精も数を増やしていて、その点も存在感増大に大いに役立っているだろう。

 

(この間よりも増えたか……? いや、元から居たけど気づかなかっただけだな)

 

 当然と言えば当然の話ではあるが、母数が増えれば強力な妖精の生まれる確率も上がる。

 現に、メノ自身や昔から有名な妖精軍団、紅魔館の一部メイド妖精とまではいかずとも、相応に強いと呼べるだけの妖精を見かける頻度が、かなり増えているのだ。

 

 ちなみに、妖精の大幅な増加によって、異変かそれに値するレベルの面倒事が発生したという話は今のところ、誰からも聞いていない。

 精々、イタズラされたりちょっかいを出される頻度が、前より増えつつあるくらいである。

 

「ちなみにな。この見た目ヤバそうなキノコ、守護妖精曰く食用らしいぜ。マジだ」

「えぇ……私なら、極限状態でも多分考えないわ。生えてる場所も場所なんだけど、見た目がこう、形容し難いゲテモノじゃないの」

「お味噌汁とかに浮かんでたらその、多分食欲がなくなりそうです……」

「心配すんなって、あうん。実際に入れて食べるつもりはないぜ」

 

 それが理想郷の中ともなれば、余程威圧的とか暴力を振るったことがあるとか、妖気や魔力を全解放しながら闊歩するとかしない限り、基本的に数多もの数の妖精たちに群がられ、凄いことになる。

 

 霊夢やあうんを含めたよく知る面々であれば、妖精に懐かれやすい体質の私が居ればこっちに誘引されやすくなるが、そうでなければ場合によっては数分程度でイタズラやちょっかいの餌食となるだろう。

 

 なお、私らが居る上層部の妖精は全員がメノの誕生以降生まれていて、その性格などもメノの影響を個人差こそあれ一定は受けていると、守護妖精はそうはっきりと言っていた。

 

 故に、メノ本人の性格上絶対に一線は越えないどころか、そこから2歩3歩退いた可愛らしいイタズラとかで抑えてくれるはずだから、心配や警戒はしなくたって問題ない。

 

「ところで、霊夢さんに魔理沙さん。おやつ、取られちゃいましたけどどうしましょう?」

「あら……あんたたち、それ――」

「わわわっ! バレちゃった! やばいやばい!」

「ほらぁ。だから、堂々とつまみ食いすればバレるって……あーあ、サニーちゃんたちが居ればなぁ」

「それでも、バレそうだと思うのはわたしだけ……?」

「もうっ、そんなことより……わたしの果物沢山あげるから、怒らないで。とっても甘いよ……?」

 

 例えば、持ってきた食べ物……特に、それが甘いお菓子や果物の場合は確率が上がるが、目を離した隙に盗られてつまみ食いされるとかだ。というか、今私たちがやられているイタズラである。

 

(大分ガッツリ持ってかれたなぁ……ちょっとばかし、油断し過ぎたぜ)

 

 今日、魔法のバスケットに入れてきたおやつは確か、秋姉妹特製のお饅頭や羊羹などの和菓子に私の用意した金平糖、余った砂糖で作ったべっこう飴。

 

 うん。こいつらにとっては、ご自由にお取り下さいと言われているようなものだったな。

 

「おぉ。凄い美味そうなリンゴだ……ぐえっ!?」

「どーん!! わたしはおくれてやってくる!」

「「……」」

「あれ? みんな、どうしたの……?」

「足下、魔理沙さんを踏んでますよっ! 妖精さん!」

「ちょっと、あなた早くどいて! まりさが凄く痛がってるでしょ!」

「えっ」

 

 しかも、間の悪いことに顔馴染みの妖精の着地地点に居たらしく、唐突に襲ってきた強い衝撃と共に地面に叩きつけられ、踏み台となる散々な目に合ってしまう。

 

 私たちが今遊び歩いていたのが、寂れた人里のような場所だった故に地面が石畳部分だったのと、イタズラ以外に何も起こらないために少し油断していたのも相まって、妖精相手とはいえ今の一撃は相応に痛い。軽い擦り傷程度なら、どこかに負っていそうなくらいには。

 

 ただし、普段の弾幕ごっこやら異変解決とかで慣れているから、すぐに思考に色は戻る。というか、私よりも顔面蒼白でこの世の終わりみたいな雰囲気を醸し出す、顔馴染みである金色の妖精の方が心配だ。

 

(あー……こりゃあれだなぁ)

 

 髪の毛をトリモチや泥まみれにする、勝手につまみ食いしてくる、激マズキノコを口に突っ込んでくる、小傘(こがさ)みたいにワッと驚かせてくるなど、地味に効くイタズラを仕掛けては私の反応を見て、ゲラゲラ笑ったりして楽しむみたいなことはしている。

 

 多分、ここの妖精で一二を争うくらいには、イタズラとかちょっかいを出したりするのが大好きだと断言できる。

 

 ただ、それでもこういう類いのイタズラは、今のところ1度もやってきていない。モリオンや他の通常妖精のような要素こそあれ、性格のベースがメノにそっくりであるためだ。

 

「わぁ、わぁっ……まりさぁ……わたしが、わたしがよくみてなかったせいで……!」

「あちゃー。やっぱりこうなったか」

 

 私の運も込みで本当に最悪の場合、命に届きかねない高所からの不意打ち突撃に踏みつけというイタズラ。メノがこれを全く意図せず、自分の不注意でやってしまったとしたらどうなるか、想像に難くない。

 

 案の定、金色の妖精は私との関係がもう終わったかのような、絶望感マシマシなオーラを出して大泣きし始めてしまう。

 

(……まあ、こんなもんか)

 

 ちなみに、起き上がった後すぐに確認してみたら、これによる明確な被害はもらったリンゴと一部のおやつのみで、怪我も多少の擦り傷と痛み程度と大したことはない。こんなの、弾幕ごっこをやってればしょっちゅうだ。

 

 なので、そのまま気にせず許そうとも考えたが、メノのように強烈な精神的トラウマもないし、今後のことも考えればある程度伝えておくことも必要だとも思い、少ししゃがんで目線を合わせる。

 

 しかし、私の経験上メノやモリオンのような性格の妖精が相手だと、何かやらかした時普通に語気を強めてお説教するだけでは、あまり効果的でないどころか逆効果になったり、予期せぬ効果を発生させる可能性を生む。

 

 モリオンがレミリアにガチ説教された結果、他者との距離の詰め方がおかしくなったのがいい例だ。

 

 では、どうお説教(注意)すれば良いのかというと、言葉をできる限りやわらかくしつつ、何故気を付ける必要があるのか長々と諭すような感じである。

 

 勿論、多少なりとも負担をかけているのには変わりないし、幼い子供のような精神性の妖精故に、1度で分かってもらえない場合もあるだろうが、付き合いを続けたいなら根気よく諭すのみと言えよう。

 

 なお、やらかしがあまりにも大き過ぎて周囲にもたらした被害が甚大な場合、あまりにも繰り返しやったり強い悪意を以てやった場合は、その限りではない。

 

「うん。まあ……この通り、確かに痛かったりしたけど大丈夫だ。だから、次からちゃんと下を見てからゆっくり降りような。じゃないと、私もそうだがお前自身も、痛い思いをすることになる。下手すれば、怒鳴る必要が出るかもしれないぜ」

「うんっ、うんっ……やくそく、するね! まりさ!」

「おう、よしよし。じゃあ、この話は終わりだな」

 

 そんなこんなで思考を巡らせながら、泣いて抱きつくメノ似の妖精と話をし続けた結果、無事に分かってもらうことに成功する。やはりというべきか、ここの仕草もメノやモリオンにそっくりだ。

 

 他の、私のために怒ってくれていた妖精たちも、まあ反省してるみたいだからもうおしまいと言わんばかりに、ニコニコしながらこいつの口に飴玉を突っ込んで遊び始める。

 

「何というかこの子、メノを見ているようね」

「分かります。魔理沙さん大好きなところも、仲の良い友達と楽しそうに遊ぶところとか、本当にそっくりですもんね!」

「ははっ。しかし、話は変わるが……今こいつの口に突っ込まれた飴玉、どんだけ不味いんだよ。絶対イタズラ用だろ」

「全く……イタズラのために飴玉作るとか、本当に余念がないわねぇ。サニーたちを思い出すわ」

 

 ちなみに、突っ込まれたその飴玉はこの世のものとは思えない程の激マズな味だったようで、ついさっきまで溢れていた涙は一瞬で引っ込んでいた。

 

 で、「うえっ、おいしくない……まずいよぉ……」とぼやきつつも吐き出さないのは、食べ物を無駄にするのは良くないとでも考えているからだろうか。

 

 だとしたら、それは素晴らしい考えではあるが、今の状況からして無理をしてまで食べる必要はないと思う。吐き出して捨てたって誰も怒りはしないと、さりげなく伝えたりもしている。

 

 しかし、それでもその意思は固かった。ここまで来ると、最後まで食べさせてあげた方が精神的にも良さそうだ。

 

「お前、本当に意地っ張りだなぁ。ほら、残ってるやつ全部やるから、食べて口直ししとけ」

「あっ、こんぺいとうだ……ん~! あまい! すごくおいしいっ! えへへ~」

 

 ただし、この行為自体が苦行に耐えるための修行でもなければ、不味い食べ物に耐性がある訳でもなさそうだったので、口直し用の金平糖はあげておいた。その時見せてくれた反応は、案の定である。

 

 しかし、あの飴玉には一体どんな材料が使われているのだろうか。魔法薬の材料にもなるかもしれないし、研究目的でもらってみるのもいいかもしれない。

 

「わぁ……えへへ、魔理沙だぁ! 霊夢にあうんも遊びに来てくれてる!」

「本当、魔理沙相手だと凄い懐き様だねー。メノは」

「うんうん、私たちに次ぐ家族だものね! 当然の話だわ!」

「メノにとっての1番の家族の座は渡さないよ、魔理沙」

「いや、奪い取ろうとしたことはないんだが……てか、そんなことしなくたって不動だろ」

 

 すると、この騒ぎをどこからか察知してか、このエリアに遊びに来ていたらしいメノの、心から嬉しそうな声が私たちの背後から聞こえてくる。

 

(うおっ……マジかよ) 

 

 メイド妖精の仕事が休みってレミリアも言ってたし、いつもの面々で遊びに来てたんだろうなと思いながら振り向き、四妖精の相手をしていた最中、そこに全く以て予想外の存在が居て驚いた。

 

 かつて私や霊夢が相対したことのある、ピースの主人でもある女神……ヘカーティア・ラピスラズリである。




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