昨日は、理想郷の大探検をしていた中でも、1番楽しくて幸せを感じれた1日であったと断言できる。
勿論、今までも十分過ぎるくらい楽しくて幸せだったけれど、たまたま昨日に色々な要素が目白押しだったから。
魔理沙に霊夢、あうんの大好きな3人と偶然鉢合わせた上に、夜まで一緒に遊べたこと。
ピースが偶然、幻想郷で1番大好きな神様のへカーティアさんと会えたことで、幸せの極致に居る姿を見れたこと。
その場の状況と気分でイタズラをやってみたら、サニーやスターやルナにとても喜んでもらえたこと。
最後にやった魔理沙へのイタズラで、くすぐり攻撃でのお返しされて疲れきってから、サニーの子守唄と膝枕で心地よく眠るところまで含めれば、1番と思うのも当然ではないだろうか。
「わぁ! もっとやって、高いたかーい! ぐるぐる回るのも!」
「あらまあ。ふふ、もう5回目よ? お安い御用だけれど、飽きないの?」
「うん、全然! やってくれてるのがへカーティアさんだもの!」
「そうなのねぇ……おっと。伊達に私、貴女たち妖精との付き合いが長い訳じゃないのよん」
「ありゃー。やっぱり、へカーティア相手じゃ無理難題ねー」
「きゃは! 流石はご主人様、あたいたちのことはお見通しってやつだぜ!」
「だな! でも、メノだったらもしかすればいけるかも?」
「えっ、神様にイタズラかぁ。うーん……」
「大丈夫! 当然、無理はしなくていいぞ!」
ちなみに、へカーティアさんはピースの強いお願いも相まって理想郷に引き続き滞在し、僕たちと一緒に今日も遊んでくれていた。
抱っこや高いたかーいみたいなことから、鬼ごっこやかくれんぼといったことまで、リクエストすればニコニコしながら付き合ってくれる。
慣れた手付きで、スターやピースやチルノがちょっとしたイタズラを仕掛けてきたりしても、笑って受け流すかしてくれてる。
かと思えば、不意打ちで変顔とか変な仕草をしてきたりして、僕たちを笑わせようとしてきたりもするのだ。気さくな神様って聞いてはいたけど、ここまでとは正直想像してなかったからびっくりした。
ピースは勿論、サニーたちやチルノは慣れているのかそこまででもなかったけど、僕にとっては初めてのことだから、結構笑っちゃったなぁ。
「メノ、楽しそうだね。へカーティアとの相性もやっぱり抜群みたいだし、本当によかった」
「でも、心がある程度回復してないと流石にこうはいかなかったわ、ルナ! ふふっ、おめでたいことね!」
「えへへ。ここに居る、とっても大好きな皆のお陰だよ……わわっ! リリー……?」
「ぎゅーっ! 私も、メノのことは大好きですよー! ラルバもほら、ぎゅーってしてあげて!」
「リリーと同時に2人で? えっと、こんな感じでいい……?」
「わぁぁぁ……うん!」
後はそう、間接的にへカーティアさんのお陰でこう、テンションが高くなったリリーとラルバからこんなにも多大な幸せを感じる、至福の一時を贈られたのも嬉しいことの1つ。
勿論、そうでなくとも時々似たようなことをしてくれる2人だし、サニーたちは言わずもがなチルノ一行だってよく僕に構ってくれる妖精さんだけども、それとこれとは話が別。
こういう幸せな一時は、もらえるのならいくらでももらっておきたいし、例えもらい続けても慣れてしまうなんて事態には陥らない。絶対に。
(あ……ぐえっ。ちょっ、嬉しいけど流石に……)
で、そんなリリーとラルバに対抗心を燃やしたのか何なのか、サニーとスターとルナまでも同じことを実際にしてきている。ただし、ちょっぴり無理やりな抱きつき方だったから窮屈になってきちゃった。
というか、ここまで来たらもはや抱きしめじゃなくて、おしくらまんじゅうと言わざるを得ない。ほら、僕はともかくリリーとラルバがぎゅうぎゅう過ぎて、早くどいて欲しそうにしてるよ。
ちなみになんだけど、この光景をへカーティアさんや翡翠の妖精さん、チルノと大ちゃんとピースは各々面白そうに見ていて、止める様子はなさそう。なら、僕がサニーたちにどいてもらうよう、言ってあげなきゃね。
「むっ? これは……皆様、大変申し訳ありません。少々この場を外させて頂きます」
しかし、僕がどうこう言う必要はなくなった。へカーティアさんと話をしていた翡翠の妖精さんが、そう言い残したと同時に消えたことに不思議がり、離れたからである。
(どうしたんだろう? 大丈夫かな……)
微笑みを浮かべて楽しそうにしてくれてたのに、何かに気づいた瞬間の翡翠の妖精さんは、一気に真顔になっていた。それこそ、僕やサニーたちにとってよろしくない事態が起きた、こう言いたげな感じに。
「守護妖精さんの焦る姿、私初めて見ました。心配だなぁ」
「そうねぇ。私から見ても、彼女は明らかに強者側の存在。だから、厄介な敵の出現というよりは……ここの妖精に何かあった?」
「えっ。それは、僕にとっても他人事じゃないよ……」
「メノにとって、妹とかそれに類する存在だもんな! 理想郷の主でもあるんだから尚更だぜ!」
へカーティアさんも翡翠の妖精さんを認めているからか、している予想も何だか嫌な感じだし、余計に心配する気持ちが僕の中でどんどん増えてきてる。
だけど、今の僕にそれをどうにかするだけの力はない。こんな様で、理想郷の主だなんて大役を僕が務めてていいのかな。
どちらかといえば、翡翠の妖精さんの方が相応しいんじゃないかって、当の本人から貴女でなければ務められないと言われててさえ、そう思っちゃうなぁ。
「わぁ……! えへへ、皆揃って……え? レミリア……?」
そんなこんなで数分、下手したら10分以上経った感じがしてきたところで、翡翠の妖精さんが空間移動で戻ってきた。何だかとっても調子が悪そうに見える、レミリアを連れて。
というか、よく見たらノーゼとスフェ、美鈴もレミリア程じゃないけれど本調子じゃなさそう。僕から見て平常運転なのは、フランとパチュリーとこあだけだ。
(えっ……えっ? なにこれ、どういう状況……)
何故、翡翠の妖精さんは僕たちの前に連れてきたのだろう。僕だけじゃなくてサニーたちやチルノ一行、へカーティアさんも予想できないのか、首をかしげている。
勿論、悪気があってのことじゃないのはすぐに分かったけど、それでも連れてくるならフランとパチュリーとこあだけにして、比較的調子が悪くない他の皆にレミリアを背負って帰ってもらった方がよさそうてはなかろうか。
もしくは、何かしらの回復魔法とかをかけてあげて治してあげるか、大幅に軽減させてあげるくらいはしてあげた方がいいのにしないのは、止むに止まれぬ事情があるためか、苦手分野であり力不足などという理由があるからなのかも。
何にせよ、そういうことなら僕が回復させてあげよう。疲労でも怪我でも、ちょっとした風邪とかならすぐに治せるから。
「あれ? 顔色全然よくならない……何で? 何で……?」
しかし、その目論見は容易く潰えた。何故だか、今のレミリアには僕の魔法や能力が効かないのである。
正確には一瞬だけ効くけど、またすぐに元に戻ってしまうといったところ。
考えてみれば、翡翠の妖精さんでさえどうにもできないことを僕がどうこうできる訳がない。幸か不幸か、この場にはへカーティアさんが居るのだから、とにかく頼るべきだ。
ただ、こういう類いの事柄に通じているとは限らない。へカーティアさんだって、苦手分野なのかもしれないし。
「メノウ、ごめんなさい……そして、お願い。とっても辛くて嫌な思いをすることになるだろうけど、聞いて欲しい話があるのよ。勿論、サニーたちにとっても……ね」
ならば、ひとまず紅魔館に送り届けてから、霊夢と魔理沙にお医者さんを呼んできてもらおうかと考え、実行しようとしたその刹那……とうとう、涙まで浮かべて辛そうにし始めたレミリア本人に、こう言われて止められる。
僕は、その瞬間に何でレミリアの調子が悪いのか、僕の能力や魔法で回復しないのかを理解した。不調の由来が、精神的なもの故であると。
まるで、前世が人間の男の子だった秘密を隠していた僕が、それを打ち明けたことでサニーとスター、ルナに気持ち悪がられ嫌われることを怖がっていた時とそっくりだ。
身体的な要因で体調が悪くなっているのでなければ、そりゃあ僕の能力や魔法じゃ実質効かなくても無理はない。根本的なところから解決してあげなきゃ、無限に体調が悪くなるばかりなんだし。
「分かった。えっと、どんな話でもどんと来い……だよ!」
であれば、僕のやることは決まったも同然。どんなえげつない秘密のお話が来ようとも、決して拒否しないで受け入れるだけだと。
そもそも、僕の秘密も受け入れてくれるくらい、優しくて大好きな友達であるのだから、本来であれば考えるまでもない。
(……へ? えっ、えっ?)
なんだけど、正直予想外にも程があり過ぎた。程があり過ぎて、声が出なくなっちゃうくらいには。
まさかもまさか、知らず知らずの内に愛すべき家族や大好きな友達に対し、間接的に僕が迷惑をかけていたってお話を、人里が禁止されていた要因になっていたと聞くだなんて。
勿論、レミリアはそんな風に言っていないし、十中八九思ってもいないだろう。あくまでも、皆と同等かそれ以上の被害者であり、自身を含めて紅魔館の誰も僕に迷惑をかけられたと思う住人は居ないと、繰り返し教えてくれている。
無論、悪いのは全て僕が前世で家族だったと思いたくない、あの人たちだとも同じくらい強く言ってくれている。ノーゼやスフェ以外のここに居る紅魔館の皆が、あの人たちを痛めつけてしまう程に怒っていたというくらいには。
「うぅ……ぐすっ……」
「あわわわ……メノの羽の光が、類を見ないくらいに真っ青よ! す、スター!? ど、どうしたらいいのかしら!?」
「どうしろって私に聞かれても、サニー。トラウマ純度ほぼマックスなこの話が出ちゃった以上、もう後戻りはできないわー。全幅の信頼を寄せる、大切な友達からのお話なんだから」
「つまり、賽は投げられたってやつだよ。サニー」
「ひゃあ……とにかく、私ができることをしなきゃね! 守護妖精も協力して!」
「無論です。この場を作ったのは私でもありますから、その程度はしなければ」
ちなみに、僕にこの話をしに来た時点で既に、それら厄介な問題は全て解決済みらしい。
ゆゆさんや妖夢にお願いして、霊魂ごとあの人たちに実質幻想郷から永遠に消してもらうことで。
つまり、レミリアたちだけじゃなくて、ゆゆさんと妖夢の手をも汚させてしまったということである。
僕は悪くないと言ってくれていても、幻想郷に来る前から元々汚れきった手なのだからと伝えてくれてても、優しくて大好きなレミリアたちにこんなことをさせちゃった罪悪感みたいなのが、纏わりついて離れない。
勿論、最後の一押しをした今ここに居ないゆゆさんや妖夢に対しても、同じくらいの罪悪感みたいなのが纏わりついている。
(チルノ、ピース、大ちゃん……)
だけど、それ以上に圧倒的に辛いことがあった。
僕の酷い悪口を言っていたあの人たちに怒りを燃やし、食ってかかった時に流れで言われたって聞いたから、余計に心が痛くて痛くて堪らなかった。
「きゃははは! とにかく、これは喜ぶところだぜ!」
「そうだね、クラピちゃん……あれ、チルノちゃん? 冷気解放して何するつもりなの?」
「えっ? あっ……ごめん、漏れてた」
「もう、気をつけてよね。でもまあ、チルノの嬉しいって気持ちは分かるよ。リリーもそう思うでしょ?」
「うん! メノにもようやく、めでたい真の春の訪れですよー! ラルバも一緒に、せーの……」
「「メノ! 春ですよー!」」
「み、みんなぁ……!!」
でも、当の本人たちは全く気にしていないどころか、むしろ自分たちのことはどうでもいいと言わんばかりにはしゃぎ、鬱蒼とした雰囲気を容赦なくぶち壊して僕に構ってくれている。
心に残るトラウマや罪悪感、その他諸々の混じりに混じった感情の濁流のせいで言葉が出ず、呼吸が小刻みかつ早くなって身体が勝手に震えたりして、殆んど反応できていなくても。
だからこそ、早く何かしら大きく反応を返してあげたい。ずっとこうだと、ただでさえ心配をかけているのに余計に強くかけかねないもの。
(はぁ、はぁっ、はぁ……うぅ……どんな話でもどんと来い、つまり受け入れると言ったのは僕。それなのに、いざ話を聞くや否やこの有り様……バカバカバカっ!)
後はそう、サニーとスターとルナがレミリアと翡翠の妖精さんに対して、今の僕でも分かるくらいに怒り始めたのも心配だ。その行動は理解できるし、悪意だって微塵もないのは分かるけど流石に荒療治が過ぎないかと、それでもやるんだったらせめて事前に私たちに相談が欲しかったという理由で。
ただ、こうは言ったけれど、サニーたちの怒り度合いは現時点だとそこまで強いものではない。例えるなら、サニーたちにイタズラをされた霊夢や魔理沙、もしくはメイド妖精さんにお説教をする咲夜くらいかな。
しかし、このまま放っておけば愛する家族と大好きな友達同士、僕が原因で本格的な喧嘩を始める可能性が少ないながらもある。最悪の場合、今までの仲良しこよしな関係にヒビを入れかねない。
早くしないと、ただでさえ調子が悪そうだったレミリアの顔が、サニーたちに怒られてるせいでもう真っ青だし、翡翠の妖精さんもただひたすらに『申し訳ありません』を連呼し始めてる。
怒っているサニーたちもそうだし、怒られている翡翠の妖精さんも僕のことを凄く考えてくれたが故の行動だし、この状況は堪えて仕方ない。
「レミリアっ!」
「ひゃっ! め、メノウ……?」
「ふぐっ……うぅ……僕のためにずっと、ごめんね。大好きだよ……! それと、それとね。咲夜が傷ついたお話が嘘で、本当に……すぅぅ……よかったぁぁぁ……!!」
「貴女って子は、本当にもう……私の方こそ、急にこんなトラウマ話を持ってきてごめんねぇ……!」
「ひぐっ……翡翠の妖精さんも判断を下すの、辛かったよね。分かるよ……だから、もう……そんな顔をしないでぇぇ……!」
「メノウ様……」
「サニーたちも……ぐすっ、うぁぁぁ……!」
だからだろうか。心の中で「早く動いてよ僕のバカ!!」と強く念じたのをきっかけとして、ようやく動くことができるようになったのだ。
なお、その際にせき止められていたのかと言わんばかりの感情も溢れ出したお陰で、他にも色々と気遣う言葉とかをかけるつもりだったのに、結局それどころじゃなくなってしまう。
レミリアや翡翠の妖精さんに順繰りに抱きついて、大声を出し涙と鼻水を流しながら泣く始末である。何とか、鼻水だけはギリギリ服とかにつかないように頑張ったけど、つけてない自信はない。
今はちょっと無理だけど、後で能力と魔法で綺麗にすれば実質つけてないも同然だから、大目に見て欲しいな。
「何だかんだ大丈夫そう? 少しずつ泣き止んできてるし、羽の光も青さが一気に抜けていってるわー」
「ええ! それはそうと、レミリア。私たち、メノのためとはいえちょっと言い過ぎたわ。ごめんなさい」
「うん。あれは確かに、私やスターやサニーの代わりをしてくれた相手に対する態度じゃなかった」
「そうねー。流石に、少し反省しなきゃだわ」
「いいのよ、別に。荒療治だったのも、そのせいでメノウに大きな負担をかけたのも、紛れもない事実だもの。私が3人の立場だったら、間違いなく同じように怒ってたし」
なお、未だ溢れる感情のままに泣き続けていったのが功を奏したのか、多分5分もしない内にサニーたちとレミリアがあれよあれよと仲直り、その流れで翡翠の妖精さんとも仲直りして、殆んどいつもの雰囲気に戻っている。
ああ、本当によかった。何度も言うけれど、僕のために時間と手間を惜しみなく使ってくれて、無償の幸せを与えてくれる優しくて大好きな皆が大喧嘩し、仲直りできなくて袂を分かつなんて光景は、この世で最も見たくないものの1つだから。
「すぅ……はぁ……うん、僕は大丈夫。だから、もう怒らないで……ね?」
「勿論! 私もスターもルナもお互い様だし、怒るのはあれでもうおしまい! さて、そうと決まればレミリアたちも加えて遊びの続きをやるわよー!」
「ふふっ。サニーちゃん、気が変わるの早いなぁ」
「メノも無事に復活したもんな! ほっとひと安心だぜ!」
「そうそう。さっきも言ったけど、心の冬が明けて暖かい春がやって来ましたよー! えへへ、おめでたいわー!」
勿論、これから何年何十年、何百年と一緒に楽しく幸せに暮らしていく訳なのだ。互いの意見の相違などによって喧嘩が起きることを防ぐのは、不可能に近い。僕自身ならば、サニーたちなり他の皆に合わせれば簡単だからいいけれど、僕が関わらないところではそうはいかないし。
イタズラとかを楽しむのであれば、禁じられた一線を超えなくともイタズラの対象となった誰かの怒りとかを買い、お説教や仕返しをされたり喧嘩になったりすることも、同様にあるだろう。
しかし、これらの場合は仲直りの芽があるのが望み。やるべきことをちゃんとやれば、いずれ必ずまた一緒に楽しく過ごせるようになるのだから。
「ねえ、メノウ」
「ぐすっ……なあに? レミリア」
「ありがとう。幻想郷に生まれてきてくれて」
「……えへへ。僕の方こそ、幻想郷に生まれてこれて幸せだよ」
さて、皆が仲良くはしゃぐいつもの様子を見続けながら、体感的に長い時間レミリアによしよしされ続けてようやく、僕も重圧と混乱の森から抜け出せたのだ。というか、あの人たちのお話を聞く前よりも、心も身体も軽くて暖かくなってきた気がする。
そうならば、いい加減に立ち直って元気になったところを見せて安心させなきゃ。でないと、レミリアと同じかそれ以上に僕のことを気にしてくれてる皆も、真にこの場を楽しく幸せに過ごすことができなくなるだろうから。
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